【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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銀髪とか既に主要キャラなのが分かる。

 いやいやいや。

 

 いやいやいやいや。

 

 なんだこの状況。

 

 石田くんは倒れている。

 

 一護は怪我をしている。

 やられそう。

 

 一護を殺そうと、蛇腹剣を持っている人(伸びてた、正直びっくりした)がいる。

 

 服装的に死神。

 そして後ろに控えているのは、タイプの違うイケメン。

 

 銀髪と、黒髪。

 

 どちらも白い羽織を羽織っている。

 

 その二人のもとには、手を後ろにしたまま抑えられている朽木さん。

 

「一護、お前また倒れるんか?」

 

 一応発破を掛ける。

 起きるとは思うけど、一応。

 

 というか、この状況は何?

 え、まじでこの状況は何?

 

「オメェ、誰だ」

「誰も何も、後ろのやつの友達です」

 

 この赤毛の人、強いな。

 ジジイほどではないけど、それなりには強い。

 

 持っている刀は、節を持っている刀。

 ……いや、あれ刀って言って良いのか?

 

 一応死神なのは分かる。

 一護と同じ服装。

 

 でも、違うのは腕に謎の腕章をしていて……

 

「死神……ですか?」

「なんでテメェがそれを知ってんだ。

 見たところ、普通の人間だろうよ」

 

 普通の、という部分を強調する辺り、見えている事自体が異常、って感じの口ぶりかな。

 

「でも、なんで刀なんて持ち歩いてんだ?

 死神の真似じゃあるまいし」

 

 赤髪の死神は、蛇腹剣を肩に担ぐ。

 

 赤髪の死神が指摘したように、俺は刀を持っている。

 もちろん、浦原さんからもらった柄だけの刀(今は刃先が出ている)だ。

 防げはしたし、刀が壊れる気配はないけど、あんなふざけた刀なのに結構重かった。

 

 横から叩かなきゃまともにやりあえなさそう。

 

「いやいや、現代の若い子は普通に刀を持ち歩いているもんですよ」

「ハッ! 適当なことを言いやがって!

 そんなのが嘘だってことくらい分かって……」

 

 赤髪の死神は笑ってこちらを見てくるが、その顔が徐々に曇っていった。

 それは俺に向けられた視線ではない。

 

 俺の後ろに向けられた視線。

 

 その視線の正体に、俺は気づいている。

 

「悪い、寝てた」

「遅いわ、ねぼすけ」

 

 ひしひしと伝わる一護のバカみたいな存在感。

 今までこれほどの威圧感を感じたことがあっただろうか。

 

 これほどまでの高まりであれば、

 

「俺はアイツやるわ」

「じゃ、後ろので」

「……今日はやる気だな」

「理由は知らないけど、まぁ、察した」

「そうか」

 

 勝てるやろ。

 

 合図はいらない。

 

 俺が足を出せば、後ろでも一歩踏み出している。

 

 シィィィィィ

 

 雷の呼吸

 

 壱の型

 

 霹靂一閃

 

 目の前には銀髪と黒髪の男。

 

 そしてそれに囚われている朽木さん。

 

 

「峰……」「させへんよ」

 

 

 おいおい。

 

 朽木さんに攻撃しないように、目の前で止まって刀を振るっている。

 だから本来よりは遅かった。

 

 けど、油断はしてない。

 赤髪の男より、静かな気配を持っている後ろの二人を警戒していないわけがない。

 

 だけど、だとしても、

 

「ボクの仕事や」

「……それが、滅却師か」

「そうみたいやね」

 

 超密着状態で、鞘走りの段階で止めるなんてあるのか?

 

 体に押し付けられた刀は痛くない。

 いや、痛くないのに、技を出せないってどういう状況よ。

 

 本来なら力が込められている状況でしょ、この状況。

 なのに、俺の技だけが止められている。

 

「バカ! 我妻! 其奴は……」

「さ、ボクらだけでやろうや」

 

 瞬間、視界がブレる。

 気づけば、

 

「うァァあああぁァァっぁぁ!?」

 

 空中に投げ出されていた。

 

 普通に考えて、死。

 

 眼下を通り過ぎる、街の風景。

 そして飛んでいくのは、俺が来た方向。

 結局戻っている、なんて呑気なことを考えていると、

 

「あら、君歩けないの?」

 

 隣で聞こえる声。

 そちらを見ると、そこにいたのは先程の銀髪の男。

 投げられて速いからよく見えないけど、歩いてね? 空中。

 

「あはは、それは不便やなぁ。

 ま、堪忍してな」

 

 流石に常中までしているが、空中では雷の呼吸特有の速度は活かすことができない。

 斬られれば、終わる。

 

 それを理解しているからこそ、男の何もしない、という行動が不気味に映る。

 

「それじゃあ、後から行くわ」

 

 銀髪の男は、その言葉とともに、はるか後方に行った。

 

 いや、止まったのか。

 

 それで、俺が動いているせいであっちが動いている用に見える、と。

 

 体が重力を感じている。

 

 落ちる先は森。

 多分、死ぬ。

 

 ワンチャン木々のおかげで死ぬことを回避できるかもしれない。

 

 でも、運。

 

「流石に無様すぎるッ!」

 

 やったことはないけど、土壇場で成功させるしかない。

 

 シィィィィィィィィ

 

 雷の呼吸

 

 壱の型

 

 霹靂一閃:連

 

 狙うのは、枝。

 

 横

 横

 横

 横

 横

 …

 …

 

 

 枝から枝に。

 見えるものから片っ端に。

 下に落ちる勢いを、横飛と多少の上飛びで相殺。

 地面に足をつける頃には、

 

 

 スタッ

 

 

 勢いは完全に消えている。

 

 

「っっっっっっっっはぁぁぁぁ」

 

 肺の中の空気を全部吐く。

 連続して使いすぎた。

 

 他の型につなげるよりかは幾分はマシだけど、ああも何回も使えば死ぬほどきつい。

 

 思わず膝を着く。

 

「おもろいねぇ、キミ」

 

 朦朧とする意識。

 だけど、気配察知は警鐘を鳴らしている。

 立て、構えろ。

 

 体は動く。

 

 いや、動かしている。

 

 生きる意志が、動かしている。

 

「うんうん。

 なかなかの逸材」

 

 肺に空気を取り込む。

 吸う。

 吐く。

 吸う。

 

「流石は、我妻丈の血を引く者、かな」

「……ん?」

 

 落ち着いたと思ったら思わぬところで名前出てくるんだけど、ジジイ。

 

「なんで今ジジイの名前が……」

「おっと、よそ見は危ない」

 

 咄嗟に相手の方に顔を向けると、銀髪の男はこちらに刀の切っ先を向ける。

 何してるんだ。

 そう思う前に、

 

「射殺せ 『神槍』」

 

 俺の体は貫かれていた。


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