シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった   作:ぱんそうこう

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|)チラッ

お久しぶりです。自分で書いといて着地点が中々見つからずに難航してました。すみません。


生命を懸けて、戦う理由は

秋桜祭。リディアン音楽院が誇る学園祭であり、年に一度のリディアン女子の最大の楽しみの一つである。

今年は学園の移転など、様々なアクシデントにより開催も危ぶまれたが……無事、開催と相成ったわけである。

 

しかし。その浮ついた雰囲気とは裏腹に、心底めんどくさいという顔を隠していない女が一人。そう、流竜である。

彼女は今、休暇がてら秋桜祭に繰り出した調と切歌の保護者役として、ここに来ているのであった。

 

「なんだって俺がガキどものお守りなんぞ……」

 

頭を掻きながらぼやく竜。それを聞いた切歌は、眉をへの字に変えて彼女に抗議した。

 

「ムッ。聞こえてるデスよ!マリアは来れないらしいデスし、他の皆も忙しいんデスから、一番ヒマな竜さんが着いてくるのは当たり前のことデース!」

 

「ヒマってなんだヒマってのは!俺には鍛錬の用事がだな……」

 

「もー!竜さんってばいっつも仕事が鍛錬がじゃないデスか!観念して、アタシたちをこのお祭りに案内するデース!」

 

「切ちゃん。いっつもってほど長い付き合いじゃないと思うけど」

 

「そ、そこは言葉のわやというやつデース!」

 

「言葉の綾、な。だからってよお……」

 

「あ、あっちにやきそばの屋台が!あれをうまいもんマップの手始めにしてやるデース!」

 

「あってめえ勝手にどっか行くんじゃねえ!逸れたらどうすんだ!」

 

「竜さんって、なんだかんだ面倒見いいですよね」

 

「嬉しくねえ……!」

 

浮かれきったリディアンの中でも、三人の姿は特に目立って見えた。おまけに一人は今やリディアンの名物になりつつある超人用務員なのだ、注目を集めないわけがない。周囲からは次第に生暖かい視線が向けられはじめ、次第に竜も尻がむず痒くなってくる。

 

はしゃぐ切歌を尻目に、調と二人並んでベンチに掛ける。

彼女が屋台に並んでいる時間をゆるゆると潰していると、わずかに俯き気味の調が竜におずおずと話しかけた。

 

「……すみません。案内までしてもらっちゃって」

 

「……リディアンは広いからな。校内で道に迷って出れなくなるよりはマシだ」

 

「そうじゃなくて。……私だってわかってます。遊んでる暇なんかないって。竜さんみたいに訓練して、メカザウルスに備えるべきだって。なのに神さんもマムも、そっちの司令官さんも口を揃えて『行ってこい』なんて言って……私には行く意味があんまり分かりません」

 

「さあな。んなもん俺が知るかよ。……まあ、いいんじゃねえの?お前の相方はあんなに燥いでるんだ、お前もちょっとぐらいじゃバチは当たんねえだろ」

 

「それは……」

 

「それに、ウチのオッサンが勧めたってんなら、それはお前らの為になることだろうよ。……ちょろっと聞いたが、お前ら学校行ってねえんだって?」

 

「はい。ずっとF.I.S.の施設にいて……昔は通ってたかもですけど、覚えてなくって」

 

「案外この戦いが終わったら、ここにお前らを入れるつもりなのかもな。これはその予行演習ってわけだ」

 

「戦いの後だなんて……いくらなんでも気が早すぎです。まだ終わらせるメドも立ってないのに」

 

「いいじゃねえか、どうせその頃には出ずっぱりで他ゴトなんか考えらんねえだろうしな。ここしばらくはクソみたいな出来事ばっかだったんだ、息抜きしねえと周りが見えなくなる……って、あのオッサンなら言うだろうよ。お前だってあの女のこと、考える時間が要るんじゃねえか?」

 

うっ、と調が言葉を詰まらせる。恐竜帝国についたシンフォギア装者であるジャンヌ。かつてF.I.S.に集められた子供達の一人であり、自分自身やマリアたちとも縁の深い彼女のことを思い出すと、何故あんな奴等にと怒りが沸いてくると共に、深い悲しみに襲われる。それは見知った顔を討つことへの躊躇いか、敵味方に分かれてしまったことの苦しみか。

 

調は知っている。マリアが部屋で一人、泣いていたことを。

マリアは心の底から悲しんでいた。これから戦わねばならない「敵」を知って。その運命を呪い、無力な自分を呪っていた。

神隼人はマリアに告げていた。「あいつのことは諦めろ」と。マリアもきっと、それしかないと頭では分かっている。けれど納得できるものではないだろう。

声をかけた自分を抱きしめながら、静かに泣くマリアの苦しみを、自分はどれだけ理解できていただろうか。

 

「ジャンヌさん……!」

 

「こういうのは、響のヤツの領分なんだがなァ」

 

竜は調を横目に捉えながら、敢えてはっきり聞こえるようにその名を出した。響もまた、マリアのように苦しんでいる。信念と現実の狭間で、為したいことと為すべき事の狭間で。

直後、調の眉間に皺が寄る。彼女は未だ、響を受け入れられていない。

 

「……っ。どうして、あの人が」

 

「敵を倒したくねえ、分かり合いてえってのがどうしようもなく甘いってのは正しいさ。俺もそう思うし、それにブチ切れたお前が正しいってのもな」

 

あいつ、時々ああやって人の地雷踏むんだよなぁと頭を掻きながら過去に思いを馳せる。ルナアタックでもそうだった。奏を亡くしてギスギスしていた頃の竜と翼の地雷を踏み抜いていた記憶が蘇ってくる。

 

「だが、あいつにはあいつにしか出来ないことがある」

 

しかしあの事件を、雪音クリスとの決着を、フィーネとの決着を。あの形に持っていけたのは立花響の力あってこそだった。それがなければ今頃雪音クリスはここにいなかったかもしれない。

 

「こと『敵』に手を伸ばすことに関しちゃ、俺たち全員あいつに敵わねえ」

「『墓穴掘っても掘り抜けて、突き抜けたなら俺の勝ち』ってのはよく言ったもんだ。どんな綺麗事だろうと張って張って張り通して、最後まで貫き通せばそいつの勝ちだ。誰も文句は言えねえよ」

 

実際それで俺たち全員ぐうの音も出せなかったからなァ、と遠くを見ながら言った。

 

「何回殺されかけようが、何回裏切られようが、それでも、だとしてもって言い続けられる。だからあいつは強え。ま、本人に言ったら調子に乗るんで言わねぇがな」

 

響とクリスのコンビはすっかり漫才要員として二課でもお馴染みだ。かつて対立していたとは思えないほど。

翼とクリスは……経緯が経緯なので絡みは前者よりは少ないが、しかし歩み寄りを見せているのは確かだ。これで初対面で殺し合っていたのだから驚きだ。

結局のところ、対立だなんだといったものは今となってはそんなものでしかなかった。それが果たして恐竜帝国に通じるかはまた別の話ではあるが。

 

「別に受け入れろってわけじゃねえさ。ただ、切り捨てるにはもうちっとあいつの覚悟を見てからでも遅くはねえだろうよ」

 

「もう戦えないかもしれないのに、ですか?」

 

「あいつは諦めが悪いからな」

 

「…………むう。答えになってないです」

 

調は明らかに不承不承といった体で口を尖らせた。

だがこれまでのようにただ拒絶するだけとは違う。ジャンヌの存在を知ったからこそ、そこには僅かな迷いがあった。

 

——————————————————

 

『それにしても、アンタたち大丈夫?最近学校も休みがちだし、あのメカザウルス……だっけ?結構出てきてるんでしょ?』

 

板場弓美がその言葉を発したのは、本当に単なる世間話の延長だった。

ここ最近こんなことがあった、この前こんなものを見た……そういった流れで生まれた、ごくごく普通の会話。そこには「事情」を知る者として、確かに響たちを案ずる心も込められていた。

だが、その返答は。

 

『……うん。へいき、だよ。わたしは、へいき、へっちゃらだから』

 

壊れそうな笑みでそんな事を言われたものだから、思わず響の両肩を掴んでしまった。

 

『へいきじゃないじゃん……!それのどこがへっちゃらなのよ!言ってみなさいよッ!』

 

まるで怒鳴るように、激しくそう叫んでしまった弓美を誰が責められるだろうか。

本人や最も近しい未来が頑なに口を開かないために具体的なことは何も明かされていない。しかし、響の身に異変があったことは誰の目にも明らかだった。

 

そして当の本人は。

ギアを纏うことが出来なくなっていた。

胸の歌が浮かばなくなっていた。

 

 

その理由はやはり彼女自身の迷いにあるとウェルは結論付け、それは皆が同意し、同情するところでもあった。

太古の昔に地上を追われ、元の居場所に戻りたいという恐竜帝国の境遇は、かつて謂れのない迫害によって苦しめられた彼女が共感を覚えるのに十分な理由だった。しかしその彼らが人々を苦しめ、傷つけている。そのことが彼女に迷いを抱かせた。

大雪山基地に囚われていた人々を救えなかったのも大きい。まるで自分の力では誰も救えない、壊すことしかできないと突きつけられているかのようで……。

 

——————恐竜帝国とだって手を繋きたい。でもそれは間違っているのかもしれない。……了子さんがいたら、教えてくれたのかな。

 

 

ギアの起動ができない——それが判明した時、最初に反応したのは弦十郎だった。

 

『ショッキングなものを見て、精神的に参ってしまってるんだろう。無理をする必要はない。しばらくゆっくり休むといい』

 

彼は気遣わしげにそう言った。けれど彼女には分かっていた。自分がまた戦える保障などないことが。故に、自分を戦いから遠ざけようとしていることが。

 

 

恐竜帝国のやり方は間違っている。地上に出て暮らしたいなら、たくさんの人を殺す必要なんかない。皆を守るためにも、わたしが戦わないと———けれどそれは、恐竜帝国の人々の願いを踏み躙り、再び地底へと追い出すことでもある。自分たち人間に罪のない人たちがいるように、恐竜帝国にだって罪のない人たちがいる。だったら自分たちの戦いは本当に正しいことなのだろうか。本当に、戦って勝つだけでいいのだろうか?

 

理想と現実の狭間で。

何を選び、何を選ばないのか。

守ることと戦うこと。

その終わらないジレンマを彼女は突きつけられている。

 

 

『理不尽に傷つけられたことのない人が、知った風な口を利かないでッ!!!!』

 

 

彼女の頭の中では、今でも調の叫びが響き渡っている。

恐竜帝国に奪われた被害者の悲痛な叫び。犠牲者を悼む、遺族の悲しみ。そして家族を奪われた者としての怒りが。

 

 

『この人殺し』

『なんであんただけが生き残ったのよ!』

 

 

「…………ぁ」

 

過去の痛みがフラッシュバックして、また胸が締め付けられて。

 

(わたしが分かり合いたいと思っても、手を繋ぎたいと願っても、その間に誰かが死ぬ。だったら、わたしは何のためにシンフォギアを———)

 

 

 

「———————響」

 

思考の坩堝に陥った響を現実に連れ戻したのは、大好きな陽だまりだった。

 

「響。今日も寝れないの?」

 

「……大丈夫。へいき、へっちゃらだから。未来がいてくれるなら、いつでもどこでもぐっすりだよ」

 

薄暗いベッドの中。正面から未来を抱きしめながら、響は嘘をついた。未来に嘘をつくのはいつだって心が痛む。前にノイズと戦っていることを黙っていた時と同じくらいか、それ以上に。けれど、やっぱり未来にこれ以上心配をかけさせたくないから。

なぜなら、立花響は小日向未来のことが、前よりずっと大好きだからだ。

 

未来は分かっていた。響が嘘をついていると。ノイズと戦っていることを響が黙っていた時も、同じように心が痛んだ。自分では響の助けにはなれないのかと思うと情けなくて、涙が出る。

けれど前の時とは違う。今の自分には、一歩踏み込む勇気がある。

なぜなら、小日向未来は立花響のことが、前よりずっと大好きだからだ。

 

 

 

「———もう、響が戦う必要なんて、あるのかな」

 

ああ、言ってしまった、と未来は思った。

それは今まで走り続けてきた響への否定にもなる。けれど、理想と現実で自縄自縛の雁字搦めになっている親友に新しい道を示したかった。

 

響は、何も言うことが出来なかった。

 

 

 

 




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