刀神・二枚屋王悦は鍛冶師である。

尸魂界全ての死神が例外なく彼の打った「浅打」をもとに個々の斬魄刀を見出す。

そんな彼が、失敗作と呼ぶ一振りの刀があった。

「彼女」は不遇な扱いを腹を立て、生みの親に反乱するべく地上に降りる。

のちの主たる少年と出会うことなど露知らずに。

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ようつべのBLEACH解説・考察動画を見ていての思いつきです。

原作が今手元にないのでうろ覚えな部分もありますがなるべく設定に忠実なのを意識しました。

続きは考えていないため不明。未来の自分のみぞ知る。




・・・・・・王悦のキャラわかんなくない?


【所有者】

 

 

 

 

「ちゃらちゃっちゃっちゃらっちゃ~♪ ちゃっちゃらちゃらっちゃ~♪」

 

 零番隊鳳凰殿(ぜろばんたいほうおうでん)の主、二枚屋王悦は今日も『浅打(あさうち)』を造っていた。

 斬魄刀(ざんぱくとう)・『浅打』は死神(しにがみ)の一人一人が己の魂を映す鏡のようなもの。

 各々(おのおの)があらゆる奇々怪々な性質を獲得する雛形をほぼ単独で製作するため、時間はいくらあっても足りない。

 とはいえ、王悦自身に気負いや疲労は微塵もない。

 愉快なセンスの外見と同様に楽しげに刀を打ちながら鼻歌を奏でている。

 

「ちゃらちゃ~ちゃらちゃちゃっちゃらちゃらっちゃ~♪ ―――」

 

 歌が()む。

 突如、あらぬ方向を見つめた王悦は作業を中断し、とある蔵の中に入った。

 そこはこれまで彼が生み出した多種多様な刀の試作品が死蔵されている場所だ。

 

「・・・・・・・・・あ~ららァ」

 

 グラサンを下げた王悦はゼリーのような液体で満たされた『(から)の水槽』を見ていた。

 液体に浸されていたはずの『刀』がなくなっている。

 賊の痕跡はない。内部の者らには愚挙に出る理由がない。そもそもあんな失敗作を零番隊の警戒をすり抜けてわざわざ盗むような輩がいるわけない。

 ともすれば、可能性はひとつ。

 

「構ってあげられなかったから拗ねちゃったかNa?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 連れ戻すのに支障はない。『彼女』も元は浅打だ、尸魂界(ソウル・ソサエティ)の外だろうとどこだろうと居場所を特定するのは容易。だが、こじらせた斬魄刀を、ましてや『彼女』を強引に戻したところで悪い結果にしか結び付かないのは必定だった。

 ならば今は間を置きガス抜きをさせてやるべきだ。

 結論を出した王悦は作業場に戻り、再び鎚を振るいだす。

 行方知れずとなった斬魄刀の名は『鞘伏(さやふし)』。

 王悦自身が失敗作と称して憚らない、切れ味が良すぎて納める鞘すらないという曰く付きの品だった。

 

 

          ***

 

 

 『潤林安(じゅんりんあん)』。

 流魂街(ルコンがい)でもっとも治安の良いとされる居住区画。

 生活水準は死神の暮らす瀞霊廷(せいれいてい)に及ぶべくもないが、人殺しや盗みが横行する地区と比べれば天国も同然だ。

 ところで、流魂街にも(ホロウ)は発生する。

 連中は地区の治安などに関係なく、どこにも平等に現れる。

 距離的に瀞霊廷とほど近い潤林安は討伐されるスピードが他よりも早い。そういった意味でもこの地区は恵まれていると言える。

 だが、それでも間の悪い場合というのはあり得るのだ。

 少年はまさにそういった悪運に見初められてしまっていた。

 

「・・・・・・あ、死んだ」

 

 無意識にこぼれた間抜けな遺言。

 目の前には大口を開き食らいつこうとしている一匹の虚。

 死の間際訪れる鈍化した時の中でも、あと数秒ののち上半身が丸ごと(かじ)られる未来が想像できる。

 尸魂界に流れてきてからの短い間の記憶が走馬灯となって脳裏を走った。

 瞼を閉じる行為すら忘れて、上下に迫る歯並びを呆然と彼は見送っていた。

 そのとき、

 

 

 上空から一条の煌めきが流星となって落ちてきた。

 

 

 流れ星は虚の頭頂から顎下を易々と通り抜け、地に突き刺さった。

 一瞬の出来事に理解が及ばず、尻もちをついたことすらあとになって気づいた。

 眼前で、刀の柄が地面から生えている。

 落下物の正体は刀だったらしい。よほど高所から落ちたのか、刀身が地中に消え鍔から先しか確認できなかった。

 虚は消えていた。頭を貫通され、断末魔すらなく塵に帰っている。

 少年は救いの主たる品を前にそろそろと近づき、柄を握った。

 

「ぬんっ・・・・・・あ」

 

 スポンっ、と思い切り引っ張れば軽い調子で()()()が抜けた。

 裸の白刃の尻だけが滑稽に居残っている。目釘が折れていたらしい。

 

「どうしようこれ。ヒモか何か括って引いたほうがいいかな・・・・・・」

『不要なのだわ。抜き出たところを掴んで引けば容易く抜けるのよ』

「え?」

 

 周囲を見渡し、声の主を探すが人影はなく。

 尚も声だけが近くから響いていた。

 

『ぼーっとしてないで、早く抜くといいのだわ。いつまでも土の冷たさを感じてたくないのだわ』

「・・・・・・・・・刀から、声?」

『不思議かしら? 今どきの流魂街民(ルコンがいみん)は斬魄刀を知らないの?』

「斬魄刀って、死神が持つ、あの・・・・・・?」

『他に何があるのか聞きたいのだわ。ねえ、それより早くしてくれないかしら』

 

 埋まった刀から発されていると思わしき若い女の声に催促され、少年は露出した部分を両手で握る。

 軽く力を込めればすっと驚くほど抵抗なく、豆腐から引き抜くような気軽さで隠れていた切っ先がようやく空気に触れた。

 

『ああ、狭苦しさから解放されたのだわ。まったく、かび臭い場所から抜け出したかと思ったら自由落下に()いで土中に沈むだなんて災難ね。(わっぱ)、礼を言うのだわ』

「えっと・・・・・・お礼はむしろこっちのほうというか。お陰様で命を拾えましたし」

『ふーん? よくわからないけど、ならわらわの降臨に感謝すると良いのだわ。それと、刃筋(はすじ)には絶対触れるべからずなのよ。冗談ぬきに手足や胴を豆腐みたく両断できるから』

「なにそれコワイ」

 

 慎重に刀身を横たえて、少年は数歩距離をとった。

 瞬間、閃光が(ほとばし)る。

 咄嗟に目をかばい恐々(こわごわ)と伺うと、そこには少年より幾分か年上の女がひとり、立っていた。

 膝上丈の洋袴(スカート)に改造された桜紋咲き誇る紅藤色の着物を纏う少女は、日差しに映える金髪を揺らし不敵に口角を釣り上げる。

 

「あなたは・・・・・・」

「人に名を訊ねるなら己が先に名乗るのが礼儀なのだわ」

帯刀継嗣(たてわきつぎつぐ)です」

「つぎつぐ? なんだか変わった響きだわ。まぁわらわの生みの親ほどではないけれど」

「・・・・・・・・・」

「ぅう゛ん! 耳の穴をほじくり返して聞くのだわ! 我が名は―――」

『ギュオオオオォォァアアアッ!』

「・・・・・・・・・」

 

 怒号の横やりが名乗りに被った。

 先ほどと別個体の虚がさらに二体ほど襲来する。

 悪運はまだ尽きていなかったらしい。結果的に状況はより悪化した。

 しかし、継嗣は猛然と迫ってくる死の足音よりも、目先に佇む能面のごとき無表情を晒した女のほうがはるかに恐ろしかった。

 

『ギャァァアアアアアア―――』

「やかましいッ!」

『アアアァァァ・・・・・・っ!』

 

 発生した事象を端的に表現するなら。

 女が虚のいる方向へ水平に腕を振った。

 虚が揃って顔面から血を流し、鼻先にあたる場所から上下に割れた。

 彼我(ひが)の距離はおよそ三十メートル。

 彼女は素手にも関わらず離れた場所から刃物で両断したかのようにキレイに虚を葬ったのだ。

 その現象を目の当たりにして、継嗣は女の正体がやはり件の落下物であることを再認識した。

 彼女は風に乱れた髪をかき上げて取り繕うように咳を落とし、

 

「よぉく聞くのだわ! 我が名は『鞘伏』! 零番隊・二枚屋王悦作の唯一無二の斬魄刀っ!」

 

 天の古巣までいざ届けと言わんばかりの大喝破で女、鞘伏は吼えた。

 

「童、あなたに地上の案内を所望するのだわ! 当然、(いな)は言わせないっ!」

 

 こうして、尸魂界の片隅でのちにサクヤと名付けられる欠陥品の斬魄刀と継嗣は数奇な邂逅を果たしたのだった。

 

 

 

 





読了ご苦労さまでした!
最後までお付き合いいただいた方は大変感謝です!


鞘伏の性格は、偉そうだけどポンコツ可愛い感じをイメージしていました。

キャラの味付けに口調を独特にしようとしたら自然とエレシュキガルになってたとです。あと隠し味でベア子も混じってます。

設定の追記としては、始解のサクヤは「咲耶」と書きます。
解号は「蒼天を切り裂け」
卍解は「此花咲耶(コノハナサクヤ)」
能力としては、空間を飛び越えて斬撃を必ず届かせるとかそんな具合。


以上、蛇足でした。

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