(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない   作:丹波の黒豆

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今回はこれ以降のお話の予告回になります。


18)「そして始まる狂想曲《ラプソディア》」

【虹の王国篇・オープニング予告】

 

 あの日、風使いの少女に押し負けて料理を振る舞った事で始まった空の領との関係は、こうして2つの魔力を引き合わせ、遥か高みの色へと導いた。

 

 そしてその美しい宇宙(ソラ)色は。

 その後沈んでいくだけだった王国中を駆け巡り。

 国の枠すら飛び超えて、西側諸国のあり方を大きく揺るがしていく事になる。

 

 いずれソレは、その彩りを増やしながら。

 世界全てを呑みこむ渦として、いつか一つの調べとなるだろう。

 

 目を閉じて、耳を澄ませばもう。

 

 ほんの少しだけ先の未来の。

 その足音が……聞こえてくる。

 

 

 ここは地の領。王国の屈指の大迷宮『歪みの大森林』の防衛ライン。

 歪んだ森から現れる大型魔獣と戦い続ける為に作られた、長過ぎる防壁の向こう側。

 屈強なる岩石騎士達が守護する、王国の脅威と戦うその最前線。

 

 常に森より多くの魔獣が湧いて出る、誰もが命の重みを痛感するその場所で。

 その身に歴戦を物語る誉れ高い傷の数々を帯びた、老いた武辺者の辺境伯が今。自領の伝令から報告を受けていた。

 

「ガンガロン様、ギドリック卿がお見えです。

 何やらこの魔獣戦域の状況を打開する、特別な兵器を持ってこられたとか……

「ほう、あのバラガキが、のう。

 ん、待て。……なんじゃこの音は?」

 

「なんだ、アレは!?」

「まるで奇っ怪な蛇のような物が、物凄い速さで飛んできている!」

「あれは人造の龍、なのか……。ガンガロン様、どうされます!」

 

「待てぃ。ありゃあ多分お味方だわな」

「は?」

 

「ジジィっ。

 テメェの加勢に来てやったぞぉ、オイ!」

 

「くかか、何やらたいそうなモンに乗ってきやがったなギド坊よ。……最近は領主らしい落ち着きが出てきたと思っとたが、オメェ見た目通り若返って、昔のバラガキ時分に戻っとるんじゃねぇか」

 

「だろっ。

 ゴキゲンなんだぜ、最近は。

 

 ……おう、オメェラっ。

 航空列車が着地したら、重力騎士達はコンテナから直ぐに城塞車を全両走らせろ!!

 その後離陸、上空からの砲撃支援よ」

 

「「「了解!」」」

 

「風騎士達の半分は空から索敵と通信に回れやっ。

 ……テメェラ、重力騎士達に働きで負けたら承知しねぇぞコラァ!」

 

「「「まかせろやオヤジ!!」」」

 

「ほ、コイツはスゲェなオイ。……一体どういう風の吹き回しじゃい?」

 

「こりゃあ隣のジルが全部拵えてくれたモンだっ。

 そっからオメェんトコの戦いを楽にするモン、色々持ってきてやったぜ。

 へへ、……これからは戦いが全部変わるぜ?

 

 だからアンタも、俺らに乗っかれっ。

 ……アイツとこの俺のでっけぇ夢にその力ぁ、どうか貸してやってくれねぇか!」

 

「ほっほっほっ。

 ここ最近ずいぶんスクタレとったバラガキが、……何やら面白ぇ方向に吹っ切れたようじゃな。

 ドレ、話を聞こうかねギド坊?」

 

 歳を重ねたその武人は大きすぎる槌を肩に、その騒がしい風の訪れに笑顔を浮かべ……。

 

 

 ここは陽光の国。

 その首都に燦然と煌めく太陽の宮殿。

 綺羅びやかな財宝に飾られたその王の自室、夏の盛りに高価な氷の魔力石を大量に使う事によって適度に冷やされたその部屋では。

 

 主である陽光王。国の豊かさに相応しい白地に金糸で飾られた豪華絢爛な衣装に身を包んだ三十路を過ぎたばかりの、白い狼のような荒々しい毛並みの髪に健康的なよく焼けた肌をした優男が。

 空色の髪を左右に大きく揺らしながら楽しそうに語る、ソランの言葉にその驚きを(あら)わにしていた。

 

「なんだと、天の果てなどないと申すか!」

「うんっ。

 すっごくキレイで静かなところっ。

 まるで夜空の中に包まれたような、そんなトコだったー!」

 

「くく、ふはは、はははははは!

 なんと、いう事だ。

 ……風の限界を超えた先、天の常識すら打ち破って見せるとは。

 

 くく、…聞けば聞くほど面白い男だな。

 アレほどの至高の料理を築き上げておきながら、風の魔力を持つ者すら至れなかった世界の果ての先を、人の手で暴いてみせるなど。

 ……ジルクリフ殿とは一体どのような御仁なのだ」

 

「娘さんの為なら、世界だってぜんぶ背負っちゃうすっごい人だよぉ。それでみんなが楽しく暮らせる場所を作ってくれる、みんなのお父さんみたいな人なんだー」

 

「わはは。何を言っているのかはよくわからんが、その瞳の輝きを見ればどれだけすごいかは伝わったぞっ、我が姪よ!」

 

「うん!

 それでねー。これからはボクんちと公爵様のトコ、それとガンガロンお爺ちゃんトコが、力をあわせてさんしょくどーめーで、カゾクになるんだってー」

「何!?」

 

「そしたらボク、今までよりずーっと公爵様のトコで色んなモノを見せて貰えるようになるから、今からすっごくすっごく楽しみなんだ~」

 

「さ、三色同盟。領地を繋ぐ大同盟か!

 その盟主はやはりっ!」

「公爵様だよー♪」

 

「ふ、はは、はははははっ!

 愉快、実に愉快である!

 

 ……ソラン。今から余が(したた)める文をジルクリフ殿に届けてくれるか。

 この陽光の国の王アルザが、貴方方の新たな門出を手ずからに祝いたいと」

 

「わぁ、アルザ叔父さんがボク達と一緒にお祝いしてくれるのー?」

 

「そうとも。

 長らく名前に恥じるばかりの有り様であったあの虹の国が、大きく変わろうとするその瞬間を余は自らこの目で焼き付けたいのだ。

 我が姪よ、よくぞ。

 ……よくぞ知らせてくれた。これは我が国にとっても、まこと大きな慶事である!」

 

「わぁい。みんなもきっと喜ぶよー」

 

「ふはははは、誰か、誰かおらぬか!

 すぐにあの“紫の領のジルクリフ殿”へと贈るに相応しい祝いの品を用意せよっ。

 

 ……間違ってもたかだか領主程度と侮るな。

 相手は余と同じか、それ以上に尊き身分にある者として完璧を極めて見せよ。

 完璧と名のついたスープ(あの至高の逸品の名)に負けぬ財を用意せよ!」

 

 空のような髪の少女が喜び跳ねるその横で、太陽の如き陽気を纏う白き狼はそう吠え立てて……。

 

 

 ここは赤の領。

 その領土の半分以上が荒れた火山地帯であるこの場所の、お世辞にも豊かとは言えない領地を治めているアルシュバルト侯爵家。

 本家であり、領主筋のレンシュバルト家の傍流であるこの家の当主の部屋で。

 今、赤いドレスのよく似合う少女が。……その真っ赤な美しい長い髪を振り乱して、自分の父に向かって叫んでいた。

 

「ですから、ワタクシはアーディン領のジルクリフ様の下に嫁ぎたいと、何度も申しているではないですかお父様!

 それをよりにもよって樹の領の、あんな豚のような男の下に嫁げだなんてっ!!」

 

「貴様、誰に向かって口を聞いている。

 領地の先も見えぬ小娘の分際で自分の我を通そうなどと、笑い話にもならぬわぁっ!」

 

「あう、ぐっ!

 ……な、何度でも言いますわ。

 当家へと贈られるわずかばかりの資産の為に、樹の領の、王国の養分を吸い上げ続ける、あんな醜いご老人のおもちゃになど、ワタクシは身をやつすつもりはございません。

 

 領地の先を考えろとおっしゃるのであれば、ジルクリフ卿こそが我が領に、いえ。我が国に真の豊かさをもたらす無二のお人。

 ……真の貴族であられるのです。

 あの方以外の殿方に、ワタクシはこの身を捧げようとは思えませんわ!」

 

「ふん、ジルクリフなどあの妻狂いの何の役にも立たぬ若造ではないか。

 そのような男に誑かされて、自らが領地の道具である事を忘れた愚か者に、もはや何の気遣いもいらぬ。

 身の程を知れぃ、小娘がっ!」

 

「きゃあっ!」

 

「ふん、素直にこちらの言うことを聞けば、痛い目に合わずともよかったものを。

 おい、誰かっ。

 この愚かな娘に……。スカーレットに隷属の首輪をつけて、地下牢に入れておけ。

 

 ふっ、せいぜいきたるその日には、その身でゴキゲンをとって。

 ……我が領を富ませてくれよ娘よ?」

 

 未だ三色が交わらぬその日、悪辣な父の暴虐に赤き情熱の恋の華は、囚われ。

 

 

 ここは熱気溢れる砂の国。

 大砂漠での彼らの騒動の影響を強く受けたこの国では、今神殿からの使者達が、異なる月の神を崇める彼らの王城の謁見の間で、砂漠に相応しい軽装の出で立ちにターバンをまいたその王と、側近達を相手に自らの主張を通すべく奮闘していた。

 

「ですから。

 あれは我らが神の起こした奇跡なのです!」

「今までにない規模で天より落ちた神の裁きの跡。

 あれが何より動かぬ証拠!」

「天から飛来したあの白き美しい神の鳥が、我らが神のお力でなくてなんと言うのです」

 

「未だに半ば異教を掲げる貴方方・砂の民にさえ慈悲を与える。我が神のなんと素晴らしい事でしょう」

「貴方方はこれを機に完全に東方の異神を捨てて完全に改宗をなさるべきです。でなければあの神の怒りが、貴方方自身に降り注ぐことになりましょうぞ?」

 

「……ではその後起こったあの黒い暴風は何か。貴方方の神の教えにおいて黒は禁忌の色でしょう。アレもまた神の奇跡なら、貴方方の神は自ら禁忌を破る方なのですか?」

「あれはむしろ我々の古い教えに伝わる神、黒神様のお力に近いものであったと思えますが、いかがでしょうな?」

「そもそも神は祈りを捧げぬからと罰を下したりせぬ。祈りとは教えであり、人が間違わぬ為の知恵なのだ。神は人の正しさを教える為に、決して人の世界に手を貸したりはせん」

 

「なんと罰あたりな!」

「アレほどの慈悲を受けておきながら、神を恐れぬ異教徒どもめぇ」

「そのような事を言っていれば貴様らには罰が下りますぞ。神は全て見ておられる。

 白き神の鳥の怒りに触れてからでは遅いのです!」

 

「失礼する!

 アレイスター王、緊急事態です。……またあの日見た白き鳥が我が国に姿を現しました。

 どうやらヤツは、いえヤツらはこの首都に向かっているようでして……」

「何、真か?」

「はっ!」

「ええい。今日は虹の国からの使者と語らう大事な日だというのに。

 月光神は、我らに試練を与えなさったか!」

 

「はっはっはっ、やはり神は我々をいつでも見守って下さっている。そういう事ですなぁ」

「天威は示される。どうかお早いご決断を」

 

 ……彼らはまだ、白い鳥の真実を知らない。

 

 

 そう。

 もはや世界は、奏で始めた。

 その騒がしくも美しい曲の音が、ところ構わず広がって、……世界の色を変えていく。

 

 

【その白き翼に乗った重力と風の貴族の二人が】

 

「おう牛乳好き。今日はどこまで飛ぶんだっけか」

 

「……祭り好き、貴様本当に興味がない事は覚えんな。

 砂の国だ。我が主が秘密裏にかの国との国交を結びたいとの仰せでな。俺達はその先触れという事になる」

 

「へぇ、どうでもいいや。おっ、アレ神殿の連中じゃねぇか。アイツラこんな国まで出てきやがって。おい、アレちょっと脅かしてやろうぜ?」

 

「お前というヤツは。が、……貴様のそういう性分は嫌いではない」

「はっ、オメェの割と話の分かるトコ、好きだぜぇ?」

 

「スタンバイ。

 こちらウルリッヒより小隊各位へ遠距離通信。

 コレより重輸送型・航空小隊は神殿の者に対し威嚇機動に入る。

 ……我らが主の敵たる神官共に、己の愚かさを教えてやろうエルヴィン」

「おうともさ。

 まったく新しいカシラんトコは最高だな。まったく俺らを飽きさせねぇ!」

 

 

 

【王国を操る青の領の当主、その宰相が】

 

「おのれぇ、ウェンディっ。

 貴様、この父を謀りおったなぁ!

 かの領の事を探る為に放った貴様が、この儂の目を眩ませてくれたおかげで、完全にあの男の暴挙を許してしまったではないかっ。

 

 おのれ、ウェンディ。おのれ、ジルクリフぅ。

 このままでは済まさんぞ。

 神殿と貴族共を煽って、貴様らに目にものを見せてくれるわぁ!」

 

 

【その有能さから幽閉され、原作では開始前に殺されたこの国の第一王子が】

 

「三色同盟。ああ、すごいな。

 ……これでこの国の勢力が変わる。少しでも貧しさから民達が救われる。

 

 できるなら、会ってみたいな。

 このジルクリフ・グラビディアス・アーディンという御仁に。もはや何の力もないこの身だが。

 ……この国を憂いてその腰を上げてくれた恩人に、一言お礼を申し上げたい」

 

 

【多くの優れたドワーフの技術者を抱える陽光の国の右隣、ドワーデン王国の工房では】

 

「ほれ、オメェラ見てみぃ。

 これがワシんトコのドすげぇ坊主が作り上げた、自動車っちゅうモンよ」

 

「おお、なんじゃこりゃあ。馬もおらんのに、ものすげぇ速さで走っとるじゃねぇか!」

「しかも乗ってんのは、おい。

 ウチんトコの魔力なしの坊主じゃ」

「こ、コイツは、この魔道具は。

 まさか魔力使いじゃのうても動かせるかよっ!」

 

「おう、まだまだ発展途上じゃが、この新型機関。

 無限動力炉を使えば誰でも、いくらでも走らせる事ができる。

 

 どうよオメェら。

 ……命捧げてもワシらの国で、こいつを拵えてぇってヤツだけついてこい。

 コイツ以上にドすげぇモンに、関わらせたるわ」

 

 

【滅びた古代王国の末裔を称する、緑の領の権力者達が】

 

「ああ、いけませんなぁ。こうも下賤の者がうるさく息づくのは美しくない」

「少しばかり魔力が優れる風の馬鹿どもが、思い上がっているのでしょう。嘆かわしい」

「本当です。

 これは身の程を分からせてやりませんと」

 

「まずは商人たちを操って食料方面から締め上げてやりますかな? 他にもあらゆる流通を規制して奴らの懐をズタボロにしてやりましょう」

「いやいや、こんな時の為の猟犬ですぞ。

 王家の名を使い火と水の領をけしかけましょう。

 忍びを放って毒を潜ませるのもよい」

 

「ああ、それならばお隣の雨の国の者たちも巻き込んでみてはどうかね?

 どうやら彼らの当主は神殿に嫌われている様子。

 より多くの領主達の力を借りられる事でしょう」

 

「ふむ、これはよい機会ですなぁ。

 ここで最近あの国で広まりつつある美味なる食事の技術やら、魔導具の権利やらを堂々とむしりとってやりましょう」

 

「然り。あのように洗練されたモノは、……我らのような選ばれたモノにこそふさわしい」

「「「その通り、その通りだ」」」

 

「では諸君。愚かな劣等種たちの末路に乾杯を」

 

 

【王国の遥か北東。その魔力で白雪地方の国々を操る、北のエルフ達が】

 

【今はまだ弱小たる未来の鉄の大帝国が】

 

【魔蟲の大砂漠を抜け、長い旅路の果てに東の諸国より至った大国の王子が】

 

【そして、すっとんきょうな親バカが】

 

「セバス。やっぱり必要だと思うんだ」

「旦那様。今度は何が必要なのです」

「夢の国だ」

「は?」

 

「俺は三色同盟の盟主として。

 ここに娘の為に、誰もがその童心を取り戻すだろう約束された夢の国。

 ニャッピーランドの建設を宣言する!」

「はぁっ!?」

 

 

 幻想世界。

 その世界に生きる者たちが思い思いに、それぞれの命の音色を響かせて、悲しみの世界はその色を変えていくのだ。

 

 

「なんだお前、魔獣、いや精霊獣か?」

『君がジルクリフかい?

 ボクはレギン。時の中位を預かる高位精霊ってヤツさ。

 何だか楽しい事をしているヤツがニンゲンにいると風のヤツに聞いてね。

 ボク達も仲間に入れておくれよ?』

 

 

「どうやらパーティ会場には間に合ったようだな。悪いがな、その娘は貰っていくぞご老人」

「き、キサマは紫のっ、グフっ!」

「じ、ジルクリフ様……ああ!」

 

「さてご令嬢。……俺のような男の所でよければ、このまま連れ拐われてくれるかね?」

 

 

「土魔法が最高にチートな魔法だってのは知ってたがなぁ。……これほどか」

「おい、ジル坊。他になんか儂らが作れるモンはねぇか。

 まかせろい。外っツラだけなら儂らの魔法で何だって作っちゃるぞ!」

「終わっちゃうんだもんなぁ。たった3ヶ月で5年分の……開発予定地全部。魔法ってホントチートだわぁ……」

「がはは、今日も精一杯働いて汗かいてウマいビールとシチューで乾杯じゃあ」

 

「……終わっちゃうんだもんなぁ」

 

 

「おとうさまぁ、だいすき~!

 ぎゅ~」

「セシリアは、今日も天使だなぁ…」

「蕩けすぎですよリョーシュ様…」

「にゃ~♪」

 

 

「えっ、経済封鎖受けてんの。ウチが?」

「ええ、樹の領から食料品などが、後は水の領から工芸品などが入ってこなくなっています」

「んー、食料は陽光の国に置かせて貰った加工工場からいくらでも届くし、最近あそこら辺から流れて来る工芸品ってそもそも俺らが砂の国の機械工場で作らせてるモンだろ。

 そっち封鎖出来ないなら、意味ないよな?」

「ええ、恐ろしく無意味なんですよ」

 

「……まぁ、ほっとくか。無害だコレ」

「そうですね」

 

 

「愚かモノ達に神の裁きを見せつけろ。不死身の軍団、神聖騎士団の力、思い知らせてやる!

 全軍突撃、諸侯達と連携を計れっ」

「「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

 

「ニャッピーに中の人などおらぬわタワケぇっ!」

「ぶけらばっ!」

「おひいさま。

 ……エルフの姫がそのように、いけません!」

 

 

「オレだってオヤジみたいな、あの人みたいなオトコになるんだ。ジユーをつらぬく、めちゃくちゃかっこいいオトコにっ」

「くく。俺はともかくアイツの背中追うのは、……伊達や酔狂じゃできねぇぜ。

 ちゃんとわかってんのか、ゼリックよぅ?」

「ジョウトーっだっての、くそオヤジ!」

 

 

「私はこの学校で多くの事を学び…」

「うう、セシリア。学年代表の挨拶、立派だぞぉ…」

「旦那様。次は貴方の学長スピーチなのですから、そろそろご準備を」

「何、酷いヤツだなセバス。親から娘の晴れ舞台を奪うなど、とても人の所業とは思えん。

 こんな日にそんな仕事、パスだパス。

 ……学園とか、んなのどうでもいいわ」

「貴方が、建てた、学園でしょうに!」

 

 

「こ、これは!?」

「ふ、……これはお嬢様の安全確保の為にどわーふ達にこしらえさせた魔導式強化外骨格(パワード・ドレス)

 なずけて、……にゃんにゃんばにー」

「ど、どう見てもキグルミだった。

 くっ、流石はいつでも我が娘に忠義を貫く万能幼女メイド、メリーよ。

 これはいい仕事と言わざると得ない!」 

「(親指ぐっ)ふっ、……リョーシュ様もわかってるね」

 

 

「おう。ゴーレム構造体をフルにつこうてパワーアシスト行いまくる、まったく新しい4m級の大型騎士鎧よ。さしずめ機動鎧と言った所かのぅ?」

「あ、人型ロボだコレ。……なぁ、実用性ってあんの?」

「……正直あんまねぇな。コストが馬鹿たけぇわりに実がねぇ」

「「人型って弱いモンなぁ……(泣)」」

 

 

「ふん、おまえがセシリアか。ウワサ通りのみにくい黒髪の女だな……。

 しかしオレはカンヨーなのだ。

 キサマのチカラを王家に捧げるというなら、このオレ、第2王子マークソードがキサマとコンヤクしてやってもよいぞ!」

「……ほう、何か言ったか我がライバルよ?」

「あ、おとうさま」

 

 

「じ、ジルクリフ卿。これは、……思ったよりも恥ずかしいぞ」

「何、もっと力を抜いて全部俺に委ねてしまえばいい。ウェンディ、一切を飾らぬお前の全てを、……隅々までこの俺に見せてくれ」

「ひゃ、ひゃいっ」

 

(閉じられたドアの向こうで)

「み、耳かきとは、なんて大胆なモノなのでしょう……。次はわ、ワタクシもあの方に。

 い、今すく湯浴みをして来なくては!」

 

 

「おとうさま、ここおかしいよ?」

「ん、どうしたセシリア」

「こことここにムダがあるの……。魔力が流れづらくなってて。えと、こうした方がいいのかも」

「「あ」」

「公爵様、これは……」

「ああイルマ君。

 ……無限動力炉の欠陥が今、失くなった」

 

 

「セシリアは、……ボクが守る」

「くく、オメェも難儀な女に惚れたなニール。

 ……だが見る目は間違ってねぇ。

 せいぜい頑張れや我が息子、未来の辺境伯様よ」

 

 

「ソランおねーさん、楽しそう♪」

「うん、セッシーもニコニコだねー」

 

「うん。おとうさまと一日一緒。

 すっごくすっごく、うれしいの♪」

「ボクもセッシーが嬉しそうだと、すっごくたのしーよぉ」

「「きゃ~、たぁのしー!」」

 

「おーい、二人ともー。

 焼けたからそろそろ食べよう。

 海で食べる焼きそばはサイコーだぞぅ!」

「「はーい!」」

 

 

 そしてその騒がしい音色を嫌う、歪んだ悪意が最悪の存在を呼び起こそうとも。

 

 

「おのれぇ、ジルクリフぅ。

 貴様が悪いのだ。貴様が神を、我々を冒涜するから、我々は神すら喰らう獣を起こさなくてはならなくなった。

 ふ、はは、ははははっ。

 さぁ古代文明を滅ぼした古き龍・炎龍よ。

 今、目覚めの時だ!

 選ばれた血筋たるこの私に、喜んでその力を貸すがいいっ」

『ご苦労だニンゲン。そして、……死ね』

「ひ、ひぁぁぁぁっ!!」

 

『ああ、懐かしいな。久々の現界だ。

 ……ムシケラ如きに封印されたこの屈辱、我は決して許さぬぞ?』

 

 

「あ、ああ。このままじゃ赤の領は終わりだ」

「龍なんて。

 あんな怪物の前に、貴族も騎士も無力だろ」

「……もう領民捨てて逃げようぜ。

 命あってのモノダネだろう」

 

「ふざけるな貴様ら。

 誇り高き王国の剣である我々が、今この場を離れるなど恥を知れ!

 レンシュバルト家の武名にかけて、我が領地を獣風情の好きにさせるなど許せるかっ」

 

 

『ふっ、人間にしては愉しめた。だがそれだけだムシケラよ』

「くっ、もはやここまでか……」

 

『はは、騎兵隊の登場だ!』 

『こちらウルリッヒより各機へオープンコール。航空爆撃小隊、これより大型エネミーの制圧を開始する』

 

「あれは、三色連合の……」

 

 

『なんだと、重力兵器が効かないだと!?』

『我には神の力が及んだ武器しか効かぬわ。

 この神話結界を破れぬ輩に、我を倒す術などないと知れムシケラ共よ』

『ち、くしょー!

 この、インチキトカゲ野郎がぁ!!』

『各自散開し、撤収せよ。……殿は俺達が務める』

 

 

 彼らはその調べを、決して止める事を許さない。

 その果てに。

 

 

「やはりあの炎龍を止めるには、私が生贄になる他ないのです。レンシュバルトの、龍の巫女の血を継ぐ私の命でアレを封じる他、ないのです」

「姉上、そんな……」

 

「ふん。あの程度の獣に捧げるには、いささか君の命は勝ちすぎているように思えるな」

「じ、ジルクリフ様!」

 

「私はね。君達のような運命を持つモノが、それに翻弄される事を決して許さない。

 何、もう手は打ってある

 このジルクリフを信じて頂きたい」

「そんな……」

「ジルクリフ卿っ。姉上は、姉上は助かるのですか!?」

 

「もちろんさ。未来のヒーロー君。

 ……この俺が長き巫女の呪縛など、ヤツの身体ごと打ち砕いてみせよう」

 

 

『に、ニンゲン風情が、神の形を真似るとはっ!』

『ああ、これが俺の、俺たちの切り札だ。

 精霊憑依式・人造神機。……これなら貴様の結界も貫けるだろうよ。

 さぁ次元を超えた力の裁きを受けるがいい、炎龍よ!

 疑似縮退炉、臨界機動!』

 

『精霊機・ステラジウス。最近のボクのお気に入りの器なんだ。彼の奥さんの名前を冠する、まったく新しい人造の神機さ。ニンゲンってスゴイだろトカゲ君』

『レギン、この裏切りモノがぁ!』

『ボクはいつだって楽しい方の味方さ、ご同輩♪』

 

 超大すぎるその龍と、人の造りし神の器の2つが交わる時。

 

『おとうさん、やっちゃえー』

『ああ、力を貸してくれ、セシリア、ミリアーーーーーーー!!』

 

《攻勢支援衛星ミリアとの連携により重力時限干渉システムの起動を確認。

 対象のロックを開始します》

 

『貴様らぁーーーーーー』

『星を喰らう牢獄の終わりと、それすら破る極光の力を受けろ!』

 

 世界の命運は、その親子の背中に託されるだろう。

 

 

 

「……ああ、僕は絶対に忘れない。人が神話に打ち勝った、今日この日の戦いを……」

 

 ……その光景に、赤髪の少年は涙を流し。

 それはきっと誰かの悲しみを超える、新たな音色となって響くのだ。

 

 

 かくも彼らは、世界を音で包み込む。それは幻想世界の理からは大きく外れた代物なれど。

 

 誰も聞いた事がない不可思議と、可笑しさに包まれた、……何故だか心地のよい響き。

 

 時に切なく、時に騒がしく。

 その景色をくるくると変えて興じられるその調べの名は。

 想いの籠もった、この世に一つの……狂想曲(ラプソディア)

 

 しかし今はまだ、それはまだ見ぬ明日の話。

 ……だが。

 

 

 父親達が背負いしモノを言いあったその先で、公爵は宣言通り愛娘の部屋へとたどり着いた。

 そこには幼い娘の相手をする1人の美しいメイド姿の女性がいて、公爵の姿に気づくと彼女は自然に微笑みながら彼の訪れを喜んだ。

 

「あら旦那様、今日は随分とお早いお越しですね?」

「ふむ。本来はもっと早くに来れたのだがな。……また少々面倒を引き受けてしまってな。中々ままならんものだ」

「あらあら、それは大変ですこと」

 

「おお……、今日は我が姫君は起きているようだな」

「うふふ。ええ、お嬢様は先程から寝所の中で元気にコロコロなさっておられますよ。直にご自身でご自由に、どこへでもお動きになられるかと思います」

 

「うむ、何より。何よりだ。

 ……うん?」

「あらあら、まぁまぁ?」

 

「ばぁ、あう、ばぁ……」

 

「お、おお、せ、セシリアが、……俺に向かってっ、ハイハイでハイハイで近寄ってくる!」

「あらあら、うふふ。……旦那様はとても幸運でございますねぇ」

 

「ばぅ、あぅ!」

 

「ああ、ああ。幸運だとも。世界一幸運さ。

 はは。

 見ろ、俺の娘が自ら俺の元に来てくれた。

 ……こんなに嬉しい事はない。

 今日は間違いなく我が人生最良の日だ!」

 

「あら旦那様。

 これからお嬢様はいくらでもご自分でできる事が増えていきますわ。そうそうに最良を決めてしまうのは、少しお早いのではございませんか?」

 

「ふっ、わかってないなメアリーは。娘の為の最良はいくつあっても構わんモノだよ。

 それが父親という生き物だ」

「まぁ、それはとても幸せそうな生き方ですね?」

 

「もちろん。幸せだとも。

 ……ああ、セシリア。

 君は今日、自分で歩む自由を得たぞ」

 

「あぅ、あ?」

 

「そうだ。そうとも。

 そうやって君は何だってできるんだ。何だってやれるし、選べる。選べるように俺がする。

 だから君は安心して選ぶんだ。

 さぁ、世界が君の選択を待っているぞぉ?」

 

「きゃっ、きゃっ♪」

 

「あらあら。旦那様ったら……、あまりお嬢様を興奮させないで下さいまし?」

「おおぅ。すまんすまん。

 はは、……俺はいつまでもメアリーに頭が上がらんなぁ。なぁセシリア?」

 

「もう旦那様ったら。ご冗談ばっかり」

 

「あながち冗談じゃないんだよなぁ……。

 君と君の娘には、俺の姫君が大層お世話になってるからなぁ?」

「きゃぅ、めぅ♪」

 

「もう。ふふっ。いつもそのような事をおっしゃって私をからかうんですから。お嬢様からお父さまを叱ってやって下さいまし?」

 

「あう、らう!」

 

「おいおい、それでは俺に勝ち目がないぞ。

 はは、降参だ。

 ……俺は生涯君たちには叶わなそうだな」

 

「あう、らぁ」

「あらあら、うふふ……。本当にお嬢様は旦那様を好いておられますね。どうやらなさけないお父さまを慰めてくれてらっしゃいますよ?」

 

「うむ。セシリアは今日も、天使だなぁ……」

 

 

 彼女が世界の運命を握っている事だけは、間違いないだろう。

 この世界でいずれ始まる狂想曲は常に。

 

 彼女を中心に、……謳われるものなのだから。

 

【娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない】

 第一シーズン・虹の王国篇。

 オープニング。

 

「そして始まる狂想曲《ラプソディア》」

 

 さぁ。終わらない狂想曲を……始めよう。

 

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