【伊アオ】「伊之助とアオイのほわほわもみじ狩り」【鬼滅の刃二次創作】 作:?がらくた
もっと上手い文章を書く人は腐るほどいますが、自分なりに話はまとまったかなと感じています。
作者にそこまで長い話を書く能力と、モチベーションはないので、これにて完結ということで!
あれから数週間
蝶屋敷の書斎にこもって、二房の髪の少女が読書に勤しむ。
カナヲに誓ったしのぶに近づこうという夢。
それを叶えるために、アオイは知を極めるべく着実に歩んでいた。
鬼のいない世界を望んだしのぶは何を思い、何を考えていたのだろう。
バカな私にはわからず、黙々と読み進める。
堆(うずたか)く積まれた本の内容は、難解で改行もなく、文章はぎゅうぎゅうづめ。
そのせいで理解を深めるべく、さらに別の本を読み耽る、読書するための読書が必要になった。
知識の吸収は、遅々として進まない。
だが何かに没頭していると、余計な思考に囚われずに済み、気を紛らわせた。
しかし時折、図鑑に描かれた緻密な植物の絵に目を遣ると思い起こされる、ガサツで粗暴な猪頭の少年の顔。
(この植物、この前のもみじ狩りで見たわね。春になって、若芽を天ぷらにしてあげたら喜ぶだろうな……って、伊之助さんのこと思い出しちゃった)
邪念が混ざり、ハッと我に返ると、アオイは読んでいた本を閉じる。
(いかんいかん、集中力が欠けてる。ちょっと休憩)
体を伸ばすと、疲れがどっと押し寄せた。
ショボショボした目を休めるべく、椅子の背にもたれかかると、アオイは長い溜息をついた。
一朝一夕では身につかない、膨大な知の積み重ね。
どれだけの努力を重ねれば、しのぶという頂に辿り着けるのか。
「ダメだなぁ、私。これじゃ、しのぶ様に近づくなんて夢のまた夢だよ……」
そういうとアオイは、近くに置いた手鏡に手を伸ばした。
最近は自分の顔を好きになっていた。
「昔はもっと眉間に皺が寄ってたのにね。私が私じゃないみたい」
昔のアオイは、いつもしかめっ面だった。
手鏡の自分は、心なしか表情が穏やかになったように映る。
カナヲや三人娘、伊之助がかけてくれた言葉が自分を形作ってくれている。
少しづつ好きな自分になれている。
けれど今のアオイは憂いを帯びて、悲しみに染まっていた。
弱い自分も自分だ。
自分という存在から、誰しも逃げることなどできはしない。
少しでも理想の自分を目指す覚悟は、とうに決めた。
なのに、ぽっかりと胸に穴が空いたような気持ちは埋まらない。
伊之助がいないという、欠けた幸せばかりを考えて。
「別に亡くなったって訳じゃないのに大袈裟だぞ、アオイ」
自分で自分を慰めるも、会いたいの一言さえ届かない距離にいる伊之助への気持ちはどんどん膨らんでいく。
「私、何度もあの人を怒らせたからな。伊之助さんのためって言っても、言い方次第で不快にさせちゃうのは当たり前なのに……愛想つかされたのかな」
「アオイさーん、お客さんでーす」
すみの声がして、善逸と禰豆子の二人がやってきた。
確かに鎹鴉(かすがいがらす)に持たせた手紙に、近々遊びにくるとは連絡してきた。
まさか今日とは。
アオイは急いで玄関口に向かうと、2つの風呂敷を背負った善逸が、禰豆子と共に現れた。
足が不自由なのに、惚れた彼女にはかっこつけたいようだ。
「お久しぶりです。伊之助さんの調子はどうですか? お変わりないですか? 他の方々は一緒じゃないんですね」
「俺たちじゃ不満なのーっ?! まぁ、嫌がることしたかもだけどさぁ」
「すいません、騒がしくて」
「なんで禰豆子さんが謝るんですか」
騒がしい善逸の横で、彼女はペコリと頭を下げる。
炭治郎よりも先に伊之助の近況を知りたがる自分に、彼が自分の中で大きな存在となりつつあるのをアオイは自覚した。
「伊之助はすげぇ元気だよ。あいつ最近は屋敷に顔見せてないんだっけ。アオイちゃんが心配してるって伝えとくよ。他に何か用件ある?」
「伊之助さん、今日も薪割り頑張ってたね」
「そうだねー、禰豆子ちゃん」
「いえ、いいんです。無事ならそれで」
同じ家に住む二人ならばと、当然彼の現況を知っているだろう。
訊ねると、望んでいた答えが返ってきた。
だがアオイは彼の無事が知れて嬉しい反面、一抹の侘しさが込み上げた。
体調がよくても、他に優先すべきものでもできたのか。
そもそも蝶屋敷を訪れること自体が、彼にとってはどうでもいいことなのかもしれない。
殊勝な態度を取っても、アオイは伊之助にとって何者でもないことが歯痒い。
妻ならば早く帰ってこいと怒鳴りつけても、普通な行為だ。
恋人ならば逢瀬を重ねたいと懇願しても、可愛いわがままと許されるだろう。
だが、たまに顔を合わせるだけの知人の女に、そこまで彼を束縛する資格などある訳がない。
関心があれば、何かしら善逸と禰豆子に言伝をするはず。
連絡が途絶えたまま平然としているのが、自分に興味を示していない何よりの答えのように思えてならなかった。
自問自答していると、嫌な想像ばかりが浮かんできて止まらない。
(たまには私から会いに……ううん。伊之助さんが私と会うのを望まないなら、しょうがないじゃない)
黙り込んでいるとマイナスなことばかり考えてしまい、それを断ち切ろうと言葉を続ける。
「なんで炭治郎さんと一緒に来なかったんです? もう退院しちゃいましたよ」
「いや、俺が思うより早く回復しやがったから。まぁ、あいつから健康な肉体を取り除いたら何も残らないけど!」
「伊之助さんに失礼だよ」
「それに四人で同じ屋根の下に暮らしてるからさー。これを逃したら、禰豆子ちゃんと水入らずで遊ぶ機会なんてないし……禰豆子ちゃんと二人で街巡りしたかったし、別にいいけどねー!!! 炭治郎も伊之助もいない、二人っきりの時間サイコー!!!」
「ああ、なるほど」
下心丸出しの台詞を並べ立てる善逸に呆れたアオイは、聞いたことを後悔した。
この人はこういう男だった。
良くも悪くも、彼は相変わらずといった感じだ。
「でもアオイちゃんやカナヲちゃんとも会いたかったしねー。元気そうでよかった」
「ええ。鎹鴉(かすがいがらす)で連絡は取ってますけど、直接会わないと元気かどうかわかりませんから」
「そうだねー。アオイちゃん、前会った時より綺麗になったねぇ」
「手当たり次第ちょっかい出してると、禰豆子さんに幻滅されますよ」
「嫌ーっ、それは嫌ー!」
アオイは、キザなセリフを適当にあしらって釘を刺す。
禰豆子の話題をしておけば、とりあえず執拗にセクハラはしないだろう。
足袋(たび)を脱いだ二人を、アオイは居間へと案内する。
「すいません、気がきかなくて。立ち話もなんですから、奥にどうぞ」
「いいっていいって、すぐに出ていくからさ」
「いえいえ。善逸さんは足が悪いんですから、無理をせず休んでいって下さい」
「アオイさん、ありがとうございます。お言葉に甘えますね。積もる話もありますし」
年端もいかない少女は、しっかりした口振りで禰豆子が感謝を述べる。
アオイは彼女の笑顔の眩しさに、炭治郎との確かな血の繋がりを感じた。
「ハァー、アオイちゃんみたいな女の子放っておいて何やってんだか。あいつが馬鹿だから、アオイちゃんが苦労するんだよ」
「待っていて下さい。茶菓子でも用意しますので」
せっかくの来客だし、もてなしてあげよう。
確か台所には煎餅があったはずだ。
アオイが廊下に出ると
「ねぇー、アオイちゃーん」
善逸が甲高い声で、唐突に叫び出す。
急に何事だろう。
鼓膜を震わせる大声に、アオイは両手で耳を塞いで振り返る。
「あんまりあいつが来ないこと、深く考えないで。上手く言えないけど、あのバカがアオイちゃん嫌いになるなんてありえないんだからさ!」
「……っ!」
「アオイちゃんには憎まれ口しか叩かないかもしんないけどぉ〜っ。君の話をする時のあいつからは鈴を転がすような音色がするんだ。ムカつくかもしれないけど、あれがあいつなりの不器用な接し方なんだよ」
善逸は音で人の心を感知できると聞いた。
鈴を転がすような音色。
どういった感情なのかは定かでなかったが、優しく穏やかで風情があって、心が洗われるような音だ。
もし嫌いなら鈴の音にはならないだろうし、そもそも定期的に会いにくるはずもない。
「常識ない奴だけど、あいつのこと大事にしてやってっ〜。複雑な環境で育ってるし、ああ見えて繊細な部分があるんだよ。勿論変なことしたら、ぶん殴っても構わないからさぁ〜」
煎餅を取った後、居間のテーブルの真ん中に置くと、アオイは先ほどの雑談の続きをし始めた。
「……殴れたらどんなにいいでしょうね」
「あいつにはキツく言っておくからねぇ。たぶん、もうそろそろ、あれが……」
「?」
いきなり彼は何かを言いかけ、アオイが首を傾げる。
「あ、なんでもないよ。アオイちゃん。アハハ……聞かなかったことにして! 俺は何も言ってないからね!」
「善逸さん、アオイさんには言わない約束でしょ。だって……」
明らかに動揺した様子で、善逸は言い淀む。
隣の禰豆子は彼を窘め、隠し事を貫こうとしていた。
しかも私にだけ。
彼らは何かを伊之助から口止めされているのか。
ますます伊之助が気になって、アオイはその日寝つけなかった。
ここだけの話ですが、二次創作の登場人物で嫌いなキャラが何人かいます。
ただ二次創作の作中で貶したり、ヘイト小説を書くのは自分の理念に反するので、そうならないように善処します。