お元気ですか。
ぼくは今、異世界の学校で魔法を学んでいます。
友達もたくさんできました。
この世界の人は優しくて、ご飯も住む場所も用意してくれました。
どうにか元気にやっています。
帰る方法は学園長と一緒に探しているところです。
電話も繋がりそうにありません。
もしも見つかったらホリデーの時に一度、帰ります。
それまでは、こっちでしばらく頑張ります。
大丈夫、心配しないでください。
お母さんもよく知っているでしょう?
地底世界に落ちて来た我が子のことを。
お母さんはぼくがいない今のうちに、お父さんと仲直りをしておいてください。
それでは、お元気で。
フリスクより
AMR NRC制服
懐かしい感触に目が覚めた。
気づけば狭くて、暗い、箱の中。
まるで──
「──蓋、重──」
物音と何かの声が微かに聞こえる。
「──ふな゛~~~~それっ!」
掛け声と共に、視界が青い炎に包まれ。
「さてさて、お目当ての……」
次の瞬間には、猫のモンスターが驚愕の表情を浮かべて目の前にいた。
「って、ギャーーーーーー!!!!オマエ、なんでもう起きてるんだ!?」
箱の外は異様の一言、棺桶だらけ。
振り返らなくても理解できる。
まるで、などとんでもない。
まさしく、じぶんが入っていたのは棺桶だった。
「目の前のオレ様を無視するとはいい度胸なんだゾ!」
それならば、ここは死者の国か。
死んだ実感は無いけれど、じぶんも死者の1人で。
目の前の猫のモンスターは地獄の使者、と。
「オレ様にその服をよこすんだゾ!さもなくば……丸焼きだ!」
地獄の業火は猫が吐き出すものだったのか。
……なんて冗談はさておき、逃げないと。
いくら決意があっても、わざわざ傷つくことを選ぶ意味はないから。
彼女との戦いの時みたいに。
それにしても……
「コイツ!待つんだゾ!」
見知らぬ世界で。
初めましてのモンスターに、殺されかけて。
「さあ、丸焼きにされたくなかったらその服を──」
そして、助けがやって来る。
「ふぎゃっ!?痛ぇゾ!なんだぁこの紐!」
「紐ではありません。愛の鞭です!」
カラスみたいな黒い仮面の怪しげな男の人。
グリムは別に友達でもペットでもないんだけど……
「ああ、やっと見つけました。君、今年の新入生ですね?」
「まったく。勝手に扉を開けて出てきてしまった新入生など前代未聞です!」
扉なんてあったかな……
「貴方が目覚めたたくさんの扉が並んでいた部屋ですよ」
「通常、特殊な鍵で扉を開くまで生徒は目覚めないはずなんですが……」
つまり、あの棺桶がこの世界への扉だったということ。
「それまでの世界に別れを告げ、新しく生まれ変わる」
「あの扉の意匠にはそんな思いが込められているのです」
「……おっと!長話をしている場合ではありませんでした」
あぁ、あの愛しい
いたくて、つらくて、さびしくて、かなしくて、くるしくて。
でも、いっぱいわらって、おこって、ないて、たのしかった。
そして、しあわせだった。
きっと、これからも。
「さっ、入学式に行きますよ」
良い出会いがありますように。
ガヤガヤと声のする方へと校長先生に連れられて歩く。
もうすぐ入学式会場に着くのかもしれない。
生徒たちの声が聞こえてくる。
「──学園長はどこに行っちゃったのかしら?式の途中で飛び出して行っちゃったけど……」
「職務放棄…………」
「腹でも痛めたんじゃないか?」
「違いますよ!」
あらぬ疑いを掛けられて怒り気味の校長……いや、学園長先生?
まぁ、学園長でいいかな。
「あ、来た」
「まったくもう。新入生が1人足りないので、探しに行っていたんです」
「さあ、寮分けがまだなのは君だけですよ」
「早く闇の鏡の前へ」
言われるがままに鏡の前に立った。
『汝の名を告げよ』
「フリスク、フリスク・ドリーマー」
『フリスク・ドリーマー……』
『汝の魂のかたちは……』
「……」
『……』
ドキドキする……
『わからぬ』
「なんですって?」
分からない……?
『この者からはあらゆる魔力の微かな波長を感じる……色が全く定まらない』
『よって、どの寮にもふさわしくない!』
「そもそも、ぼくは魔法なんて使えないはずだけれど……」
「そんな!それは本当ですか?」
「お母さんから習っておけば良かったかな」
魔法で感情表現するのも楽しそうだとは思ったことはある。
じぶんにとって魔法はとても身近なもの。
けれど、必要に駆られることは無かったから。
「なるほど……ご両親は魔法師なのですね」
「しかし、魔法を使えない人間を黒き馬車が迎えに行くとは……」
どうにも、じぶんは手違いの予感がしてきた。
そうなったら、仕方が無い。
でも、帰り方が分からない。
どうしようか。
「──だったらその席、オレ様に譲るんだゾ!」
学園長が考え込んでいる隙に抜け出したグリムが暴れまわる。
アピールの為に、式場に青い炎を撒き散らす。
「はぁ……仕方ないなぁ」
随分と久しぶりだけど、あの頃よりずっと成長したんだから。
「こっちだよ、グリム」
「なんだ?オレ様は今忙しいんだゾ!」
「君がぼくに勝てたら、席を譲るよ」
「な!?何を勝手なこと言ってるんですか!」
「学園長、しーっ」
黙って見てて。
じゃないと挑発の意味がない。
「ん゛な゛~~~!!やってやるんだゾ~~~!!」
「掛かった」
さて、どうしようかな。
「キミ、手伝おうか」
「うん、きみは何が出来るの?」
「ボクのユニーク魔法で、あの猫の魔法を封印する」
「僕もお手伝い致しましょう」
「きみは……まぁ、いっか」
「じゃあ、ぼくが引き付けて、きみが捕まえて、きみが最後に魔法を掛ける」
一緒に戦うなんて初めてだ。
「いくよ」
誰もケガをしませんように。
「グリム」
この世界での初めての友達。
「どうしたんだゾ、子分」
「晩御飯にしよう、ツナ缶買ってきたから」
「ふな゛ッ!」
きみがどうして魔法師を目指すのかは知らないけれど。
「ねぇ、グリム」
「んぐ?」
「はやい…」
どんなことをしてでも。
どんな手を使ってでも。
「まぁ、いいや」
「なんなんだゾ」
「子分の昔話に付き合ってよ」
きみが手に入れたいもの。
きみが辿り着きたいもの。
「オマエの世界の話か?」
「そうだよ」
「オレ様も気になるし、いいゾ!」
きっとそれはきみにとって、とっても大切なこと。
「なんだなんだ、お前さんたち」
「面白そうな話をしてるじゃねぇか」
「俺たちも交ぜてくれよ、イーッヒッヒ!」
「あら、ゴーストさん達も気になる?」
だからこそ、きみに話しておこう。
「いいよ、じゃあ…」
ぼくの最初の友達、空虚な金色の花のお噺さ。
「むかし むかし」
いつかきみの心が満たされますように。
*マジカルペン - ぶきAT7
*プリズムの魔法石が嵌ったペン。角度を変えれば様々な色を見せるだろう。
*NRC制服 - アーマーDF7
*ナイトレイブンカレッジの制服。ただの服以上の期待はしてはいけない。