【伊アオ】「伊之助とアオイのほわほわもみじ狩り」【鬼滅の刃二次創作】 作:?がらくた
というより、最近はちょっとだけ気力があるので、ブログなどの更新も頑張れています。
いきなり1年半近く二次創作をほったらかしにしたかと思えば、1ヶ月に2回も長文を投稿する二次創作者は、たぶん俺以外にいません。
他の創作者の方は、もっと責任感があるので。
そんな躁うつのような執筆速度ですし、鬼滅ブームも全盛期と比べたら落ち着きましたが、楽しみにしていただければ二次創作者冥利につきます。
あれから一週間後
「お前のせいで怪我したんだから、とっとと治せよな! じゃねーとドングリ拾えないだろ! ガハハ!」
「はいはい、私が悪かったですよっ。早く治して出ていって下さい!」
「伊之助、アオイを困らせないで」
「看病してくれるアオイさんを困らせるなよ、伊之助」
伊之助とアオイは、普段通り口喧嘩する。
鬼との戦闘でも五体満足で生き残り、三人の中でも傷の治りが早かった伊之助の生命力は戦線を退いても健在で、山の麓の医者と看護に当たった看護婦から
「これほど治りの早い患者は見たことがない」
と、太鼓判を押されるほどであった。
見目麗しい容姿から、他の患者とは比にならない手厚い看護をしてもらえたようだが、当人は他人に囲まれた生活の居心地が悪かったようだ。
本人の希望もあって、早々に蝶屋敷で治療を施されることとなる。
責任を感じていたアオイの懸命な看病の甲斐あり、今では怪我をする前より元気と思えるほど快復して、彼女は安堵した。
活き活きとした彼を見ていると、気力がみなぎってくる。
「いやぁ、びっくりしたよ。屋敷には近々遊びにいく予定だったのに、こんな形で出向くことになるなんて思いもしなかったな」
「体、痛んだりしない?」
「大袈裟すぎるんだっつの。お前らは俺の頑丈さ、よく知ってんだろ」
伊之助はベッドの上に立ち上がると、胸を張ってアピールしてみせた。
そうやって自分の体調を鑑みず、すぐに無茶をする所が心配なのだけど。
アオイが笑うと、カナヲと炭治郎も示し合わせたように苦笑した。
心配させないように振る舞う、彼なりの優しさなのだろう。
だが病人だという自覚はしてほしいものだ。
「何か足りないものとか、欲しいものとかある?」
「ツヤツヤのドングリだ。もみじ狩りで、あんまり集まらなかったからな」
普通なら好物なり滋養にいい果物、娯楽になるような物を要求するのが一般的だ。
しかし伊之助の返答は、ある意味彼らしかった。
そんなにドングリなど集めて何をするのか。
アオイは少しだけ興味が湧く。
「伊之助は相変わらずなぁ。今度、山から降りるついでに探してみるよ」
「ありがとよ!」
感謝をする伊之助を見て、炭治郎はにんまり微笑む。
「紅葉狩りした時にね。アオイや三人と協力して料理したの。伊之助以外は褒めてくれて嬉しかった」
「俺もカナヲの手料理、食べてみたいなぁ。伊之助、せっかくカナヲが作ってくれたんだから、感謝しないとダメじゃないか」
「うっせぇ、俺様は正直に答えただけだ!」
注意を受けても、伊之助は頑なに意見を変えなかった。
しかし友人の料理と比較されているのを考えると、素直に喜べない。
アオイは複雑な気持ちで、やりとりを見守る。
「アオイと料理の腕を比べたら負けるのは、私も自覚してるけど……」
「伊之助は、本当にアオイさんが大好きなんだな」
「バーカ、そんなわけあるか! あんな弱味噌より強い女がいいね!」
「……アオイをバカにしないで」
「他人のために怒れるなんて、カナヲはいい娘だね」
伊之助の怪我が介抱に向かい、気が緩んだアオイの目に、三人の会話する様子が映る。
意中の相手に唐突に褒められ、秋の紅葉の如く頬を染めたカナヲは炭治郎と会う以前のように、言葉足らずになった。
緊張のあまり、上手く喋れないのだろう。
カナヲは炭治郎が異性として好きなのだ。
(肝心の炭治郎さんはどう思ってるんだろう。人がいいから、誰にでも似たような態度だけど)
薬の買いつけにいった際に親友の気持ちを知って、アオイは彼に踏ん切りをつけた。
しかし諦めたつもりでも、仲を取り持って祝福するつもりでも。
二人にはとても明かせないような負の感情が、心の底から込み上げてくる。
(ダメだ。このままだと二人に迷惑かけちゃう)
「カナヲ、炭治郎さん。そこまで伊之助さんに構わないで大丈夫ですよ。私がしっかり診てますから」
炭治郎とカナヲを、さっさとこの場から追い払ってしまいたい。
アオイは言葉を続けて、退室を促す。
「伊之助さん、言ってくれたんです。怪我も病気も、私が治してくれるから問題ないって。だから私が伊之助さんを助けないといけないんです。彼の気持ちに応えるために」
盗み食いはするわ、薬はちゃんと飲まない。
ここまで手や世話がかかる患者も、そういないだろう。
だがしかし、彼への恩義は果たしたい。
それは嘘偽りのない本心だった。
「……アオイさん」
「炭治郎、二人きりにさせてあげよう」
炭治郎は困ったような八の字眉になるも、カナヲが呼びかけると、彼女の言う通りにすることを決めたようだ。
風呂敷を手に持つと
「アオイさん、無理しないでくださいね」
炭治郎がそう云った。
「え……」
彼の一言に、アオイは思わず声を漏らす。
「俺たちはアオイさんや伊之助みたいに五体満足ではないですけど。それでもみんなの力になりたいんです。だから、いつでも俺たちを頼ってください」
俺たちという炭治郎の笑顔は自分ではなく、カナヲに向けられている。
彼はお日様で誰かを特別に愛することはなく、誰にでも平等に優しさを振りまく。
……もしかしたら、自分にも。
隊士として前線にはいない自分に
「アオイさんの気持ちを持っていく」
と励ましてくれた彼ならと。
だが彼女の願いも虚しく、太陽の光はただ一人、カナヲのみに一身に注がれようとしている。
(どうしてこの人は人の心を見透かすように、暖かい言葉をかけてくれるんだろう……興味もない癖に……)
「ありがとうございます。炭治郎さん」
自分でもびっくりするくらい、心のこもっていない感謝の言葉を、アオイは口にしていた。
彼への失望なのか。
それとも単に女の醜い嫉妬なのか。
色で言い表すならば、内出血した血のような濃い黒だった。
「アオイさんは無理しがちですし……」
「失明された方の手を煩わせるつもりはないです。お構いなく」
炭治郎とカナヲがこの場にいることに心がモヤモヤして、初対面の時のように、親切心を冷淡に突っ撥ねる。
彼女自身にも、ただの八つ当たりという自覚はあった。
告白する勇気も、彼を奪い取るだけの度胸も、アオイにはなかった。
幼い頃から多くの時間を共にした友人への情が、それを許さなかったのだ。
関係を維持したままでいい。
自分に彼は相応しくないから。
そう言い聞かせている内に、気がつけば二人が遠いところにいくのを、ただぼんやりと眺めているのが関の山だった。
(薬種問屋への買い出しでカナヲの気持ちを聞いて、私は諦めたはずなのに……)
「たまに見舞いに来ます。伊之助のこと、よろしくお願いします。アオイさんになら、伊之助を任せられます」
失礼な物言いにも動じず、恭しく一瞥すると
「……炭治郎の見送りしてくるから、席を外すね」
「久々の再会だし、積もる話もあるでしょう。私に遠慮せず、ゆっくりと」
部屋から去る二人を見送ると、カナヲがアオイの元に戻ってくる。
何か忘れ物でもしたのだろうか。
「ねぇ、アオイ」
彼女にカナヲが切り出す。
さっきは炭治郎に、ずいぶん酷い仕打ちをした。
(……流石のカナヲでも怒るよね)
そう身構えたが彼女の放つ一言一言は亡きカナエやしのぶにも似た慈愛に満ちていて、アオイは面食らった。
「うん」
としか返せなかった。
カナヲが喋り終えると、アオイは昂ぶった感情をそのまま吐露する。
「カナヲ」
「……なに」
「私、鬼殺隊にいた時は必死だったよ。でも、しのぶ様の背中すら見えなかった。しのぶ様に近い強さまで登り詰めた貴方が羨ましかった」
「私だってそう。もっと知識を蓄えていたら沢山の命を救えたのに、もっと強かったら命を奪わせずに済んだのにって、ずっと思ってた。しのぶ姉さんやアオイに助けられた人が、どれだけと思ってるの?」
カナヲから初めて聞かされた本音。
炭治郎と出会ってからというもの、彼女は目に見えて変わった。
彼女が変化したように、鬼がいた時の頃の卑屈な自分を乗り越えていきたい。
(……カナヲ、ありがとう)
「私にもカナヲにも足りないものが多すぎて、一人だけじゃあの人に追いつくのは無理だって気づいた。だから一緒にあの人を超えていこう。きっと、それが思いを継ぐってことだから」
「……そうだね。私とアオイの2人でしのぶ姉さんを追い抜こうね。負けず嫌いだから、しのぶ姉さんは悔しがるよ」
昔の彼女は人形のようだった。
そんな彼女なりに鬼殺隊にいた日々の幸せや不幸、様々な気持ちを感じ取っていたのだ。
カナヲの一言一言を噛み締め、アオイは無言で頷く。
会話を終えてから病室にいくと、伊之助は彼女に突っ掛かった。
「さっきの言い分はあんまりなんじゃねーか。炭治郎だから切れなかったけど、俺なら言い返してるぜ。お前も俺の治療で、気ィ張ってるんだろうけどよ」
「よく見てますね。私って、そんなに険しい顔してます?」
「病人の看護してる時は、いつもそうだろ。この前、遊びにいった時は普通だったけどな」
焦点の合わない猪の瞳にも、自分の余裕のなさは映っていたらしい。
「人の命を預かってますから、気が抜けなくて……」
「戦ってた時の俺も、そんな表情だったかもしれねぇわ。お前にとっては病人の治療が戦いだったんだな」
「被り物のせいで、どんな顔してるかなんて分からないですよ」
「確かにな」
流れるような会話の後
「……おい、アオイ」
そう伊之助が切り出した。
「はい、なんでしょうか」
アオイは耳を傾けるが伊之助は口ごもり、会話が途切れた。
普段ならズケズケと話す彼らしくもない。
「……いや、やっぱいいわ」
「はぁ」
その後も彼は何度も、何かを訴えようとしてきた。
しかし、その度に伊之助は黙ってしまう。
(どうしたんだろう。具合でも悪いのかな)
いつもとは違う彼の態度が、アオイの心の中に妙に残るのだった。
実を言うと次の第8話の部分を執筆したくて、この中編小説を書き始めました。
なので第8話には力を入れていきたいな、と思っています。