変な天然発動する栞子ちゃん可愛い。
「ねーしお子、今日ってこの後何か予定ある?」
練習後、かすみが栞子へと話しかけた。ライブイベントが近いので、調整の為練習は早めに切り上げとなっている。故にまだ外は明るい。
「今日ですか? 授業の予習復習と、ライブでのMCをイメージトレーニングしようかと思っています」
「真面目かっ!」
「何かいけなかったでしょうか……」
「……いや、いい事なんだけどさ……。そうじゃなくて、生徒会の用事とかは?」
「マルチタスクでは集中力が散漫になってしまい、結局は中途半端に終わってしまうのでどちらかに絞るようにしています」
「じゃあ今日はもう帰るだけなんだ」
「そうですね。それが何か?」
「じゃあ一緒に帰ろうよ!」
「……? かすみさんのご自宅とは、方向が違うと思いますが……どちらかが遠回りするという事ですか? 流石に非効率では?」
「そうじゃなくて! 何で分かんないかな……。しお子って頭いいのにどっか抜けてるよね」
「おバカ王の称号を持つかすみさんが言える言葉ではないのでは?」
「何でしお子がそれ知ってるの!」
「私は新参者ですから。より皆さんの事を知っておきたいのです」
「そういう真面目な返しされると困るんだけど……。もういいや。──寄り道して帰ろうよ!」
「寄り道? 参考書でも探しているのですかり それなら図書室に行けば──」
「もういいから! クレープ食べに行くから!」
「えっ、かすみさん?」
しびれを切らしたかすみは、栞子の手を取って部室を飛び出した。
お台場のショッピングモール手前で販売しているクレープ屋台へやって来た二人は、
「ん〜今日はどうしよっかな〜。たまには無難にいちごメインにトッピング盛り盛りにしちゃう?」
「あの、かすみさん? ここは一体……?」
「何って、クレープ屋さんの屋台だけど? ここはトッピングを自分で選べるから好きなんだよね〜。愛先輩に教えてもらったんだ〜」
トッピングを選びながら、かすみは説明。
「よし、決めた! ──フルーツはいちごで、チョコクリームベースに生クリームとベリーミックス追加! あと上に抹茶アイスでお願いします!」
注文したかすみは代金を払うと後ろへ振り返る。
「で、しお子はどうする?」
「どうすると言われましても……どうすれば良いのでしょう……?」
「そのまんま訊かれても……。自分が食べたいクレープ頼めばいいの」
栞子は忙しなく指を重ね直しながら、
「……その、恥ずかしながら、クレープを食べた事がなくて……。イメージが湧いてこないんです……」
「マジか。え、学校帰りに寄り道してお茶したりスイーツ食べた事ないの?」
「はい」
「マジか」
「申し訳ありません……」
「いやっ、謝る必要ないし! しお子がその分凄い努力してるの知ってるし!」
「かすみさん……ありがとうございます」
微笑んで目を細めた栞子は、それから小さく頭を下げる。
「私は寄り道とクレープに関しては無知な初心者です。ですので恐縮ですが、かすみさんが私のクレープを選んでいただけませんか?」
「クレープの初心者とか初めて聞いたんだけど……まあいいや。じゃあしお子の初クレープ、かすみんがとっておきを選んであげる!」
「お願いします!」
「じゃあ……って、何してんのしお子?」
栞子が筆記用具を取り出したのを見て、かすみは奇異の目線を向ける。
「? 次にクレープを食べる時の為にメモを取るだけです。毎度誰かの手を煩わせる訳にはいきませんから」
「真面目かっ!」
適当なベンチに腰を下ろした二人は、揃ってクレープにかぶりつく。
栞子のクレープは、多種なフルーツをふんだんにトッピングした生クリーム少なめの品だった。
「生クリームって美味しいけど、沢山食べると胸焼けしちゃうし多すぎると食べづらいんだよね〜。落としちゃった事あるし。……あと何気にカロリーやばい。──だから最初は、クレープそのものを味わえる組み合わせにしたの!」
「なるほど……! 今まで機会がなく敬遠しがちでしたが、奥の深い食べ物なのですね、クレープ……!」
手元のスイーツを見下ろしながら、その瞳を輝かせる栞子。
「そんな真面目に考えなくていいんだってば。しお子が思い浮かべる、『俗っぽい食べ物』だよ?」
「確かに以前の私なら、クレープなど見向きもしなかったでしょう。人生において、食べなくても死ぬ訳じゃありませんし」
「いちいち例えが重たいんですけど……」
「ですが、それでは未体験のまま終わってしまう。スクールアイドル活動は、私にとって未知の世界。三船栞子というスクールアイドル像を魅せる為には、今までに無い体験がきっと必要なんです」
「クレープも?」
「クレープもです」
自分のクレープへかぶりついたかすみは口元のクリームを拭うと、やれやれと肩をすくめる。
「しお子のそういう真面目さは、素なんだろうねー」
「え、何か問題がありますか……?」
「ないない。かすみんはうんうん頭を悩ませる事ってあんまりしないけど、そうやって考えて考えて答え出すのがしお子のやり方なんだからいいんじゃない?」
「かすみさん……」
「ま、スクールアイドルに関してはかすみんの方が先輩なんだし、困ったらいつでも相談してよね! しお子がもっとかわい〜くなれるアドバイスしてあげちゃうから!」
「ありがとうございます! 頼りになります!」
「た、頼りになる……。うふふふ〜、そうそうそういう言葉が聞きたかったの!」
上機嫌なかすみは、自分の手のクレープを栞子へと差し出す。
「特別に、かすみんスペシャル一口あげる!」
「え、でも……」
「いいのいいの! 『先輩』が『後輩』の面倒見るのは当然だもん!」
「今は取り皿がありませんし、どうやって分けたらいいのか……」
「そういうとこは順応してよ!」
──後日。
「──かすみさん」
「ん、しお子どうしたの?」
「一つ、お伺いしたい事が……」
「おおっ、モチロン! このパーフェクトかすみんが、何でも答えちゃうよ!」
「ありがとうございます! ──カスタードとチョコレートのダブルクリームにバナナかイチゴ、トリプルベリーのトッピングとキャラメルソースかメープルシロップで派手さ豪華さ、白玉あずききなこ抹茶ソースにバニラアイスでチョコレートソースがけの和洋折衷、生クリームとチョコレートクリームをガトーショコラかチョコレートアイスで統一感、どれがいいと思いますか?」
「…………」
「かすみさん?」
「かすみんより詳しくなってる!」