魔法科でオサレに生きる   作:雨雫

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どーん



第二章 クローバーの末席編
クローバーの末席編Ⅰ


 

 

 

 

 

 沖縄事変から早1年。中学2年生になった私はいつものように魔法大学からの帰り道を歩いていた。ここ1年でこれといって大きな変化はなく、相変わらず勉強は簡単だし研究は楽しい。

 

 魔法の開発も進んでいて、この1年で新たに何個か新しい魔法を生み出した。とはいえ、私の場合既に原型を知っていてそのアイディアを現代魔法の枠に落とし込むことを考えれば良い。だから魔法を0から生み出しているとは言えないかもしれない。

 

 今更だが、私の夢は生涯を通して『破道』と『縛道』をすべて生み出すことだ。まだ先の話になると思うけど、「紅姫」としての魔法を世に出すときには全てをこの2つに分類される形で発表するつもりだ。そしていつの日か1から100まで全てを、つまりは計200の魔法を生み出す。

 その結果、魔法の1シリーズとして『鬼道』の名が浸透すれば幸せだ。

 

 もちろん原典にも全ての鬼道が登場したわけではないから、いくらかは私がオリジナルで生み出すことには成るけれど、まずは既知の鬼道の再現から始めないとね。

 

 でも特に破道はオサレではあるんだけど面白みに欠けるんだよね~。例えば33番の蒼火墜(そうかつい)双連蒼火墜(そうれんそうかつい)は威力が違うだけでほぼ同じだし、63番の雷吼炮(らいこうほう)と88番の飛竜撃賊震天雷炮(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)もいまいち違いが分からない。

 

 少なくとも現代魔法にするにはいささか問題がある。あとは漢字が難しい。まあそこは工夫次第かな。

 

 今のところ合わせて20と少しの鬼道を魔法として開発したけど、その中には未完成なものもある。

 

 例えば、沖縄戦で使用した縛道の八十一「断空」

 あれは鰤界においては89番以下の破道をすべて防ぐというインチキな能力をしていて、文字通り最強の防御だった。だから中途半端な障壁魔法を断空と呼ぶわけにはいかない。

 

 でも現状、ただの硬い障壁魔法なんだよなあ……。厳密には、従来の障壁魔法のサイオン密度を高くして、それを何層にも重ねている。これは十文字家の「ファランクス」を参考にした。さすがに障壁を自動展開(修復)したり移動したりはできないけどね。

 

 けれど対物障壁以外の障壁魔法で扱うことはできる。だから、沖縄戦では銃弾を防ぐために対物障壁を展開したけど、それを耐熱障壁や反射障壁に変えて展開することは可能だ。

 

 つまり障壁魔法自体ではなく、密度を高めた薄い障壁を何層にも重ねて一つの魔法として練り上げた状態を「断空」と呼んでいるのだ。

 

 でもさー……はっきり言って「しょぼい」よね、わかる。私もそう思うもん。こんなのが断空さんなわけない!!って私の中のオタクが叫んでるもん。だからやっぱり「未完成」で、アイディアはあるんだけど実現には程遠い。

 

 え?そのアイディアを教えてくれって?……じゃあヒント!達也の雲散霧消だって通さなくしてやるつもり!まあ、望み薄なんだけどね……。

 

 

 さてさて、もうすぐ家につくし明日に備えて早く寝よっと……ってあれ?

 

 思考の海に沈んでいた私は、強烈な違和感に襲われてあたりを見渡した。何の変哲もない住宅街。夕暮れ時で空が茜色に染まっている。郊外に位置するこの町はベッドタウンとしても栄えていて、この時間は仕事帰りの人がそれなりにいるはずなのだ。なのに人っ子一人、それどころか鳥の鳴き声も聞こえない。

 

 一瞬にして警戒レベルを上げた私は急いで魔法を展開する

 

 

『縛道の七十七 天挺空羅』

 

 

 天挺空羅は本来なら周囲の味方と短く会話をする通信魔法だが、その真価は味方と魔法のパスをつなぐ過程にある。一人一人のサイオン形質を捕捉して通信するということは、影響範囲内にいる人を察知することができるということだ。

 

 その探知範囲内に私は二人分のサイオンの波動をとらえた。慌てて振り返ってその場所を見るけど、だれも見えない。けれど私は確かにそこからサイオンを感じる。

 

 「そこに隠れている2人、何か用?」

 

 声をかけてもしばらく反応がなかったが、やがて空気が揺らめいて浮き出るように2人の少女が現れた。それを見て、私は目を見開いた。見覚えがあったからだ。現世ではなく、前世で画面越しに。その特徴的なゴシックドレスを見間違えるはずもない。

 

「驚きました。私の隠形を見破るなんて。これは侮りすぎていたかしらね、ヤミ?」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないよヨル!どうするの?」

 

「あなたたちは……!?」

 

「ああ、ご挨拶が遅れてごめんなさい夢咲奏さん。私はヨル、この子はヤミ。本日は四葉家の使者としてまりました。よろしくお願いしますね?」

 

 年齢に見合わない艶やかな笑顔を浮かべるヨルこと黒羽亜夜子と、その弟(?)の黒羽文弥がそこにいた。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「四葉家の……えっと、ご当主様がなにか?」

 

 私は白々しくも知らないふりをしながら問いかける。

 

「ええ、我々の主人は夢咲様からなかなか良い返事を頂けないことに憤っておいでです。もう約1年ほど経ちますので、我々に直接交渉をしていくようにと。場合によっては……力づくでも連れてこいとのことです」

 

 そう、私は沖縄で四葉深夜から告げられた四葉家への誘いをこれまで避け続けていた。研究が忙しいとか、学校を休みたくないとかいろいろ理由をつけて。

 

 でもさすがにもう許してはくれないらしい。どうしようかな。

 

「ですが、私の極致拡散を見抜かれたとあっては、私たち二人の手には負えそうにありません。そもそもどうやって見抜いたのですか?」

 

「企業秘密だよ、教えない」

 

 亜夜子ちゃんの『極致拡散』は指定領域内における任意の気体、液体、物理的なエネルギーの分布を平均化し、識別できなくする魔法。簡単に言うと、超高度なステルス魔法だ。でもいくら物理的に姿を隠したからって、魔法を使っている以上サイオンまで隠すことはできない。天挺空羅で十分に対処できる。

 

「ふふっ聞いていた以上にすごい方なのですね。」

 

「君たちこそ。見たところ私とそんなに年は変わらないのに、ご当主様の使者だなんて。よっぽど『家』の中でも優秀なのね。」

 

 「黒羽」は四葉家の分家の中でも諜報や暗殺に特化した家だ。その中でもすでに頭角を現しているのがこの姉弟。当主様はよっぽど私を招きたい、というか囲いたいらしい。

 

「それでは、改めて当主————四葉真夜からの言葉を伝えます。『一度我が家にいらしてお茶でも飲みましょう。あなたも私たちが過激な手に出る前に話をつけたいでしょう?』」

 

 私の額からツーっと冷汗が流れる。これはほぼ脅しだ。「これ以上逃げ回るなら実力行使にでるぞ」という。しかも問題は私の周りにも被害が出るかもしれないことだ。だって四葉だもの。

 

 仕方ない、潮時かな。

 

「はあ……わかりました。謹んでご招待に預からせていただきます。」

 

「あら、思ったよりあっさりと決まって良かったです。」

 

「だって、あなたたち「四葉」が何をするかなんてわからないもの。これ以上逃げるのは無理そうだしね」

 

「ふふっ、賢明です。それでは、明朝改めてお迎えに上がりますので、本日はこれで。ヤミ、帰るわよ」

 

「はーい。それでは失礼します」

 

 軽く礼をした二人は、頭を下げたまま一瞬で目の前から消え去ってしまった。今のは疑似瞬間移動(デミ・シフト)かな。もう使えるんだ。

 

 

「はぁ、緊張したぁ~。でも亜夜子ちゃんに会えるなんてラッキーかも」

 

 だって亜夜子ちゃんかわいいんだもの。あのゴシック姿を初めてアニメで見たときは思わず悶えちゃったよね。もしかすると前世では深雪よりも好きだったかもしれない。

 

 文弥ちゃん(くん)はほんとに男の子なのか疑っちゃうくらいかわいかったな。ショタコンの気持ちがちょっとわかったかも。あの子もえげつない魔法を使うんだけどね。

 

 さて、お父さんとお母さんになんて言い訳しようかな。まさか四葉に行くなんて言えないもんね。

 

 「憂鬱だなあ……」

 

 四葉はよほど私を家に取り込みたいらしい。そりゃ達也の秘密をきいたり、深雪と仲良くなったりしちゃったからある程度は覚悟してたけど、奴隷になるのはごめんだ。

 

 今後がどうなるかは、私の交渉次第。何とか頑張って、自由な未来を手に入れないとね。

 

 

 

 




明日からしばらく忙しくなるので次の話は時間が空くと思います。ね、年単位にはならないようにするね…?


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