鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer   作:ドM

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仕事の合間を縫って投稿。短めだけど許してクレメンス……。


自滅の刃

珠世(たまよ)と申します。その子は愈史郎(ゆしろう)

 

 舞い踊る花の嵐の中、ジョジョと炭治郎の前に現れた女性はそう名乗った。

 

「一つだけお聞かせください。そのお方をどのように治療されるのですか?」

「鬼ノ血ヲ、ボクノ波紋ノ(チカラ)デ抽出シマス」

「!?」

 

 ジョジョの言葉に、珠世は口元を押さえてひどく驚いた表情を浮かべる。慌てたような、それでいて喜色のある顔だ。愈史郎は、珠世の顔を見て幸せそうにしている。すると珠世は、おもむろに着物の裾からガラス製の試験管を取り出した。

 

「でしたら、この中に抽出した血液を入れていただけませんか?」

「ヤッテミマス」

 

 ジョジョは即座に承諾し、鬼化した青年の治療を再開した。フゥと軽く息を吐き出し、青年の横腹を光る腕でグッと握り締める。そこから、両手の人差し指と中指で、横腹から横胸、肩、首を沿って傷のついたうなじまで移動する。

 

「シッ!」

 

 両側からうなじを強く押さえた。すると、傷口から少量の血液が綺麗な放物線を描いて飛び出す。ジョジョの指に誘導されるような軌跡で、血液は珠世の持つ試験管へ一滴残らず正確に入っていった。

 

 だが、試験管に入っている血液は、飛び出した量よりも明らかに減っている。ジョジョは波紋の力加減に注意はしたものの、大半が消滅してしまったのだ。

 

「スミマセン、ホンノチョッピリシカ……」

「いえ、充分です」

 

 血を抽出された青年は、気を失っている。目を閉じる直前、目の色が白に戻っているのを炭治郎は確認した。

 

「良かった……。よくやった、偉いぞ禰豆子」

 

 穏やかな表情で寝息を立てている姿を見て安心した炭治郎は青年の口から頭巾を取り出した。涎まみれになっていたが、ジョジョがすぐさま波紋の力で頭巾の水分を地に捨ててくれた。気遣いは紳士の嗜みである。

 

 炭治郎は禰豆子の頭を撫でた。禰豆子は心なしかドヤ顔だ。

 

 最終的に、試験管の中には親指の先程の血液が残った。珠世は、試験管にコルクで栓をし、入った血液に目線を合わせ軽く揺らす。試験管を裾の中にしまうと、珠世は深々と頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

「ドウイタシマシテ」

「あなた達は、鬼となったものにも"人"という言葉を使ってくださるのですね。そして、彼を助け出してくれた」

「勿論デス」

 

 ジョジョの言葉に、炭治郎はうんうんと頷く。仮令(たとえ)鬼であろうとも、人の心が残っている限り、それは人なのである。ジョジョと炭治郎の共通認識だ。無論、目の前にいる()()()()も例外ではない

 

「ならば私もあなたを手助けしましょう。貴方たちは既にお気づきのようですが、私達は鬼でもあり、医者でもあります。そして、あの男、鬼舞辻を抹殺したいと思っている」

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 ジョジョと竈門兄妹は、珠世の血鬼術が効力を失う前に、騒ぎのあった場所を離れた。青年夫婦は珠世達の預かりとなっている。後ほど、愈史郎と合流して珠世の拠点に案内してもらう予定だ。血鬼術で目くらましの術を掛けているため、三人だけではたどり着けないらしい。

 

 珠世たちと会う前に、ジョジョはうどん屋の店主にどんぶりを返却した。勿論、返却する前に残ったツユを一滴残らず飲み干した。旨かった。

 

 うどんを食べ損ねていた炭治郎と、うどんを無惨に持っていかれたジョジョは、改めて御馳走になってからうどん屋を去ることになった。

 

 食べることができない禰豆子の分も出されてしまったので、ジョジョと炭治郎は半分こして食べた。ジョジョが、えらくうどんを気に入っていたので分けたのだ。すごく旨かった。

 

「麺ヲ(スス)ッテモイイダナンテ、面白イマナーダネ」

「え、啜らずにどうやって食べるんですか?」

「コウ、フォークデクルクル巻イテ……」

「へぇー、槍で巻くなんて器用だな」

「……槍?」

 

 夜は続く。木製の日本家屋が立ち並ぶ住宅街を歩き、目的地に到着した。建物の傍に愈史郎がいる。無事に合流できた。

 

 しかし、愈史郎は不機嫌な表情でこちらを眺めながら、禰豆子を指差した。

 

「鬼じゃないかその女は、しかも"醜女"だ」

 

 炭治郎は、とぼけたような表情で愈史郎の一言を反芻する。言葉の意味は分かるが、言っている意味が分からなかったのだ。

 

(しこめ……。しこめ? 醜いってことか? 誰が?)

「……タンジロー、"シコメ"ッテナンダイ?」

「えーっと、可愛くない女性って意味ですが……」

 

 そう言ったところで、二人は驚愕の表情で顔を見合わせた。

 

「醜女のはずがないだろう!! よく見てみろ! この顔立ちを! 町でも評判の美人だったぞ禰豆子は!」

「ソウダヨ! ボクハコンナニ綺麗ナ女ノ子、エリナシカ知ラナイッ!! 年頃ノ女ノ子ニ、ナンテコトヲ言ウンダッ!!」

 

 英国紳士を目指すジョジョにとって、到底看過できない発言だ。炭治郎と、さらっと惚気たジョジョは怒り心頭である。愈史郎は構わず目的地を目指し、三人もその後に続くが、愈史郎への抗議は終わらない。

 

「女ノ子ニソンナコトバカリ言ッテイルト! 言ワレテナイ女性ダッテ傷ツクコトガアルンダゾ! 君ノ愛スル人ガ悲シンダラ、君ダッテ嫌ダロウ!?」

「ジョジョさんの言う通りだぞ! そうなったら()()()()()に嫌われるかもしれないじゃないか!! だいたい醜女は違うだろ絶対!」

「!」

 

 炭治郎の一言は、逆に愈史郎の逆鱗に触れた! 

 

()()()はそんなことで俺を嫌わないッ!」

 

 

 ──静寂。

 

 

「え?」

 

 どこかから鎹鴉の鳴き声が聞こえた。

 

「……」

「……」

「ムー」

「……?」

 

 炭治郎は眉間にしわを寄せながら首を傾げた。何故そこで珠世の名が出たのか分からなかったからだ。炭治郎が苦しんでいると勘違いした禰豆子が、炭治郎の頭を撫でた。さっきのお返しである。

 

「……ジョジョさん、なんで急に珠世さんのことが?」

 

 撫でられたままの炭治郎はジョジョに尋ねた。

 

 ジョジョは、苦笑いしながら首を横に振った。

 

「ソットシテアゲルンダヨ、タンジロー」

「?」

「うう……」

 

 愈史郎は、顔を赤くし大人しくなった。しかし拠点を目指すその足は急加速している。

 

 炭治郎は、よく分からないまま、珠世の拠点を目指すこととなった。

 




大正の奇妙なコソコソ噂話

サブタイトルについてる"Demon Slayer"は、海外版"鬼滅の刃"のタイトルだぞ!

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