【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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いいやつに嘘つく時ってめっちゃ申し訳ない感情になる

「それで、貴様は何者なのだ」

「はい?」

 

 俺は今、転校生に問い詰められている。

 

 黒髪ショートの、小さな転校生。

 もちろん女子。

 

 こんなことになったのには、朝から説明する必要がある。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 俺も登校して、最初に聞いたのは、『転校生がこのクラスに来る』ということだった。

 転校生。

 奇妙なタイミングで来る転校生だな、と思いつつも、最初はどんな転校生なのかと普通に興味を示していた。

 

 だって普通の学生生活でも転校生とか結構レアなイベントじゃん。

 それに教室でも人だかりができる、ってことは結構レベル高い可能性もあるわけで。

 

 という一般的な興味を示していたのだが、俺は失念していた。

 

 ここがBLEACHの世界だということに。

 

「ごきげんよう」

「あ」

「……どうしたのですか?」

「あ、いや、ごきげんよう?」

「はい」

 

 そして人だかりが少し減り、野次馬根性で転校生の顔を見ようと接近した。

 啓吾は担任のところに呼ばれて出ていった。

 水色はまだ登校していない。

 一護も。

 

 なので必然的に一人で見に行ったところ、あちらに気づかれて声をかけられた。

 同時に見える容姿。

 その容姿に俺は思わず言葉をつまらせた。

 

 朽木ルキア。

 

 流石に覚えていたキャラ。

 

 俺に声をかけてきたその人は、まさに朽木ルキアその人だった。

 

 とっさにオウム返しでやり過ごし、人だかりから外れて自分の席に座る。

 

「いやぁ……朝から疲れた……。

 あら? どったのゲンジ」

「ちょっとな」

 

 職員室から戻ってきたのであろう啓吾は、疲れた様子を見せながらも話しかけてくれた。

 それは嬉しいのだが、俺の脳内はそんなことにかまっている暇はなかった。

 

 朽木ルキア。

 それは漫画の序盤から結構長いこといるキャラだ。

 というかなんかヒロインじゃなかったっけ?

 

 とりあえず死神なのは確定。

 

 ということは、前に一護は死神だったけどなれなかった?

 

 いや、朽木さんが来たということはこの時点から物語がスタートしている?

 

 頭の中を巡る想像に俺の処理能力がついていってない。

 

「あ、一護のやつ朽木さんと仲いいのか?」

 

 そのタイミングで啓吾がそんなことを口にする。

 一護?

 

 とっさに辺りを見渡す。

 そこには一護と朽木さんの姿が。

 何をしているのかは分からないが、一護が朽木さんの差し出した手のひらを見て、硬直している。

 

「そういえば、一護の家、昨日トラックの衝突事故があったんだってな」

「へ?」

「いやさ、あいつの家、病院じゃん。

 そこに大穴空いていて、どうなったかってので『トラックが突っ込んできた』らしいよ」

「……あいつとうとうヤクザに喧嘩を売り始めたのか?」

「いやいや、一護への恨みとかではないらしい。

 トラックで突っ込んだ人も事故だって言ってた……あれ? どんな人だったっけ?」

 

 そんな姿を横目に、啓吾が心配そうに話し始めた。

 

 その話の内容は、気になるもの。

 トラック?

 俺も最初はヤクザにとうとう手を出したのか一護、とも思ったが、冷静に考えればそれは違う。

 

 朽木さんの突然の転校。

 一護の家にトラックの衝突。

 

 この2つが全く別の事柄なわけがない。

 

「あ、一護きた」

「え?」

「おっはよー! イチゴブアァァ?!」

「朝から抱きついてくるな、気持ち悪い」

「え? そんな悪い子に育てた覚えはないわよ……イチゴ……」

「育てられた覚えはねーよ」

 

 いつもの朝のやり取りをしつつも、イチゴは俺のことを見て、

 

「今日の昼、話がある」

 

 一言告げた。

 

 明らかに死神関連のことかな?

 俺の正体バレたとか???

 

 冷や汗を出さないように神経を集中させつつ、

 

「わかった」

 

 了承した。

 

 昨日の話をはぐらかした一件もあるので、流石に逃げるというわけには行かない。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 そして、昼休み。

 

 転校生が来た以外何気ない1日を過ごし、俺は屋上に来ていた。

 

 屋上はよく俺らが使っている昼休みスペース。

 一護が何か言ったのか、啓吾と水色は屋上に来ないと言われ、俺が一人で屋上に向かっている。

 

 チャドもたまーに来るのだが、今日も休みらしい。

 

「おっす一護―」

「お、来たか源氏」

「貴様か……」

 

 そこにいたのは、一護と朽木さん。

 

 朽木さんは俺のことを見て、少し納得したような表情を見せる。

 

 あー、これは問い詰められる感じですかね?

 

 俺がそっと屋上のドアを締めると、

 

「それで、貴様は何者なのだ」

 

 いきなりそんなことを言われた。

 

「は? 言ったろルキア。

 こいつも死神だっ「たわけが」んだとぉ?!」

 

 その会話を聞いてすぐさま理解した。

 

 一護、俺のこと死神だと思ってたわけね。

 

 確かに。

 虚を斬った瞬間は見ていたはずだから、俺が刀を隠して持っていたと考えてもおかしくはないのか。

 

「本来死神は尸魂界の存在。

 現世に肉体はない。

 あるとすれば、私も使っているような人間のような義骸だが、その雰囲気もない。

 おまけに死神の気配もしない」

「……じゃあ、源氏は」

「だから言うておろうが。

 こいつは何者だ、と」

 

 一護と朽木さんが話しているのを見ながら、俺はどうしようかと考えていた。

 

 話すのは簡単だし、俺としても何も知らないので話したい。

 

 でも、浦原さんの話からするに、俺って昔とはいえ粛清対象だったという。

 正直BLEACHの話で石田くんが死んだとか言う話は覚えがないので、クインシーであれば死なないのかもしれない。

 

 けど、俺はクインシーとは少し違う存在だ。

 ジジイが生きているということを除けば、俺は殺されてもおかしくない存在。

 

 話すかどうかの選択に立たされている。

 

「一護」

「ん? なんだ?」

「朽木さんって、何者?」

「えっ? お前は知らないのか?」

「朽木さんとはあったこともないし、なんで一護が俺がそんな知っていると思っていた風な感じなのか、見当がついてない」

 

 まずは、俺がボロを出さないように話を引き出す。

 あっちの知らないことを話して殺される、なんてのが一番怖い。

 

「えっと……」

「構わん、話してもいい」

 

 そこから始まったのは、聞いたことのあるような話。

 

 一護の家族が虚に襲われる。

 

 朽木さん(死神)が守る。

 

 守りきれずに大怪我。

 

 一護死神の力もらって爆誕。

 

「は?」

「……ほんとになんにも知らないみたいだな」

 

 一応、虚とか死神とか、基本的なことを朽木さんに説明してもらった。

 浦原さんの話があったから理解できたけど、あのゴミみたいな絵を見せられて説明されたら初見じゃ分からなくない?

 

 それで先程の話だ。

 

「なんか、今日の一護はやけに気持ち悪いくらい圧力強いと思っていたけど、それが原因なのね」

「あぁ。

 此奴はどういうわけか霊力が人より高くてな。

 それ故に素人剣技でもどうにかできた」

「倒せたからいいじゃねぇかよ?!」

 

 普通に今日の一護はなんか圧力が強かった。

 強者特有の強みかと最初思っていたけど、なんかそれにしては洗練されてない感じがあったので、不思議には思っていた。

 

「で、今後はどうするの?」

「力が戻るまで、此奴に仕事を手伝ってもらおうという算段だ」

「俺の家族は霊力が高いらしいから、それを守るついでなら」

「何?! 私の仕事を代行してもらうぞ?!」

「いやだよ?! なんで俺がそんな事?!」

 

 ガミガミと始まる喧嘩。

 痴話喧嘩の様に見えるが、言ってはならないようなこの空間に、一人取り残された感じを持ちつつも、

 

「まぁ、俺としてできることはないから、じゃ」

「「待て待て」」

 

 流石に逃してくれないか。

 

「源氏。

 俺の記憶が正しければ、お前は虚を倒した。

 そうだよな?」

「此奴から聞いて驚いた。

 人間でそんなことができるやつがいるのかと」

「……見間違いじゃなければ」

「じゃあ、その腕の怪我はどうしたんだ?」

「これは一護を車から救い出そうと……」

「車に轢かれた記憶はないなぁ?」

 

 言い訳自体を一護に用意してもらっているので、逃げようがない。

 

「……降参」

「それで、貴様は何者なのだ」

「俺は、霊媒師だ」

「「は?」」

 

 そして俺が始めるのは、適当な霊媒師『我妻源氏』の話。

 

 両親を早くになくした俺は、ジジイに拾われ、普通に過ごしていたが、この霊が見えるという体質から、困っていた。

 そこでジジイから霊媒の術を教わり、身を守る程度の霊媒術を身に着けた。

 

 もちろん嘘であるが、嘘を付いた理由としてはホント単純。

 

 俺だけ殺す対象だったわ的なことを防ぐためだ。

 

 多分今後石田くんが話に混ざってくる。

 そのときに折りを見て話せばいい。

 今話して余計なことをしたくない。

 

 あくまで俺はそこらへんの霊媒師的な人でいいのだ。

 

「……普通の人間がそれでも虚を倒せるとは思わないが……」

「いやいや、右腕こんなに怪我してるのよ」

「あー。

 なんか、ゴメンな、源氏」

 

 朽木さんは俺のことを半信半疑で。

 一護は俺の両親がいない、というところから少し申し訳無さそうな表情で。

 

 話を聞いてくれた。

 

 正直信じてくれるか不安だが、俺の過去には空白が存在する。

 そのため、調べても俺が滅却師だという証拠はでない……はずだ。

 

 バレたらそのときには逃げよう。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 そこでタイミングよくチャイムが鳴る。

 

「ってことで、俺としてはこれ以上怪我をしたくないし、虚に関わっても逃げるようにするし、一護に連絡すればいいんだろ?」

「……うむ。

 前はたまたままぐれで倒せた可能性が高い。

 今度は一護を呼べ」

「……不服だけど、源氏のためなら駆けつけるよ」

「ありがとな」

 

 一護が普通にいいやつだから、心に来るなぁ……。

 

 俺は一護の突き出した拳に、拳を当てた。




霊媒師「ボハハハハハ!!!!!」

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