縁壱さん時代をハードモードにして縁壱さんを強化するだけのお話

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 単行本22巻の作者間話引用↓
 『できる』ことと『使いこなす』ことと『極める』ことはそれぞれ違う。
 『できる』ようになったら、それがどんな体勢や状況でも適材適所で出せるようになるのが『使いこなす』こと。そして使いこなしている技を、他の誰よりも速く強く、常に最大限の力で出せるように練り上げることが『極める』という事である。

 それを頭に入れた上でお読み下さい。



悪鬼の母

 

 

 

 ───鬼。

 日の下には決して出ず、夜な夜なに限って現れる悪鬼。それは人を喰らい、人を殺す悪魔の生き物。四肢を捥ごうと、首を刎ねようとも再生し、いかな手段を用いても殺す事のできない不死の怪物。

 そんな鬼を殺す術というのはたった二つ。太陽に一番近く、一年中陽の射すという陽光山で採れる猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石から打たれた日本刀で首を斬るか、太陽の下に鬼を曝け出す事。そうでもしなければ、鬼は何千年経っても死なない不死の怪物である。

 

 そんな鬼を殺す鬼殺隊───に相対する“鬼”には、一つの異能が存在する。『血鬼術』と呼ばれるそれは、鬼が人間であったころの未練やこだわりが強く反映され、鬼の深層意識に深い関わりがある特殊能力。

 幻術や幻惑、空間を自在に移動・または操作する、武器の生成、無数の分身を生み出す、身体能力の強化……などなど、通常“人間”には行えない異能を発動出来る。

 

 ───さて。戦国時代、“呼吸”が出回り始めた頃。鬼狩りの時代が始まった時、同時に鬼の始祖である鬼舞辻無惨は、一匹の悪鬼を生み出すことに成功した。

 日光の克服ができた訳ではない。しかし本来の鬼の発生条件……鬼舞辻無惨の血でのみ増やせる“鬼”への改造を、“生産”させる事の出来る鬼の誕生。人間の頃に何人もの子供を産む事を夢見て、それでも相手がいるのに自身に子供を産む基がなく、それ故に『多くの子供を産みたい』と強い未練を抱いて鬼と化した女性。

 

 その全ては、将来『下弦』に分類される強さの鬼に匹敵する程の強さを持ち、稀に『上弦』にまで及ぶほどの能力を兼ね備えて産まれる。ただし理性はない。思考はない。それでも産んだ“母”の意思は鬼舞辻無惨の命に伏し、鬼狩りの滅殺を遂行する。

 言わば鬼舞辻無惨の邪魔だてをする鬼狩りに対して、自分が戦わずに済むという楽。最低でも下弦の実力を持つ鬼が数百、数千体だ。いかに鬼を殺す術を蓄えたとて、一般隊士では決して敵わない強さを無数に相手するのは不可能。放っておけば全滅する。日光の克服に専念できるというだけで、鬼舞辻無惨は比較的上機嫌だった。

 

 本来ならば致死量の血を与え、それに耐えただけはあると、鬼舞辻無惨は横にいる鬼───今も鬼を産み続ける『姫与那(きどな)』を見つめ、視線を外す。

 

 

(本人の能力は雑魚鬼と同等程度だが……能力が有能だ。最近は“呼吸”などという妙な技を使う鬼狩りが出てきたせいで、私が少し血を与えた程度の鬼ではすぐにやられてしまう)

 

 

 まあいい、と。無惨自信が鬼を増やす必要が無くなった為、他の鬼への期待など最早皆無。苛立ちを覚える存在ですらない。殺すだけならば姫与那を利用すればいい。血鬼術の使用によって飢餓状態へと陥るが、食糧などそこらに豊富に存在する。

 なんの役にも立たない、寧ろ自身の血を与えるだけ無駄な雑魚鬼を増やすくらいなら、食料として姫与那の栄養となり、強力な鬼を生み出す方が何倍も有益だ。理性が無い故に呪いを掛ける必要すらない。放っておけば鬼殺隊の壊滅は確実だ。監視する目を撒く必要もないのだから、その分『青い彼岸花』の探索に手を回せるのも大きいだろう。

 

 しかし、そんな彼の良い機嫌は、次の瞬間に消えて無くなる。

 

 

「無惨様」

「……なんだ?」

「お言葉ですが、ここ数十年は外への探索を中断した方が宜しいかと思われます」

 

 

 普段は産み続けるだけであり、自己主張など全くしない存在。そんな姫与那の提案に、無惨は顔を顰める。

 

 

「私に命令するか?」

「いいえ、提案です」

「鬼狩りなぞ貴様の能力で壊滅可能だ。私の完全な生物への道を、配下に過ぎない貴様が遅らせるのか?」

「いえ、しかし……」

「くどいぞ、私の考えを否定するのか? 貴様が産めなくなる事を私は操作出来る。それが嫌ならば従え」

「……はい」

 

 

 折角機嫌が良かったのに、その要因が機嫌を損ねる。褒めたらつけ上がる典型例かと無惨は失笑し、無惨は出掛ける準備を始めた。

 青い彼岸花を探す為。そして量産ではなく選別。鬼狩りを殺すための鬼の量産ではなく、日光を克服する鬼を作り出す為の選別を行う為だ。太陽を隠す血鬼術でもあれば、日の出る昼間に試せるのだが……と。ありもしない血鬼術を望みながら、半月の光に晒される夜空の下を歩き始める。

 

 ───そして恨む。姫与那はなぜ強く引き止めなかったのかと。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

 『できる』ことと『使いこなす』ことと『極める』ことはそれぞれ違う。

 『できる』ようになったら、それがどんな体勢や状況でも適材適所で出せるようになるのが『使いこなす』こと。そして使いこなしている技を、他の誰よりも速く強く、常に最大限の力で出せるように練り上げることが『極める』という事である。

 

 それを顧みれば───そう、継国縁壱という神に愛された才覚を持つ剣士でも、()()()()()()()()。現世に於いて他の誰にも扱えない『日の呼吸』という単体で見れば、古今東西、そして未来永劫、誰も至らない頂点と称して違いはない。

 赫灼の刃も、呼吸も、指導も、才覚も。全てに優れた彼だからこそ生み出される欠点というのは、()()()()()()()()を置いて他にない。何故なら彼の才覚は、鬼の始祖をして『怪物』と称される、まさしく太陽が人となったと呼んで差し支えない程のもの。

 

 故に、そう。言うなれば『日の呼吸を極めた』───それで終わり、そしてまたそれで充分だったからこその、あり得た敗北。

 しかし、その敗北が訪れる事は無いだろう。

 

 

「───ァ……ッ」

 

 

 継国縁壱という剣士は紛れもない天才であった。それだけの話だ。

 

 

「──き───ァ……ッ!」

 

 

 呼吸法を知らなかった者達に対し、それぞれの適正にあった呼吸を教える才覚。それ即ち、自身も使える事のできる証明に他ならない。

 

 

「貴様ァ……ッ!!?」

 

 

 ならばそう。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 継国縁壱は紛れもない天才であったが、それでもどうしようもない場面はある。物量作戦だ。彼は人間。鬼舞辻無惨の様に肉体が再生する訳では無い。例え呼吸で痛み止めや止血、折れた骨の溶接が出来たとて、決してそれを振り切れる程に人間はやめていない。精々が痛みを感じさせない動き方をする程度である。

 一日中走っても絶えない体力があっても。常に全集中の呼吸をし続けられる強靭な肉体だとしても。街一つに配属された1000の数を超える鬼───それも野良にいる様な、柱ではない隊士に容易く倒される貧弱な鬼とは違い、全てが柱で漸く勝てる程の強力な鬼を相手に、一つの怪我を負うこともなく生き残るなど、果たして出来るだろうか。

 

 結論から言えば出来た。1000を超える鬼がいる中で、何とか生きていた数人の子供達。親を殺され絶望して、やがて自分も殺されるのだと悟って、お前もどうせ死ぬのだと乾いた笑いを向けられて。時間帯を把握し、鬼の数を理解し、子供達の言葉に内心同意した。

 そう、このままでは死んでしまう。いや、正確に言えば自身だけならば助かる道はあるだろう。ただ耐え凌げばいいだけならば日の呼吸を舞い続ければいい。だが子供達を守りながら戦えば間違いなく死ぬ。稼働範囲が自身だけではなく動けない子供を含むとあらば、それは揺るぎない決定事項と化す。

 

 今のままでは駄目だ。そう判断した縁壱が下した判断は、仲間の呼吸を『日』に複合させる事だった。『日の呼吸』に出来ないことが他の呼吸には出来る。『水の呼吸』と『雷の呼吸』と『風の呼吸』。水の流麗さは掻い潜るのに最適であり、雷の速さは間に合わせるのに最適であり、風の範囲は複数の敵に最適である。

 決して尽きない円環の技、円舞(えんぶ)に始まり炎舞(えんぶ)に終わる『日の呼吸:拾参ノ型』に合わせて他の呼吸を複合するのだ。

 

 『使いこなす』という領域にあった他の呼吸は、やがて『極める』に至り。四半刻(30分)を経過する頃には、既に鬼は殲滅されていた。

 故にそう、この結果は必然である。

 

 ───複合【日の呼吸:壱の型『円舞』】【雷の呼吸:壱の型『霹靂一閃』】

 ───複合【日の呼吸:弍の型『碧羅の天』】【水の呼吸:肆ノ型『打ち潮』】

 

 地を破壊する程に脚の筋肉一つ一つに力を込め、それを腕にも応用し、円を描く様に放たれる斬撃。そこから派生する連続の弍の型。本来の垂直方向の強力な斬撃とは異なり、水の呼吸の肆ノ型に合わせて傾きは出てしまうが、腰の捻りと淀みない動きになる『しなやかさと破壊力』を持った連撃。

 

 ───複合【日の呼吸:参の型『烈日紅鏡』】【風の呼吸:参ノ型『晴嵐風樹』】

 

 本来であれば二つの斬撃による迎撃の型。しかし自身の周囲を竜巻のように激しく連続で斬り付ける風の型により、日の破壊力を持って放たれた竜巻は荒々しく、無数の斬撃と化す。

 

 一つの問いがあった。もう一人の存在に目を移した。そちらを後回しに縁壱が歩き出せば、男の肉体が弾け飛ぶ。

 透き通る世界で見える限りでは1500と少し。だが足りない。それらを頭の中で繋ぎ合わせても、透き通る世界で見えていた鬼舞辻無惨の肉体の完成にはまだ足りない。透き通る世界ですら見当たらないほど細かな肉片があるのだろう。そう判断した縁壱は呼吸法を変えて感覚の強化を行う。触覚を研ぎ澄まし、大気の微細振動を捉える事で、幻惑の術の類を無視して広範囲の索敵を行う『識』と呼ぶ、後に山で育てられた子供が『獣の呼吸:漆ノ型』として扱う索敵の技。

 

 それを()()()()()()()()()()()()()()()使()()、赫刀で肉片を切り焼きながら探りを入れる。元より子供達を守る為の最適解を探る為、透き通る世界と併合して扱うために編み出した技だ。斬撃を入れながらでも扱えなければ間に合わない。

 やがて知覚した肉片のありかを、縁壱は『日の呼吸』を以って切り刻む。

 

 

 ───鬼舞辻無惨は死に、その呪いを受けた鬼は全て滅んだ。鬼滅は終焉を告げ、鬼の居ない世界で人々は今日を紡ぐ。

 限りなく幸せな、血の匂いがしない毎日を。

 

 

 

 

 

 





 珠世さんとの会話が難しくてぶった切っての終了になってすみません。久しぶりの執筆でモチベが続きませんでした。
 時間とやる気があったら無惨様の肉片切り刻みのシーンで複合呼吸や戦闘描写の加筆修正を致しますので、お許しください。

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