フレイヤの一世一代とも言える告白を少年冒険者は至極あっさりと丁寧な言葉づかいで断った。
 美と豊穣を司る女神を自負する彼女も少なからず、自尊心が傷つき、傷心に陥ったことに驚き、割りと本気でショックを受け――自分でも驚くほど――笑顔の作り方を忘れてしまうほどに。
 ――それが永遠ともいえる時を過ごす神にとってほんの僅かな傷でしかないかもしれない。だが、そのままでいいはずがない。すぐさま眷族達を集めて彼らに問い掛けた。女神の威厳を総動員して高らかに。

 あなた達に問うわ。私が受けた――この屈辱、恥辱を雪ぐ為に必要な手段が何かを。

 都市最強派閥【フレイヤ・ファミリア】の団員達はそれぞれの得物を掲げて奮い立つ。
 眷族達の興奮とは裏腹にフレイヤはそっと手を下げる。それだけで彼らはピタリと鎮まった。ただ一振りの仕草で第一級冒険者達が集う場が凪いだのだ。
 暴力的な方法では【ファミリア】の沽券にかかわるじゃない、と面白くなさそうな声で女神は言う。
 あくまで平和的に。けれども、傷心が癒える方法でなければ決して満足しない。そこは忘れないでね、と愛すべき子供達に告げた。
 いつもは曖昧に、面白おかしく過ごしてきた女神フレイヤが本気になった。その気配を感じた眷族達は震え上がる。それは恐怖か、歓喜か。

 これはダンジョンに潜っている場合じゃなく、本気でヤベー事になってしまった物語。
 ――【ベルくん逃げて(ラビット・ギルティ)】――

Aliis si licet,tibi non licet.
  01 灰被り()
  02 円卓の間()
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