ありふれない慈愛で世界最強   作:月が好き

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一言。
大変申し訳ございませんでした。


5話 王立図書館にて

私の起こした檜山(クズ)殺人未遂事件から早いものですでに二週間の時が過ぎた。最初こそクラスメイトから怯えられた視線を向けられたものですが、二週間もすればそれはある程度マシになって来た。

 

元々クラスで親しい人などハジメ以外ほとんどいなかったので、怯えられようが遠巻きに見られていようがどうでもよかった。その辺りは私というより元になったサクラシリーズの影響でしょうか?彼女たちってそういうところありそうですし。

 

この世界の人たちからの反応も別に問題ありませんでした。

 

確かに召喚された救世主一行で殺人未遂というのは問題でしたが、メルドさんの報告と私のステータスを知った上層部の判断で何のお咎めなしという結果に落ち着きました。

むしろ勇者よりも有望な存在ではないか、という評価を貰ったので貴族たちが縁を繋いでおこうと関わってくるようになりました。そうした縁もあってとある貴族と今では懇意にさせてもらってます。まあ、見た目がアレな方ですが、悪い人ではないんですよ。見た目がアレですが。

 

そんなわけで一時期は天之河さんよりも貴族に人気でした。あくまで一時期です。今では勇者の肩書を持つ天之河さんの方が人気ですね。

 

「なあカズラ。七大迷宮って七つあるから七大迷宮だよな」

「そうですよ。というか何当たり前のこと聞いてるんですか坂上さん」

「いやだってよ。三つしかねえじゃんか」

「それは文献が古すぎるからだよ。この世界のどこかにあるとは伝えられてるけど、実際に誰も見たことがないからね。というか前メルドさんが教えてくれたと思うけど」

 

現在、私とハジメそして坂上さんの三人は訓練の休憩時間を利用して王立図書館で調べものをしています。正確には、私と坂上さんは調べ物をするためにここを利用しようと思っていたハジメについてきた、と言うのが正しいのですが。

 

「いくら何でも情報少なすぎるだろ。なんで誰もほかの迷宮を探そうとしねぇんだよ」

「そんなの知りませんよ。メルドさんにでも聞いてください」

 

そんな中で私と坂上さんは七大迷宮について調べている。七大迷宮とは、この世界における有数の危険地帯のこと。しかし七大迷宮と言っても実際に発見されているのは僅か三ヵ所。

 

ハイリヒ王国の領内の南西、グリューエン大砂漠の間にある『オルクス大迷宮』と亜人族が引きこもっている『ハルツェナ樹海』そして『グリューエン大火山』の三つ。残りの四ヵ所は不明だが二つだけ目星はつけられている。

 

一つは大陸の南北を分断するライセン大峡谷、南大陸のシュネー雪原の奥地にあるという氷雪洞窟がそうではないかとされている。

残りの二つは目星さえつけられていない状況だ。この世界は本当に何やってんだ、と思いますよ本当に。

 

「多分だけど時間も余裕もないからじゃない?今だって魔人族と戦争してるんだからさ」

「だからって少なすぎるだろ。まるで意図的に隠してるみたいじゃねぇか」

 

この世界の人間の怠惰に言葉が悪くなる坂上さんと、この世界の人をフォローするハジメ。しかしハジメのフォローもあまり効果がなかったようで、坂上さんはまあ呆れていた。

 

「でもなんでカズラは七大迷宮についてなんて知りたがってるんだ?」

「それは僕も思ってた。別に七大迷宮について簡単な説明しかされてなかったけど」

「ただの直感――いえ。私のサイドエフェクトがそう言っているのです」

 

七大迷宮については七つの危険地帯が存在するが、その半数は分かっていない、という簡素な説明しかされていないので誰も気にも留めていない。しかし私は違う。七大迷宮と言う言葉を聞いた瞬間、私の直感が告げているんです。

 

なぜなら私の直感スキルはA+。某腹ペコで七騎士はもとよりエクストラクラスにまで増え続けている某騎士王よりも上なんです。

 

ちなみにサイドエフェクトというのは某漫画に出てきたセリフです。多分知ってる人は知ってるはず。

 

「サイドエフェクトはともかく勘はすごいからねカズラは。サイドエフェクトの下りはともかく」

「そうだな。サイドエフェクト云々はともかく、こいつの直感を信じたおかげでテストで満点とったことも結構あるし、それは信じていいだろ。サイドエフェクト云々はおいておいて」

「なぜ二度言った」

 

呆れたように笑う二人を問い詰める。しかし二人は何も言わずそれどころか視線すら合わせない。ちょうどこちらに近寄ろうとした職員の人間が、何故か回れ右をして脱兎のごとく逃げていきましたが、私が何をした。

 

「というか坂上君。あの漫画見てるの?」

「無視ですかハジメ」

「ああ。ハジメのお袋さんの漫画のモデルになってから漫画を見る機会があってな。ああいう戦闘とか格闘技のある漫画はよく見てるんだ。特に気に入ってるのが二重の極みだな。いつか修得してみてぇ」

「無視ですか坂上さん」

 

私に視線を向けずに会話を続ける二人。ちなみにハジメの母親は人気少女漫画家であり本を何冊も出版しているほどの有名人。ハジメの親友と言うこともあり何度も会ってるしサインも貰ってる。というか何度か食卓を囲ったこともあります。

 

ちなみに二重の極みは漫画で登場したころの子供なら必ず一度はやったことがあるのではないでしょうか?拳一つで出来る簡単なことだと、子供なら思ってマネするでしょうし。

というか坂上さんはそれを疑似的に可能にするアーティファクト貰ってるくせに何を言ってるのでしょうかこの人。

 

「モデルって……あぁ。あの最新作の脳筋領主と追放された悪役令嬢の領地経営に出てくる領主の」

「そうそれ。いやぁー言われた時はちょっと悩んだぜ。いきなりモデルとか言われてもさ!」

「それはそうでしょ。というか母さんも僕には教えてくれても良かったのに!」

「いや俺が頼んだんだよ。ハジメには黙っててくれって。というかお袋さんの仕事を手伝ってるハジメに俺がモデルになった漫画を描くって、なんか恥ずかしくってよ。それに脱脳筋が俺の目標だからなおさらな!」

「いい加減目を合わせなさい」

 

どうでもいいことですが、坂上さんはハジメの両親のところでアルバイトとして働いてます。と言ってもあまり難しいことはまだ無理なので、ハジメと私に教わりながらですが。

 

それよりなぜ声を大きくしたんでしょうかこの二人は。騒ぎすぎると注意されますよ。まあその注意する職員が何故か私の顔を見ると逃げ出すんですけどね。

 

「そういえばなんでハジメは魔物の図鑑なんて見てんだよ!(目を合わせたら殺されるくらいの殺気はなってんじゃねぇか!絶対に目を合わせるなよハジメ!?)」

「ほら僕って落ちこぼれだからさ。力がない分は知恵で何とかカバーしようって思ったんだ!(当然だよ!もし目を合わせたらどうなるか……)」

「地獄の断頭台と神威の断頭台と謝罪――どっちがいいですか?」

「「申し訳ありませんでした」」

 

ニッコリと笑うと二人とも正直に謝ってくれました。やはり笑顔が大切なんですね。時代はスマイルですよ。スマイル。ね?

 

「もういいですよ。別に気にしてませんから……それよりそろそろ訓練の時間ですから、片付けますね」

「あ、あぁ、そうだな」

「う、うん。そうだね」

「あっ、二人は騒いだことを職員さんに謝ってきてください。ここは誰もが利用する図書館であり、騒ぐのは厳禁です。先ほどの二人は非常に迷惑でした。本は私が返してきますのでから、ちゃんと謝ってきてください、ね?」

「「あぃ……」」

 

二人は私の指示に快く従ってこちらを遠巻きに眺めている職員たちへと向かう。その様子を満足げに眺めながら、読んでいた本を返しに向かう。

 

 

 

 

 

 

「……落ちこぼれ、ですか」

 

職員に平謝りしている二人のうち、ハジメを見つめながら呟く。本人は何となく話しただけだろうが、その言葉が私にしてみれば悔しい思いでいっぱいになる。

 

ハジメは二週間。二週間の間訓練を頑張り続けた。私と坂上さんの二人と一緒に訓練を頑張り、座学も必要以上に学び、誰よりも努力している。それをメルドさんも認めているし評価している。

 

なのに周りのハジメの評価は落ちこぼれ、という一言で片が付いてしまう。

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:4

天職:錬成師

筋力:14

体力:14

耐性:14

敏捷:14

魔力:14

魔耐:14

技能:錬成、言語理解

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これがハジメが二週間。他のクラスメイトよりも努力して手に入れた結果。レベル1につき各ステータスが1つ上がった計算になる。

 

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天之河光輝 17歳 男 レベル:10

天職:勇者

筋力:200

体力:200

耐性:200

敏捷:200

魔力:200

魔耐:200

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

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これは天之河さんのステータス。レベルはハジメの二倍以上にあたるレベル10。ステータスの上昇はレベル1につき10にあたる。これはハジメの10倍。ステータス上の成長率でもこれだけの差があるのに、ハジメには魔法の適性がないこともわかった。

 

トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法が発動するというプロセスを経る。魔力を直接操作することはできず、どのような効果の魔法を使うかによって正しく魔法陣を構築しなければならない。

 

そして、詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなり、魔力量に比例して威力や効果も上がっていく。また、効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなる。それは必然的に魔法陣自体も大きくなるということに繋がる。

 

例えば、Fateシリーズにおける一般的な魔術であるガンド。本来であれば魔法陣など必要ないが、この世界の魔法の仕組みを過程に考えて、魔法陣が必要という前提で説明する。

 

ガンドを直進的に放つだけでも、一般的に直径十センチほどの魔法陣が必要になる。基本は、属性・威力・射程・範囲・魔力吸収の式が必要で、後は誘導性や持続時間(ガンドの場合は呪いなので体調を崩させる時間)等付加要素が付く度に式を加えていき魔法陣が大きくなるということ。

 

しかし、この原則にも例外がある。それが適性。

 

適性とは、言ってみれば体質によりどれくらい式を省略できるかという問題。例えば、火属性の適性があれば、式に属性を書き込む必要はなく、その分式を小さくできる。

 

この省略はイメージによって補完される。式を書き込む必要がない代わりに、詠唱時に火をイメージすることで魔法に火属性が付加される。

大抵の人間はなんらかの適性を持っているため、上記の直径十センチ以下が平均であるのだが、ハジメの場合、全く適性がないことから、基本五式に加え速度や弾道・拡散率・収束率等事細かに式を書かなければならなかった。

 

つまり、一つの魔法を放つのに時間がかかり過ぎて戦闘では役に立たないことが判明した。

 

「……いえ。それはもういいですね」

 

ハジメは自分で理解している。近接戦闘や魔法戦でも上手く戦えないことを。周りが自分のことをバカにしていることも。全て理解しているうえで、ハジメは訓練を続けている。

 

自分の身は自分で守れるように。戦えるようになるのではなく、私たちに迷惑をかけないように。その姿は親友として誇らしく、邪魔するわけにもいかない。

 

「――さて。現実逃避は止めましょう」

 

現実逃避を止めて現実と向き合わなければならない。これほどの困難は前世でも今世でも経験しているが、改めてこの問題は非常に厄介過ぎてどうしようもない。どうすることもできず、さりとてどうにかしなければならない問題。

 

だからこそ現実を見つめるのです、カズラ。

 

「この本、どうやって戻しましょう……」

 

そう。私の身長が小さすぎて、元々あった本棚に戻せないという問題を解決しなければ。

 

サクラファイブについて知っている人間がいればわかると思うが、カズラはサクラファイブで随一の小ささだ。その身長は133㎝。私の現在の身長である。

背が低いと本当に苦労する。自販機を買う時も下駄箱にも遊園地のアトラクションにも困るが、こういう図書館を利用する時も困る。

 

何しろ上の本棚に手が届かないのです。下しか利用できないんですよ!不便すぎるでしょ!!

 

足置き台はあるにはあるが、それを使っても全然届かない。職員に頼もうにもいないし、何より戻してもらうのは私の、男として元大人としてプライドが許さない。

 

「……使いますかヴァイオレットの能力」

 

サクラファイブの一人ヴァイオレット。その能力には魔眼のほかにも両手を繊維に変えることが可能で、私もその能力を使うことが出来る。つまり、その力を使えば本を戻すことも可能なのです。

 

しかし大多数の目が二人に向かっているとはいえ、このような場所であの力を使うのは危険。どこに誰の目があるのか分からないから。もし仮に見つかってしまえば、どのような結果になるのか考えなくても分かる。

 

バレるのはいい。驚かれるのもいい。恐怖されるのもいい。しかし、しかしだ。身長が足らなくて笑われるくらいなら、微笑ましい笑みを向けられるのなら、身長について揶揄われるのなら、そのリスクの方がいい!

 

「――ふひひ。何をしているのですかなカズラ様」

 

と、一生に一度のレベルの覚悟を決めた私に掛けられる声。その声を聞いた瞬間、私は誰がそこにいるのか理解した。

 

「お久しぶりですねハーヴェイ侯爵」

「ふひひ。お久しぶりですカズラ様」

 

やってきたのはこの国において侯爵の爵位を持つ王国でも有数の名家。ハーヴェイ家侯爵の現当主、ユークリッド・ハーヴェイ侯爵。私が今最も縁を繋いでいる貴族だ。身に纏っている衣服は流石は侯爵家の貴族と言えるでしょう。

 

「相変わらず太ってますね。そのお腹、柔らかそうですね」

「ふひひ。はっきり言うのはカズラ様だけですよ」

 

しかし肉体的な外見で言えば、お腹には大変柔らかそうな膨らみである脂肪があり、恰幅が良くて全体的に丸みを帯びた体を持つ。異世界ものの漫画や薄い本で出てくるような悪い貴族風の外見だった。

 

「こんなところで何をしてるんですか侯爵様?」

「ちょっと色々と、だけ。そういうカズラ様は……ああ」

「何納得してるんですかあなた」

「ふひひ。これは失礼を」

 

笑いながら汗をハンカチで拭う侯爵。その外見は誰がどう見ても悪い貴族と評価するでしょう。これで肉でも食べてたらどこぞの帝国で少年の皇帝を傀儡にしていた某大臣になりそうな雰囲気です。

 

まあ、そんな侯爵と一緒にいる外見幼女な私はどう思われるんでしょうかね。

 

「誰が幼女ですか誰が」

「いや誰も言ってませんからね?まあこの本は私が返しておきましょう」

「大丈夫ですか?手の油で本が汚れるんじゃないですか」

「ふひひ。相変わらずカズラ様は手厳しい」

 

こちらに手を伸ばす侯爵に本を渡す。彼相手であれば任せてしまっても問題はない。そうして互いに近づいていく。

 

「(勇者様御一行を実践訓練としてオルクス大迷宮に遠征させることが決まりました。お気をつけください)」

「(……了解です。情報提供ありがとうございます)」

「ふひひ。この程度お安い御用ですよ。それではカズラ様。また今度私の屋敷にいらしてください。たっぷりとおもてなしいたしますので。ふひひ」

 

本を元に戻して侯爵は笑いながら去っていく。その後ろを従者のメイドがついていくが、やはりどこからどう見てもいい貴族には見えない外見ですね。まあ私は外見なんて気にしませんけど。

 

「オルクス大迷宮……これは好機ですね」

 

以前からやってみたい実験が一つあった。しかしその実験は周りにばれると非常に不味い。しかしこの実験に成功すれば私はさらに強くなることが出来る。だからこそ実験のできる機会を待っていたのだが、オルクス大迷宮への遠征という情報はまさに私が待っていた吉報だった。

 

今後のことを思い笑みを浮かべつつ、こちらにやってきている二人の元へと歩く。不謹慎ですが、これからが楽しみです。

 

 

 

 

 

 

訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となりますが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達の中で私はすでに内容を知っているため驚くことはない。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!まぁ、要するに気合入れろってことだ!今日はゆっくり休めよ!」

 

ざわざわと喧騒に包まれる生徒達の中で私は気付かれないように笑みを浮かべる。これでようやくメルトのイデス、メルトウイルスを試すことが出来る。そう思っていた。

 

「だがカズラ。すまないがお前だけは留守番だ」

「……はっ?」

 

だから、メルドさんの言葉が理解できなかった。

 




悲報
主人公オルクスに行かず。まあ主人公がオルクス行っちゃうと奈落に落ちないというか落とさせないでしょうからしょうがないです。
ヘビモスとか攻略しそうだし、火球は魔眼で無効化、落ちてもリップのロケットパンチで回収されるので。

次回はタグにもあったヒロイン登場……になると思います。

ちなみに今回登場させたハーヴェイ侯爵はオリキャラですが、簡単な紹介は次回に。まあ外見は本編にも合った通り、お世辞にも良い貴族ではないですね。
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