どうも覚えている人がいるかどうかわかりませんが、月が好きです。本当にお久しぶりです。
スランプ脱却を目指してから幾年月。社会人となり仕事に追われ執筆時間も取れなくなり、さらには書いては途中で止まったり。いろいろと繰り返してきましたが、今回投稿させていただきました。
久しぶり過ぎるのでアレですが、感想や意見などありましたら、よろしくお願いします。
「あなたは死にました」
前後左右上も下も白以外の色が存在しない完全に真っ白な単色の空間。そんな場所に寝て起きたら俺の目の前に、手と足と首と顔だけの少女が何かを喋っている。しかし胴体が無くて手と足と首から上だけの状態な少女のその姿に驚きすぎて何を言っているのか理解することができなかった。
「ターンX」
「誰がターンXですか!?」
とりあえず見て思ったことをそのまま伝えてみたらツッコミになって帰って来た。ターンXが気になる方はとりあえずガンダムシリーズの敵の機体と考えてもらって大丈夫だ。まあ機体の概要や性能から主人公が乗っていてもおかしくない機体だけど。
「気になる方って……ここには私とあなたしかいないのですよ」
「そうですね……あれ?」
少女に突っ込まれて疑問に思う。先ほどのツッコミは心の中で思ったことに対してだった。喋っていないし口も開いていない、思ったことに対して反応したのだ。その時点でおかしいというものだ。心でも読めない限り不可能なのだから。
「実際にあなたの心を読んでますよ。隠し事は不可能です」
あっ、実際に読まれてるらしい。まるで悟りの妖怪だ。あっいや、胴体が無くて手と足と首だけで浮いてる状態な時点で妖怪か。
「誰が手と足と首だけで浮いてる妖怪ですか。ちゃんと胴体ありますし真っ白な服を着てますよ」
「いや真っ白な空間で真っ白な服なんてわかるわけないでしょ」
白と白はどれだけ掛け合わせても白にしかならない。赤い部屋で青色は目立つが赤い部屋で赤色は目立たない。なぜなら他の色がないから同化してしまうから。なのでこんな目に痛い真っ白な空間では、例え白の服を着ていようが、白のブラもしくはパンツを履いていようが全くわかるわけがないのだ……もしかしてそういう露出狂専用の部屋だったりするのだろうかここ。
「そんなわけないでしょ!はぁ……ならこれでいいですか?」
「へっ?」
少女が指パッチン――ちなみに指パッチンとは日本で知られている名前であり、一般的にはフィンガースナップという名前で知られている――をすると、首と手と足の間から真っ黒なドレスが突如として出現した。白から黒が現れたことで非常に目立つドレス。目の前の少女は指パッチンで一瞬にしてドレスを出現させたのだ。
「ちょっと違います。私はドレスを出現させたのではなく、ドレスの色を白から黒に変えたのです。あなたの言葉では私が何も着てなかったかのように聞こえますので、注意してください」
何だか注意を受けたがそれを聞くだけの余裕がない。だっていろいろと頭の中の整理が追い付かない。真っ白な空間、目の前の心を読める少女、寝て起きたらこの空間にいた。そんな説明不可能な状況に何がどうなっているのか混乱してしまう。しかしそんな混乱した俺の頭脳はもしもの可能性を指し示していた。少女も最初に出会った時に言っていた言葉、そしてオタクとして様々な作品を見て培った知識。それらを掛け合わせることで俺の頭の中であり得ない可能性を考えていた。
それは空想であり想像。現実では絶対に起こるはずのないことでありフィクションの設定。そんな否定的な言葉が頭の中を埋め尽くしそうになるが、今起こっているこの現象は、まさにラノベでお馴染みのあの単語がぴったりと当てはまってしまう。
しかしその前提として俺は……。
「あなたの考えていることは正しい。あなたは死んだのです」
俺は、死んだのか。
◇
「――もうやってらんねぇんですよっ!」
「わかります。本当にわかります」
あれからしばらく時間が経ち、現在俺とターンX少女……もとい、神様の使いでやって来た天使様と一緒にお酒を飲みながら天使様の愚痴を聞いていた。なぜそんなことになっているのか説明するのは大変だし天使様のプライベートも含んでいるので、色々と削って簡単に説明する。
まず初め、天使様に俺が死んだと改めて告げられた。理由は仕事のやり過ぎの過労死。そりゃ現代にしては珍しい24時間働け、がスローガンの超絶ブラック企業だったからな。徹夜にサービス残業+休日出勤+残業代月100円+有給なにそれ?な職場で働いていたら普通に死ぬと思ってたし。なので過労死で死んだって言われて逆に納得したほどだ。
『……まぁ、あなたも私と似たり寄ったりですね』
しかし天使様の小さな声で呟いた一言が、この酒盛りを始まるきっかけとなった。天使様にちょっと尋ねてみると、少し恥ずかしそうにしながら語ってくれた。
どうやらこの天使様の働いている職場だが、俺と同じようなブラック企業らしい。毎日残業で残業代は月1円、休日出勤は当たり前で休日は上司の買い物の付き添いで消え、職場では働かない上司と同僚にミスしまくる部下ばかり、有給なんて言葉は存在しないらしい。さらに、家に戻ることは月に1回あればいいほどで今では会社に帰ると表現しているらしい。
俺のいたブラック企業も大概やばかったが天使様のいた企業も非常にやばい。似たり寄ったりと言うか明らかにそれ以上に悪い職場で働いていることを知った俺は、無意識なまま彼女の頭を撫でて慰めの言葉をかけていた。だって本当に可愛そうなんだし、それぐらいいいだろ。
『――びぃえぇぇぇぇぇんー!』
で、慰めてたら泣かれた。いや本当にただ慰めただけなんだ。何もしてない。本当の本当に頭を撫でて慰めたら泣いたんだ。俺は泣かしてない……なんか泣かせたいじめっ子の常套句になってないかこれ?ま、まぁいいか。で、泣いている理由を聞いたんだよ。そしたら天使様はたっぷり泣いて落ち着いたのか、小さな声で説明してくれた。
『な、慰めてもらったのも、よく頑張ったって言ってもらったの、いえ誰かに優しくしてもらったのなんて、3000年ぶりなんです』
涙混じりに聞かされた言葉に、俺も涙を流して抱きしめた。年齢(享年)=童貞だった男に抱きしめられる美少女というのも絵面的にアレかもしれないが、抱きしめずにはいられなかった。それぐらい可哀想だったんだもの。
で、涙目+見上げてくる天使様の姿にハートを射抜かれた俺が、愚痴でもなんでも聞いてやるからドンと話してください。と言って、そこから酒盛りになったんだよなぁ。どこから出したのかわからないけど、大量の日本酒を出して飲んでくださいと高級な日本酒や美味しそうな料理の大盤振る舞い。しかも真っ白な空間じゃ雰囲気が悪いからと、桜が満開な草原に指パッチンで変えてしまった。
そこで料理と酒に舌鼓を打ち、天使様の愚痴を聞いているというわけだ。
「大体同僚も何なんですよ!?合コンがあるから仕事を押し付けるとかどんな神経してんですか!毎日毎日仕事を押し付けてきやがって!しかも次の日には合コンの楽しそうな写真を見せつけてきやがって!独り身な私に対しての嫌がらせですか!?年齢=処女な私に対する嫌味ですか!?うぇぇぇぇんー!」
「落ち着いてください天使様。でも本当に大変なんですね。仕事を押し付けて自分の用事を優先するような仲間を持って本当に大変ですね」
「わかってくれますか!」
わかります。だって自分も同じですから……同僚からどれだけ仕事を押し付けられたことか。しかも成果だけは奪っていくし。上に媚び売ってるから訴えても意味がないし、無駄な時間を過ごすくらいなら黙々と仕事をしてた方が疲労が少なくていいんですよね。
後、年齢とか経験とか言っちゃいけない言葉を言ってますよ?というか天使様ってまだなのか……正直に言って意外だな。
「……意外ってどういう意味ですか」
「だって天使様、仕事は出来るし料理は美味しいし外見だって美人じゃないですか。そんな天使様が俺と同じだなんてありえないレベルですよ。俺だったら間違いなくほっときませんよ」
ちょっと殺気を込められたので正直に話す。実は俺が食べている料理は、この天使様が作った料理らしい。味付けも盛りつけも完璧で今まで……生前食べてきたどの料理よりも美味しいとさえ断言できる。こんな美味しい料理が作れる時点で家庭的な女性だと思うし、外見だって街中なら十人中十人が振り返りそうな美人。もし俺が彼女の会社の同僚であれば、お付き合いしたいと思うのは必然だと思う。
まあ、俺みたいなブラック企業で低所得な奴じゃ絶対に釣り合わないから声もかけれないかもしれないが。
「うぅ……そんなこと言ってくれるのはあなただけですよ!!」
「落ち着いてください天使様。お酒の一気飲みは体に毒ですよ」
正直に語れば天使様は泣きながらお酒をラッパ飲みする。その光景はとんでもないけれど、それほどまでに天使様は追い詰められてしまっているのだろう。というか、俺以外に天使様に気のきいたセリフを言える奴はいないのか。
「うぅ。あなたは優しいし気遣いもできるし優しいし頑張り屋さんだし優しいし他人思いだし優しいし素直だし優しいし誠実だし優しいし嘘を吐かないし優しいしこんなにいい人なのに!」
「ありがとうございます天使様。でも優しいをたくさん言いすぎですよ」
「――なのに間違って殺したとかどういう神経してるんですか神様のクソ野郎ー!!!」
……なんか聞き逃せない言葉を聞いたような気がするんだが?間違って殺したとか言いませんでしたか天使様?
「……そうですよ。あなたは本当なら死ぬはずのない人間だったんです。それなのにあのクソ野郎が!何がブラック企業で働きなれているから死なせて自分たちのところでこき使おうですか!?どうせ死なないから無理難題を押し付けて働かせようとか、ふざけんなってんですよ!!!」
……言いたいことが増えたが、どうやら俺は天使様の職場で働かせるために殺されたらしい。思考までブラック通り越して恐ろしい黒さだな。天使様の怒りがよくわかる。というか俺も怒りで腹の中がマグマのように湧きだってるし。
「ということは、天使様は俺を会社で働かせるために出迎えに来た、ってことですか?」
「……そうなりますね」
こちらの問いかけに天使様は申し訳なさそうに頭を下げていた。この様子を見るに天使様は反対かもしくは知らなかったようだ。知っていたのなら、提案していたのであれば、こんな申し訳なさそうな表情はしないだろう。嘘を吐いている可能性もあるが、こんな美味しい料理を作れる天使様が嘘を吐くはずはない……と勝手に信じることにする。
「…………」
天使様が信じられないような表情でこちらを見つめてくるが、それを気にすることなく料理を食べてお酒を飲む。一通り飲み食いしたら、行きましょうか天使様。
「行くってどこに……」
「あなたの会社に。就職して働かないといけないですし」
「えっ!?」
驚いた声を出す天使様。一体どうしたと言うのだろうか。
「いやどうしたも何も!話を聞いてましたか!?私のところはあなたの前いた所よりも超絶ブラックなんですよ!しかもあなたを殺したクソ野郎もいるのに!そんなところに就職するなんて何を考えてるんですか!?バカなんですか!」
「俺が働けば天使様も楽になるでしょ」
「ッ――!」
先ほどから天使様の愚痴を聞いていて共感していることがある。それは、自分と同じ苦楽を共にしてくれる仲間が欲しいという願い。そしてその願いが叶わないでほしいと言う思いで、それは俺もかつて抱いた気持ちだ。
ブラック企業でただ一人頑張っていると、一緒に頑張ってくれる仲間が欲しいと願う。互いに苦楽を共にして、愚痴を言い合って、泣いたり笑ったりしてくれる仲間が欲しいと願う。けれど願ってもかなわないでほしいと思う。だって、自分が経験している酷すぎる環境に招き入れるなど、その辛さを知っている者からすれば正気の沙汰ではない。諭して安全な場所に逃がすのが普通だろう。
天使様も同じような気持ちを抱いているのは理解している。だからこそ俺は彼女のところへと就職しようと思っているのだ。俺が働けば彼女の手助けにもなるし、何より同じ苦楽を共にする存在は必ず1人必要だと思うから。それにどうせ俺はもう死んだ人間だし、それならこんな俺に優しくしてくれた天使様に恩返しくらいしなければならないだろう。
「……あなたは本当にバカですか」
「はいバカです」
だから損ばかりしてました。正直者が損をするのであれば、優しい人間はバカになると考えてます。
「本当のバカですね……ちょっと聞きますが、ガチャガチャは好きですか?」
「ガチャガチャ?」
カプセル玩具が出るあのガチャガチャ?まあ好きですけど……。
「そうですか。ならちょっとこれを回してみてください」
そう言って天使様は指パッチンでガチャガチャの機械を出現させた。本当にすごいな天使様。でもこれを回してくれって言われても……。
「回してくれればいいだけですよ。あっ、お金は入れなくてもいいです。ただ回してくれればそれでいいので」
いきなりのことでついていけないが、とりあえず目の前の天使様は信頼できるので言われた通りにしてみることに。それにしてもガチャガチャなんて一体何年ぶりだろうか……。
ガチャガチャ……ゴトッ。
「カプセルをください」
「はい。あっ、そういえば中には何が入って……」
天使様に言われるがままカプセルを手渡すが、中身が何なのか確認してなかったので渡してから尋ねる。しかし天使様は答えることなくカプセルを開けて中から何かを取り出した。あれは……紙?
「はい。ただの紙です……あなたの転生特典が書かれてる」
「えっ?」
転生特典?それってラノベで有名なあの?というか転生って、俺はこのまま天使様と一緒に働くんじゃ……。
「Fateにおける慈愛のアルターエゴ、『カズラドロップ』の容姿とイデスですか」
「はぁっ!?」
カズラドロップ!?カズラドロップってあれか?あのFate/EXTRE CCCというゲームにて登場するはずだったサクラファイブの一人だが、諸事情によりお蔵入りになったキャラ。その外見は若草色の着物を着た幼い少女で、初期案では外見通り非常に大人しく、献身的な性格な清楚な少女。お蔵入りになったことが不遇と感じてしまう設定だった。しかしカズラドロップはゲーム発売から数年後にFateシリーズの漫画に登場している。
初期案とは全く違ってすべての黒幕と言う大方の予想を大きく覆す登場だった。
慈愛のエゴということで特定の誰かを愛することはなく、イデスによる『インセクトイーター』で同族であるはずのパッションリップ、メルトリリス、キングプロテア、さらには生みの親であるBBさえも取り込んだ――BBは完全に取り込んでないがその力のほぼすべてを奪った――存在。
その戦闘能力はすさまじいの一言だが、それ以上に恐ろしいのが彼女の目的。
慈愛。特定の誰かを愛するのではなく、全ての人類に等しく慈愛を与えることこそが彼女の目的。その目的を達成するために彼女が考え付いた完全な方法。その方法さえ実行すれば世界から貧富の差も争いも何もかもが無くなる完全なる世界平和。それを実現するために彼女が考えついた方法。
即ち、全人類総抹殺、である。
人類を平等に愛するためには平等に扱わなければならない。けれど平等に扱うなど不可能なこと。成人式を終えた人間を生まれたての赤ん坊と一緒に扱えないように、もうすぐ死ぬ老人を元気な子供の様に扱うことができないように。どうやっても平等に扱うなど不可能なのだ。カズラドロップの考え付いた方法以外には。
平等に愛するために平等に扱う。即ち、平等に殺す。愛を持って殺す。殺しという手段で平等に扱い、平等に扱うからこそ平等に愛している。狂気の沙汰とさえ思うが、カズラドロップ本人はそれを実行しようとしている。初期案の献身的な着物幼女とはまるで違う、狂気をも感じる存在。それがカズラドロップなのだ。
「すごいですね。端折った部分も幾つかありますが、まあわかりやすい説明でした」
「ああ、これでも一応オタクだったんで……まあブラック企業で勤めてからそんな時間はなかったんですけど」
学生時代はまあそれなりにオタクとして漫画やアニメにラノベを読んでいた。けれど大人になりブラック企業に勤めるようになってからそんな時間も無くなってしまったので新しい知識はないが、好きだったFateシリーズだけは新しい漫画やアニメにゲームなどの知識だけは持っている。
スマホゲームだってインストールしているし、課金してガチャを回して爆死したこともある。あっ、勘違いしてほしくないのだが、Fate以外にも好きな作品はあり、好きな作品についてはそれなりに情報を集めたりゲームをしたりしていた。
「ですが転生特典としてはとても弱いですね。このままでは天職次第ですが間違いなく死んでしまいます。とりあえずこちらで改竄しないと」
あっ、そういえばそうだった。転生とか特典とか一体……。
「とりあえずサクラシリーズ全員のイデスとスキルや戦闘スタイルに武器なんかの能力は必須として、BBのスキルや権能も必要ですね。虫空間やシェイプシフターも使えるようにして、支配の錫杖と黄金の盃も必須。後はあのスキルも必要ですがあれは月の裏側のみという設定ですが……いえ、あれをちょっと弄ってこう変えてみて、さらに制限を幾つか着けて魔力も大量に消費させれば……使うとなれば相当な制限と魔力消費ですが何とか押し込めましたね」
あの、天使様。無視しないでいただきたいのですが……というか本人を置いてかないでくれませんか?
「あっ、すみません!ちょっとあなたの転生の手続きに集中していました」
「いやだから転生とかどういうことですか?俺はこのまま天使様と一緒に働くんじゃ……」
「いいえ」
キリッとした表情とどこか覚悟を決めたような顔をした天使様。その姿は先ほどまでの様子とは打って変わっていた。そして体の感覚がおかしい。まるで端の方から消えていくかのような感覚。反射的に見てみると手の指や足のつま先が光の粒子となって消えていた。
「ッ……!?」
「落ち着いてください」
あまりの光景に驚きのあまり声を出そうとしたが、何故か声が出ない。慌てふためく俺を落ち着かせる声が聞こえてきて、心が何故か急速に落ち着いていく。そんな不思議な感覚を感じながらも俺は目の前にいる天使様に視線を移した。
「話すことができないようですので、一方的に話させてもらいます。あなたには転生してもらいます」
転生?ラノベなんかで有名なアレか?けど俺は天使様と一緒に……。
「あなたをあんなブラック企業に勤めさせるつもりはありませんよ」
えっ、でも……。
「あなたのようなバカが後輩とか嫌です。一緒に働きたくありません。なので迎え入れるのは止めました。けれど、あなたは死んでしまった身。元居た世界に生き返らせるのは不可能です。なのであなたと言う存在がいない別世界に転生させることにしたのです」
そんなことをしたら天使様は……!
「はい。上には非常に怒られるでしょう。もしくは天使としての地位の剥奪、最悪消滅させられるでしょうね」
ッ……!そんなの許せるはずが!?
「控えなさい人間。ただの人間の身分の癖に天使たる私を気遣おうなどと不敬です……本来であれば転生先の世界を選ばせて転生させるつもりでしたが、急だったので特典しか選ばせられませんでした」
あのガチャガチャって転生特典を選ばせるためのものだったのか!?というか最後辺りなんか改竄してませんでしたか?
「はい。あなたの転生先の世界は非常に危険です。それこそ死と隣り合わせな世界となります。そんな世界を生き残るために、あなたの転生特典を改竄させていただきました」
まじか!?でもまぁ、確かにカズラドロップ本人には戦闘という面ではそこまで優れていない。俺が知っているカズラはBBやサクラファイブの力を得ていたからこその強さだ。カズラ本人の力ではない。むしろカズラだけの戦闘能力で言えばかなり低いのではないかとさえ思ってしまう。
なので天使様は特典を改竄して生き残れるようにしてくれたと言うわけか。というか、そんなに危険なのかその世界。
「危険ですね。だからこそあなたに力を授けるのです……どうやら無駄話もここまでですね」
気が付けば俺の体は全て光の粒子となって消えていた。後はもう顔だけという状況で、段々と意識が消えていき、天使様の姿もぼやけてしまう。それでも俺は言いたいことがまだある。というか納得なんてできない!できるはずがない!
天使様!あなたも一緒に……!?
「何度も言わせないでください……あなたと一緒に行くことなんてできません。さようなら、優しすぎるバカな人。あなたの新しい世界は危険でいっぱいですが、それでも祈らせていただきます。どうかあなたの人生に悔いのない日々を」
声を振り上げることはもうできなかった。完全に消えるであろう最後の瞬間。その瞬間に、俺は最後に天使様の姿を見た。最後の、涙をこらえながら笑っている姿を。その姿を焼きつけながら、俺は消えた。そして体に入ってくる何か、こみあげてくる何かを受け止め続けた。
そして俺は……私になった。