鬼滅の波紋疾走 JOJO'S BIZARRE ADVENTURE PartEX Demon Slayer 作:ドM
炭治郎は息を荒げ、一歩後ずさりをする。あの二人の鬼も相当な手練れなのに、更にもう一人、凄まじい気配を纏う鬼が現れたのだ。気圧されてしまう。
「あのエゲレス人は俺がやる。お前らは耳飾りの方と逃れ者共をやれ」
ジョジョ達を睨みつけたまま
「キャハハッ! 下弦の参とは、お前もついてないのう! エゲレス人!」
「ははは、それはもう残酷に殺されようぞ」
(ジョジョさん……!)
あの恐ろしき鬼の狙いはジョジョだ。
「イイダロウ、貴様ハボクガ相手ダ」
ジョジョは前に一歩進み出る。その闘志には、寸分の揺るぎも無い。病葉を真っすぐに見据えている。
「改めて名乗ろう。俺は病葉。名はなんだ、エゲレス人」
「ジョナサン」
姓を名乗らなかったのは、身内に害が及ばないようにするためである。
(ジョジョさんも、この重圧を感じている筈。それなのに貴方は……)
炭治郎は、『勇気』を目の当たりにした。恐怖を認め、
「ジョナサン……。ついてこい」
病葉が敷地を囲う壁に飛び乗った。
「!」
「俺を捕らえてみろ。さもなくば、この街の人間を縊り殺してくれる」
病葉はそう言って舌なめずりすると、壁の向こう側へ消えた。
「クッ、分断スルツモリカ!」
あの鬼は街の人間を狙うと言った。追うしかない。まだ二人の鬼が炭治郎達を狙っている。これで、別行動を取らざるを得なくなった。
「タンジロー」
去り際に、炭治郎の方を見る。
「頼ンダヨ」
「!」
そう言って、ジョジョは鬼を追っていった。
「
珠世が病葉とジョジョが消えた先へと声を出す。ジョジョの意を汲んで、呼び名はジョースターからジョナサンに変えている。
「……」
炭治郎は、ジョジョの言葉を思い返す。あの人は託したのだ。すぐに理解できた。炭治郎なら朱紗丸と矢琶羽を相手に戦えると、心から信じていた。信じてくれた。自分はあの十二鬼月相手に身が竦んでいたと言うのに、一寸も疑っていない匂いだった。
「……はいっ!」
返事がジョジョの耳に届いたかは分からない。これは誓いの言葉だ。
炭治郎の心に『勇気』が宿る。体の震えはピタリと止まった。怯えている場合ではない!
(そうだ、奮い立つんだ! ジョジョさんはあんなにも恐ろしい鬼を相手に敢然と立ち向かおうとしている! そんな人が、俺にこの場所を任せたんだ。奮い立たねばどうする! もうすぐ禰豆子は人間に戻れるんだ! やるんだ、炭治郎ッ!)
士気が漲る炭治郎の横に、夫婦の避難を終えた禰豆子が戻ってきた。二人の鬼を相手に爪を立て、鋭く睨みつける。
もう大丈夫だ。戦える。炭治郎は黒い日輪刀を構え、朱紗丸と矢琶羽を真っすぐ見据えた。
・ ・ ・ ・ ・
病葉は、街を飛び、屋根を飛び、樹を飛び越え疾走し、後方を追走するジョナサンの様子を窺う。
やつを追わせているのには、いくつかの狙いがあった。
一つは、仲間と分断すること。朱紗丸と矢琶羽で総がかりすると、ジョナサンに二人が瞬殺されてしまう可能性があったからだ。気配から、ジョナサン以外は大したことがないと判断し、二人に任せた。
もう一つは、ジョナサンの能力を探ること。幸い朱紗丸のおかげで、能力が垣間見えた。朱紗丸の血鬼術を溶かしたあの技だ。あれこそが能力の片鱗だろう。
だが、その片鱗ですら鬼にとって絶望を叩きつけられる代物だ。自らも最強と信じて疑わない鬼の首魁ですら、手傷を負わせた能力。
(無惨様は忌々しき太陽の力を操ると仰っていたが、そういうことか。詳細を尋ねたら何故か半殺しにされてしまったため要領を得なかったが……。とにかくヤツは、体から太陽の力を放出することができるようだな。なんて恐ろしい……。しかも、それを差し引いても……)
ジョナサンの気配を探れば探る程悟ってしまう。
上司から更に血を分け与えられのたうち回る程苦しんだが、その甲斐あって、今の自分は下弦の壱、やもすれば上弦にさえ届きうるという絶対的自信があった。それなのに。
(勝てる気がしない……)
とんでもない化け物だ。
相手の気配を探る能力も鋭敏になった結果、そこから見えた相手は、止まることを知らぬ重機関車のようだった。生身の人間と重機関車。それぐらいの差がある。自分は鬼だと言うのに、追われる側とはどういうことか。
追わねば人間を殺すと言ったのはハッタリだ。あんなのに追われた状態で、人間に構っている暇なんざどこにもない。士気を下げさせないために振舞った自分を褒めてやりたいぐらいだ。
(冷静になれ病葉……。このまま逃げ帰ったところで、無惨様に殺されるだけだ)
前門のジョナサン。後門の無惨。せっかく十二鬼月になれたのに、なんたる仕打ちだろう。
ジョナサンから更に距離を取った。あの伸びる腕で殴られでもしたらと思うとぞっとする。
(なるべく、ヤツの能力を探り出そう。血鬼術を使ったところで無効化されてしまうから、実質不意が撃てる一発しか狙えない。それで仕留めきれねば、ヤツの力、速さ、技術、なんだっていい、探るだけ探ってから帰還する。情報を得れば、無惨様もお許し下さるかもしれない……。最早それに賭けるしかない!)
病葉は、極めて後ろ向きな決意をする! 命を落とさない為に!
『鬼舞辻は配下の鬼と視界が共有できます! 気を付けてください!』
珠世の言葉を思い出す。あの黄色い着物の鬼は、自分の様子をしきりに窺いながら距離を取り続けている。非常に素早く、相手が逃げに徹していると追いつけそうにない。
(間違いない。あの鬼の狙いは、ぼくに波紋の力を使わせて、ムザンに見せることだ)
手を打てば打つだけ、無惨は対策を取ってくる筈だ。そうなれば、いずれ相対するであろう更なる強敵相手に苦戦は免れないだろう。
(それなら、ムザン相手にやったのと同じようにすればいい。相手は逃げに徹している。だが、距離を取れば誰かが犠牲になる! 何かすぐに拾えて投擲できるものを!)
ジョジョは、相手を追いかけながら、手ごろなものがないか探し出した。
病葉は、長屋の屋根を駆け抜ける。
(ジョナサン。何を企んでいる……?)
病葉と同じく、屋根を走りながら周囲を見ている。何かを探している様子だ。
「なに?」
ジョナサンは、走りながら足元を見るや、突然、駆け抜け様に屋根の瓦を掬い取るよう何枚も引っぺがした。一枚30㎝×30㎝程の大きさだろうか。人間相手ならそれなりの威力にはなるだろうが、逃げに徹する自分相手ではちょっとした足止め程度だ。
(馬鹿な、屋根瓦ごときで……!?)
コオオオオオオオオオオオ
朱紗丸の毬を殴り飛ばした時の奇妙な呼吸を見せた。
(腕が光っている。あれは毬を弾いた時の……。瓦がバチバチと。まずいっ!?)
気配が告げる。あのバチバチした屋根瓦に当たったら自分は死ぬ。確実に消し飛ぶ。冷や汗を流していると、病葉目掛け屋根瓦が超高速ですっ飛んできた!
シュゴォーッ!!
「うおわぁぁぁぁぁ!?」
首を大きく動かし辛うじて避けた。だが、ジョナサンは屋根瓦を何枚も脇に抱えている。まだまだ弾は尽きない。
(こ、これだ! 無惨様に手傷を負わせた攻撃! あいつは物に太陽の力を入れることもできるのか! 無惨様も、何らかの投擲物で手ひどくやられたんだ!!)
うどんである。
(避けろ! 避けろ! 避けねばおしまいだ!!)
風を裂く音と共に病葉のスレスレを屋根瓦がすっ飛んでいく。かすっただけで致命傷になりかねぬ弾丸が、何枚も何枚も飛んでくる。
投げる! 避ける! 投げる! 避ける! その動作を幾度も繰り返す。
幸い、強化されていたおかげでかわすだけならどうにかなった。
(屋根はダメだ! やつに弾を与えることになる! 平地だ、平地を走れ!)
これはたまらぬと言った様子で病葉は屋根を降り、逃走経路を探す。
(入り組んだ隙間……。よし、あそこから!)
長屋の隙間を駆け抜け、幾度も経路を変えて死角を作り出し、ついにジョナサンを撒くことに成功する。
病葉は、通りの裏、家と家の間にある狭い隙間で息を落ち着かせた。鬼なので息切れすることは早々ないが、精神的な問題である。ここで、改めて作戦を練らねばならない。この状況を打開する作戦を。
(ふぅ……。これで暫くは……!?)
一息吐こうとしたのも束の間、迷いのない足音がこちらに近づいてくる。
「見ツケタッ!」
「ぎゃあああああ!?」
隙間からジョナサンが顔を覗かせている。その片手には、水が入った木桶が担がれていた。
(なんでだ! なんでバレた!? 確かに気配は殺した筈……。来るなぁ!!)
鬼ごっこ再開ッ!
(何故だか分からないが、あいつは俺の居場所が分かるらしい! 考えろ、どこか良い場所は……。桜並木! よし、あそこなら!)
季節は春。並木道には桜が咲いていた。とても花見をする余裕はないが。
病葉とジョナサンは、左右に桜の並ぶ通り道を爆走する。瓦も尽きた。これで一安心!
(占めたぞ! あのジョナサン、どこか苦しそうな顔をしている! さっきの屋根瓦で力を消耗したに違いない!! さあ、ここなら投げるものも……! なんだと!?)
ジョナサンは、地面に散らばった桜の花びらを掬い取ると、またあの奇妙な呼吸を見せた!
(馬鹿な! あんなもので……! あ、あれも当たったら死ぬ!?)
鋭く硬化した大量の花びらが、病葉目掛けて飛んできた! 鋭い手裏剣の如く、花びらとは思えぬ速度で病葉を仕留めにかかった。
(ふざけんな! なんでもありかよこいつ!! 弾が余計に増えちまった!!)
大量の
懸命に避けようとするも、花びらの一つが病葉の足に直撃した。
ドシュウッ!!
「うぎゃぁーッ!!」
こんなバカなことがあってたまるか。桜並木に逃げたのが、こんな形で裏目になるなどあっていいわけがない。
「ぐあぁぁぁぁあ! 足がっ! 足がぁ! ぐぅぅ、さ、再生しない……!」
花びらに込められた太陽の力が、病葉の足を蝕む。再生どころか、むしろ足はドンドン溶けていく。溶けていく勢いが止まらない。もう助からない。背後から、巨大な影が迫る。死の足音だ。
「くぅ……。こうなったら、俺の血鬼術で!!」
病葉は振り返り、最後の切り札、血鬼術を発動しようとする。全身に太陽の毒が回り切る前に、せめて一矢報いるのだ。
ガシッ!!
ジョナサンは、急接近して病葉を両側からガッチリと掴んだ。
「……俺の血鬼術が、発動しない!!」
予想はしていたものの、病葉は絶望する。心が完全に折れる音がした。
この太陽の力で掴まれただけでも、血鬼術が無効化される。つまり、接近されたら完全におしまいだ。仮に、発動できるとしても、余程力のある血鬼術でないと無理だろう。しかし、病葉は下弦とは言え十二鬼月の一角だ。しかも血を与えられて強化されている状態であるにもかかわらず、血鬼術が発動できない。
つまり、下弦以下では話にならないということだ。
このジョナサンは余りにも強すぎる。太陽の力。何らかの方法による探知能力。血鬼術の無効化。本人の強さ。鬼達にとって最強最悪の天敵と言っても過言ではないだろう。これは最早、鬼舞辻無惨すら危うい。
そう分かったところで、もはや手遅れだった。
病葉が己の死期を悟っていると、ジョナサンが金属製の溝が入ったナイフのようなものを腕に刺してきた。溝の中に血液が入っていく。血を抜き取られているのは分かったが、目的が分からなかった。
「コレデ終ワリダ……。安ラカニ眠レ」
「あっ」
ブッショォッ
体に直接、太陽の力が流し込まれた。急速に分解されていく。男の言う通り、もう終わりだ。
(ああ……。せっかくたくさんの人間を喰って、ここまで上り詰めたのに……。あれ、でもなんか、あんまり痛くねぇや。あったけぇ……)
何故だか分からないが、最早いつの記憶かも分からぬ父親の姿を思い出す。
ドロリン
病葉は、不思議と暖かな気持ちで最期を迎えた。
・ ・ ・ ・ ・
無限城。襖、畳、階段が上下左右バラバラに配置された無惨の居城だ。その城の傍らに鬼舞辻無惨がいた。脇には、分厚い本が積み上げられている。
再生できず、半分溶けかかった顔に夥しい量の血管を浮かび上がらせる。怒りの印だ。不快感を隠しきれぬ表情のまま、視界の共有が解除された。病葉が死んだのだ。
「病葉め……」
わざわざ血を与えてやった下弦の参は、逃げ続けた挙句に大した情報も得られず死んだ。逃げてる途中で頭を吹っ飛ばして殺さなかっただけでも、己の心の広さがうかがい知れよう。
だが、分かったこともあった。
(名はジョナサン。やはりエゲレス人か。奴の能力……。探知能力の上、血鬼術を無力化するだと……? 太陽の力に似ているが故か。体の治りが遅いのも……。不愉快極まる。一刻も早く始末せねば)
無惨の脳裏をよぎる、あの時の耳飾りの侍のように、寿命が尽きるまで……。
(海外に同じような能力者がいるかもしれない。まずは、下弦共を捨て駒に、奴の能力を解明する)
下弦の不甲斐なさは一先ず隅に置くことにした。少しだが情報が得られたのだ。この要領であのジョナサンに能力を使わせれば良いだろう。
下弦を何人か捨て駒に、上弦で仕留める。無惨が考えた作戦はこうだ。
今までの無惨には無い発想だった。絶対に認めたくなかったが、あのジョナサンを恐れていた。
あいつは危険過ぎる。与えられた屈辱だけでなかった。あの強さと能力も、総合すれば耳飾りの侍に匹敵する。
(あの時もそうだった……。ええいっ、忌々しいッ! しかも、英国について色々調べてみたが、得られる情報は何もなかった……。おのれぇ! ジョナサン!)
無惨は、怒りに身を任せるまま仮宿の一つに用意させた本を破り捨てた。
ちぎれたページには筆記体の英文が刻まれている。 英国の歴史が記された書物だ。
しかし、波紋の力の起源はチベット。最初に見つかった石仮面は古代アステカ文明の物。波紋の正体が分かる道は遠かった。
大正の奇妙なコソコソ噂話
竈門兄妹 with 珠世&愈史郎 VS 朱紗丸&矢琶羽戦はだいたい原作通りだよ!
鬼滅の刃3巻かアニメ版の9話と10話を見よう!
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