【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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無駄足したぜイェイ

「いただきます」

「……あ、はい。

 いただきます」

 

 現在、俺はファミレスにいる。

 地元の隠れた名店とかではない。

 CMもやるくらいのあのファミレスだ。

 青狸がCMやってるあの店。

 

 あのファミレスで、俺は女子と二人で晩飯を食っている。

 

 俺が、女子と、二人で、晩飯を、食べている。

 

 俺のことを知っている人がこれを聞いたならば、感動してくれるに違いない現状。

 だが、俺は今の状況を素直に喜べていない。

 

 なぜなら、俺はここまでで2つ、現状に対して嘘を付いている。

 

 まず1つ。

 

「うむ? 食わないのか?」

「……いや、俺のこと警戒しないのかなって」

「別に警戒する必要もあるまい。

 そちらに敵意がないことなどこれまでで十分に理解できている」

 

 目の前には女子ではなく、女の人が座っている、という点だ。

 

 朽木さん。

 今でこそ一緒に高校に通っている彼女であるが、その実年齢は恐るべき程に高いらしい。

 まぁ、死神というくらいなのだから人間の寿命と一緒にしちゃ悪いとは思っているけど、そんななのかと驚いた。

 

 俺は朽木さんの背後で雨が降っているのを見て、帰りが面倒だなと思考に区切りを付け、飯に食いつく。

 

「おい、俺様に飯はないのか? 源氏」

「ほへはひへはっはの」

「へ?」

「……っ俺は来てやった人。

 なんでそんな俺がお前に飯をたかられなきゃいけないんだよ」

「ケチくさいなぁ」

「うるせぇぬいぐるみ」

 

 そしてもう一つの嘘、というのがこの話すぬいぐるみの存在。

 

 コン。

 先程俺が呼ばれたやつであり、俺に徒労を味わわせた張本人。

 

「それで、その……魚は大丈夫だったんですか?」

「……残念ながら倒すことは叶わなかった。

 しかし、深手を負わせたのも事実。

 しばらく活動はできないだろう」

「そうっすか」

 

 俺はコンからの連絡の後、買い物袋片手に走った。

 それはそれは本気で走った。

 

 人に見つかれば思わず二度見されるほどのスピードで、町を駆けた。

 なるべく人に見つからないルートを選んだし、俺の気配察知にも誰にも引っかかっていない。

 遠距離から見られれば話は別だが、夕暮れ時にそんな外を見ているやつなんていない(偏見)

 

 ちなみに呼吸を全力で使っているし、普通は車で20分程度のところを走って10分程度で到着した。

 ……化け物とかは言わないで欲しい。

 これでも友達のためにやっているのだから。

 

 そして夕日が落ちる頃に付いた墓地では、気を失っている一護とそれを治療していると思われる朽木さんがいた。

 

 コンからある程度事情を聞き、俺が無駄足を踏んだということを知った。

 

 思いっきり肩を落とし、帰ろうかと思っていたが、

 

「まだ他の虚が出る可能性がある。

 私一人でなんとかできないわけではない。

 だが我妻にいて欲しいというところもある」

 

 治療をしながら、朽木さんがそんなことを言ってくれた。

 

 ……ここらへんで実力がバレていることは確定した。

 

 しかし、追求しないあたり優しい。

 そのことに感謝しながらも、俺は自分の買い物袋の中身を確認して、

 

「それじゃあ、適当に気配隠しながら見張ってます。

 連絡あるならコンに言ってくれれば俺の携帯に連絡できるので」

「あぁ。

 死神ではない我妻に頼むのは申し訳ないが、頼む」

「……何も出ないことを祈っといてください」

 

 そう言って俺は姿をくらます。

 本当は一護に挨拶くらいしても良いのだが、朽木さんとコンの状況から、一護に話す精神的余裕はなさそうな感じを悟った。

 

 そのため、気配を消して、一護が目覚めても挨拶をせずに、周辺の気配察知に努めた。

 

 その間、奇跡的に虚が出ることはなく、一護と朽木さんが解散したところで、

 

「一護から晩飯にと少しお金をもらったので、どこか美味しいお店を教えて欲しい」

 

 と朽木さんから言われた。

 

 

 そうして現在。

 俺の目の前ではフォークとナイフを難しそうに扱う朽木さんが目の前にいる。

 俺の隣ではバッグから顔を出したコン(ぬいぐるみ)が、俺の飯を狙っている。

 

 何だこれは(正論)

 

「それにしても、一護はなんであんな感じになってたんですか?」

「……結構ストレートに聞くな、貴様は」

 

 無駄足をさせられたので、思い切ってストレートに聞いてみた。

 すると、朽木さんは思ったより面食らった表情をする。

 

 恐らく俺はこういうときに気を使う人間だと思われているのだろう。

 まぁ、普段ならそれくらいの気遣いはするが、

 

「別に理由はないですよ。

 このバカコンのせいで無駄足させられたので、理由くらいは聞けるかなって」

「……確かに、私も連絡した後に教えてもらったが、申し訳ないことをした」

「いやいや、朽木さんが言うのは違いますよ。

 コンが必要以上にプレッシャーかけてきたのが悪いわけで。

 まぁ、結局一護も結構な怪我をしてたので、完全に無駄足というわけでもなさそうですし」

「……今回の相手は先程も言ったとおり、死神を既に結構な数屠っているグランドフィッシャーという名のしれた虚が相手だった。

 そのせいで一護はあんな重症を負ったのだ。

 私が加勢できれば結果は変わっていたかもしれないが……」

「ま、朽木さんの力が戻らないのは朽木さんのせいではないし、朽木さんも力を取り戻すためになんとかしているっぽいですし、それも違いますよ」

 

 女子? にはしっかりフォローをする男。

 それが俺である。

 

 一護のときとは対応が違うが、それはあいつが男だからだ。

 女には優しくありたい(欲望)

 

「……まぁ、それ以外にも、一護は過去に因縁があったらしいがな」

「……あー、なんとなくわかりました」

「……ねえさん、こいつ分かった風な顔して大抵適当な事言ってるんで、話してやっても良いんじゃないですか?」

「これは私の問題ではないからな。

 一護の口から話したいときに話してもらってくれ」

「一護としても言いたくない感じですもんねぇ」

「……ん? 俺様って無視されてる?」

 

 別にそんなことはないない。

 

 心の中だけでフォローをしながら、俺はあんまり踏み込まなくてよかったと安堵する。

 

 適当に聞いたものの、結構重い話っぽそうだったなぁ。

 BLEACHってそんな重い話だったの?

 

 そこらへんで飯を食い終えた俺は、水を一口飲み、

 

「朽木さんって、今んとこ死神の力が戻りそうなんですか?」

「え?」

「いや、死神のこととかわからないので、面倒だったら『そういうものだ』で済ませてもらっても大丈夫なんですけど。

 朽木さんの力が戻るのって想定だとどのくらいだったんですかね?」

 

 またもなんとなく思いついた話を始める。

 ……ん? これって遠回しになんで力戻らないんだよ?! って感じになってる?

 

「あー、すいません。

 気にしないでください」

「いや、別に大丈夫だ」

 

 朽木さんもちょうど食べ終わったようで、口元をナプキンで拭う。

 結構所作が丁寧だな。

 まじまじと見たことはないので今更だが、朽木さんって育ちがいいんだよなぁ。

 ……でも一護はマンガの受け売りをやっているだけ、って言ってたし、どうなのかな。

 

「本来なら、私の死神の半分の力を譲渡する予定で、それなら半月程度で力は戻る……と思っていた。

 しかし、一護に思ったより力を与えてしまったせいで私の中の死神の力はほとんど消え去っている。

 普通に考えれば一月もすれば回復するのだろうが、何分すべての力を与えてしまったし、先程も鬼道を使ってしまったため、長引いてしまっている、という感じだ」

「そう……なんですか。

 ……ん? 死神の力を一護から戻してもらうってできないんですかね?」

「あぁ、それに関しては2つの理由がある。

 まず、一護が鬼道……あぁ、説明していなかったな。

 霊力を使用した術のことなのだが、それに長けていないと力の譲渡はうまく行かない。

 私はたまたまできる実力を持っていたから良いものの、本来そこらの死神が行えば人間の魂魄ではすぐさま力に耐えきれず弾け飛ぶ。

 まぁ、次の理由としては、一護の霊力が大きすぎるために、私に入ったとしても毒になる可能性が高いというものだ。

 死神とて自身の魂魄以上の霊力を摂取してしまうと魂魄が自害してしまうということがある。

 そのため、一護から死神の力を返してもらえば、恐らく私の魂魄は消滅してしまう」

「へぇ」

 

 サラッと聞いてみたけど、結構重い理由なんだな。

 というか朽木さんって結構な実力者だったのか。

 今でさえ力なくても、力を取り戻したらやばいな。

 

「……ちなみにですけど、俺のことは口外しないってことで大丈夫ですか?」

「……言ってほしくないのか?」

「……まぁ、ちょっと訳ありでして」

「そうか」

 

 朽木さんのそっけない返事に、俺は本当に了承してもらっているのか不安に思いつつも、とりあえずこれで言質取ったからな、と記憶に植え付けることにした。

 

 そうして、女子? と二人で外食をしたにも関わらず、何か起こるということはなく、俺はただ飯を食って業務的な会話をしただけに終わった。

 

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