【伊アオ】「伊之助とアオイのほわほわもみじ狩り」【鬼滅の刃二次創作】   作:?がらくた

11 / 13
遅筆な筆者が二次創作を投稿していますが、本人が一番驚いています。
こだわりスカーフ持ちの?がらくたに、なってしまったかもしれません。
(素早さ種族値20 合計種族値150)


第11話 別れのてんぷら、猪頭の母の愛

完治した伊之助は、明日の昼には屋敷を出るという。

アオイは数日前に、その旨をカナヲと三人娘にも伝えた。

これが永遠の別れという訳ではない。

彼女たちもそれは理解していたが、幸せは簡単に壊れてしまう。

家族を殺された末に鬼殺隊に所属した、彼女たちだからこその複雑な感情だった。

だからこそ、せめて今生の別れになってもいいよう盛大に送り出そう。

五人は彼の好物であるてんぷらを振る舞う今日に向けて、街を駆け巡って食材を調達した。

氷を解けないよう駆け足で屋敷まで運び、木製の氷冷蔵庫の一段目には、両手に収まりきらないほど巨大な氷を置く。

そして二段目には、ありったけの食材を詰め込む。

そして退院前日、海の幸に山の幸をふんだんに取り揃えて、次々に揚げていく。

 

「喜ぶかな、伊之助」

「てんぷらは大好物だし、食べるのが好きな人だから問題ないわよ」

「確かに、すぐたいらげちゃいそうですよね~」

 

調理を終えると乙女たちは逐次、てんぷらを居間に運ぶ。

見ているだけで胃もたれしそうな山盛りの天ぷらに、伊之助は目を輝かせていた。

待てを躾けられた犬の如く食べ物を前にしても、凝視するだけで、食べ物には手をつけない。

早く食べさせてやろうと人数分の小皿を用意すると、すぐに少女たちは居間の座布団に座った。

 

「伊之助さん、どうぞ召し上がれ」

「……皆で作ったのが混じってる。私と三人のはアオイの味には及ばないかも」

「カナヲとチビ助の飯でも、天ぷらなら大歓迎だぜ」

「ならよかったです〜」

「伊之助さん一人で、病室で食べてもらおうかとも思いましたけど……それだと味気ないですし」

「お前、利口なのに知らねぇのか? 飯は大勢で食うと、もっと旨いんだぞ。今日はお前らもいるんだから格別の味がすんだろ!」

「そうでしたね」

「そうだろう、俺様はお前なんかより凄いんだぞ」

 

おだてられ得意気な彼とは対称的に、三人娘はどこか悲しげな顔をしていた。

年下に対して面倒見がよく、子供と同じ目線で遊んでくれる大人は、彼くらいなものだ。

炭治郎は子沢山の家庭で生まれ育った影響か、子供慣れしているが年齢の割に大人びており、同じ目線に立てているとは言い難い。

特に懐いていたきよは深刻で、オンブバッタの夫婦のように背中にくっついて離れない。

 

「いいから座れ。いただきますしねーと飯が食えねーだろ?」

「きよちゃん、伊之助さんの言う通りにしよう?」

「伊之助さん、これからも遊びに来てくれますか?」

 

瞳を潤ませた彼女が、不安げにありのままの感情を言葉にすると、伊之助は彼女の頭にポンと手を置く。

そんな三人娘の素直さが、アオイは羨ましかった。

胸の奥では寂しいと思っていても、言えば彼を苦しめる。

自分が成長したと実感する度に、年を経て大人になる度に、彼女は自分の本当の気持ちが言えなくなった。

 

「おう、また来るっつうの。辛気臭い顔しやがって大袈裟なんだよ」

「伊之助は意地っ張りだから、きよちゃんみたいに素直にはなれないよね」

「うるせーな、カナヲ。ほら、こっちに来いよチビ助」

 

泣き出しそうなきよは胡坐をかいた伊之助に言われるがまま、素直に膝の上に乗る。

 

「今はドングリやれねーからな。これで我慢してくれ」

 

そういうと伊之助は、きよを後ろから抱擁した。

あまりの突然なことで驚いた彼女が振り返りつつ

 

「あの、急にどうしたんです?」

 

きよが呟くと

 

「ガキの頃に独りで心細かった時はな。形見の猪頭を抱き締めてたんだ。そうしてるとな、胸が暖かいもんで満たされていくんだよ。どうだ、ちったぁ俺が嘘ついてねぇって安心したか?」

 

ゆっくり語りかけて伊之助が笑いかけた。

 

「……はい!」

 

先ほどまで沈鬱だった表情が、たちまちに晴れていく。

きよに笑顔が戻ったのを確認すると、伊之助も、その場にいた少女たちも穏やかな笑みを浮かべた。

人の温もりを知らなかった少年の心には、子育てをした母猪が今でも生きているのだ。

しのぶが蝶屋敷の少女たちの心に、生きているように。

 

「ありがとうございます。きよちゃんも、だいぶ落ち着いたみたいです」

「俺が泣き止まない時は、母ちゃんもこうしてくれたのかもしんねーな」

「伊之助には、お母さんが二人もいるんだね。ちょっと妬いちゃうな。私の両親は碌な人じゃなかったから」

「いいだろ! 俺の自慢の母ちゃんたちだぜ」

 

少年は朗らかに笑う。

親を殺され、山で育った彼も相当に悲惨な生い立ちだ。

そんな過酷極まりない環境で生きてこれたのは、どこかで母たちの愛を覚えていた……だからかもしれない。

 

「それはそうと、早く食おうぜ。飯は作りたてが一番うめぇからな」

「いただきま~す」

 

会話を切り上げると、いただきますをして、食事にありつく。

 

「伊之助さん。次は私、お願いしますね」

「私も~」

「順番にやってやるから、まずはこいつが満足するまでな」

 

伊之助はきよが乗っているせいで、腕を思うように動かせないようだった。

そんな彼女を鬱陶しがることなく、伊之助はぎこちなく体を伸ばしてふんばっている。

このままでは、彼は天ぷらを存分に食べられない。

とはいえ彼女を、伊之助から引き剝がすのは気が引ける。

香ばしい匂いを放つ食べ物の数々を前に、アオイは生唾を飲み込んで、彼にてんぷらを取り分けた。

 

「伊之助さんのために作ったんですから。どんどん食べて下さいね」

「あ、私がやります〜」

 

見かねたアオイの気遣いで、きよは自分が伊之助の食事の邪魔になっているのを悟ったのだろう。

彼の要求した天ぷらを、小皿によそう。

 

「どうですか、お味は~」

「旨いに決まってんだろ。次はサツマイモの奴が食いてぇ! 取ってくれ」

 

美味しそうに頬張る彼を見上げ、きよは相好を崩した。

山のようにあったてんぷらも徐々に減っていく。

 

「伊之助さ〜ん」

「きよちゃん、どいて?」

「わかったわかった。きよ、お前はもう降りてくれ」

 

三人娘は、代わる代わる彼の膝に乗った。

普段なら行儀が悪いと注意の一つもしていたが、伊之助との時間を満喫している三人娘に言うのは野暮だ。

 

(……なんかいいな、こういうの)

 

「次は私で……」

 

きよが二度目の抱っこを要求した瞬間

 

「いやいや、お前らはいいのか?」

 

お前らの視線の先には、アオイとカナヲがいる。

突拍子もない発言に、二人はうつむいて黙り込む。

年の離れた三人娘には馴れ合いでも、アオイとカナヲの年長組にとっては刺激が強い提案だった。

はだけた浴衣から見える、筋骨隆々とした体。

実際に座れば、首筋に生暖かい吐息が当たるであろうことは想像に難くなく、頭に浮かべただけで、タコのように顔が茹る。

 

「……わ、私には炭治郎がいるから。そういうのは伊之助とできない」

 

顔を紅潮させて、もじもじとしながらも意思表示をして断る。

共闘してしのぶの仇を討った伊之助に、友情とも恋愛感情とも言えぬ、並々ならぬ感情が渦巻いている。

言葉より多くを語る表情と態度を見て、カナヲの中で彼の存在が大きなものだと、アオイは知った。

睫毛が長く顔立ちの整った伊之助と、可憐な花のようなカナヲ。

美男美女の彼らは横に並んでいると、それだけで場が華やぐ。

互いに互いを呼び捨てで、距離感も含めて、二人は数年来の付き合いの恋人同士に見えなくもない。

 

(……カナヲにとって、伊之助さんはどんな存在なんだろう)

 

アオイは心の中で、彼らの仲を認めていた。

炭治郎が好きだとしても、ひょんなきっかけで伊之助への好意に変わる可能性だって十二分にある。

それを咎めることなど、部外者の自分にはできない。

彼らがどんな相手と結ばれようと勝手だ。

幼少期から気の置けない親友であるカナヲが幸せになるなら、どんな形でも嬉しいはずだ。

にも関わらず、アオイの胸はざわついた。

カナヲに身体能力で劣っていても、心に燃えたぎる気持ちだけは負けたくない。

相反する自分の板挟みに、アオイ自身が一番驚いていた。

カナヲの返答から間もなく

 

「そうか、アオイは?」

 

会話の流れから予め予想はしていたが実際に聞かれると、想像以上に恥ずかしい。

はちきれんばかりに脈打つ鼓動に、アオイは何度も呼吸を整える。

 

「……本当に常識がない人ですね。小さな子たちはいいとして、年頃の女性にそういうことをやる意味、分かって言ってるんですか? 善逸さんと違って他意はないんでしょうけど」

「わざわざ聞かなくてよかったな。俺がやることなすこと、いちゃもんつけて怒鳴り散らすしな。チビども、今日はお前らとずっと一緒にいてやるぞ!」

「だから! そういうのは、ずっと一緒にいたい人にするんです!」

「俺は炭治郎たちともお前らとも、ずっといたいぞ? お前らは違うのか?」

 

目を爛々と輝かせて、伊之助はアオイに問う。

一点の曇りもない純粋な輝きを放つ瞳に、アオイはいつもの調子が狂った。

本心であっても常識を叩きこまないと、困るのは本人だ。

 

(……もっと嚙み砕いて説明しないと)

 

年頃の異性が抱き締めあう意味を、そのまま教えるのは、三人娘の教育によろしくない。

何が悲しくて、こんなことを好いた男に言わないといけないのか。

気恥ずかしさと三人娘への配慮のせいで、アオイは説明するのに時間を要した。

 

「ただ一人の異性にだけ、許される行為なんですよ。お嫁さんとか恋人とか……」

「つがいになりてぇ相手ってことか? まどろっこしい言い方しやがって」

「まぁ、そういうことです」

「ただ一人、ねぇ……」

 

蝶屋敷の女たちを、じろじろと舐め回すように見つめる。

カナヲ、きよ、すみ、なほ。

そしてアオイと伊之助の目が一瞬合うと、すぐさま彼は視線を逸らして、会話を続ける。

 

「俺にはそういうの、よく分かんねぇな。俺には人間の家族なんていなかったしな。なんとなくなら理解できてるがな。炭治郎たちと暮らしてく内に」

 

伊之助の心の奥深くに根差している闇は、想像以上に深いのだろう。

皆が言葉を失う中

 

「伊之助さんなら、きっと大丈夫です」

 

と、アオイが切り出した。

 

「その子たちと仲良く遊んでくれるでしょう? 子煩悩な、いい父親になれそうじゃないですか。それから……」

 

元気を出してほしい一心で褒めてやると、調子のいい彼は

 

「アオイ、お前もいい母ちゃんになれるぞ。飯が旨いからな。ただガミガミうるさいのは直せよ!」

 

アオイを褒めると同時に、けなしてみせる。

 

「ガミガミうるさいのは、あなたが非常識だからです。炭治郎さんにはお説教する必要なんてないですし。あなたはいつも一言よけいなんです!」

「なんだと! 口うるさいお前に言われたかねぇ!」

「第一きよちゃんだったからいいですけど、いきなり女性を抱き締めるなんて、他の人にやったら間違いなく横っ面を引っぱたかれてます! そういう所は矯正してくださいね!」

「や、やめてくださいよ〜」

「せっかく集まったんだもん。楽しく食べようよ」

 

ヒートアップしかけた口喧嘩は、三人娘とカナヲの仲裁で幕を引いた。

せめて最後くらいは、楽しく送り届けたかったのに。

 

(あ〜、バカバカ! 本当に何やってんだろう)

 

「……食事時にすいません。少し顔を洗ってきます」

 

先ほどまで楽しかった夕餉(ゆうげ)は、途端に喪に服すような暗さに様変わりした。

彼には感謝しているし、これからも関わっていきたいと思っている。

なのに、どうして素直になれないのだろう。

肌を突き刺すような冷たい水で顔を拭い、アオイは自らを省みるのだった。




あと2話で完成です。
終わりが見えてきて、モチベーションもそれなりにあるので、あまり完結まで時間はかからないと思います。
でもこのバカ作者は1年半放置した前科があるので、期待せず待っていてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。