【伊アオ】「伊之助とアオイのほわほわもみじ狩り」【鬼滅の刃二次創作】   作:?がらくた

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長らくすいませんでした。
ここから展開が若干暗くなっていきますが、最終的にはハッピーエンド?に収まるので、長い目で付き合ってください。


第5話 死の1週間

悲鳴の先に視線を向けると、そこにはクマがいた。

冬眠の時期が刻一刻と近づいている動物というのは、越冬の為の餌を死に物狂いで求め、気が立っている。

胸元に三日月の模様の浮かんだ怪物も例外ではなく、大柄な図体でのっそりと這い、民衆を眺めた。

ショーウインドーに並んだ商品を、品定めでもするみたいに。

 

「ひゃあああああ!」

「に、逃げろおおぉぉっ!」

 

命惜しさに荷物も置き去りにして、一目散に逃げ惑う者。

いたずらに騒ぎ、周囲の恐怖を煽る者。

言葉を失って、ただ静観している者。

クマへの反応は、三者三様だった。

だが、その場にいた誰もが冷静さを欠いていた。

 

「俺様は山の王だ。動物たちの扱いには慣れてる。他の連中はお前らに任せた」

 

鼻息を鳴らすと、伊之助は啖呵を切る。

本来であれば、人がクマに挑むなど無謀そのもの。

しかしカナヲによれば、伊之助は動物の考えがある程度、理解できるという。

にわかに信じ難かったが、それが本当ならば、無用な衝突を避けられる可能性もでてくる。

それにクマ相手の時間稼ぎなど、約一年前まで鬼を狩っていた彼にしかできない。

ここは彼の言う通りにした方が賢明だろう。

伊之助の判断に、アオイは大きく頷くと

 

「伊之助さん、これを……」

「あん?」

 

アオイは彼の手に、ベルトの留め金に括り付けていたクマ鈴を握らせる。

無事で帰ってきてほしいと淡い願いを込めて、げんこつを優しく包むと、伊之助はとっさに手を引っ込めた。

 

「なんだよ、いきなり!」

「鳴らせば熊が怯むかもしれません。人も動物も傷つけあわないで済むなら、それが一番ですから」

「驚かせやがって、ちょっくら行ってくるぜ。 オラァーーーッ、伊之助様のお通りじゃあ! 道を開けろッ、山の子分ども!」

 

近所の散歩にでもいくみたいに、適当な返事をして、彼はアオイに背を向ける。

心に滾る正義感を隠そうとする不器用な一言に、鬼殺隊にいた頃の彼の姿が、ふと頭をかすめた。

那田蜘蛛山に、無限列車の任務。

自分の身代わりになってくれた、遊郭への潜入。

そして無限城での激闘。

どんな大怪我をしても、伊之助は最後には必ず生きて帰ってきた。

有言実行してきた彼の台詞に、この人ならば大丈夫だと、根拠のない安心感が芽生えた。

彼は向かい合うと力強い瞳でクマを見据え、鈴を持った右腕をぐるぐると振り回す。

クマを追い払う用の鈴ということもあって、音色は風鈴のように、上品で心地よいものではない。

ジャラジャラジャラジャラ……。

まるで伊之助の濁声の如く、耳障りな金属音が、周囲にいた人間の鼓膜を刺激する。

 

「アオコの奴め、嘘吹き込みやがって! 後で説教してやる!」

 

―――鈴の音を耳にしても、クマの双眸は相変わらず、伊之助を捉えて離さない。

 

(どうして人から離れないの?!)

 

疑問で埋め尽くされたアオイの頭に、一つの解が思い浮かぶ。

なるべく考慮したくない可能性の一つだったが、その最悪の現実が起こっているのを、彼女も認めざるを得なかった。

間違いない。

―――あのクマは人を喰っている。

それも一人や二人ではなく、大量に。

だから人慣れしていて、人を積極的に襲うのだ。

そう考えると、人と遭遇しても恐れないことや、鈴の音にも反応しないことに合点がいく。

このままでは、死傷者が出てしまう。

 

「人喰い熊です、気をつけて!」

「んなこと、こいつの殺気で分かってるんだよ。でも放置すれば民間人に被害が出るだろ。だったら尚更、無視できねーよ! 構わず逃げろ! ここの連中が避難したら、俺も後に続く!」

 

非常事態ゆえか、伊之助は罵倒混じりに答えた。

アオイの人喰い熊の一言が功を奏したのだろうか。

その場に居合わせた人間は、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

残されたのは、足腰の弱った老人の夫婦数名のみとなった。

 

「アオイさん、あの人たちを誘導して私たちも……」

「ええ、そうしましょう」

 

三人娘に促され、立ち上がろうとすると、アオイは自身の身に起きた異変に気がついた。

腕に目を向けると、生まれたての小鹿のように震えている。

奥歯を噛み締めて踏ん張るも、思ったように体に力が入らない。

アオイは放心して、自分自身に問いかけた。

 

(なんで? どうして……?)

 

ほどなくして彼女は理解した。

夜闇の中で時折響く、人々の絶叫。

木の葉が揺れる音や、誰かが葉っぱを踏む音にさえ敏感になり、まともに寝られない地獄の日々。

七日が経過して肌身で感じたのは、運よく生き残ったという心からの安堵と、人間の命がいとも容易く蹂躙される絶望。

貰った日輪刀の刃は、あの日以来傷一つついていない。

しかし両親とカナエの敵討ちに燃える心の刃は、あの日ポキリと折れた。

アオイは目の前の光景に、忌まわしい最終選別の夜を重ねる。

細かな点こそ違えど、自分たちの命を脅かす強大な脅威が、すぐ傍にいる点に大差はない。

彼女の過去のトラウマを思い起こすのに十分すぎるほど、今の状況が似通っていた。

封印してきた記憶が、まざまざと脳裏に浮かぶと、動悸は更に激しさを増す。

 

(私はあの頃から変わってない。近くで誰かが殺されても見てみぬ振りをし続けて、うずくまっている私のままだ)

 

立ち上がろうにも足が震えて、ただ直立することすら困難を極める。

 

「アオイ、カナヲはどこにいった?!」

「そ、そういえば、先ほどからお姿が!」

「え……」

 

素っ頓狂な声を上げて、あたりを見渡すと、先ほどまで敷物に座っていたカナヲの姿がない。

まるで最初から存在しなかったかのように、彼女は音も立てず、煙のように忽然と姿を消した。

まさか自分たちを見捨てて、一人そのまま逃げ出したのだろうか……。

突然のクマの襲撃と、カナヲの失踪。

度重なる不幸に三人娘も動揺して、アオイの詰襟の袖をすがるように掴む。

指示を出さないと、彼女たちまで巻き添えを食う。

それだけは避けねば。

使命感に駆られたアオイは、三人娘に声を張り上げた。

 

「あなたたちだけでも逃げて! 伊之助さんを置いていけない! それにカナヲも探して、避難の遅れた方々の保護もしないと。やるべきことは大積みなのよ!」

「見てれば分かります。アオイさん立てないんですよね?! 困ってる人を放っておけません!」

「アオイさんだって誰かがそうなったら、見過ごさないですよね!?」

「私たちがアオイさんの足になります!」

 

アオイを助けると、異口同音に唱える彼女たちの体は、かすかに震えていた。

 

(下手すれば、自分も危ういのに……)

 

彼女たちの一言が小さな体躯から、ありったけの勇気を振り絞って放たれた台詞なのだと察すると、アオイの目頭は熱くなる。

自分を慕い、身を案じる三人娘への愛おしさが込み上げると同時に、不甲斐なさで身を焼かれる思いがした。

年長者として、屋敷の主人として、彼女たちを導かないといけない肝心な時に、与えられた役割をこなせない。

腰抜け、臆病者。

どこからともなくそんな言葉が聞こえて、アオイを責め立てる。

 

(しっかりしろ、馬鹿! 年下の子に心配されてどうなるのよ!)

 

アオイが自らを鼓舞しても、染み付いた恐怖は、そう簡単には拭えない。

避難させて、下山する。

やるべきことを分かっていても、適切な行動ができなかった。

このままでは全員まとめて御陀仏だ。

 

(私はどうなっても、この子たちだけは……)

 

鬼との陰惨極まる戦いを経験せずに済んだ、五体満足の小さな命を見て、アオイは決意を固める。

伊之助にカナヲ、逃げ遅れた民間人の人命も掛かっている。

平素であれば弱みを隠そうとする卑小さも、その時ばかりは心から吹き飛んでいた。

 

「正直に言うわね。最終選別のこと思い出して、体がまともに動かないの」

「ですから、私たちがアオイさんを……」

「あなたたちに残った方々の避難と、カナヲの捜索を頼むわ。まだ遠くには行ってないはずよ」

 

三人娘はでも、だって、と駄々をこねて拒む。

 

「伊之助さんがクマなんかに遅れを取るとでも? 私だって元鬼殺隊員よ。だから大丈夫」

 

眉尻を下げて覗き込む三人娘に、精一杯の笑顔を向けたアオイが告げる。

しかし彼女たちの表情は、一向に晴れなかった。

不安な面持ちで大丈夫などと虚言を弄しても、何の気休めにもならないのだ。

ならせめて、不安でいっぱいな表情も気持ちも、全て包み隠さず伝えよう。

貴方たちを愛していると、その気持ちを添えて。

覚悟を決めたアオイの目を逸らすことなく、少女たちは真摯に耳を傾ける。

話を終えると

 

「アオイさんはなんで、自分の命は粗末に扱うんですか?」

「……我儘ばかり言わないで。貴方たちには生きていてほしいの。しのぶ様も、カナエ様も、先立たれたご両親もそう思ってたはずよ」

 

三人娘の確信を突く一言に、アオイが掠れた声で呟いた。

 

「なほちゃん、きよちゃん。いこう」

 

すみが二人に向かって言い、彼女は一人、アオイの元を立ち去る。

なほときよも、時折アオイと伊之助に後ろ髪を引かれて振り返っていたものの、歩を止めることなく、すみの後を追う。

すみは強面の玄弥にも臆することなく、病院食を食べるように奨めるなど、昔のしのぶやアオイに似た気の強い部分があった。

彼女なら他の二人を引っ張ってくれる。

アオイは勇敢なすみに、亡きしのぶの面影を見ていた。

 

「おじいさん、おばあさん。大丈夫ですか?」

「荷物はお持ちするので、ついてきてください」

 

三人娘が老人の元へ駆け寄っていくと、アオイはようやく安堵の溜息を漏らす。

きっと彼女たちなら、成し遂げてくれる。

後は自分のことを、なんとかしなければ。

動かない足を動かそうと試行錯誤していると、自分より患者を優先してしまう、看護師としての性がそうさせたのだろうか。

ふと伊之助とクマの方に、視線を送る。

すると同時にクマの丸太のような腕から、伊之助を薙ぎ払う一振りが繰り出され―――少年は宙を舞う。

軽々と吹き飛ばされた彼の口元には血が滴っており、痛みを我慢するように、伊之助は歯を嚙み合わせていた。

 

「伊之助さん!!!」

「うるせー、山の王の俺様がクマなんかにやられるわけねーだろ! いいから逃げろ、バカタレ!」

 

憎まれ口が返ってくるも、声量にはいつもの元気がなかった。

並の人間なら、生きているのがおかしいくらいの重傷を負っているはずだ。

 

(どうして息抜きに出掛けた先で、クマになんか会うのよ! どうして、どうして……!)

 

束の間の平穏の後の、悪夢のような出来事に、アオイは自分の運命を呪わずにいられなかった。




人気投票にたくさんの投票、ありがとうございました!
それでは鬼滅の刃の人気キャラを発表していきます。




第5位 ひさおばあちゃん

伊之助とのやり取りが可愛い、伊之助にほわほわを教えたひさおばあちゃんは伊之助にとって忘れられない人だろうなという意見がありました。
自分もひさおばあちゃんに再登場を望んでいましたが、出ませんでしたね。
残念です。




第4位 チュン太郎


単純に登場すると癒されるらしいので、この順位に。
小動物キャラは、やっぱり人気が高くなりがちですね。



第3位 うどん屋の豊さん


アニメの蕎麦が旨そう、怒りっぽいハゲでモブの癖に何故か印象に残るということで、3位にランクイン。
美味しそうなので、あの蕎麦を一度食べてみたいですね。



第2位 尾崎さん


母蜘蛛に操られていた女隊士の人ですね。
苦悶の表情で仲間を斬る姿を見て、新たな道(性癖)を切り拓けました、僕リョナ大好き、などの変態という名の紳士からの意見が多く寄せられました。



確かに俺は、女の子が不幸な目にあうアニメが好きといった。
でもね 困難に立ち向かう所が好きなんであって… バッドエンドが観たいわけじゃねぇんだよ 俺ぁ…




第1位 竈門葵枝


モブ隊士の竈門炭治郎の母親で、人妻で見た目がエッチなので好きと言う意見を数多く頂きました。このエロ男どもめ!
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