【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「じゃ、次のレッスンに行きましょうか」
「俺の安全ェ?!」
死神の力を取り戻し、浦原さんに復讐を誓った数秒後。
空から友達が降ってきて、俺に文句を言ってきた。
な、何を言っているのかよく分からねぇが、俺もよく分からねぇ。
「一護! 一回殴らせろ!」
「なんでだよ?!」
空から降ってきた源氏は何やら物理法則さえも無視し始めたのか、高高度から落ちたはずなのに、平然としていた。
意味不明な光景に目を疑ったが、気の所為かもしれないから触れないでおく。
いや、気の所為としか言いようはないだろ。
一応石田も普通の人間の体の強さ、ってのは聞いてるから、源氏も同じはずなのに、丈夫なわけ無いって。
「ほれほれ、お主ら、喧嘩はよさんか」
瞬きをした記憶なんてない。
けど、俺らの間には、一人の老人が立っていた。
俺より小さな身長の、老人。
「うるさ……」
ドンッ!
源氏が軽口を叩いたその瞬間。
源氏の姿はそこから消えていた。
そして響く音。
結果を感じてから経過を考えている時点でおかしいが、おそらく今、源氏は殴り飛ばされた。
俺にも見えないスピードで。
明らかにあの時の朽木白哉より速い速度で。
「あーあ、吹っ飛んじゃったっすね」
「別に構わない。
次に来たら話せばよかろう」
「はいはい」
浦原さんは遠くのものを眺めるように、目元に手を添えて飛んでいった源氏を眺める。
この現状に若干ついていけない。
というか源氏死んだんじゃ……?
そんな不穏なことを考えていると、
「それでは、次のレッスンスけど……」
浦原さんは目元が隠れているはずなのに、わかりやすくニヤニヤして、
「このおじいさん……我妻丈さんと戦っていただきまス!」
あーあ、死んだわアイツ
背後からそんな言葉が聞こえてきそうなことを言われた。
我妻丈。
源氏のおじいさんで、保護者。
最初は少し源氏が反抗期かと思ったけど、そんなことはない。
この人には反抗するくらいで行かないと殺される。
現に投げ飛ばされた。
それに、今ここに現れた瞬間を目で追えなかった。
そして死神だからこそ理解できる、この意味不明な霊圧。
まるで感じない霊圧。
どんな人でも……いや、強ければ強いほどに感じる霊圧という存在感が感じない。
それはつまり、そこにいるのかどうかが霊圧では判断できないということ。
そして丈さんの動きは目で追えない。
そんな物をどう捉えれば良いのだろうか。
「それでは、よろしく頼もう」
「え、えっと、もう始める感じ?」
「そうッス!」
浦原さんの眩しいくらいの笑顔。
苦笑いをしているであろう俺の視界には、霊圧を感じないが威圧感はたっぷりの老人が目の前にいる。
「ぷぷぷ」
その直後、背後から聞こえる声。
何も感じていないからこそ驚いて振り向く。
そこにいたのは、
「源氏……」
「お前、しごかれるんだってな、ぷぷぷ」
半目でニヤニヤしている源氏の姿があった。
確実に面白がっているであろう友人の姿に殺意を覚える。
裏拳をかまそうとするが、躱される。
そういえば、源氏も霊圧を感じない。
今も後ろを取られたし……ってかどうやってあそこまでふっとばされてここまで来たんだ?
「それじゃ、がんば「待て」IYADA!」
源氏が俺に後ろ手を振りながら去っていこうとするが、丈さんが呼び止める。
何かを察しているのか、即答の源氏。
「俺は浦原さんから訓練をつけてもらって生きたいんだ!」
「死んでないのにそんな口を聞くではない」
「死んでないのは俺の努力!
決して違うお前の功績!」
若干韻を踏んでるのにはツッコミはしない。
だって顔がマジだから。
「ある程度できることが増えたからもういいじゃん!
俺強くなりてぇよ!」
「そのために生きる手段を身に着けよと言っている!」
「身につけすぎ!
流石に天空から落ちて助かるのはやりすぎだって!」
自覚ありなのか……
「それは儂も引いた!」
「ならなんで覚えさせたし!」
「勝手に身に着けただけであろうが!」
「知らんわならば殺すな!」
二人の仲睦まじい? 祖父孫喧嘩を眺めていると、浦原さんが近寄って話しかけてくる。
「あの、一応レッスンの内容なんですが、あの丈さんに触ってみてください。
死なないように」
「触る?」
「はい」
「タッチ?」
「はい」
「なんで?」
「丁度いいからッス」
こっそり話してくる浦原さんに疑問に思いながらも、丈さんの方を見る。
行ける?
見るからに隙だらけだ。
今なら……
「俺は強くなりたいと何度言ったら……あっ」
駆け出す。
丈さんとの距離はそんなに遠くない。
今の膂力だったら余裕でたどり着く。
触れるだけだから刀はいらない。
……ってか折れてるからむしろ好都合か。
源氏は俺のことに気づいた。
しかし遅い。
既に丈さんは後数歩のところにいる。
しかもこちらに気づいている様子はない。
「もらっぶべぇ!!!!!!!!」
後少し。
そのタイミングで俺の視界はホワイトアウトする。
すぐさま地面の熱い抱擁で目覚めるが、理解できずにすぐさま顔を上げる。
「おやおや、なにかしたかな?」
そこには、先程と変わらない場所に立つ丈さんの姿。
こちらを見て、微笑んでいる。
ジンジンと顔面に感じる痛み。
「……じゃ、俺はそういうこと「源氏さんは引き続き、丈さんと戯れてください!」HA☆NA☆SE!!」
何にも掴まれていないのにそんなことを言っている源氏を尻目に、考える。
どうしたら触れられるのだろうか。
一見隙だらけ。
もう一度……
「やめときな」
「っ?!」
そう思った瞬間、隣に源氏が現れる。
離れていたはずの源氏がここまで来たことに驚きながら、言葉の意図を聞く。
「どういうことだ?」
「別に、言葉通りの意味。
無策で行くならやめたほうがいいよってだけ」
「いや、でも」
「仲良く話しているようじゃが、いいのか?」
もう驚かない。
俺と源氏の目の前に降り立つ丈さん。
倒れている状態の俺は、見上げる姿勢で丈さんを見上げるが、失敗だ。
「敵は、待っては、くれないぞ」
「敵なのかよ、ジジイ」
この人に容赦なんて甘い文字は存在していないということだ。
次の瞬間、肺の中の空気が全部漏れ出す。
上から、何かが落ちてきたような。
圧し潰されそうな、そんな感触。
踵落とし。
それが理解できたのは、微かに映った丈さんの体勢からわかったことだ。
「はぁ」
既に地面を見つめる俺の耳に聞こえるのは、ため息。
「鬼さんこちら」
「ほう」
「刃が鳴る方へ」
「やる気、なのかの?」
急いで体を起こす。
そこには既に二人の姿はない。
既に二人は走り出し、刀を振るっていた。
「一護!」
「っ! なんだ!」
「やばい助けて!」
「早くないか?!」
こうして訓練の幕は開ける。
そして知る。
多分訓練より敵地のほうがマシだということを。