【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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体育教師は生活態度取り締まりがち

 その虚は、まるでカエルのような姿をしていた。

 それにしては手がやけに長い、謎の生物。

 

 白い何かが集まり、形成した虚は、その特徴とも言える仮面を最後に形成する。 夜空に浮かぶ白い月のよう、というと聞こえは良いが、実際に目にしているのはキモい虚である。

 

 俺が倒してしまおうかとも思ったが、あの虚の強さ具合からして、別に一護の相手にならないであろう。

 

 ということは、俺が気にするのはそこじゃない。

 

「みんな気づいてないっぽいなぁ」

 

 当然、虚の姿は霊が見えない人には見えるはずがない。

 だからこそ、脅威も何も見えない何かとドン観音寺が退治しているだけ、という奇妙な状況に見える。

 

 テレビ局の人も、見てみるとドン観音寺のリアクションに疑問を抱いている。

 確かに、カメラに映らない何かを映していても画面にナニカ起こるわけはない。

 

 他から見ればドン観音寺の一人芝居。

 

 だからこそ、一護はやりづらい、と。

 

 危険でもなんでもないし、一振りで終わるのだが、先程のやつでみんなは俺の方に少し関心を持っている。

 だってみんなドン観音寺より、さっきのちらっと見えたかげはなんだ?! っていう感じであたりをキョロキョロしているし。

 

 これはうかつに出て見られたくない。

 あとなにかがあって友達に見られたくない。

 

 ……こういう時、死神の姿は便利だなとか思ったりする。

 

「それにしても、なんで浦原さん来たのかなぁ」

 

 一護より、正直ソッチのほうが気になるわ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「まったくもって、信じ難し!!!」

 

「自分たちが何をしたか理解しているのか?!」

 

 俺は今、校長室に呼ばれている。

 昨日の事件は見事解決した。

 

 一護に後から適当に聞いてみたところ、”ドン観音寺は変なやつだったけど、まぁ良いやつだった”と苦笑いしながら言っていた。

 苦労したのが分かるその話し方に、俺は少し同情した。

 

 それで、今回の話は終わりのはず、だった。

 

「これを見ろ!」

 

 校長室に付けられたスクリーンに映されたのは、でかでかと映る一護の顔。

 眉にシワの寄っている顔なのに、校内で結構人気のある顔面なんだと、クソヤロウが。

 

 時刻は昼休み。

 みんなは一斉に昼飯を掻き込んでいる最中に、俺らは呼び出された。

 

「昨日、わが町で撮影された生放送のテレビ番組で全国に流れた放送だ!

 全・国・に!」

 

 そこで俺らのことを叱っているのは、体育の鍵根。

 こんな顔なのに年頃の子供を三人抱えているクソッタレだ。

 

 ちなみに、ここにいるのは

 ・一護

 ・朽木さん

 ・啓吾

 ・水色

 ・チャド

 ・有沢

 ・井上さん

 ・俺

 

 というメンツである。

 放映されたのは、一護だけらしい。

 俺の姿や朽木さんの姿は、CMの関係もあって何も触れられていないし、テレビに写ったわけでもない。

 

 正直めっちゃホッとした。

 

 浦原さんは、あの場の事後処理を程よくやったらしい。

 何をしたのかは具体的には教えてもらえなかったが、何かはしていたらしい。

 なにかしていたと思いたい。

 

「俺によく似てますね」

「正真正銘お前だ馬鹿者!!」

 

 一護と鍵根の争いは続く。

 

 鍵根は一護のことを入学前から知っていたらしく、粘着質にイチャモンを付けてくる。

 ぶっちゃけ髪だ。

 髪色のせいで一護が損している。

 

 それに対して一護はどこ吹く風。

 成績優秀で生活態度も文句なし、親は小さいながらも医者をしている。

 文句の付け所がないから、この手の話題になると饒舌になる。

 

 有沢は啓吾が誘ったという話をなかったコトにして逃げようとしている。

 

 ……まぁ、俺としてはそれが正しいと思う。

 啓吾が自分が怒られるならばまとめて……という雰囲気をしているが、有沢は啓吾の会話を突っぱねる。

 

 可哀想(有沢が)。

 

「それにしても、俺が驚いたのはお前らだ! 我妻!」

 

 そこで声がかかったのは、俺と朽木さん。

 

 周りの奴らは、俺がやけに静かな姿を見て、今更ながらいたのかと思いだしていた。

 

「お前のような優秀な生徒がなんでコイツラと一緒に遊びに行っているのだ」

「別に遊ぶ相手くらいは自分が好きな相手と行きたいし、優秀な生徒って言うなら一護のほうが優秀ですよ」

 

 俺はなんだか先生たちから評判がいい。

 勉学は上の中(一護に及んでいない)

 運動は上の中(呼吸が使えない状態では一護とチャドに及ばない)

 生活態度は優秀(一護と同じ)

 

 俺は一護の完全劣化と言っても差し支えない。

 しかし差があるとすれば、髪の色。

 俺の地毛は特に色が付いているというわけではないので、別に問題はない。

 

 俺としても黄色い髪色は憧れたけど、現実に黄色い髪色のやついたら怖いなってことで憧れなくなった。

 

 まぁ、そんなこんなで俺は髪の色一つで一護より先生より評判がいい。

 というか、一護と一緒にいるだけで一護の評価も俺が吸い取ってしまっている形だ。

 

 その代わり一護には女子のファンができたけど。

 

 交換しろよその立場……(血涙)

 

「そうやってお前は……」

「すみません」

 

 俺の少しやさぐれた態度に、珍しさを感じたのか、鍵根はため息を着く。

 そこに間を置かず、朽木さんが発言。

 

 ・そこから朽木さんがする話は、自分のせいで一護が止められなかった。

 ・自分が悪い。

 ・え? 先生自分悪くないんですか?

 ・なら一護はどんな事があってもいいけど自分は見逃して。

 

 最初は朽木さんがフォローするのかと思っていたけどこれ罪なすりつけてるわ。

 俺の方から会話の矛先が変わったことには安心したが、朽木さんも大概だな。

 

 一護は朽木さんと話している間に校長室窓から脱走するし。

 

 ……ま、俺も付いてったんだけど。

 

「いやー、うまく逃げられたな―。

 めでたしめでたし♡

 それもこれもぜ―っんぶ、朽木さんのおかげっ♡」

「やだ、そんなこと」

「バカ褒めんなよ。

 こいつ俺だけ売ろうとしたんだぞ」

「でも朽木さんのその演技のおかげでこうして逃げれたわけだけど?」

 

 校長室を離れ、適当にずらかろうと階段を降りながら、みんなで会話する。

 

 確かに朽木さんを褒めても良いものなのか。

 

 後ろの方で話を聞きながら、また鍵根になんか言われるの面倒だなぁ、なんて思っていると、

 

「でも、源氏にはびっくりしたなぁ」

「ん?」

 

 いきなり啓吾から声をかけられた。

 

「だって、あの鍵根に向かってズバッとあんな事言うし」

「確かに、私も鍵根にあんな事言うとは思ってなかった」

「俺のことなんだと思ってるんだよ……」

「「びっくり人間」」

「掘り返すなっての!」

 

 有沢も啓吾も俺のことをどう思っているのかは知らないが、あれくらいのこと言うやつとは思われてないのだろうか。

 

「結構熱いよね~、源氏って」

「遊ぶ相手は好きな相手がいいって……かっこいいぃ~」

「茶化すなバカ」

 

 水色と啓吾はニヤニヤとしながら俺の方を見ている。

 

 ……だけど、確かにあれは熱くなりすぎたかもしれない。

 割と教師とは反発しないような感じで行きたかったんだけどなぁ。

 

「それにしても……源氏はあの時どこにいたんだ?」

「あ、確かに。

 最初は一緒にいたけど、途中ではぐれちゃったよな」

「あそこに知り合いがいて、話し込んでたんだよ」

「女?」

「違うわってか女子の前でそんな発言はやめなさい」

 

 源氏に春がきたのかとヒヤヒヤしちゃった~、という水色の少しずれた発言を尻目に、

 

「我妻ってここらへんに知り合いいるの?」

「……源氏ってここに越して来たんだよな?

 だれなんだ?」

「ん? 近所の駄菓子屋の店主。

 よく利用してるから」

 

 当たり障りなく話してみた。

 みんなは駄菓子屋って言ってピンときていないようだったが、別に嘘は言ってない。

 

 そこで少し朽木さんが俺の方を鋭い目線で見たような気がしていたが、気にしないことにしよう。

 

 そんなくだらない会話は、あっという間に終わった。

 

 叱られたせいで時間がなく、昼休み中に弁当を食いきれなかった、ファッキン。


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