ガリアの魔王と商人聖女   作:孤藤海

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ロマリアとの対立
アウブ就任後の再訪問


ユルゲンシュミットに戻ったわたしは、まずはフェルディナンド救出のための助力を得るためにダンケルフェルガーと交渉し、共にアーレンスバッハに攻め込んだ。けれど、予想外にアーレンスバッハの貴族による迎撃はなく、代わりに暴れていたランツェナーヴェの者たちと戦うことになった。

 

わたしは神殿でアーレンスバッハの礎を自分の魔力で染め、アウブ・アーレンスバッハとなり、城に移動して晴れて供給の間からフェルディナンドを救出した。そうしたら、なぜか叱られてしまった。

 

救出の方法については事前に詳しく相談していなかったけど、フェルディナンドの想定ではアウブを捕らえて供給の間を開けさせるというものだったらしい。手っ取り早く中に入るためにアウブになるというのは、想定外だったようだ。君とは細かすぎるくらいに確認をしなければならないと再認識した、とまで言われてしまった。

 

ともかくアウブとなった以上はアーレンスバッハを荒らしていたランツェナーヴェの者たちを見過ごすことはできない。わたしはフェルディナンドと共にランツェナーヴェの掃討と国境門の閉鎖を行いながら、ランツェナーヴェにさらわれた貴族たちを救出した。

 

その後はゲオルギーネの後を追ってアーレンスバッハとダンケルフェルガーの騎士団と一緒にエーレンフェストの救援に向かった。結果、エーレンフェストの礎は守り切ることができたけど、激しい戦いの中で命を落とし、魔石に変わってしまった人を多く見たことで、わたしはすっかり魔石恐怖症になってしまったのだ。

 

それでも戦いは終わらない。ゲオルギーネがエーレンフェストを狙ったのに対して娘のディートリンデはユルゲンシュミットのツェントの座を狙い、ランツェナーヴェの者たちを貴族院に引き入れていたためだ。わたしたちは、ツェントの座を狙うランツェナーヴェの次期王であるジェルヴァージオと戦うことになった。

 

その戦いの最中、わたしは女神様を体に降臨させた。自分でも意味がわからないけど元神であるエアヴェルミーンとフェルディナンドの戦いの最中に神様に助けを求めたら、そうなってしまったのだ。そして、わたしは大切な家族に関する記憶を失うことになった。

 

結局、その後に行われたツェントレースなるもので、フェルディナンドが魔王ぶりを全開にしてジェルヴァージオを退けることに成功した。それで戦い自体は終わった。けれども、わたしの危機はそこからが本番だった。

 

ユルゲンシュミットの魔力不足を解決するため一代限りの魔術具のグルトリスハイトをエグランティーヌに渡す際に、神々がわたしに祝福を与えすぎてしまったのだ。結果、人には過ぎたるほどの神の魔力は、わたしの体を蝕むことになってしまった。わたしは一時的に国の礎を自分の魔力で染め、更にフェルディナンドの助力を得てなんとか神々の魔力を消費し、その中で家族の記憶も取り戻すことができたのだ。

 

そうしてわたしは未成年ながらアーレンスバッハを元にした新領地、アレキサンドリアのアウブに就任し、エントヴィッケルンで街を作り直した。そして、フェルディナンドと婚約をし、その補佐の元アレキサンドリアのアウブとして歩き始めた。

 

わたしはフェルディナンドに補佐をされ、無事にアウブとしての領主会議を終えた。それから少しして落ち着いたころ、わたしはフェルディナンドに切り出した。

 

「少し時間ができたので、タバサがどうなったのか様子を見てこようと思うのですが、よろしいですか?」

 

「明日は一日、休日ということにしてあるから、少しくらいなら問題はあるまい。しかし、今のアレキサンドリアには私たち以外にはレティーツィア様しか領主一族がいない。緊急時にティーツィア様しかいないというのは拙いので私は一緒には行けぬ。私の目の届かない所に行かれるのは不安なので、できれば行ってほしくないと思っているが……」

 

「大丈夫ですよ。今度は争いには関わりませんから」

 

「そう言っていても、君のことだ。何か予想外のことが起きるような気がしてならない」

 

そう言われてしまうと、否定することは難しい。何せここしばらくの間の出来事はわたしにとっても予想外のことばかりだったからだ。

 

「もしも何か相談しなければならないことが起きた時には、必ず一度、フェルディナンド様に相談するために帰還いたしますから……」

 

「必ず帰還して相談するのだな? いきなり呼びつけて何か知恵を貸してくれ、というようなことは言わないな?」

 

「お約束いたします」

 

いかに緊急時だとしても、サモン・サーヴァントで呼び出すほど、わたしは非常識ではないつもりだ。けれど、どうにもフェルディナンドには信用されていないようだ。

 

「わかった、それならばハルケギニアに行くことを許可しよう。ただし、念のため護衛騎士としてエックハルトも連れていけ。こちらはシュトラールがいればよい」

 

シュトラールはアーレンスバッハ時代からフェルディナンドに仕えてくれていた護衛騎士だ。エックハルト兄様には少し劣るとはいえ、フェルディナンドの信頼は厚い。

 

「それではわたくしが連れていくのは、側仕えはリーゼレータとグレーティア。護衛騎士はコルネリウス、レオノーレ、アンゲリカ、マティアス、ラウレンツ、エックハルト。文官はハルトムート、クラリッサ、ローデリヒというわけですね」

 

相変わらず、わたしが移動すると大所帯になるけど、これは諦めるしかないだろう。念のためできるだけの魔術具を持ち、わたしは世界扉の呪文を唱えた。

 

「それでは、今回も私が最初に向かわせていただきます」

 

そう言ってハルトムートが扉を潜りかけ、頭を突っ込んだところで体を戻した。

 

「何かございましたか?」

 

「いいえ、今回もキュルケ様の前でしたので、少し驚いただけです」

 

「またキュルケの前なのですか。まあ、話が早くて助かると思うことにしましょう」

 

キュルケのところに向かうのであれば気は楽だ。女性の前に向かうということで順番を変更してレオノーレ、アンゲリカを先頭に順番に扉を潜ってもらう。側近が全員移動をするまでは、わたしは魔術を使い続けなければならないのだ。

 

「それでは、行ってまいります、フェルディナンド様」

 

「ああ、先ほどは急に呼ぶことのないようにと言ったが、危険と思う場面になれば、ためらうことなく私を呼びなさい」

 

「わかりました」

 

フェルディナンドと微笑みを交わして、わたしはハルケギニアへの門を潜った。

 

「本当に、急に来るんだから……」

 

そう言ったキュルケの周囲には、先に転移した側近たちがほとんどいない。どうやら部屋の大きさがわたしたち全員が入るには小さすぎたようだ。部屋に入り切れない側近たちは廊下に出されている。

 

つまりキュルケは部屋で休んでいたら急にハルトムートが現れ、その後は次々と転移してくる側近たちの交通整理をする羽目になったということだろうか。うわー、迷惑。

 

「先触れもなく急な訪いとなったこと申し訳なく思います」

 

「いいわよ。それより、しばらくぶりだけど、フェルディナンドの救出は成功したってことでいいのよね。今日は一緒でないみたいだけど」

 

「はい、フェルディナンド様の救出は無事に成功しました。フェルディナンド様が一緒でないのは、わたくしがアウブになってしまったので、執務ができる者が二人とも領地を離れるわけにはいかなかったからですね」

 

「え? アウブって領主って意味だったわよね。どうしてローゼマインがアウブに就任しているの?」

 

「話せば長くなるのですけど……」

 

わたしはユルゲンシュミットに帰還してからこれまでのことを簡単に説明した。

 

「わけがわからないわね」

 

けれど、折角のわたしの説明に対するキュルケの反応は額に手を当てて首を振るというものだった。まあ、自分でもわけがわからない展開だったのだから、キュルケの反応も仕方のないことだ。

 

「今度はハルケギニアのことを聞かせてくださいませ。タバサは元気にしていますか?」

 

「元気にはしているわ。けれど、ちょっと問題が起きているところだけどね」

 

そう前置してキュルケはここ数か月の間にハルケギニアで起きたこと、そして、今現在、ガリアで起きている問題について話し始めた。

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