面倒くさいので、取り敢えず寝る(完結) 作:とんこつラーメン
これに関しては、今回が今年最後になるかもです。
「ん?」
生徒会室で寛いでいると、いきなり私のスマホに着信が。
誰かと思って見てみると、相手は義父さんだった。
「もしもしもしもし?」
『もしもし加奈かい?』
「いきなりどうしたの? お義父さん」
私の言葉を聞いて、生徒会室が一気に静まり返った。
八皇先生以外の皆が緊張したかのようにこっちを凝視している。
そりゃ、通話相手が校長先生なら緊張もするか。
『もう気が付いているとは思うが、駒王町に何者かが侵入してきた』
「うん、知ってる。私だけじゃなくて、ソーナや八皇先生達も気が付いてたよ」
『流石だな。その者達なのだが、実は教会から派遣されて来た者達のようだ』
「教会から…。しかも複数形ってことは、相手は一人じゃないってこと?」
『うむ。相手は二人組で、年の頃は加奈たちとそう変わりが無い少女達だ』
一応は知っているけど、ここは敢えて知らない振り。
その方が情報を引き出させやすいしね。
「あ…ちょっと待って。今からスピーカーモードにして、皆で聞けるようにするから」
『分かった』
ちょちょいちょい…ってな。
はい。これで皆で仲良くお話が聞けますよっと。
「もういいよ」
『うむ。それでは改めて……』
ついさっき私に言った事を皆にも話す。
八皇先生は微動だにせず、他の皆は真剣な表情で聞き入っていた。
「教会からの使者…一体何が目的でこの町に…?」
『それについては本人達から聞いた方がいいだろう』
「ベリアル殿…いや、相良校長は何も御存じないのですか?」
『…実は、彼女達が町に入ったと同時に私の元に一通の電話があった』
「相手は?」
『ミカエルだ』
「わぉ……」
「天界の誇る4大天使の一角…!」
ミカエルさんは私もよく知っている。
うちの義父さんの昔馴染みであり、アブデルにとっては目の上のたんこぶでもあるらしい。
なんでも、コミケの時期などに天界から地上に降りようとすると、いつもそれを阻止しようと現れるからだとか。
だが、別の意味で腐ってもアブデルはこの世で最も神に近い存在である熾天使。
幾ら超絶有名とはいえ、下から二番目の大天使じゃどんなに足掻いても食い止められる筈が無い。実力が余りにも違い過ぎるから。
単純な実力じゃ絶対に敵わない代わりに、口喧嘩では互角らしく、その時の腹いせによく出会い頭に説教をしているのだとか。
『彼…いや、今は彼女か』
「ミカエルさん、また性別を変えてるの?」
『それがミカエルにとって数少ないストレス発散法らしいからね』
天使は基本的に性別の概念が無く両性具有とされている。
よく絵画とかで描かれている天使も、裸なのに局部が描かれてない事があるでしょ?
つまりはそーゆーこと。どっちもあるし、どっちも無いってわけ。
だから、天使の人達はその気になればいつでも男性体にも女性体にもなれる。
ミカエルさんの男性体は金髪碧眼の超イケメンだが、女性体になると一変して黒髪ロンゲでスタイル抜群の美少女へと変貌する。
だけど、どれだけ美少女でもアブデルは好きになったりしない。
本人曰く『見た目だけならば間違いなく好みの美少女だが、中身がミカエルだと考えると一瞬で萎える』とのこと。
男心は複雑怪奇ですな。
因みに、アブデルもその気になれば女性体に変身できるらしいけど、何があっても絶対にしないと公言している。
余談だけど、神話の時代ではルシファー義母さんとミカエルさんは犬猿の仲だったらしく、よく死闘を繰り広げていたとか。
けど、今じゃミカエルさん的には義母さんに対して友情のような愛情のような複雑な感情を抱いている…とアブデルが言ってた。
『そのミカエルから軽い概要程度は聞かされたが、それだけだ。故に…』
「その人達から聞いた方がいい…ってワケね。りょーかい」
『彼女達は真っ直ぐと駒王学園へと向かってきている様子だ。恐らく、この学園に私を始めとする悪魔がいる事を知っているんだろう』
「という事は、彼女達は校長先生の所へ…?」
『来るだろうが、流石に学校関係者じゃない人間を無断で校舎内へと入れてしまったら混乱が引き起こる可能性がある。そこで…』
「その前に、我々がどうにかするのですね?」
『あぁ。その気になればどうとでも出来るが、良い機会だ。君達の将来の為にもこういった事は今のうちに経験しておくべきだろう。ミカエルもそれには同意していてね。今回の事は全て君達に一任しようと考えている』
「私達に…ですか?」
これまた大変なことになってきたな…。
けど、彼女達の目的ってまず間違いなく『アレ』の事だよね?
原作ならばいざ知らず、この世界線じゃ『前提』からして崩れ去ってるしなぁ~。
下手をすると、原作以上に面倒なことになりかねないぞ?
まぁ…『諸悪の根源』たちがいなくなってるから、多少はマシかもしれないけど。
『もしも本当に困ったことがあれば、その時は遠慮なく頼って来なさい。いつでも力になってあげよう』
「分かりました」
それまでは自力で頑張れって事ね。
本当は介入なんてしなくはないけど、今回に限ってはそうもいかないだろう。
穏便に終わる可能性も無きに非ずだし。
「校長先生。僕はどうしたらいいでしょうか?」
『柊先生は、一先ずはこれまで通りに教師として見守る形でお願いします。だが、いざと言う時は……』
「承知しています。その時は一人の音使いとして存分に力を振るいましょう」
『お願いします。では、これで。加奈、頑張るんだよ』
「はぁ~い」
通話が切れた。
これはもう絶対にやらなきゃいけない流れですね。そうですね。
手を抜いたりしたら、お小遣いを減らされるかもしれないし。
それだけは絶対に御免被る。
「さて…と。まずは相手さんがどこまで来ているか知っておかないと。ドライグ」
『どうした?』
「ドライグってさ、確かウチのフェアリーちゃんと視覚を共有できたよね?」
『出来る…というか、現在進行形で共有しているぞ。お前の使い魔であるならば、俺とも繋がりが出来ているからな』
「じゃあさ、さっき話してた子達がどこまで来ているとか分かる?」
『分かるぞ。ちょっと待ってろ』
ここでドライグが再び静かになる。
戦闘以外でも意外な活躍をしてくれる頼れる相棒になりつつあるね。
「加奈さん…赤龍帝にそんな事を頼んでも大丈夫なのですか?」
「全然平気。寧ろ、本人は自分の新たな可能性が見つかった事を喜んでたよ」
「伝説の龍も加奈さんの前では形無しですね…」
それ…八皇先生が言っちゃう?
私は知ってるんだよ? 先生が日本神話の神様と個人的な契約をしてる事を。
本気になったら真正面から核ミサイルを叩き落とすぐらいは普通にしちゃうでしょ。
『…二つ目の角を曲がった。駒王学園まであと100メートルぐらいか。もうすぐだな』
「時間がありませんね…どうしますか…」
「やっぱ、学園に入られるよりも前にこっちから接触をして、どうにかするのが一番っすよね…」
ふーむ……この学園内で誰にも見られずに内緒の話が出来る場所……。
……あ。普通に有ったわ。すっかり忘れてた。
「ソーナ。いい事を思い付いたかもしれない」
「本当ですか、加奈さん?」
「うん。この間の一件以来、すっかり皆から忘れ去られてた場所を再利用すればいい」
「皆から忘れ去られてた……」
「場所を……」
「再利用…ですか?」
「うん」
あれ? もしかして皆マジで忘れてる?
時間もないし、ここはハッキリと言った方がいいか。
「旧校舎のオカルト研究部部室のあった部屋。あそこに彼女達を誘導して話を聞こう」
「「「「あぁ~!」」」」
「あそこがあったか……」
生徒会の皆は『その手があったか!』って反応をして、八皇先生に至っては素で手をポンと叩いて思い出していた。
当然だけど、何も知らないレイヴェルちゃんは小首を傾げている。
「旧校舎なら他の生徒も余り近寄らないし、裏口から入る事が出来る。校門に近づかれるよりも先に私達が待ち構えて、言葉巧みに旧校舎へと誘導できればこっちのもの」
「けど、その様子を他の生徒に見られたら不審に思われませんか?」
「その辺りは最悪、魔法とかでどうにかするしかないね。例えば、校舎の窓に認識阻害の魔法をかけておくとか。こう…マジックミラーみたいに」
運動部は基本的に校舎の後ろにあるグラウンドを使ってるから大丈夫だけど、文化部はそうはいかない。
万が一にでも窓から見られた時の対策はしておくべきでしょ。
『相棒。どうやら、その心配はなさそうだぞ』
「どゆこと?」
『俺の記憶が正しければ、確か旧校舎は校門から見て左側の奥に位置している筈だな?』
「えぇ…それであっていますが…」
『奴等、このまま行けば学園の左側の道からやって来るぞ。上手く先回りが出来れば、他の生徒達に姿を見られることなく連中を誘導することが可能だ』
「なんちゅー重畳…」
こんな偶然って本当にあるんだ…凄いご都合主義だ。
スタンドも月まで吹っ飛ぶ衝撃だわ。
「裏口から行けば私達が校門から出ていくところも見られずに済むし、良い事尽くしだよ」
「全くですね。そうと決まれば……」
「急いだ方がいい。もう余り時間は残されていないっぽいし」
「はい。何人かはここに残って、私と匙、椿姫…それから……」
「私も行かないとダメだろうねぇ。お義父さんに言われた以上は」
「加奈さんが行くならば、私も一緒に行きますわ」
「顧問ですから。僕も行かない訳にはいきませんね」
「…決まりだね」
皆で頷くと、ソーナに言われたメンバーだけが立ち上がり、他の皆は今まで通りに自分の仕事を再開する。
うんうん。こんな時でも自分のやるべき事をちゃんと出来るのは立派だよ。
「それでは…行ってきます。ここは頼みましたよ」
ソーナを先頭にして、私達は旧校舎の近くにある裏口まで歩いて行くことに。
残された問題は、相手がちゃんと話を聞いてくれるかどうかだ。
まぁ…私はフォローに回った方が賢明だろうね。
今回、最も試されているのはソーナの方だろうし。
友達としてそれを手伝うのは当たり前だ。
あんまり目立たないように、あくまでサブとして頑張りますか。
主に私の来月のお小遣いの為に。
利用者がいなくなった以上、旧校舎は取り壊し…にはならずに、実は加奈が秘密基地にしようと企んでいたりします。
そもそも、そう簡単に取り壊しとか出来ませんしね。