【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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お久しぶりです。
生きています。
久しぶりに書いたせいか、少し緊張しております。


月明かりって単語がもうオサレ

 俺は虚を退治したのを確認し、気絶した。

 

 そして目が覚めると、2日が経過していた。

 

 ……いや、あんな余裕綽々で倒しておきながら、なんで寝込んでなおかつ2日も経過しているのか。

 これに対しては、チャドを守るときに背中に食らった一撃のせいだ。

 

 いくら常中をしていようと、俺は所詮生身の人間。

 化け物からの攻撃でダメージを食らうのだ。

 

 幸いにも重症に至ったことはなく、朽木さんや一護のお父さんからの助力もあり、後遺症も傷跡が残るというようなことはなかった。

 

「……ごめん」

「何謝ってんだよ」

「源氏が助けを求めてくれたのに、俺は助けられなかった」

「は? お前は何言ってるんだ?」

 

 そしてまぁ、今俺はクロサキ医院の病床で、一護から謝られていた。

 

 クロサキ医院は小さな町の病院、という雰囲気の場所。

 俺も家から少し遠いが、通わせてもらっている。

 一護の親父さんは能天気に見える、いい人だ。

 

 この人あって一護が育ったんだとよく分かる。

 

 そんなクロサキ医院の病室の一角。

 小さな医院なので、入院患者を取り扱うことは早々ないため、数も少ない。

 

 しかも家と隣接しているせいで、少し晩飯のいい匂いがする。

 

 俺としては晩飯食べたいところだから、話は後回しにしてほしいが、一護の表情は重苦しいものだ。

 倒れた後のことをやってくれたことや、治療してくれたこと。

 これに対して俺は感謝してもしきれないくらいなのだが、食らった言葉は謝罪。

 

「だって……っ、俺はっ……」

「……あぁ、どうせ一護のことだから、俺のせいで源氏が……とか考えているのか?」

「……そうだろ?」

「……まぁ、たしかにそうかも知れない」

 

 普通、こういう展開の王道としては、否定から始まるのがセオリーなのかもしれない。

 それがマンガという物語のセオリー。

 だけど、俺はそんな事知ったものではない。

 

 俺のためにと暗くされた病室に、月明かりが差し込んでいる。

 結構明るいことに、文明の発展を感じながらも、思考を戻す。

 

「一護がもっと早く来てくれれば、俺は怪我一つなかったかもしれない」

「あぁ」

「朽木さんが死神の力を取り戻していれば、チャドは大怪我をせずに済んだかもしれない」

「それは違うだろ」

「違わない。

 それに、俺がもっとちゃんとしていれば、あの程度の虚に対してこんな被害を出さなかったかもしれない」

「なんで源氏がッ?!」

 

 一護は優しいやつだ。

 それはBLEACHという物語を知っているからではなく、俺が黒崎一護という人物を知っているからこその評価だ。

 

 一護のオレンジ髪が、しっかりと俺の目に映る。

 相変わらずうるさい髪色。

 俺は特に気にしてないけど、本人としては昔に何度も言われたことあるから、別に触れても大丈夫だぞ、なんて話していた。

 

「俺からすれば、その程度の認識。

 一護、自分を責めるのは別に構わない。

 もしそれで、俺が死ぬかもしれないってときに助けてくれるならどうぞ、って感じだ」

「源氏らしいな」

「よせやい褒めるなっての。

 それで、俺としては誰に責任があるとか、俺の傷は誰のせいだとかは別にいいの」

「……どういうことだ?」

 

 俺としては、一護が何を悩もうが関係ない。

 そういう風にこの現実は進んでいくのだろう。

 だけど、俺は違う。

 

 俺はこのBLEACHの世界に降り立った異分子。

 いつ死んでもおかしくない。

 物語物語言っておきながら、ここには痛みも辛さも現実も存在する。

 

 正直一護と距離を置けばいいと思う。

 それは一番思うし、今持っている知識(ほぼない)を総動員して、対抗策を考えればいいかもしれない。

 

 けど、それは一護の人生だ。

 

「俺はただ、人命救助に治療、病床まで貸してくれる一護に、感謝してる」

「……俺は何もやってねぇよ」

「なら次やれ」

 

 俺は一護と少しの間だが、友達をしていた。

 だからこそ、物語では語られないことも分かる。

 

 好きな食べ物とか、授業中の態度とか、先生からの評判とか。

 知らなかったけど、結構担任からは頼られてるし、毛嫌いされているように見えて、結構話しかけてくるやつも多い。

 マンガは貸したら大概すぐ読んで返してくれるし、遊びに誘ったら断られる。

 けど、しつこく誘うと結構折れる。

 

 そんな生きてる人間目の前にして、そいつの人生知ったように語れるのか?

 

 死神でもない俺が?

 

「次はすぐ来い、すぐ助けろ。

 以上」

「あ、あぁ」

 

 無理無理。

 一護は一護。

 俺は俺。

 

 背中に痛みがないことと、呼吸がしっかり行えることを確認して、俺はベッドから降りる。

 

「もしそれでも気になるんだったら、今日はここで飯食わせろ。

 腹減った」

 

 呆然とする一護に、俺はため息を吐いて、

 

「一護パッパー!!!

 こいつメソメソないてるよ―!!!」

「おい! 源氏?!」

「なにぃ!? それは大変だぁ?! すぐにパッパが熱いキッスで泣き止ませてあげちょっ! かりんちゃ?! あぁぁぁあぁぁ?!」

「一兄! その人もしまだ傷ついてたらお粥持っていくけど―! どんな感じ―?!」

「ちょっ! かりんちゃ!? ギブギブ! なんか知らない何かがミシミシしt……」

 

 聞こえる断末魔と、一護のキョトンとした表情。

 

「ほれ、怪我あるか?」

「…………あぁ、ねぇ!」

 

 一護は、そんな俺の様子に頭を力強く掻き、背中をぶっ叩いてくる。

 

 怪我は完治したが単純に力強いため、

 

「ッテメこの……」

「次が来たら、嫌だって言っても守ってやる」

「上等だオレンジ頭」

 

 背中の痛みを感じながら、俺は人生で初めて、一護の髪を指摘した。




余談
チャドは半日で退院した。

追記というか補足
本作では主人公の立ち位置は、本人としても少し悩んでいる、というのが現状です。BLEACHとしての世界。自分という人間が生きている世界。その2つの側面で生きているため、思考がどっちつかずに見えてしまうかもしれません。あえてやっている、というかこの年代の揺れ動く情緒とかが、作者が好物なので見過ごしてください。
(この補足は次話投稿するときに消します)

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