【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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友達を殴る時は、喧嘩か河川敷

「反射で避けるな!」

「生きるためだけの行動をするな!」

「次を考えろ!」

 

 浦原さんが一護のことを呼びに行ってしばらく。

 俺はジジイが言いたいことはおおよそは掴んできた。

 

 現在、息抜きの辛さには少しは慣れてきつつ、どうやってジジイに反撃しようかと考えながら、必死に受け身や回避でダメージを軽減しようとしている。

 

 当然、死にたくないと考えている俺の基本理念を考えれば、当然の行動なのだし、いつもならジジイもこの行動に関してはとやかく言わないのだが、今回は違う。

 

 やれ本能で避けるな、次を考えろだの、こちとら避けるので精一杯なのに無茶な要求をしてくる。

 

「ムズい!」

「それをやるのじゃ!」

 

 ジジイの辛辣な言葉に、心が折れそうになる。

 けど、それと同時にジジイの言っていることが理解できるので、辞める理由も見つからない。

 

 ジジイの言っていること。

 それは単純な戦闘への対応能力の向上。

 

 俺は今まで生きるために強くなってきた。

 どれだけ安牌を出せるか、どれだけ相手を目の前にして死なないかを考えてきた。

 

 その結果、俺はこうして強くなれたし、実力で敵わなかった銀髪相手にも、勝敗関係なく生き残ることができた。

 

 それくらい、俺の生き意地の汚さはとてつもない。

 

 現在もジジイを目の前にして、生きることはできている。

 ジジイも手加減はしてくれているのだが、放つ攻撃はどれもが下手をすると死ぬ攻撃となっていて、俺の生存本能はビンビンに警鐘を鳴らしている。

 

「どうやればいいんだよ!」

「相手の動きをよく見るのじゃ!

 源氏はその答えを知っておる!」

 

 さっきから尋ねても尋ねてもこれを返される。

 

 ちなみにその間に俺は殴られたり斬られたりしている。

 いてぇし、息抜きで疲れるし。

 

 辛いからこそ思考がよく回らない。

 だけど、だからこそ動きは洗練されていっている。

 

 吹き飛ばされるのにも、力で強引に生きるのではなく、要所で力を入れることによって、勢いを殺し、最適に着地をすることができる。

 

 斬撃にも、安全をとって回避するのではなく、最低限の生きるためだけの回避をすることができている。

 

 というか、そうしないと俺が持たない。

 

 息抜きをしながらこれほどまでに連続行動をしたことがないので、バテている。

 だからこそ、博打とも思える動きをする羽目になっている。

 

「今のじゃ!」

「なんのやつだ!」

 

 一呼吸で蹴りと斬撃を繰り出し、片手で掌打を放ってきながら、それをすべて致命傷をかわしながら受けた俺。

 更に刀の柄で顔面を叩いてきたのを躱し、俺が反撃と拳を繰り出したのを掴み、俺を投擲。

 

 いや、この中でどれを持って今の、と発言したんだこの耄碌ジジイは。

 

 流石に体力も限界で怪我も増えてきて、息抜きを解除しようかと考えたその時、

 

「うむ、少し休憩じゃ」

 

 空中で俺は投げ飛ばされているはずなのに、ジジイの声が目の前から聞こえた。

 いや、よくわからないけどジジイって空中飛べるの?

 

 この歳で最高に驚いたんだけど、どうすればいいよ。

 

 そんな場違いなことを考えた瞬間、俺の腹に手が添えられる。

 咄嗟にインパクトをずらそうと体を動かすが、

 

「動くな、死ぬぞ」

 

 その一言とともに、俺の体は流れ星となった。

 

「KUSOZIZII!!!」

 

 地面着弾、俺糾弾。

 

 思わず韻を踏んだ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「源氏の足りていないものは、戦闘経験じゃ」

「藪から棒にどうしたジジイ」

 

 その後、一護が来たのに驚いたり、ジジイが一護のことを投げ飛ばしたりと意味不明な展開が続いたが、俺はジジイに呼び出されるなり、いきなりそんなことを言い渡された。

 

「源氏は生き物や化け物といった、人間でないものとの戦いには慣れている」

「確かに。

 森では散々な目にあったし、虚も倒したし」

「しかし、その一方で人間との戦闘経験は儂と浦原を除いて他にないであろう?」

「まぁ、戦う相手なんてそこらにもいないし、戦う必要もなかったし」

 

 俺の戦う目的の最優先は、やはり生きること。

 

 人間と戦うなら逃げたほうがマシだということが多い。

 だからこそ、俺は人間との戦闘経験は乏しい。

 

「そこで、今回はあの黒崎というものの手を借り、お主の戦闘経験を向上させていきたいと思う」

「……まぁ、言いたいことは分かるけど、今一護って死神じゃないんじゃないのか?」

「あぁ。

 そこで、浦原のやつに多少は手を貸すことで、こちらもあちらも得になる、ということじゃ」

「……ん? 俺得になってる?」

「まぁ、浦原のやつにも今回は手伝ってもらうのでな。

 そのお返しだと思え」

「え、浦原さんが教えてくれるの?」

 

 どうやら、一護を死神として復活させることで浦原さんから教えを受けることができ、一護との訓練を行うことができるらしい。

 

 正直、一護と戦うのは難しい。

 友達だし、殴る理由も斬る理由もない。

 

「浦原の教えは良いのか?」

「いや、でも霹靂を止められたから、強いのかな、って」

「そういうことか」

 

 ジジイは少し笑みを浮かべながら、浦原さんと一護の方を見る。

 

 二人は何やら会話を続けている。

 何を話してるんだか。

 

「あの黒崎の坊主を死神にするために、死ぬかもしれない状態を作る必要がある」

「……じゃあジジイがやれば」

「儂では思わず殺してしまう可能性がある」

「……そうだわ」

 

 ジジイの最大にしてクソみたいな欠点は、手加減したとしても強い、ということだ。

 

 いや、俺も手加減とかは超苦手。

 特に呼吸が絡むとすごいむずい。

 

 でも、俺の手加減はジジイより繊細である。

 これは言い切れる。

 

 ジジイの手加減は手加減ではない。

 マシンガンがアサルトライフルに変わるだけだ。

 

 ジジイは戦うことに半生を費やしたので、手加減の必要がない人生だった……らしい。

 本人の口から語られていることなので、非常に胡散臭いが、その話を差し引いても、あのジジイは手加減が苦手。

 

 俺くらい生き意地が汚くないと、多分速攻で死ぬ。

 もしくは殺される。

 

「それに、死の恐怖を味わわせるならお主でもできるであろう」

「……そういうことか」

 

 ジジイの瞳は怪しく光る。

 良からぬことを企んでいる。

 というか、俺は何をしようとしているのかを理解した。

 

 一護、すまん。

 

 犠牲になってくれ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ルールは簡単ッス。

 黒崎さんは源氏さんの攻撃を避けてください!」

 

 そうして設けられた特設喧嘩。

 浦原さんはヘラヘラとした様子でこちらを見ている。

 その隣に立つのは、ジジイ。

 

 ジジイは浦原さんにばれないように口角を微妙に上げている。

 

「なぁ、源氏」

「ん?」

「ほんとに大丈夫なのか?」

 

 俺と一護は、少し距離を離して、開始の合図を待っている。

 

 その距離はおおよそ5メートル。

 

 俺はぼーっとしながら突っ立っていると、一護が話しかけてきた。

 

 その言葉は、文字通りの心配の意味。

 

 俺の姿を見れば分かる。

 

 俺は服がボロボロ、全身に切り傷や打ち身の跡がある。

 どう見積もっても、ボロボロ。

 

 俺がこんな平然としているのが一護にとっては不思議なのだろう。

 

「大丈夫! 多分関係ないから!」

 

 一護は俺の言葉に首をかしげるが、俺としては言葉通りの意味なのだ。

 

 そう、言葉通りの。

 

「それでは行きますよー!」

 

 浦原さんの声。

 

 一護は、事前にもらったはちまき型の変形防具を装着して、顔面と拳を保護している。

 

 その姿は喧嘩上等、やってやるのポーズ。

 

 一護は普段絡まれることもあって、喧嘩をする。

 俺は外から見守っていたが、一護は素の戦闘能力も高い。

 

 だからこそ、死神として最初から強かったとも言える。

 

「はじめ!」

 

 でも、

 

 関係ない(・・・・)

 

「っ?!」

 

 一護のファイティングポーズは解ける。

 

 まるで、体を支えられているかのような不自然な姿勢。

 

 壁に前かがみに寄りかかっているかのような、不自然な体勢。

 

 一護の体は動かない。

 

「さ、一護」

 

 俺は構える。

 

 それは、居合の構え。

 

 息抜きは、既にしていない。

 

「今から俺は一護の目の前にゆっくりと行く」

 

 息抜きは、息を吐くことで存在感を消す技術。

 

 ならば、存在感を上げる。

 いや、殺意や敵意を最大限まで引き出すには、

 

「それまでに」

 

 息を吸えばいいのである。

 

 全集中、常中。

 

「なんとかしろよ」

 

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