因みにこれ2時間クオリチィ
「機動戦士ガンダム」という親父がガキの頃に放送されてたアニメ作品から始まったガンダムシリーズは今も世界を沸かしている。
シリーズ通してみればほとんど毎年単位で新たな作品が製作され映画になった作品も多数ある。評価は作品ごとによって天地差が激しくあるようだが。
そんなこともあってかその作品に出てくるモビルスーツを模したプラモデルシリーズ。通称ガンプラは一昔前まではその実物を動かすGPDというコンテンツの中核をなす存在だったこともあってとんでもないほど売れていた。
世界的にデカい大会とか開かれててその優勝賞金とか賞金は結構な額が出ていた。
俺は中学時代、その賞金が目当てでアイツからの誘いに乗った。それから数年たった今となってはその意味すら見いだせなくなってしまったが。ぶっちゃけガンダムとかどうでもいい。アニメたまに見るぐらいでいい。ガンプラバトルとかホントどうでもいい。人助けとかできればそれでいい。
とか言いながらぶっちゃけ他人のこととかはどうでもいい。正味自分勝手に生きれればそれでいい。
「そんなことばっか考えつつもあんなことしちゃった俺はとんでもないお人よしなのかねぇ……?」
そうぼやきながらガンダムベースから家までの道地を急ぐ。
さっきのバトル終了後何となくで確認したARデスクトップに表示されていたダメージレベル(あくまでも仮想空間内のデータ上のとつくが)がとんでもないことになっていた手元のカバンに雑に突っ込んだ多数並んでるキットの中で何となくで選んだRGのガンダムアストレイレッドフレームだと多分あの後で誘われたマギーと名乗るオカマの誘いに乗るとしても乗らないとしても。俺が真っ先にやらないといけないのは今のこの鞄の中に突っ込んでるレッドフレームを強化するかなんかしないと多分戦闘領域か何かに突っ込んだ瞬間死ぬ。
「そう……思ってたんだけどなァ……」
家に帰ってから鞄のふたを開けてすぐにこぼれたのは落胆の声。
原因はわかる。雑に突っ込んだからだ。緩衝材か何かガンダムベースでもらうかして使っておけばこんなことにはならなかったはずだ。
自転車から降りて自室に入り、机の上に放り投げるかのように置いてから開けた鞄の中に突っ込んでた箱の中でレッドフレームは粉砕とは言わないが、滅茶苦茶に壊れていた。
行きの時は元々あれが入っている建物の方に用事があって行っただけだし、そもそもGBNを始める予定もなかったから鞄の中身は用事に必要なものだけですっからかんだったし向こうでガンプラ作るなんて考えてもなかった。
元々手先は死ぬほど不器用で、双子の姉のために折った折り鶴は出来上がったもののあまりの汚さに渡すことができないまま隠し持ってたらそのまま一生渡すことなんてできなくなってしまった。
ふと何かを感じて振り返る。
振り返ったことで見えた独りぼっちだとやけに広く感じる部屋の向かい側にある棚に少しだけ積み上げられたプラモデルの箱が見えた。
その中でたった一つ、組み上げられるどころか封すらあけられていない
「そう言えば、結局これが欲しいて強請ったから小遣いはたいて買っちゃったけど結局あいつ作らんこうに症状悪化したはずだから……ってあれ?」
求め主がその前に開けられないことになってしまったせいで封が閉じられているはずの箱は封が開いていた。
「なんで開いてるんだ。つか作ってないから若干重たいはずなのに滅茶苦茶軽い……?」
そう呟いて箱の上蓋を開く。
今日生まれて初めて作ったガンプラであるレッドフレームがそうだったようにプラモデルは基本ランナー単位でパッケージングされたものが箱に入っている。しかし、箱の中にはランナーは一切入っていなかった。
「なんだ……これ」
入っていたのは紙でできた梱包材。中に入っているものが壊れたりしないように壊れやすいものを守るために突っ込むものだった。
「いやなんで?」
作ってもないはずのキットの箱にこんなものが突っ込まれているのか。その疑問はすぐに明かされた。
「っ!?」
入っていた紙製の緩衝材を少し払いのけると特徴的なオレンジと銀色の突起が目を刺す。
決して中に包まれたものが壊れないように、優しく雪を払いのけるように緩衝材をそのオレンジと銀の全体像が見えるように払いのける。
「なん……で」
緩衝材に包まれて入れられていたのはこのキットの中身であるウォーグレイモン。デジタルモンスターと呼ばれる0と1で構成されたデジタルワールドに存在する仮想の存在だった。
「あいつ……俺がやってから体調悪化させる数日の間にまさか作ったのか…?」
呆然と呟く。震える手でゆっくりと箱の中から取り出したそのウォーグレイモンは穴埋めや簡易的ではあるが塗装が丁寧にされており、まるで誰かにあげるために作ったかのような出来栄えだった。
「雄吾」
無言でそのウォーグレイモンを見つめていた俺の背中の方から名を呼ばれる。
「……おかん」
「あんたやっとその箱開けたん?」
部屋の入口の方で呆れたかのような顔をしたおかんがこっちを見てため息をついていた。
「やっと…っておかんはこのこと知ってたのか?」
「知ってたも何も春香の頼みに応えて塗料とか用意したの私よ?」
そう俺の問いに対しておかんはどや顔で答え、そのまま
「ほら、箱の底の方観てみなさい。春香の思いがつづられてるから。」
そう続けてその場から立ち去っていく。その後ろ姿を見送ってから言葉に従う様にさらに積もっていた緩衝材をのけると箱の底の方に小さく折りたたまれた紙と組み立て説明書が入っていた。
「……」
無言のまま折りたたまれた手紙らしき紙を開く。
『雄吾へ
多分この手紙読んでる頃にはあんたも誕生日だろうし家でケーキ食いながらこれ受け取ってんだろうけど私は多分そこにいない。
まぁ、死ぬつもりはないけど病状多分そのごろまでには戻んない。アンタに強請ってこれ用意したけど直接渡せんのは少しばかりつらいし悔しいからこれに綴る。
金に関しては後で母さんに請求しといて。言ったら返してくれるはず。多分。
アンタも私もデジモン好きだし、あんた前にデジモンなるならウォーグレイモンがいいとか寝ぼけたこと言ってたから机の上にでもこれ飾って気分だけでもそのつもりでいなさい。
つかそうじゃなくても、塗装ちょっとしたせいで医者に滅茶苦茶怒られてしまったんだから大事にしろよ。
家に帰ったときに大事にしてなかったらお前が大事にしてるエグゼイドとか言う仮面ライダーのベルト売っぱらうからな。
P.S.
私以外の誰かのために身を張れ。そして自分のために戦え。それがアンタが好きなライダーでアンタが目指すべき場所でしょ。私や母さんのために興味もないようなもんに手を出して金儲けしてんじゃねーよ。
「何数分先に産まれたぐらいで俺の大事なもん勝手に売っぱらおうとしてんだよ。ふざけんじゃねぇよ……」
言葉とともにぽたりと零した涙が手紙に染みを作る。
もう誰も使うことのなくなった勉強机の上に置かれたもう二度と帰ってこない双子の姉の写真を睨みつける。そして目端に流れつつある涙をぬぐいながら
「あぁ……言われなくてもそうしてやるよ。」
呟いた言葉の最後を口から出す音にしないで心の中でそう続けた。
拭いきれてなかった涙がぽたりと落ちて手の中でやさしく握られるウォーグレイモンにあたって水をはじいた。まるで太陽を象る勇気の紋章を背負うこのデジモンには涙は似合わないとでもいうかのように。
まぁ、特に対策せんこうに鞄にガンプラ突っ込んだらそりゃ壊れるよねってツッコミはなしで。