【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「ん……?」
石田くんに呼ばれ、山を駆け出してしばらく。
浦原さんからもらったマントのおかげで、人目を気にすることがないのは助かる。
夜風に顔が当たり、心地よさを感じるとともに、顔だけ出てしまうのを防ぐために、フードを抑える。
木から木に。
電灯から電灯に。
道路を駆けて、街明かりが見える。
そして空座町に入ってからしばらくして、探知に何かを感じた。
一護に似た……けど、こっちの方が強い。
それが分かる、洗練さ。
「……死神?」
そう思うと同時に、一つの気配が急に現れる。
石田くん。
少し特殊な気配。
まるでとても存在感の強い武器を持っているかのような、そんな気配。
先日の巨大虚との戦いで、少しイメージは理解している。
そんな気配が、何かと戦っている?
死神の霊圧は……3つ?
戦っているのは、1つ。
他の2人は……動きはない。
「奇襲……」
気配を消していける。
姿もマントを利用していると消えることができる。
けど、死神側からしたらどんな気持ちなのだろう。
いきなり知った風な感じの知らない人間が目の前に現れたら。
……これは脱ごう。
修行用の色々を持ってきているリュックの中に、マントを強引に詰め込む。
その間にも、石田くんと死神の気配は戦いを進めている。
……っ?!
石田くんがやられた?
いや、やられてはいない。
怪我をしたのか……。
「もしかして、やばいのか」
ちょっと悠長にことを構えていたせいで、やばそう。
別にここから遠いわけではない。
多少運頼りにはなるが、屋根に飛び乗って走っていくか。
服装は暗めの服だし、大丈夫だろう。
「っし」
呼吸はなるべく使わない。
相手が死神ということは、呼吸をすれば見つかる可能性が高い。
……いや、呼吸をすれば見つかるかどうかは知らないんだけど。
でも、ジジイには呼吸をすると動き読まれるから、やって損はないはずだ。
雷の呼吸は、その速さにあるが、本来は気づかれる前に斬ることが最適とされているため、隠密も叩き込まれる。
虚が相手だと基本防衛戦から、隠密の必要はあんまりないから、役には立たなかったけど。
「ふぅ」
息を吐く。
力を入れるのではなく、力を抜く。
本来気配も殺意も敵意も感情も、力とともにある。
だから、力を抜くことで、自分を希薄にする。
行くか。
☆☆☆☆☆
無様だ。
今の僕の様相を、まさにそう表現するのだろう。
死神の気配を3つ感じた。
2人までならまだしも、3人は多いと我妻くんに連絡したが、まだ来てないらしい。
2人どころか、1人にすらやられてしまうとは……。
もしこれを黒崎に見られたら、笑われてしまう。
「阿散井恋次。
テメェを殺す男の名だ」
動けよ、体。
「なっ?!」
体に感じる振動。
何かが地面に衝突し、その振動が伝わってきたのだろう。
体が揺れる。
その振動が、感じる霊圧が、やけに心地よくて、
意識が……
「黒崎一護!
テメーを倒す男の名だ!
ヨロシク!!!」
☆☆☆☆☆
黒衣に身を包んだ人間が4人。
一人の少女。
黒衣の人間は、そのうちの2人が、白い羽織を纏っている。
「なぁ」
「……」
「あの少年オモロイなぁ」
「…………」
「大きい斬魄刀に、バカでかい霊圧」
「敵ではない」
「そう連れないこと言わんといてって。
ボクはただ与太話をしたいだけやから」
白い羽織を纏う二人は、会話をする。
背に大きく漢数字の六を記した羽織を着用しているのは、美男子。
黒髪の美男子は、難しい顔をして、黒衣の蓋地を眺めている。
もう一人の白衣を着た男の背には、大きく漢数字で三が記されている。
銀色の髪をした、青色の目の男。
雰囲気からも分かる通り、飄々とした雰囲気と、黒髪の男は雰囲気があっていないようだ。
「それでも、あの子がまだあれ以上の霊圧を隠し持っていて、始解もできるんなら、話は別やない?」
「その時は、出る」
「与太話って知ってます?
別にいいんやけど、それじゃあ女の子にモテんよ?」
黒髪の男は、その言葉にギロリと睨みつけた。
オー怖い、そんな芝居めいた言葉を口にしながら、銀髪の男は顎に手を当てる。
「……それにしても、弱かったんやね」
銀髪の男の目には、切り裂かれた黒衣の、オレンジ髪の男の姿が映る。
もう1人の、赤髪の黒衣の男は、オレンジ髪の男に対して、何かを話している。
そうして、トドメだと言わんばかりの、赤髪の男の、蛇腹刀による斬撃。
どう見ても、終わり。
これでオレンジ髪の男は切り裂かれ、終わる。
ガキィン!!!
だけど、そんな未来は訪れない。
「は?」
誰の言葉なのかは知らない。
けど、その言葉を口には出さずとも、心の中に出したのは、この場にいる皆の総意。
1人の少女も、斬撃を止めようと体当たりをしようとしていたが、その動きを止めた。
「あの……話し合いでなんとかならない状況?」
それは、少女の知る人物。
倒れた男の呼んだ人物。
そして、
「一護、お前また倒れるんか?」
オレンジ髪の死神の、友達。