鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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今回もかなり短め、そろそろ長めの話も書きたいところです……('ω')

今回の会話もきっと財団スタッフが頑張って通訳してます。


ターニングポイント

 昼過ぎの蝶屋敷、廊下をいかり肩で歩く男の隊士がいる。

 

 髪型は側頭部を刈り上げ、中央部の髪をボサボサに生やした棟髪刈り。右頬から左目にかけて大きな傷跡が残っており、眉間に皴を寄せたままの鋭い三白眼。黒い隊服の上に羽織を纏っている。その色は胸部付近が小豆色、腹部が黒色だ。

 

 身長は180㎝と体格に恵まれており、普段からイラつきを隠しもしない様子と、その鋭い印象からは見るものを委縮させる。現に、ずんずんと進む彼を見るや、すれ違う隊士達は廊下の端に避けている。

 

 彼の名は不死川玄弥。風柱・不死川実弥の実弟である。

 

(鬼の数が減っている)

 

 玄弥は焦っていた。鬼の数が減る。鬼殺隊にとっては実に良いことだ。玄弥にとってもそうだ。しかし、それは今の自分にとって都合が悪い。

 

(鬼が喰えない)

 

 彼は強力な顎の力と特殊な消化器官を持つ。鬼を喰らい、一時的に鬼の力を身に宿せる特異体質なのだ。その力は当然、喰らう鬼が強ければ強いほど増す。

 

 しかし、下弦の鬼は全滅し、上弦の鬼も未だ尻尾を見せない。雑魚鬼もほとんど身を潜めている。玄弥からすれば、強くなれる機会を失っている訳だ。

 

(俺が狩れたのは未だに木っ端程度の鬼だけ。クソが!)

 

 玄弥は胸中で悔しがる。彼は炭治郎達と同期だ。当時の最終選別試験に合格したのは、竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助、栗花落カナヲ、不死川玄弥の計五名。

 

(最終選別に残った奴等の中で、俺だけが……)

 

 炭治郎、善逸、伊之助は下弦全滅の立役者として有名だ。カナヲは、胡蝶しのぶの継子としてメキメキと腕を上げており、類稀な才覚を持つと言う。玄弥は、自分一人だけが取り残されたような焦燥感に駆られた。

 

(俺には"全集中の呼吸"の才能が無かった。俺が"柱"になる為には鬼を喰うしかない……。このまま足踏みしてる場合じゃねぇんだ!)

 

 そういった者達は、"隠"になることが多い。だが、玄弥はそうしなかった。とある理由から鬼殺隊の"柱"を目指している為だ。されど、彼は呼吸の才能は無い。喰う為の鬼も見つからない。手詰まりだった。

 

(とにかく、今日も悲鳴嶼さんの言う通り、胡蝶さんに診て貰わねぇと。あー……。今日も説教されんだろうな)

 

 玄弥は、岩柱・悲鳴嶼行冥の元へ弟子入りしていた。悲鳴嶼は、玄弥の我武者羅で凄まじい執念と、特異体質を察した故に面倒を見ている。その折に蟲柱・胡蝶しのぶの診察を受けるよう紹介され、今に至る。

 

 当然、しのぶも良い顔をしなかった。鬼の力を身に宿すなど、何が起こるか分かったもんじゃない。余りにも危険過ぎる。黙認されているのが奇跡と言っても良いぐらいだった。

 

 当初の玄弥は荒れに荒れていた。最終選別の時、待ちきれなかった彼は立会人である産屋敷家の息女を殴り、その折に炭治郎とひと悶着起こして腕をへし折られた。今も荒々しさは隠せない様子だが、悲鳴嶼のおかげで少しずつマシになっていた。殴った息女にはきちんと詫びを入れた。

 

 考えている内に、しのぶがいる診察室に到着した。

 

「待ってましたよ、玄弥君」

 

 しのぶが上機嫌な様子で出迎えた。その表情はウキウキとしている。玄弥は怪訝な表情を浮かべる。こんな様子は初めてだからだ。

 

「……」

 

 それよりも重大な問題があった。彼女の艶やかな笑顔に玄弥の顔が上気し、紅潮する。最終選別を終えて暫くした後、彼は思春期に突入した。それ以来、女性に対して初心なのだ! しかもしのぶは物凄い美女だ。その破壊力は大きい!

 

(ど、どうしたってんだ。俺の診察するときはいっつも悲しそうな顔してたのによ……)

 

 開口一番お説教だった筈なのだが、今日はどういう訳か上機嫌だ。それに、診察室にいたのはしのぶだけではなかった。

 

(誰だ……?)

 

 診察室で玄弥を待っていたのは、ジョジョとマリオの二名。彼にとって初対面だ。二人共、玄弥のことを興味深そうに見ている。

 

 ジョジョが玄弥に微笑みかけた。

 

「やあ、初めまして。君がゲンヤだね? ぼくはジョナサン・ジョースター。気軽にジョジョって呼んで欲しい。波紋の呼吸の使い手さ」

「!」

 

 話には聞いていた。波紋の呼吸とは、西洋の鬼狩りが操る呼吸法で、太陽の力を操ることができ、その力で鬼を次々と葬り去っていると。炭治郎達が下弦討伐に至ったのも波紋使いの力添えによるものだったと聞く。

 

「同じく、マリオ・ツェペリだ」

「は、はあ……」

 

 角刈りのイタリア人、マリオもジョジョに続いて自己紹介をする。玄弥は、突然の波紋使いに、そう返すしかなかった。

 

(そうか、こいつらが西洋の鬼狩りか……)

 

 ある意味彼にとっての悩みの種である。

 

ガシッ

 

「!?」

 

 突然、死角からぬうっと老人が現れ、枯れ枝のような手で自分の手を掴まれた!

 

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

 

「な、なんだこの爺さん!?」

「やはりのう……」

 

 突如生えてきたトンペティが玄弥の手を掴んだまましげしげと眺める。抵抗しようとする玄弥をしのぶが制した。

 

「大丈夫ですよ。この御方はトンペティさん。"波紋の呼吸"の老師です」

「この人が? ……ぐ!」

 

 突如、トンペティと呼ばれた老人の手が光りだした。茫然としていると、玄弥の手が急速に熱を帯びたような感触を覚える。チリチリと肌が焼かれるようだ。

 

「あぢっ!?」

「む、熱いのか……」

「ああ、やっぱりそうなりますか……。玄弥君、ちょっとだけ我慢してくださいね。死にはしませんから。……まだ」

「まだ!?」

 

 しのぶがそういうことを言うとやけに怖いのだ。不吉な言葉に狼狽する。一体自分は何をされているのかと思っていると、しのぶはトンペティに訊ねた。

 

「トンペティさん、玄弥君は……?」

「うむ! 間違いない。この者には才がある」

「まあ!」

 

 トンペティが玄弥から手を離し、しのぶが顔を綻ばせた。すごく嬉しそうだ。玄弥は何が何だか分からなかった。

 

「おめでとうございます、玄弥君」

「は?」

「貴方、"波紋の呼吸"の才能があるそうですよ!」

「はぁ!?」

 

 突然の宣告に面食らう。当のしのぶは小躍りしている。可愛い。

 

「な、なんでそんな急に……」

「貴方から採血したサンプルを調べたところ、波紋の呼吸に適性がある可能性が高いと、トンペティさんが仰ったんです」

「左様、こうして直接確かめてみれば、大当たりだったという訳じゃ」

「ほ、他の調べ方はなかったんすか……」

 

 玄弥は握られた手にフーフーと息を吹きかけながら抗議する。ファンファーレには程遠い。

 

「ぼくが横隔膜から肺に指を突き込んで、波紋を流すという手もあったけれど……」

「おっかねぇ調べ方しかねぇのか!?」

 

 今の玄弥がそんなことをされれば、のたうち回るのは確定だっただろう。下手したら死ぬ。

 

「まあどうするかは自分次第じゃ。お前さんの特異体質のことは聞いとる。今こそ選択せねばなるまい。そのまま鬼の力を使い続けるか、鬼の力を綺麗さっぱり捨てて、波紋使いになるか……」

「……ここでどちらかを選択すれば、もう後戻りはできないって訳か」

「そういうことよ」

 

 トンペティが然りと頷く。不死川玄弥は今、重大な転換点に立たされることとなったのだ。

 

「……」

 

 このまま鬼の力を利用して突き進めば、波紋法の会得は出来なくなるだろう。逆も然りだ。チャンスは今しかなかった。

 

「……両方はできないんすか」

「無理じゃのう。如何せん、波紋法は太陽の力を宿している故」

「下手したら消滅しかねんぞ」

「……」

 

 トンペティの言葉にマリオがそう付け加えた。鬼の力と波紋の力、共存するのは土台無理な話であった。

 

「だが案ずることはないゲンヤ君。君ならばきっと、良き波紋使いになれるぞ! 君からは熱いツェペリ家魂を感じるッ!」

「俺は不死川家だ!」

 

 マリオは、何故か分からないが玄弥にツェペリ家の魂を見出したらしい。

 

「私はまあ、はっきり言ってしまえば無理やりにでも波紋使いになって貰いたいところなんですが、一応玄弥君の考えを尊重しますよ……?」

「……」

 

 しのぶは首を傾げながら玄弥の顔を見てそう言う。玄弥は顔を青くして怯んだ。しのぶは笑みを絶やしてはいないが、その眼光から凄まじい重圧を感じた。目が言っているのだ。波紋使いになれ、波紋使いになれと。

 

「ゲンヤ。今、君は鬼の怪力を身に着けているそうだね。もし、波紋使いになれば、その力は失われることになる」

「"波紋の呼吸"で筋力は向上しねーってことか……」

「それ程ね……。本来、波紋の呼吸は破壊を目的とした呼吸法ではないから」

 

(ジョースターさんが言うと説得力が全くないわね)

 

 ジョジョは色々と例外である。

 

「だけど、それを補って有り余るほどの利点があるッ!」

「……太陽の力以外にもなんかあるんすか?」

「そうさ!」

「……」

 

 玄弥は考え込む仕草を見せる。波紋の呼吸の力は太陽の力。夜間であろうとも陽光の力を宿せると言うだけでも、対鬼においてメリットは大きい。

 

(波紋の呼吸か……)

 

 玄弥はかなり乗り気だ。目の前の男、ジョナサン・ジョースターが短期間で築き上げた実績の数々は彼もよく知っている。お館様を始めとし、柱達、あの不死川実弥さえも彼には一目置いている。

 

 そんな彼が操る呼吸法だ。鬼の力を宿すしか手が無かった中、突如として告げられた朗報だった。使えるものなら是非使えるようになりたい。それならば、鬼の力に固執する必要はない。

 

(占めたッ! ゲンヤは波紋法に対して前向きだ! 今こそ、波紋法の素晴らしさを伝えねばッ!)

 

 ジョジョは使命感に燃えた! ジョジョは考えうる限りの波紋法のメリットを頑張って思い出した!

 

「水で波紋探知機を作り、鬼の居場所を察知できるぞ!」

「そりゃ、便利っすね」

 

「他にも波紋を応用すれば、水の上を走れるようになるッ!」

「み、水の上?」

 

「水分、油分を含んだ物なら全て武器になる!」

「引っこ抜いた髪が針みてーに!?」

 

「こうして関節を外して腕を伸ばすことも出来るようになるッ!」

「伸びたッ!?」

 

「空だって飛べる!」

「空!?」

 

「高熱を発して物を燃やす事だってできる!」

「火まで!?」

 

「生命エネルギーで容姿が若く保てる!」

「へー」

 

「一秒間に十回以上の呼吸ができるようになる!」

「に、人間だよな?」

 

「十分間息を吸い込んで、十分間息を吐くことも軽く出来るぞ!」

「人間だよな!?」

 

「骨折程度ならすぐに治せる!」

「人間だよなッ!!??」

 

「そうじゃ、極めればほんの一部、未来予知もできるぞい」

「み、未来予知?」

 

「お前さんは、鬼の力を使い続けると死ぬじゃろう」

「…………それ先に言えよッ!?」

 

「といった感じなんだけど、どうかな?」

「……」

 

 玄弥は、怒涛の説明に頭を抱えだした。

 

「お、俺……。何になっちまうんだ……」

「波紋使いじゃよ」

 

 不死川玄弥、厳かに波紋法へと入門ッ!

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

玄弥はツェペリ家の人達と共通点が多い。良くも悪くも……。

後、五感組で一番ツッコミ適性高い。

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