【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「何したんよゲンジ」
「撥ねられた」
「にしても右腕だけ?」
虚を倒した翌日。
俺は首から白い布をぶら下げて登校していた。
これが意味するのは、骨折。
右腕が使えないことに不便さを感じながらも、生活をしている。
そんな俺の様子を見るなり水色と啓吾は不思議そうな顔で俺のことを見る。
「なんでそんな顔で見る」
「だって、そんな一護とかチャドみたいな理由で怪我してくるなんて……ねぇ」
「とうとうお前もそっち側に行くのか……?」
「そっち側ってどこなんだよ……」
思わずツッコミをするが、どうやら信じてもらえたようだ。
これは、先日の手刀による虚討伐の影響だ。
ちなみに骨折と言っているが、そんなもんでは済んでいないのが現状だ。
俺の右腕はボロボロである。
正直動かすのに結構痛いので、極力右腕は丁重に扱いたい。
あの戦いで、全集中常中により肉体を強化していたし、人ならば俺の手に何らかのダメージが残るようなことはない。
けどそれはあくまで人間と対峙したときの話だ。
化け物相手にその話が通じるなんてことはなかった。
というか無手に関してはあくまで応急的な技であり、本来は武器を持って使用するのが普通である。
一応、ジジイの知り合いの医者に見てもらい、適切な処置をしてもらったから、後は必要な時以外は常中でなんとか治せるだろう。
医者は一ヶ月必要とか話していたが、常中していれば一週間程度でなんとかなるだろう。
それにしても、少し感じの悪い医者だった。
ジジイの知り合いだから当然か?
「HR始めんぞー」
そこから怪我のときのことははぐらかしながら、朝のHRを迎える。
一護の姿は、なかった。
一護に関しては、俺が倒した後に緊張の糸が切れたのか、気を失っていた。
俺も腕が大変なことになっていて気絶しようかと思っていたが、そうは行かない。
ここは人通りが少ないとはいえ道。
誰か通って怪我をしたオレンジ髪の男子と右腕を血まみれボロボロにした男子を見ればどう思うだろうか。
すぐさま右腕に応急処置を施し、常中全開で一護の家まで一護を送り届けた。
常中していたので、別に一護程度はどうということ無く俵持ちで置いてきた。
家の前に投げ捨ててしまう結果となったが、いきなり息子を肩に背負った重症の人間が来たらどう思うだろうか。
その様子からしても、一護はまだ目覚めないんじゃないのか。
それにしても、右腕を使えないというのは面倒だな、と思考を切り替える。
☆☆☆☆☆
「ゲンジー」
「ん? どうした有沢」
ときは過ぎ、昼休み。
左手で食えるコンビニ飯を手に屋上にでも行くかと立ち上がると、声がかかる。
声の主は女子。
しかし声を聞いた瞬間に期待なんてない。
声の主は俺のストライクゾーンを出ている女子なのだ。
有沢竜貴。
一護の幼馴染で、こいつもまためっぽう運動神経が良い。
呼吸を使わないと勝てない人間の一人である。
「一護のやつ知らない?」
「ん? 一護だったら……ってなんで俺が知ってると思ったんだよ。
あ、井上さんも」
「いやさ、あんた昨日黒崎と一緒に帰ってたじゃない。
なんか知らないかなって」
「…………ただのサボりだろ」
「なんで考えたのよ」
有沢の方を向くと、そこにはクラスのマドンナであり不思議生命体の井上織姫さんがいた。
井上織姫。
我が空座第一高等学校のマドンナ系存在であり、俺の憧れ……とかではない。
普通に可愛いと思うし、良いなとは思うが、原作というものを知っているばっかりに、この子は一護とくっつくのか……という戦ってもいないのに感じる敗北感から、恋愛対象とかではなく、不思議生命体としてみている。
なんか……独特な感性を持っているため、時々あれ? 俺会話してるよね? と思う時があるのだ。
「別に知らないから思いつく理由と言ったら、って話だよ」
「いーや、明らかになんか考えたね」
有沢の癖に勘が鋭い。
「よっ、たつき、井上さん。
飯誘いたいんだけど、なんかあったの?」
「ゲンジが一護の休みの理由を隠してる」
「あ? アイツサボりじゃねぇの?」
「それだったら誰かに連絡くらいしてるでしょ。
あいつ真面目だし」
さすが一護の幼馴染。
一護はたしかにサボるときは誰かに連絡を取って、ノートを借りたりする。
俺とか有沢によく連絡を入れているはずなので、俺がここで帰って嘘の報告をしたところで、証拠のメールを確かめられるだろう……。
「確かに黒崎くんってサボるっていってサボるよねー」
「それにさゲンジ、なんで今日に限って怪我してんの?
はぐらかされたけど、理由は?」
井上さんのアシストに、水色のゴール。
俺ににじり寄るメンツをどうしようかと冷や汗を浮かべていると、
「俺がどうしたんだよ」
みんなの視点が声の方に向く。
そこにいたのは、いつもと変わらない一護の姿。
みんなが何してんだお前、という視線を送っていると、
「今日は寝坊したんだよ。
昨日の録り溜めてたドラマ見てな……ふぁぁ」
一護は自然に話し、あくびを漏らす。
一護なりにかばってくれているのだろう、そんな嘘に俺はありがたみを感じる。
昨日はそんな事できる状態じゃなかった。
一応応急処置は行って、全身に軽い打ち身が見られた。
……軽い打ち身で済むはずないんだけどなぁ……こいつマジで人間か? と思ったのは俺の胸にしまっておく。
「それと、源氏のその怪我は、昨日轢かれそうになったところを助けてもらったんだよ」
まじで助かった、という一護の言葉に、みんなは納得したような表情を見せる。
「ゲンジ、多分イチゴのことだからあいつが轢かれたとしてもピンピンしていると思うから、助けなくても良かったんだぞ?」
「なわけねぇだろ」
啓吾の軽口に、俺は心のなかで確かに一護は車で轢かれても大丈夫そうだ、と思いながらも、
「ふーん」
まだ有沢は俺のことを疑った目つきで見てきた。
「それじゃ、屋上行こうよ。
誰かに取られる前に」
「だな」
「誰かおにぎり持ってくんね?」
「俺が持つわ」
「サンキュ一護」
俺はその視線に気づかないふりをしながら、屋上に向かう。
途中、一護が俺の荷物を持ってくれた。
その時、一護は俺にだけ見えるように、掌に忍ばせていたメモ帳を俺に見せる。
『昨日の話がしたい』
……まぁ、そうなるよねぇ