【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「へ?」
「……まさか避けるなんて、思ってもなかったわ」
今、俺の体が縦に別れた。
そのはずだった。
過程は分からないが、銀髪の男の持っている刀の刀身が、果てしなく伸びていた。
いびつな刀は、その刃を俺に降ろした。
油断していた。
気を抜いていた。
呆然としていた。
どんな言い方でも良い。
俺は目の前の攻撃に対して、届かないとマジレスをしていた。
だが、今俺がいるのはトンデモ世界だ。
そんな常識に囚われていたら、死ぬ。
「いやいや、ちゃんと死んでましたよ、ホント」
「でも生きとる。
それは謙遜やなくて、嫌味や」
しかし、俺の体は脳と違って非常に優秀だった。
振り下ろされた刀を寸でのところで躱した。
後少しでも右にずれていれば、俺の体は刃に切り裂かれていた。
銀髪の男は、とてつもなく長くなった刀を持ち上げる。
そんな長い刀持ち上げられるのか? と疑問に思ったが、それを解決するかのように、刀は元の長さまで戻る。
「……脇差」
「なんや、見てわかるんかいな」
「そんなことないですよ」
「謙遜ばっかやなぁ、自分。
友達いなくなるで」
適当に会話をして時間をかせぐ。
正直、勝てるかと言われたら微妙な相手。
場所と相手の油断度合いによる。
……あ、多分正面でぶつかって勝つことは無理。
さっきのはたまたま死ぬ攻撃だったから、なんとか避けることができた。
体の反射と呼べる部分での、気合避け。
そうそう何度も的確に行くとは限らない。
「あぁ、そう言えば、キミのことは聞いてるよ。
うちの総隊長から」
「総隊長?
頭的な?」
「かしらって……オモロイ表現するなぁ、自分」
というか、正直さっきから目の前の銀髪の男から敵意を感じない。
殺意もない。
さっき避けれたのが謎なくらいだ。
修行のせいかと言うか、副作用というかそんなもので、俺の体は殺意と敵意に敏感になった。
普通の人だってある程度の敵意を発するし、微弱な殺意を持っている。
すごい集中して、気の所為くらいにしか感じることはできないが、それでも普通の人でも持っている感情。
ことそれが戦場では顕著に現れる。
いや、出ないほうがおかしい。
「っと。
で、うちの総隊長が話すには、『面白い人間が存在する。もしかしたらそのものと衝突する可能性がある』って話してたのよ」
「……それが、俺だと?」
「いやいや、話では40年前くらいの話だから、キミやない。
キミのおじいさんや」
「……そこで、ジジイの名前ね」
「そ、恐らくは子を持っていて、何らかの接触はあるかもしれないってことで、ボクが今回忙しい中来たんやけど」
そこから先を銀髪の男は話さない。
夜風を感じる。
今このタイミングで感じるほどに、この静寂は軽い静寂だった。
木々に囲まれた森。
周囲に人里はない。
虫のざわめき、木々の揺れ。
気配を必死に探っているのが、集中を散らされる。
「ビンゴだったみたいやね」
「言うんかい!!」
銀髪の男は、溜めて溜めて言葉を話す。
そして同時に、刀を横薙ぎに振るう。
俺は、思わずツッコミをしながら、しゃがむ。
銀髪の男の行動に、今度は対応できたはず。
しゃがみながらも、男の様子に目をそむけない。
そして、気づく。
「は、ず、れ」
男は刀を伸ばしていない。
最初の時点で気づいていたあの刀の弱点。
伸ばした後は次に攻撃をするためには一度短くしないといけない。
簡単に言えば、伸ばしたら攻撃は見え、隙が生じる。
それを狙うはずだったが、ブラフをかけられた。
まるで俺のことを見抜いているかのような……
「それじゃあ」
短い脇差だからこそできる、流れるような太刀筋の切り替え。
その太刀筋は、縦。
俺のいるところを確実に仕留めに来る斬撃。
横に逃げるか。
いや、これもフェイントだったら。
これ以上無理に動けば、次はない。
なら、次に繋げる動きを。
次に繋げる動きとは。
何をすればいい。
何をすれば。
刀を上に。
横に。
受け、
「フンヌゥゥゥッゥ!!!」
柄にもない声。
気合というより、呼吸。
呼吸というより、空気漏れ。
そんな音を出しながら、上からの衝撃を受け止める。
当然というか、なんというか、斬撃は来た。
俺の動きを見て判断しているのだろうが、ここまでは読み通り。
しかし、斬撃が重い。
それはそうだ。
見えなくなるまで伸びた刀の重さは?
計り知れない。
重力と、脇差状態で振り下ろした時の速度。
重いに決まっている。
だからこそ、受け止める。
折れたら一生恨む!!! 浦原さん!!!
常中しているから体はギリ大丈夫。
だけど地面がひび割れ、俺の体が沈んでいく。
耐えきれる。
確信ができた。
だから、次は、
「おおおおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びとともに、前に進む。
刀はそのまま。
つまりは鍔迫合っている状態で、前に詰める。
刀が重いのなんの。
ふんばれ、進め。
足には自信がある。
行ける。
「キミ、オモロイねぇ」
重さが消える。
刀を縮めた。
銀髪の男は、次の斬撃のため、腕を引いた。
一瞬の、隙
防御が間に合うかどうか、そのくらいの、一瞬。
防がなければ、次でやられる。
だから、
シィィィィィィ
一瞬でお釣りの来る
雷の呼吸
この技で
参の型
詰める!
聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)