【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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石田雨竜/朽木ルキアから見た、我妻源氏

 僕、石田雨竜は、人間としては特殊な人間である。

 

「石田、一緒に飯食おうぜ」

 

 僕からしたら、それが普通で当たり前で、他の人みんなが特殊だと思っていた。

 

 だからこそ、少しだけ、僕は仲間と呼べる存在である、君と親近感を持っていたのかもしれない。

 

「何キョロキョロしてるんだ?」

「今日、我妻くんは?」

「源氏?」

「あ、アイツなら今日は風邪で休むって」

「珍しいね、源氏が病気だなんて」

「というか、源氏って病気するようなタマか?」

 

 黒崎という人間と騒動を起こした次の日。

 奇妙なことに、僕は黒崎に昼飯に誘われた。

 正直、この状況下で誘ってきたことに少しは驚いた。

 だが、この黒崎という男がそういうことをするのは慣れた。

 

「あ、今日の飯は啓吾のおごりだ」

「はぁぁ?!」

「……なら行こう」

「意外と庶民派?!」

 

 僕だって一般的な金銭感覚を持っている。

 だからこそ、おごりと聞けば嬉しい。

 だから、行くのだ。

 

 仕方がないか、と黒崎とつるんでいる浅野くんは自分の財布を見ながらため息を吐いている。

 

 浅野くんを先頭に歩く僕ら。

 

「なぁ」

「なんだい?」

「源氏のこと、知ってんのか?」

「どうしてだ?」

 

 いきなり、黒崎から質問が来る。

 前にいる二人には聞こえないような声量。

 

 我妻源氏。

 

 クインシーと起源を共にする、虚に対抗する人間種。

 しかしその成長と歴史の違いから、お互いが知り得る情報は少ない。

 だからこそ、僕も知っているのは、彼が滅却師という部類の人間であること。

 

 そして、特殊な方法を使い、己の肉体による戦闘方法で虚を滅却すること。

 

「いや、なんとなく……。

 石田と源氏には、似たような気配を感じるから」

 

 感心だ。

 黒崎は霊力の感知を始めとした、霊的探査の能力が低いから、気づかないと思っていた。

 

 確かに、僕と我妻くんの間では多少の似た要素を感じることはある。

 

 霊子を外的に操作し、利用するという点においては僕と我妻くんの間には差がない。

 

 それをどの様に使うのか、どのようにして活用するのかが違うため、そこからは全くの別物となるのだが。

 

「確かに、似たようなものを感じてもおかしくはない」

「それって……」

「だけど、僕は我妻くんのことに関して、多くのことを知っている訳ではない。

 恐らく、君と同程度の情報だけだ」

「……そうか」

「だけど、僕は彼が、僕らの知っている以上に何かを知っている、持っている、ということは確信している」

 

 滅却師、というのはクインシーと比べると浅いが、それでも日本の中において歴史は深い。

 それこそ武士というものと一緒くたにされている、という話もちらりと聞いた。

 

 クインシーが影での暗躍だとするならば、滅却師は表の英雄としても存在している。

 

 そして両者の間には大きな隔たりがあった。

 今となっては知る由がないが、クインシーとして生きている僕が情報を得られないという時点で、理解はできる。

 

 それが何なのかは分からないが、彼にも彼なりの何かを持っている。

 

「……良いのか、そんなこと言っても」

「これに関しては僕の知っていることからの推測も混ざっている。

 当てにはするな」

「そうか」

 

 黒崎がどんな表情をしているのかは知らないが、我妻くんは何を考えているのか。

 一度の接触の時、もちろん僕は彼も死神に対して何かの感情を持っているものだとして接触した。

 

 けど、結果は違った。

 彼のことは察知しづらいため、正確に何をしていたのかは知らないが、少なくとも黒崎のために手を貸している、ということは把握した。

 

 そして今、それに黒崎は気づいていない。

 

 いや、気づいていはいるが、理由が分からない、といった様子だ。

 

 僕も、彼の原動力は知らない。

 

「だが」

「ん?」

「彼は悪いやつではない」

「……お前、変なこと言うのな」

「うるさい」

 

 僕も、それくらいのことは理解している。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 我妻源氏。

 霊媒師と名乗る少年。

 刀と、瞬歩に似た高速戦闘術を得意とする。

 

 その実力は未明。

 

 しかし、四席……私の実力と匹敵、凌駕する戦闘能力はある。

 虚との戦闘においても、自身の優位を利用しながらも、虚を討伐。

 

「はぁ」

「何書いてんだ、ルキア」

「なっ?! 何を見ておる?! 貴様は?!」

 

 思わず書いていたノートを胸元に引き寄せ、抗議の声をあげる。

 

 黒崎一護。

 死神代行として、死神の力を奮ってもらっている彼から聞けば、『人間びっくり箱』と言われた。

 

 正直、現在でもその評価の理由は分からない。

 以前にそうと言わせるような事柄があった、らしいのだが、今ではその面影はない。

 

 そのことについて話すのなら、普段の我妻源氏と呼ばれる人間から、戦いに向かう人間の匂いは感じられない。

 でも、言われてみれば、という点はいくつかある。

 

 剣タコ、筋肉の付き方、歩法。

 些細な部分でそれらのことは見られるが、それこそじっと見ていてそれだけしか気づけなかった。

 

「いや、授業終わっても何か書いてるもんだから」

「だからといって覗く馬鹿者があるか馬鹿者?!」

「えぇ……」

 

 そして、彼の裏には浦原喜助が絡んでいると見て違いない。

 明確に話しているのを見た、ということはないが、彼の口から浦原商店だと思われる発言は聞いた。

 

 浦原に実際に問い詰めてみると、お客さんのプライバシーなんで守らないといけないっすよー、とはぐらかされた。

 

「次は……美術か」

「お前、またあの絵の続き描くのかよ」

「なんだその口ぶりは。

 何か私の絵に文句でもあるのか?」

「美術の先生も、お前のあまりにも堂々とした姿に、本当に朽木さんの絵は素晴らしいものなのかもしれない、って思ってるんだぞ」

「……何か問題でもあるのか?」

「問題も何も、うまくなべへぇ!!!」

 

「朽木さーん? 今一護の汚い声が聞こえた気がしたけどー」

「別にどうってことありませんわ」

 

 一護は、彼の所見のイメージ以外では、めっちゃ普通のやつ、と言っていた。

 

 それは私の認識とも非常に合っている。

 しかし、同時に一護はこう話してもいた。

 『でも、アイツの戦っている様子に、俺は足が前に出なかった』

 

 母親の敵ともいえる虚との戦闘。

 そこで漏らした数少ない本音。

 何を思ってそこで我妻源氏の名を出したのかは知らない。

 

 だが、

 

「げん……あ、あいつ今日休みだったか」

 

 黒崎一護という存在の中で、我妻源氏という存在が非常に大きいものだということは、私でも分かる。


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