すべからく全て不慮の事故です   作:カナーさん

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「 」




 

 

 

 

 


 

 

「黒霧さんホットミルクハチミツ入りをひとつ、それとポッキーをお願いします」

 

 正座しながら丁寧に注文をする少年。手に持っているのは今週のジャンプ。

 

「ここはお前の自宅じゃねぇんだぞ蛾々丸」

 

「いいじゃないですか私とあなたの仲でしょう。自宅のように使っても、とくに黒霧さんから文句は聞いてないですし」

 

「…主は俺だぞ……」

 

二人のじゃれ合いを黒霧は内心ヒヤヒヤしながら見守っていた。

少年の方はとくに気にしていないが弔の方は因縁がある。…とはいえ因縁も長年の付き合いである程度折り合いが出来たのか、今では隙をついて個性を使う事も格段に減った。先生の努力の結果である。

 

とはいえ、それもそうであろう。

体が崩壊していくのに静止も命乞いもどちらの声もあげず、掴んでいる手に一言「離せよ」。

その覇気にやられたのかその時はすぐに手を離したのはとても賢い判断だった。なんせ被害を受けたのは黒霧だったのだから。

そして、そんな賢い選択をずっと続けられる訳なく、予測可能回避不可能。つまりはそういうことだ。

 

勿論フラストレーションは溜まるだろうが定期的に少年を崩壊させることで落ち着いている。その傷もいつの間にかに消えているのだが弔はそれで充分であった。

 

「そういえば死柄木弔、彼にあの話はしたのですか?先生から彼は控えるよう指示がありましたが」

 

 少年はその言葉に顔を傾ける。

 

「…餓々丸、お前雄英って知ってるよな。今度そこに襲撃しにいく」

 

「急にピクニック行く、みたいに言われましたね。知ってますし、行くのは構いませんよ。こんな所に居座ってますが私も学生なのでね」

 

「は?お前まだそんなごっこ遊びしてたのか。よく飽きないな」

 

この時、弔と黒霧は同じことを考えていた。

 

「学校は楽しい所なのですから、飽きることなんてありませんよ」

 

それはそうだろう。嫌なモノは全て他人に押しつける彼なればどんな環境だって楽しみさえ見つければパラダイスなのだから。

 

 

個性【不慮の事故(エンカウンター)

能力 受けたダメージを他人に押しつける

 

出来るのはそれだけの汎用性ない個性だが一点に特化しているとも取れる。とはいえその一点があまりにも凄まじい。

 

 

「襲撃は構いません、が顔はどうしましょう。最後の月牙天衝みたいに覆いますか?」

 

「そこは任せる。欲しいなら先生に頼んでくれ。とにかく伝えたぞ?ちゃんと来いよ」

 

「わかりました。心配されなくても授業をサボることは日常なので」

 

 


 

 

「と言いましたが昼飯も食わずに呼ばれるとは思っていませんでしたよ」

 

「どうせたい焼きとかだろ?なら後ろで控えている間に食べてろ」

 

「…そうだな」

 

ブンと少年の足が弔に振るわれる。

 

「…黒霧邪魔しないでくれる?」

 

 それを黒霧が弔の体を包み込み守る。

 そのやり取りを見ていた今回の襲撃の数合わせのチンピラ達はこんな奴らで大丈夫かよ…と考えようとした。

だが

 

「__」

 

少年の周りだけ空気が異質になった。蜃気楼や陽炎の様に歪んでいるかのように。

ウッ…とチンピラ達が口を抑える。なんてことはない覇王色の覇気にやられた訳でも死神の霊圧の重圧に負けた訳でもない。

 

…ただ、ただ気持ち悪い。

 

尻込みするくらい相手にしたくないくらい気持ちが悪い。

だが半信半疑で揺らいでいた心が固まる。こんな凄まじい人物が所属する組織。

内心こんなガキがリーダーの組織でいいのかと。思想は自分達の求めるもの。だが信用がない。

黒霧という人材だけでは補えなかった、ほんの些細な不安。それが一瞬で消し飛ばしたこの少年。

 

人は自分の持たないモノ、〈特別〉に憧れる。

少年の発する空気。これは彼等が生きてきた人生の中で欲した異常。しかも感じとったのは異常以上のそれ以下の何か。

チンピラだった彼らは本人達も気付かない内に薄っすらと皆同じ笑みを浮かべていた。

彼らはもう、ただ路地裏で胸の内を発散するだけの敵ではない。

組織に属し組織の為自らが動く、そんな存在へと。

今のやり取りで彼らの心は組織、敵連合と一体になった。

 

「…うん?……」

 

スッと黒霧に踏み込んでいた足を戻す少年。

強烈だった視線は静まり、少年達を見ている彼らへと向けられていた。

 

「…もういいです。だってあんないい笑みをしている人達が集まったのですから、今回はチャラです」

 

 


 

 

 

ポキッ ポキッ

弔の後ろにある噴水前の階段、そこはイレイザー・ヘッドが戦闘している場所。

ポキッ ポキッ

とおやつで食べる予定のお菓子をリズムよく味わう。

 

「なぁ…おい…」

 

「ゲームにお菓子、何かおかしな組み合わせですか?」

 

弔の苛ついた声にいつも通りの返事をよこす少年。

現状は良好に事が進んでいるとはいえない。

第一目標のオールマイトの不在。

そこからのプラン変更で生徒達を襲わせたが芳しくない。

如何せん地力の差が浮き彫りになっている。精神面は仕上がったが急な変化に対し体が未熟であった。

どうしても油断しないと考えていても一介の雄英といえまだ生徒という長年培った感性までは簡単に変わることはなかった。

 

故に本筋の結末は変わらない。強いて言うならほんの少し抵抗が強かった程度だ。

その後

 

 

黒霧が生徒を一人逃してしまうのも

弔が所持を折ろうと直接手を下そうとするのも

オールマイトが登場するのも

脳無と殴り合うのも

…先生達が加勢に入るのも

 

なにもかわらぬ…

 

「おい、蛾々丸」

 

 

愚か者(とむら)がこちらを見ている。応えますか?

はい いいえ

 

 

 

 




【はい】は少しおいてして投稿しますね…
追伸順番に入れ替え【いいえ】も追加。
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