鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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協力

 炭治郎とジョジョは和巳の家を去った。和巳は、二人の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。

 

 二人は鬼狩りの旅に出た。鬼殺隊で調教された人語を解するカラス、鎹鴉(かすがいがらす)から鬼狩りの指令が届いたのだ。鬼は浅草にいるそうだ。

 

『次ハ東京府浅草ァ! 鬼ガ潜ンデイルトノ噂アリ!! カァアア!!』

『ウワァ!? ニホン、トリ、シャベルデスカ!?』

 

 たどたどしい日本語で驚くジョジョを思い出し、ついつい笑いそうになってしまった。笑ったら失礼なので頑張ってこらえた。喋る鳥と言えば、イギリスにはオウムがいるのだが、ここまで意思疎通ができる鳥は流石にいなかった。

 

 気を取り直し、指令を聞いてから、急ぎ足で現地に向かっている。

 

 二人は簡単な意思疎通ならすぐできるようになった。ジョジョは強くて優しいだけでなく、頭もすごく良かった。一緒に食事をしている間、炭治郎が身振り手振りで積極的に言葉の意味を説明しながら会話を繰り返した。そうすると、ジョジョは言葉をどんどん覚えていった。

 

 まだ教えていない言葉でも、いつの間にか意味を理解しているのには流石に驚いた。会話の雰囲気から汲み取っていたらしい。

 

「アナタハ、タンジロー」

「そう言う貴方は、ジョジョさんだ!」

 

 ようやく自己紹介まで漕ぎ着けた二人は、改めて名前を呼び合う。お互いかなりの速度で走っているのだが、どちらも基礎体力が非常に高いので全く問題ない。

 

 じょなさん じょおすたあ。それが彼の名前だ。略してジョジョと呼べば良いらしい。西洋ではよくあるあだ名なのだろうか。

 

(うん! じょなさん家のじょおすたあさん! ばっちり覚えたぞ!)

 

 遺憾ながら姓と名が思いっきり逆なのだが、その間違いを指摘できる者が誰もいなかった。

 

「ジョジョさんのこと、鬼殺隊の偉い人へ手紙を出したので、きっと協力してくれますよ」

「アリガトウ、タンジロー」

 

 炭治郎は和巳の家で、"西洋の鬼狩り、じょなさん・じょおすたあ"について鬼殺隊宛に手紙を書いた。鎹鴉に渡し、最寄の協力者か鬼殺隊の後処理担当部隊である(かくし)を通して、上司に届く手筈となっている。

 

「どういたしまして。浅草はまだ遠いです。たくさんお話しましょう!」

「ハイ! ヨロシクオネガイシマス!」

 

 走りながら会話をすることで足腰、肺、基礎体力が鍛えられ、ジョジョは言葉を覚え、炭治郎はすごく楽しい。一石三鳥である。海の向こうからやってきた友人が、喋れば喋るほど言葉が上達していくのは、自分のことのように嬉しかった。

 

「ジョジョさん、服、綺麗になりましたね」

「ハモンノチカラ、ナラ、デキマス」

「波紋の呼吸、仙道とも言うんだっけ。すごいなあ。鬼を倒すだけじゃなく、ぼろぼろの服を新品みたいに変えるなんて」

「セナカノ、アナ、ソノママデスケドネ」

 

 ジョジョの服は、汚れを落とし、ほつれに波紋を流し込んでしまえば、比較的綺麗な状態になった。だが、背中に大きな穴がいくつも開いていた為、和巳の家で一番大きな羽織を譲り受けて穴を覆い隠した。紺色で、菱形の模様が入った上品な代物だ。

 

 余談だが、本当は和巳の家で服を用意する筈だった。残念ながら、彼に合う大きさの服が、一つもなかったのだ。どんな和装も、ジョナサンの手にかかればピチピチスーツに大変身である。

 

「でも、おかげで羽織が貰えました。よく似合ってますよ! ところで、その穴は、どうして開いたんですか?」

「アナデスカ? フネ、ドドーンカラ、オクサン、アカンボウ、マモッタデス。ボクノオクサン、エリナイイマス」

「ええ!?」

 

 "フネ、ドドーン"というのは、間違いなく船が爆発したということだろう。爆発から躊躇なく誰かを庇うのは、この人ならそうするだろうという確信があった。とは言え、あんなに大きな穴が開いてよく無事だったものだ。

 

「フネノヒト、ミンナ"オニ"ニナッタ。ダカラボク、フネ、ドドーンシテ、エリナ、ニゲマシタ。イキテルト、ウレシイデス。オナカニ、コドモ、イルカラ」

「……っ!」

 

 炭治郎は言葉を失う。ジョジョが巻き込まれた事件の凄絶さに。西洋の鬼、"ぞんび"は、人を襲うと犠牲者も"ぞんび"になるそうだ。彼は夥しい量の亡者から、たった一人で奥さんと赤ん坊を守ったのだ。

 

「……赤ん坊も、ジョジョさんのお子さんですか?」

「イイエ、アカンボウノオカアサンガ……。ダカラ、タスケマシタ」

「そうだったんですか……」

「ハイ」

「ごめんなさい、ジョジョさん。悲しい話をさせてしまって……」

「イイデス。タンジロー、ダイジョウブ。アナタニモ、オボエタカッタ」

 

 恐らく「炭治郎にも覚えてほしかった」と言いたいのだろう。炭治郎は、顔も名も知らぬ、海の向こうの犠牲者を悼んだ。

 

「ジョジョさん」

「ハイ」

「えりなさんはきっと無事です。その赤ん坊と、お子さんと一緒に、貴方のことを想っていますよ」

「……」

「ジョジョさんが命がけで庇ったんだ! そうに決まっています! だから、必ずえりなさんのところへ帰りましょう!」

「……ハイ!」

 

 また一つ、ジョジョのことが理解できた。炭治郎は、絶対に家族と再会させようと決意する。こんなにも優しい人に、これ以上辛い思いをさせたくない。心からそう思った。

 

「タンジロー、ボクモ、アナタニ、シツモンアリマス」

「勿論! 何が知りたいですか?」

 

 炭治郎が少し気落ちしているのを見て、話の主導権を握った。ジョジョなりの優しさであった。無論、炭治郎への純粋な興味もあるが。

 

「……オコラナイ?」

「絶対怒りません」

 

 炭治郎は、断言する。

 

「セナカノハコ、()()()ガハイッテル。ハモン、ワカリマス。オシエテクダサイ」

「……! 気づいてたんですか。……鬼であることも?」

 

 ジョジョは静かに頷いた。

 

 炭治郎は、鬼だと分かった上で"家族"と言ってくれたことがすごく嬉しかった。禰豆子のことを話すのに躊躇はなかった。彼に話したとしても、禰豆子に危険が及ぶとはこれっぽっちも思っていない。

 

 彼の善性は、匂いでとっくに分かり切っている。ここまで清らかな匂いは、家族以来だ。仮令(たとえ)匂いで分からなくとも、炭治郎はジョジョを信じていただろう。人を思い、恐怖に克ち、脅威に抗い、守る。彼の在り方は、炭治郎が理想とする"長男"そのものなのだから。

 

「禰豆子と言います。妹です。太陽が出てる間は、ずっと箱の中で眠っています。妹は鬼になってしまったけど、人を食べたことは決してありません」

「……」

 

 ジョジョは、炭治郎の話を無言で聞いている。表情は真剣そのものだ。

 

「俺の家は、家族が鬼舞辻無惨っていう鬼に殺されました。助かったのは、俺と、鬼になってしまった禰豆子だけです。だから、俺の家族は、もう禰豆子一人しかいません。俺は、どんなことになっても、禰豆子を元に戻してやりたいんです」

 

 炭治郎は話した。自分の仇を。そして、日本に蔓延る鬼共を生み出す、全ての元凶であることを。

 

 鬼舞辻無惨。

 

 もし、海を渡ってしまったら、ジョジョの故郷にも甚大な被害が及ぶだろう。無惨は必ず討ち果たさなければならない。家族のためにも、人々のためにも。

 

「……」

「オシエテクレテ、アリガトウ。タンジロー」

「ジョジョさん……」

 

 炭治郎は見た。鬼と対峙した時に見た、ジョジョの目に宿る、迷いなき覚悟を。

 

「ヤクソク、シマス。イッショニ、ネズコ、ゼッタイ、ゼッタイマモリマス! キブツジ・ムザン。ゼッタイ、タオシマス!」

 

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

炭治郎も、ちょっとだけ英語が分かるようになりました
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