【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「良いのか喜助」
「何がです?」
寂れた商店の、一室。
そこにハットを目深にかぶった男と、毛並みのきれいな黒猫が一匹いた。
傍から見れば飼い猫であろうその猫は、ハットの男に対して会話をする。
その時点でこの黒猫が通常の黒猫とは異なる存在だと理解はできる。
「まぁ、源氏さん、ですから」
「あやつだからこそ、あんなふうに話した、と?」
「そうなりますかねぇ」
一方で、黒猫が話すことを全く意に介していないハットの男は、黒猫の言葉に返答する。
まるで友人との語らいかのようなその空間。
残された3つのお茶と茶菓子。
既に誰もいない場所においてあるお茶は、そこに座っているものであれば、飲みきってから帰るのが普通だった。
「ほぅ……。
お主があやつをどう捉えているのかは知らないが、よくあの会話でことが収まったわい」
「……一応、理由だけでも聞いておきましょうか」
「本来、儂が眠らせた時点で、喜助とつながっていることを理解してはいた。
そして残るのは、不信感。
なぜなのか、なんでなのか」
「確かに。
源氏さんも少しおっかなびっくりな会話でしたね」
「そんな程度のものかの。
儂からすれば、目の前のものが信じられない、という瞳に見えたがの」
外は暑い。
梅雨も開け、夏真っ盛りなこの頃は、どうしても涼しい部屋を求めてしまう。
しかし、この部屋にあるのは見るからにオンボロな扇風機が一つ。
そんな環境でも、ハットの男は汗一つかいていない。
「でも、理解してもらえましたし」
「理解してもらえた?
流石に『アタシらの都合に対して源氏さんに介入してほしくなかったんですよ』といった時は斬られてもおかしくないと思ったぞ」
「いえいえ、あそこで適当な嘘を吐くほうがアタシらしくない」
「寧ろそこで嘘を吐くのが浦原喜助というものではないのかの?」
「嫌だなぁ。
そんなところで嘘を吐くなんて性格悪い人じゃないですかぁ」
「どの口がそんなことを話すのかの」
黒猫は座っていた状態から四足歩行に切り替えた。
それは言外に帰る、外に出る、といった意味を含んでいる。
ハットの男に背を向ける黒猫。
「あっと、夜一さん」
黒猫に声を掛けるハットの男。
黒猫は返答すること無く、立ち止まる。
「言っていませんでしたけど、あの人が丈さんのお孫さんです」
「……そういうことか」
「何かするなら、後ろにあの人が付いていると思わないと」
「だからこその……いや、理解はした。
それではの」
「それじゃ、また~」
黒猫は何やら得心いった様子で、窓から逃げ出した。
それをハットの男は追うことはない。
夏の日差しが降り注ぐ中、少し一人で考えたハットの男は、立ち上がり、どこかに歩いていった。
☆☆☆☆☆
「ぺっ」
唾を吐き捨てる……真似をした。
流石に実際にする勇気も意味もない。
現在、俺は昼下がりの空座町を、帰宅している。
もちろん、今日は学校で、俺以外の同じクラスの連中はしっかりと授業に参加しているだろう。
しかし、俺は少し特殊な理由から今日は学校を休んでいた。
「んだよ……」
頭を力を強めに掻く。
少し痛いくらいが今は丁度いい。
結論から述べよう。
浦原さんにしてやられた。
何を考えているのかは知らないが、俺は浦原さんの計画において参入してほしくない存在らしい。
そのため、夜一さんに頼んで俺をあの時眠らせた、と。
事の顛末自体は聞いていて、結果としては一護と石田くんであの巨大虚はなんとかしたらしい。
それに関しては安心した。
正直、倒せないで町に被害が出るとかのほうがすごく駄目なので、それは良かった。
で、俺、我妻源氏のスタンスとして話すなら、危険なことに参入しなくてよかった。
命あってのすべて。
それは俺の中でしっかりと息づいているものであり、それを心のなかに常に留めている。
だから、良かったっちゃ良かった。
「おばちゃん、コロッケ一つ」
「あいよ」
昨日の学生服は脱ぎ、適当な半袖Tシャツを着ているため、パッと見で高校生、それも空座第一の、とはならないから良いだろう。
「ほら」
「ありがと」
この夏の糞暑い日にコロッケを頬張りながら、頭の中で感情を整理する。
さっきから考えてい入るが、危険なことに首を突っ込むことがなくて良かったとは思っている。
良かった。
だけど、
「チッ」
イライラする事は事実だ。
一護の力にさせてくれなかった、ってのもそうだし、
俺が邪魔者扱いされた、ってのもそうだし、
浦原さんが結構俺に嘘を吐いている、ってのもそうだ。
最後のは浦原さんの口から直接は聞いていないが、流石に事の顛末を聞けば多少なりとも理解できる。
というか、俺に関してはなんで気づかなかったというレベルだ。
石田くん、わりかし存在感薄いからな(責任転嫁)
「浦原さんのあの俺のことを見越した話し方も……」
あとこれが最大級にムカつく。
浦原さんは俺のことを理解している。
我妻源氏という人間のスタンスを理解していながら、
我妻源氏と我妻丈という人間の関係性を理解していながら、
こういう行動を取ったのだ。
現に、俺がジジイに泣きついてもことは何も変わらない。
ジジイが言うには、『弱きものは守られる代わりに語ることができない』だそうだ。
それに関しては俺もそうだと感じた。
ジジイと一緒に、というか修行を生き抜いて行く過程で、本当に弱いってのは面倒だと言うことに気づいた。
だからこそ、俺はある程度発言できるような力を着けたつもりだった。
けど、それをこうして今日、浦原さんに力の差という部分で黙殺されてしまった。
確かに普通にやって浦原さんに勝つことは万に一つ、レベルだろう。
だけど……
「ムカつくもんはムカつく」
コロッケを食い終わり、包み紙を強引にポケットにねじ込む。
油がどうだろうと知ったこっちゃない。
「訓練、やるか」
今までなまらないように適度に軽く運動はしていたが、流石に力不足を感じたら、やるしかない。
「やって浦原さん殴るか」
のらりくらりと躱されるだろうが、やると決めたからにはやる。
めんどいけど、辛いけど。
……ホントにめんどくさいけど!!!
☆☆☆☆☆
「あの」
「なんだ」
「俺らって今から一人の死神のことを確認しに行くんスよね」
「あぁ」
「それなのになんで」
「隊長が
「そんなカタイ事言わんといてな、阿散井ちゃん」