生存√になります。
続投するかは考え中です。
煉獄杏寿郎は幼い頃から努力家であった。父の槇寿郎が引きこもりとなってからは、煉獄家に伝わる三冊の指南書を熟読し剣術を極め、多くの鬼を倒し、ついには下弦の弐をも倒し、炎柱となった。
柱の刀には「悪鬼滅殺」の四文字が刻まれる。杏寿郎は刀鍛冶の里にいた。
「弱きものを守る、それが俺の使命! 鬼と戦い続けることができる強い刀を打ってほしい!」
新しく杏寿郎の日輪刀を担当することとなった里の者は、その強い意志と高潔な精神に心打たれた。
「任せておけ、望みの刀を打ってやる」
―――これが煉獄杏寿郎の運命を変える出会いであった。
「すまない! 俺としたことがあなたの名前をまだ聞いていなかったな!!」
「ああ、俺の名は鉄井赤空だ」
◇◇◇
それから数か月後。
杏寿郎は新しい日輪刀を手に入れる。
「これがお前の新しい日輪刀『無限刃』だ。その名の示す通り鬼を無限に切り続けられる。」
「そのような日輪刀が出来上がるとは! よもやよもやだ! 『無限刃』・・・。うむ、感謝する!」
杏寿郎は日輪刀を手に取り、赤くなっていく日輪刀を眺めていた。
「・・・むっ!」
杏寿郎は何かに気づく。
「気づいたようだな。『無限刃』とは予め刃毀れさせた刀。いかな名刀であっても切り続ければ、刃がこぼれ切れ味が鈍く変わっていく。これが鬼との戦闘中に起これば、頸を切る事が難しくなっていく。ならば、殺傷力をぎりぎり保つその限界を見極め、予め刃をこぼしておくことで一定の感覚で連続使用ができる。」
その分普通の日輪刀より切れ味は劣るが、柱の技量があれば問題ないだろうと赤空は言う。
「うむ! 技量が足りなければ鍛錬すれば良いだけのこと!! 赤空殿、改めて礼を言う!」
「・・・必ず生き延びろ」
その呟きを背に、杏寿郎は里を後にした。
◇ ◇ ◇
『無限刃』を手にした杏寿郎は鍛錬に励んだ。今まで以上に。誰かを守るために。
多くの鬼とも戦った。いくつもの夜を乗り越えた。
そして変化に気づいた。
「・・・日輪刀が燃えた?」
錯覚ではない。刀身が地面や鞘などで強く擦れるとわずかではあるが燃えている。
杏寿郎は考えた。そして辿り着く。
燃えているのは鬼の油。多くの鬼を屠ったこの『無限刃』のギザギザの箇所に染み込んだ鬼の油であると。
鬼とは不死の化け物である。日に当たるか頸を切らない限り死ぬことはない。
杏寿郎は何度も鬼と戦っている。何百回、何千回と鬼の体に刃を振るった結果がこれだ。
「これこそまさに炎の剣! 俺はもっと強くなれる!!」
杏寿郎はさらに鬼と戦った。鬼の油を得るために何度も何度も。
あえて頸を切らず日が昇るまで鬼を切り続けた。
「君に恨みはない! だが弱きものを守るため、我が剣の糧となれ!!」
「もう、み、見逃して・・・ぎゃああああ」
何度も何度も何度も切り続ける。
「俺は決して挫けない!!」
何度も何度も何度も。
「も、もう・・・ころs・・・」
「心を燃やせ!!!」
何度も何度も繰り返した。
「むっ、もう朝日が」
「・・・」
鬼は無言のまま日光に焼かれて灰となっていった。
(鬼をずっと切り続けるのはさすがに消耗する。だがまだだ! 俺は強くならねばならない!!)
鬼との戦闘は常に人間側が不利である。ただでさえ見え辛い夜中での戦いに、相手は無尽蔵の体力と再生力を持つ。
鬼との戦いは短期決戦が妥当である。
だが、杏寿郎はあえて長期決戦を挑む。日輪刀から出る炎を大きくするために。今はまだ小さな火種だが、大きな業火に変えるために。己を強くするために。
炎柱は今日も戦い続ける。
―――そして運命の夜が訪れる。
「お前も鬼にならないか?」
出会ったのは上弦の参・猗窩座。何人もの柱を殺してきた上位の鬼。
「断る。いかなる理由があろうと俺は鬼になるつもりはない!」
「そうか、残念だ。だが先ほどの迎撃は見事だったぞ。腕を真っ二つにされたのは久方ぶりだ。」
血が付いた腕を舐めながら猗窩座はこちらを観察している。
「だが不思議だ。それだけの動きができるのにお前からは何も感じない。ひとかけらの闘気すらも」
「・・・」
「まあいい。鬼とならないなら殺すだけだ」
「・・・竈門少年、下がっていろ」
【血鬼術 術式展開 破壊殺・羅針】
【炎の呼吸 壱ノ型・不知火】
雪の結晶のような陣を出現させる猗窩座に対し、地面が陥没するほどの力強い踏み込みで斬りかかる杏寿郎。
互いが間合いに入った瞬間、猗窩座は気づく。
(こいつ、気配を感じない! 俺の血鬼術がまるで反応しない!)
杏寿郎は猗窩座の頸を正確に狙い、刃を振るう。
対する猗窩座も闘いの経験からすぐに持ち直し、振りぬかれた刃を拳で打ち落とす。
剣と拳のぶつかり合い。
「さすがは上弦というべきか!」
「・・・お前はいったい何なんだ?」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎! お前を滅する男の名だ!」
鍔元から切っ先まで摩擦を起こせば、日輪刀から炎が生まれる。
「なっ!!」
「煉獄さんの日輪刀が燃えている・・・」
猗窩座は驚愕し、炭治郎は先に負った傷を庇いながらその炎を見つめた。
【炎の呼吸 伍ノ型・炎虎】
炎は猛虎の形となり、刃とともに上段から猗窩座に切り掛かる。
とっさに腕を交差し身を守ろうとする猗窩座だが、腕ごと切り落とされる。
「ぐわあぁぁぁっ!」
「斬ると焼くを同時に味わうのは初めてだろう! この煉獄の赫き炎刀が、お前の骨まで焼き尽くす!!」
そして再度刀を構えなおす杏寿郎に対し、
「ぐうぉぉ・・・、なぜだ!? なぜ再生しない!?(それにこの痛みだ! 腕が灼けるように痛い!)」
杏寿郎の日輪刀は燃えることでその温度を上げている。
それは図らずも『赫刀』の条件を満たすことになった。
さらに幾多もの無茶な戦闘を乗り越えてきた杏寿郎は己も気づかぬうちに痣を発現した。長期にわたる戦闘と鬼の油をとるための斬り続けるという行為により、いつしか無駄は削がれ、呼吸はさらに極まり、『透き通る世界』にまで至っていた。
当初から猗窩座が闘気を感じなかったのも、すでに『透き通る世界』に入っていたからに他ならない。
「くそっ!」
「あっ! 逃げるな!」
両腕が再生しない猗窩座の判断は早かった。
炭治郎は杏寿郎が圧倒的な強さで追い詰めた上弦を見逃すわけにはいかなかった。
「安心しろ、竈門少年! 全部見えている」
【炎の呼吸 秘剣・火産霊神】
先ほどの比ではない炎が闇夜を照らした。
筋肉の動きが見えている杏寿郎を前にして逃げることなど不可能。
「さよならだ猗窩座!!」
刀身に巨大な炎の竜巻が巻き起こる。
離れている炭治郎にもその熱気が伝わってくるほどだ。
「す、すごい」
「こんなところで俺はっ!」
背を向けている猗窩座に奥義の秘剣を浴びせる。
「ぐわあああああっ!!!」
刀身が纏った炎は一瞬にして辺り一帯を火の海に変え、さらにその炎を纏った斬撃は猗窩座に直撃すると炎の柱となりその身体を燃やしつくし、その後も燃え続けた。
上弦の参・猗窩座死亡。
杏寿郎はその一部始終を見届けると、炭治郎の側に歩み寄った。
「傷は大丈夫か? 竈門少年」
「はい、なんとか」
杏寿郎はゆっくりと炭治郎の肩に手を置いた。
「竈門少年、俺は君の妹を信じる。鬼殺隊の一員として認める。命を懸けて鬼と戦い、人を守るものは誰が何と言おうと鬼殺隊の一員だ」
なおも杏寿郎は続ける。
「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと。心を燃やせ、歯を食いしばって前を向け。今はまだ弱くとも俺が必ず守ろう。・・・そしていつか鬼殺隊を支える柱となって皆を守るんだ。」
「っ! 煉獄さん! 必ず強くなって見せます!」
「うむ! その意気や良し!!」
大正コソコソ話
~無限城にて~
「お前はいつも鬼狩りの柱と遭遇した場合、逃亡しようと思っているな」
「お許しを! あ、あの炎の柱はホンモノの鬼でございます!」
「何が鬼だ。たかが人間風情に、何を怯えることがある?」
「あいつは・・・、わたしに・・・、いやあああ!」
「ん?」
無惨の脳裏をかすめたのは下弦の肆と炎柱との出会い。
鬼の油を取るために赫刀でもって何度も切られるシーン。
「これはっ!」
無惨は思い出す。耳飾りの剣士にやられた時のことを。
「・・・貴様は私に嫌な記憶を蘇らせた。―――万死に値する」
「ぎゃあああああっ!!」