起きたらドデブスの魔女に生まれ変わっていた俺の話、聞いてくれる?   作:サイスー

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カトレア

 

 使用人たちはすぐにこの場から離れた。忍びのように音もなく、気配を消して部屋を出ていった。ほんと一瞬目を離してたら消えてた。どういう技術なの? 凄すぎる、王城。

 煌びやかなシャンデリアがいくつも天井からぶら下がり、光を砕いて煌めいている。

 華やかな白いテーブルには金のラインが入り、優美な曲線を描く脚部分には複雑な彫刻が施されていた。随分と洒落たデザインだ。王宮ともなると一つ一つの調度品に高級感がすごい。いちいちすごい。

 

 用意されていた俺の席は、二人の美女の正面である。長く大きな白テーブルが俺と王妃様たちを隔てている。

 

 朱色の髪に白い筋が入った可愛らしい顔立ちをしたほうが王妃様。長い赤髪を結い上げて毛先を巻いて首筋から流している色っぽい女性がカトレアさん。どちらも似たような赤髪とあって、なんとなく姉妹みたいだ。

 こんなこと言うとあれだけど、ものすごい目の保養。目が幸せ。ありがとう、美女。

 

 王妃というイメージだけでいえば、カトレアさんの方が王妃っぽいゴージャスさがあった。

 丁寧な口上で歓迎の意を示される。カトレアさんは王妃と俺が二人きりになるのはアレだから、と同席しているだけらしい。気を悪くしないでくれと言われたが、美女が同席して嫌な気になる男などいるはずがない。

 まあ、理由がそれだったら使用人でもいいんじゃないのかなとは思ったけど。俺は空気の読める男だから、そういうところはあえて突っ込んだりはしない。なにが失礼にあたるかもわからない魔界文化だしな。

 

「本日はお招きいただき、光栄です」

 

 無難にも俺はそんなつまらないことを言った。そして相手の出方を口元に笑みを浮かべつつ伺う。うーむ。……ダメだ。どちらも全く違う系統の美人で眼福としか思えない。

 ていうかそれ以外に目を向けてしまうと、王城をディスる言葉が出てきてしまいそうだ。

 王家の威信のためにも何度も言うが、整えられた場にはどれも高級感の漂う調度品が並んでいる。高そうだし、センスのいいやつばっかりだ。

 それにもかかわらず……というかそれだからこそ気になるのは汚い壺。

 この壺、変な魔力が漂っているうえに、変な顔みたいなのが浮かんでいる。

 壺の全面はぼこぼことした茶色で、薄黴っぽい緑色が浮かぶ。

 全体のデザインは底が膨らんで、上にいくに従いきゅっと窄まりまた開く、よくあるデザインだ。だがその表面が老人の皺のように細かくぼこぼことした凹凸があって、明らかに意図して顔のような模様が施されている。

 目があって鼻があって口がある。鼻は鷲鼻っぽい。

 目を向けないように試みるのだが、どうしてもそっちに視線がいってしまう。

 口の端が歪んだように吊り上がっているのが、まあなんともいやらしい笑みで、見ていると眉間に皺が寄りそうになる。あんまりこういうこと言いたくないんだけど、ムカつく顔した壺だなぁ。

 

「もしかして、その壺がお気に召しまして? 先先代の魔王陛下のお気に入りなのですって」

「え? ああ、まあ……」

 

 お気には……召してない。

 だが俺は相手の好きなものを否定できない日本人の性分をしていた。

 やたら目につくんだよ、この壺。嫌なのにみてしまうってことは……お気に召したってことなのか?(混乱)

 

 魔王って、歴代センス悪いのかな。魔王城も変な雰囲気が漂っているし。

 そんなことを俺は考えていたが、顔にはもちろん出さない。

 というか、フードで顔すら出していなかったじゃんか。

 フード越しとなると普通視界が遮られて不快に感じると思うのだが、フードをつけているにも関わらずフードがついていないかのように視界がはっきりと見える。不思議なことに。

 これはすべてのローブがそうだった。なんでもそういう魔法がかかっているらしい。

 あまりにも視界がクリアなものだからすっかり忘れてた。今更ながらにフードを取る。

 

 驚いたような顔の二人の美女。え、なんだ。

 

「……もしや、フードを取ってはいけませんでしたか?」

「い、いいえ! 不躾にすまなかったわね。外してかまわないのよ」

 

 チラ、と二人が目配せし合うのを見て、魔界の礼儀に疎い俺はなにか失態でもしたのだろうかと悩む。

 グラジオラスの頭のなかに詰まった知識には、フードを取らないで話続けるほうが無礼だとされているのだが。

 

「貴女のために美味しいワインを用意させたの。貴女の好みがわからなかったし、アルコールしか飲まない魔族もいるから。

 もちろんこの紅茶もすごくおすすめだから、好きなものを飲んでちょうだい」

 

 王妃様がグラスを軽く掲げる。ワイングラスに入った真っ赤な液体がわずかに揺れる。カトレアさんもまた、上品にワイングラスを掲げた。

 俺の目の前にも同じワイングラスが置かれている。手に取り、見様見真似で掲げる。

 

 ……ルネッサーンス。

 

 いや、何の時間だ。

 相手が切り出さないなら自分から切り出すか。

 

「……私はこういった場が不慣れなので、単刀直入に申し上げます。

 王妃様はなにをお望みで?」

 

 わざわざ俺を呼び出した理由はなんなんだ。

 後宮小説風会話で遠回しに言われてもわからないし、ルネッサンスに込められた意味もわからない俺はずばりと尋ねた。

 声は震えなかった。不思議と全く緊張もしていない。

 俺とは住む世界の違う美女は、あまりにも現実感がなかった。

 ダリアに自分の気持ちを話す時の方がよっぽど緊張した。

 

 相手がとてつもなく偉い方だとはわかっているのだが、カトレア様は始終穏やかに微笑んでくれているし、王妃様はツンデレ美女っぽくてかわいい。

 これほどまでの高嶺の華と直接やりとりができるなんて、人生でそう何度もないことだろう。なんて思う余裕さえある。

 心なしか、漂っている空気さえ甘く優雅な気がして、余計に俺を夢見心地にさせた。

 

「グラジオラス。あの化粧水は、とても素晴らしい出来栄えでした。貴女にこれからも私の美容品を作ることを許します」

「はい。ありがたき幸せ。……えーと……それ以外には?」

「ゆえに、貴女に王家の御用達となって貰いたいの。個人的に懇意にしたいと思っているわ」

 

 え、そんなこと?

 いやしかし、女性が美へと傾ける情熱は並々ならないものだと聞く。

 尊大な口調とは裏腹に、瞳は不安げに揺れており、俺はまっすぐに王妃を見据えた。

 

「かしこまりました。オーダーいただければいつでもお作りいたしますよ。

 普段王妃様はどのようなお肌の手入れをなさってますか?」

「貴女の化粧水が届いてからはそれを使っているけれど、肌だけを手入れするのは浴槽で侍女がオイルを塗るくらいだわ」

 

 なるほど、どうやら魔界では肌を手入れする習慣はそこまでないと見た。

 魔王妃でそれなら、きっと他の女性もその可能性が高いだろう。

 化粧水という概念はあるし美容液もカタログにあるのに、乳液を見ないのが不思議だと思っていたんだ。

 

 地球では男の俺だってドラッグストアで買った安い化粧水や乳液で肌を手入れしていたが、魔界ではそこまで美容が進歩していないんだな。

 俺が売り出した美容液が飛ぶように売れていたのも納得だ。俺としては十分高値をつけていたが、もっと強気の価格設定でもいけたな、この感じだと。

 美容液こそ売る魔女がいたものの、基本的に競争相手がいない。しかも俺の製品は自分で言うのもなんだが質がいい。真似をされても、同じものは作れないだろうと自負している。

 

「なるほど。

 では、化粧水、乳液、美容液のサンプルをお送りするので気に入ったものをオーダーしてください。侍女にもわかるように塗る順番を書いた紙もおつけしますね。

 

 ……ああ、くれぐれも侍女を通じて普通にオーダーしてくださいね」

 

 あの悪筆ぶりを思い出した俺は、不遜ながらも慌てて付け足した。

 

 普通に、の部分でビクリと肩を揺らした王妃様は、隣にいたカトレアさんと目を合わせる。

 王妃様は瞳をまん丸に見開き、眉尻を下げている。カトレアさんもまた、まなじりを下げて小さく頷いた。

 

 仲がいいらしいカトレアさんなら、俺が王妃様の字を読めないことをきっとわかってくれてるよな。

 

 場の沈黙が気まずすぎて「大丈夫ですよ。このことは誰にも言いませんから」と言ったら、余計に王妃様とカトレアさんは眉を顰める。

 重い沈黙が続く。ちょっとなんだよ、二人で見つめ合ってばっかしで。気まずいじゃんかよ。何か言ってくれよ。

 

 いやー、ハハハ! それにしてもほんと字が汚いですよね! 未だに読めなくて、暗号解読班(カロス)が苦労してるんですよ! なんて言える雰囲気でもないし。

 ……というか、そもそもなんでバレたくないのに直筆で手紙を送ってきたんだ。

 いや、そうだ、そこだ。

 誰かにバレたくない内容だからこそ、わざわざ直筆で送ってきたんだ。カトレアさん以外の周りの者たちには俺が来ることを伝えていないみたいだし。俺が来ることが恥ずかしいとかじゃなくて、俺が来ることを周りに秘密にしたかったんだ。

 

 ってことは、悪筆以外に、王妃様は隠したいことがあったってことだ。

 

 ……なんだろう。

 

 今更ながらに思考が巡ってきて、俺は目の前に置かれていた湯気の立つティーカップを傾けた。

 芳しい華の香りがふわりと鼻腔をくすぐる。温かな紅茶が喉を通り、胃を温める。ほっと肩の力が抜ける思いだった。

 ちらりと上目遣いに彼女たちを窺う。横顔までも彫刻のように美しい。けぶるような睫毛はくるりと上を向き、大きな瞳を彩っている。

 

 二人の様子を見ていて気になるのは、カトレアさんの魔力だ。美しい赤の魔力は他に比べても量が多く、高位魔族とはかくやというもの。だがそこに黒いものがポツポツと混じっている。それはまるで、魔王城に辿り着いたときに感じた異質な魔力と同じような。

 

 王妃様のほうはそんなことはない、桃色の魔力だ。

 

「カトレア様……とお呼びしても?」

「許します」

 

 にこり、と微笑まれる。美人だ。好きだ。

 

「カトレア様。貴女の魔力は――」

 

 はっと目を見開いたカトレアさんが手袋をつけた手を俺へと向ける。

 真っ白いレースの手袋に彩られた細い指が強い拒絶を示している。

 

 手だけで言葉を静止された俺は、手ですら美しいだなんて、美女はどこまでも美女なのだな。などと馬鹿なことを考えていた。

 

 それ以上の言葉をやめた俺に、カトレアさんが緊張していた肩の力を抜き、ゆっくりと手を下げる。

 凍っていたカトレアさんの瞳が、沈黙が過ぎるとともに和らいでいく。

 大丈夫、俺は言うなと言われたことは言わない人間だよ。安心して。

 欲望に忠実な普通の悪魔とは一味違うのよ。

 

「グラジオラス、貴女は思っていたよりもずっと……ずっとお優しいのね。

 そして、思っていた通り聡いお方」

 

 そんなことを言われ、俺は頭のなかいっぱいにクエスチョンマークが浮かんだ。

 どういうことだ。なにかお優しいことしたか? いや、してない。

 聡いことをしたか? いや、してない。

 強いていうなら簡単なジェスチャーに反応して黙ったくらいだ。魔界にはKY(空気読めない)が多いのだろうが……。今更だがKYって死語か? 死語だよな。

 

 それはともかく、俺は特別優しいことなどしていないのはたしか。

 訳のわからないところでの評価は、褒められてるから悪い気はしないのだけれど、同じようによくわからない部分で失望されることも起こりそうでなんだか嫌だ。

 

「リコリス、貴女の疑念も晴れたことだし、今日のところはこれくらいにしておきましょう。

 きっとグラジオラスは彼女が言う通り話を広めたりしないわ」

 

 ぜーったいこれ、なんか勘違いされてるな。

 その話って、なんですか。なんて言えた雰囲気じゃねえ。

 

 不思議なお茶会は結局、王妃様へ基礎化粧品を献上することを許されたくらいで終わった。

 

 カトレアさんが俺が出ていくのに合わせて追いかけてきた。

 

「グラジオラス、先ほどは本当に助かりました。

 私でできることでしたら、なんでも言ってちょうだい。

 それこそ、夫は幅広く手を伸ばしているから、希少な材料なんかも取り寄せることができるわ」

 

 と、追いかけてまで言ってくれた。

 俺はふと前に見た希少すぎて滅多に手に入らない材料一覧を思い出す。

 高位魔薬を作る練習を日々重ねているところだが、高位魔薬となると用いる素材も希少なものが多い。練習しようにも材料がなくて練習できないものも多い。

 希少材料のうち、家になくて、思いついたものを言う。

 

「カダバー……ってご存知です?」

 

 目を見開いたカトレアさんが「夫の商品のなかにもあるけれど、わざわざ私に言うということは、高品質なものが必要なのよね?」と言う。

 

 希少なカダバーという存在は、さらに品質が違うらしい。

 グラジオラスの知識を持つ俺よりもカトレアさんのほうが詳しいって、どういうことよ。凄すぎない?

 

 なぜか悲しげに眉尻を下げたカトレアさんは消え入りそうに儚い声で言った。

 

「それならば私にでも用意ができます」

 

 そう言って、なんだか寂しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 リコリスはグラジオラスに魔王オーダーではなく普通のオーダーをするよう促されたことを思い出し、いまだに心臓が激しく鼓動していた。指先が細かく震えながらティーカップの持ち手をつまむ。すっかり冷え切ってしまった紅茶を飲んだ。味なんてまるでわからない。

 その後一気にワイングラスを煽る。

 このことは黙っておく、とは言っていたが信用していいものだろうか。グラジオラスは金で黙らせることができるタイプの魔女ではない。彼女がその気になれば、その類稀な腕で作った薬を売って巨万の富を得ることだってできるのだ。それなのに質素な暮らしぶりを貫いている。

 

「すこし、彼女と話してくるわね」

 

 カトレアがそう言って、滑るように移動していく。ゆっくりと退場していったグラジオラスのあとを追った。

 残されたリコリスは、ぱたんと閉じる扉をなんともなしに眺めながら思考を続ける。

 ふくよかな体型だと聞いていたことから、食に興味があるのだろうと準備させた魔界でもなかなか手に入らないスイーツは一口も手をつけていなかった。

 かなりの醜女であると噂されていたが、実物の彼女は派手な美貌こそないしぽっちゃりとはしているが、艶やかな髪に瑞々しい色白の肌のかわいらしい魔女であった。化粧をすれば相応に映えることだろう。

 噂というものはやはり当てにならないものだ、と実際に会って思った。せっかく高い金を積んで彼女に関する噂を調べさせたのに、何一つとして役に立たなかった。

 この分だとグラジオラスが高度な呪いをかけたという噂も怪しいものだ。遠見の一族に調べさせたところ、たしかに高位魔法を行使した記録は残っているものの、彼女の瞳に昏いものは見えなかった。後ろ暗いことをしている者の目は相応に澱んでいくものだとリコリスは知っている。

 魔王妃という立場上数多の人々を目にしてきて、それなりに人を見る目は優れていると自負している。

 リコリスの血統魔法である精神魔法は、究極ありとあらゆる生物を意のままに操ることができるものだが(リコリスはまだそこまでの域に達していない)、派生魔法として知性ある生物の感情を読み取ることができる。

 これは考えをそのまま読むことができるのではなく、言葉になる前のもっと原始的な感情がわかるというものだ。

 彼女は始終リコリスたちに良い印象を持っていた。悪意なんて、まるで感じられなかった。

 

 言葉は割と簡単に誤魔化せる。

 己がそうだと思い込んだり、あえて思考を隠そうとすれば、読み取った相手に勘違いをさせることが可能であるが、感情に嘘をつくことは不可能だ。

 感情を読み取るリコリスが王家に望まれたように、心を読み取るカリステファスもまた陰謀渦巻く王宮としては喉から手が出るほど欲しい能力で、過去しつこく王家に望まれたと聞く。

 

 カリステファスほどの高位悪魔が魔女グラジオラスの使い魔となったことはかなり稀有な例でとても有名なことであるが、逆にそこまでしないことには王宮からの召集を断れなかったのだろう、と同じような能力を持ち、破格の待遇で召集されたリコリスは考えている。

 

 リコリスに魔王妃としての地位が用意されていたのと同等の地位がカリステファスにも用意されていたことだろう。

 カリステファスは雌雄両方の姿をとることができるため、彼のファンは男女ともに多い。案外リコリスと同じく魔王妃の地位を用意されていたんだったりして。

 

「ぷっ……」

 

 周りに誰もいないものだから、ついつい一人で笑ってしまった。

 

 だって。そうだとしたら、カリステファスが使い魔という立場になってまで逃げたのにも得心がいく。

 カリステファスとは遠縁であることもあり、実際に顔を合わせたことこそないものの、家同士の繋がりはあった。実力はあるのになかなか当主を継いでくれないと悩む家主のぼやきをリコリスの両親が聞いたこともある。

 

「リコリス、なんだか楽しそうね」

 

 戻ってきたカトレアがリコリスの様子に目を瞠っている。普段から大きな瞳がさらに大きくなっている。

 なにをしても気品を失わない綺麗な方だ。

 

「わたくし、カリステファスがグラジオラスの使い魔になった理由がわかった気がしますの」

「あら…………?」

 

 突然の話題に面食らったカトレアであったが、すぐに穏やかな微笑みに切り替えて「それは気になるわね」と続きを催促した。

 彼女があえてリコリスの軽口に乗ってくれたことなど一目瞭然だ。

 本来ならば魔王オーダーの件を話さねばならないこともわかっている。

 だけどほんのひと時くらい、逃げたっていいじゃないか。逃げて英気を養って、それから物事に取り組んだって遅くはない。

 

 リコリスが面白おかしく己の考えた説を話すと、カトレアは瞳に涙を浮かべてお腹を抱えた。

 

「ふふっ……ふ、高位悪魔でありながら従魔に下った理由が、魔王の嫁になりかけたから……ふふっ。ふふふっ……たしかに、男の方が男の方に嫁ぐのは……ふふっ、嫌よね……!」

 

 貴族たるもの大笑いをしては品位を損なうと言われているが、リコリスもカトレアもギリギリのラインであった。

 

「カリステファスに用意する地位は如何に。

 なんて真面目くさって会議してるなかで、リコリスと同じく魔王妃がよろしいかと……なんて言う宰相相手に、アゲラタムが大真面目な顔でうむ、とか言って頷いてるのを想像したらもう、可笑しくなっちゃって」

「詳細を語るのはもうよしてちょうだい、リコリス……」

 

 机に突っ伏しそうなほど身体を折り曲げたカトレア。高貴な立場とは裏腹に実は笑いのツボが浅いのが彼女のいいところだ。

 リコリスたちはしばらくの間、哀れなカリステファスを話題にして楽しんだ。

 

 

 

 その頃のカリステファスは妙な寒気で身震いしていた。

 

 

 

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