【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
現在俺は、死神たちの住処に一人で乗り込んでいる。
太陽の雰囲気と腹時計の感じからして、5時間以上が経過した、ということになるだろうか。
自信はないが、辺りは暗くなってきているから、まぁそんくらいだろう
俺が現在までこうして適当に過ごせている理由はいくつか存在する。
まず1つは、このマント。
俺の持っているマントは、知っての通り浦原さんからもらったもの。
これは以前、一護と石田くんが大量の虚を退治したときにもらったものであるため、俺という人間の体を隠すための迷彩効果が付属されている。
もちろん、それはここでも発動されるわけで、
「ありがとうございます」
しばらく探索してみてわかったことは、ここには死神以外の人達も暮らしている、ということだ。
しかもその誰もが和服を着ている。
現在マントの下は、適当なTシャツとジャージを着ているため、もしこの中でマントを取って歩いてしまえばたちまち俺は目立つ。
だからこそ、こうして迷彩効果を発動して町中を散策している。
ちなみにこれは俺が霊的な術を使えないことを見越して、呼吸をするだけで使えるという素敵な仕様である。
「流石に盗みはしたくないけど、かなり美味しそうだったな」
町中を散策して五時間。
既にあたりは暗く、人の姿は少ないが、俺の頭を過るのは明るいときに見えた美味しそうな食べ物の数々。
腹が減ってはなんとやら、とは言うが確かに水はないとかなりきついため(経験談)どこかで水は確保しておきたいところである。
水くらいなら井戸とか在るのでは? という一抹の期待を募らせながら歩いている。
「ここにはいたか?」
「いないな」
「次に行くか」
閑話休題。
俺がここに侵入して見つからない理由その2は、死神たちがあまり強くない、というところにある。
一応浦原さんからの話では、姿を隠すだけでなく、霊圧も隠すことができるマントと話は聞いている。
もしかしてこれ、非常に高性能なのでは? と思っているのだが、それを鵜呑みにする俺ではない。
恐らく、今まで見つかっていない時点でその能力は保証されたも同然なのだが、一応俺は死神たちの気配を感じ取っては気配をかいくぐって侵入している。
修行時代にもよくやっていた隠れる能力がここで役に立つとは思ってもいなかった。
これと身体能力を十分に利用しながら、俺は現在この場所を外側から調べている。
「やっぱ外側は住宅街的なとこなのかな」
これが5時間掛けて調べることができた成果。
この場所……瀞霊廷(街行く住人が漏らしていた)は真ん中を護廷十三隊という死神たちの組織の詰め所になっていて、外側が住宅街となっているらしい。
これは憶測も入っているが、ほぼ確実と見て間違いないだろう。
現在外側に出現した壁を見ながら探索しているが、死神の数が思ったより少ない。
それに、結構普通の人が多いイメージだった。
それに反して死神は基本的に真ん中の方……高い建物のある方角から来ていることが大半で、戻るという言葉を口にするものは中心に戻っていく仕草をしていた。
まだチキって中心の方には行けていないが、そろそろ侵入しどきなのでは? という思いが存在する。
「でも、真ん中でどうするか、何だよなぁ」
と、思ってはいるのだが、問題が一つ在る。
これ入ってから抜け出せるのか問題。
門を使えば簡単なのだが、あの門を一人で内側から開けられるわけがない。
本来なら夜一さんが出る方法を知っているはずなのだが、それを聞きそびれてしまったので俺は実質詰み、ということになってしまう。
最初の方は少しだけ朽木さんを攫って速攻帰れば問題ないのでは? とか考えていた。
しかし朽木さんの場所も知らないわ死神の巣窟に行くわで俺の心の中の一般高校生ハートが許してくれない。
とりあえず一周してみてから中に入ってみるか。
このペースで、というかた多分こっから適当に飛ばして行くと思うから、後二時間もあれば大丈夫だろう。
☆☆☆☆☆
「クソっ!」
夜一さんが猫なのに表情豊かに苦しそうな顔をしていた。
現在は源氏と離れてから1時間が経過した頃。
俺があの銀髪の市丸ギンとかいうやつに兕丹坊ごと吹き飛ばされてから、織姫に頼んで兕丹坊の腕を直してもらっている。
全快になれば門を開けることなど容易いことなのだが、織姫の治療でも結構な巨体であるから、完全に直しきるまでには至らないらしい。
その間、俺らの中で会話はなかった。
ただただ沈痛な面持ちで、みんなが考え事をしている。
「提案なんだが」
「なんじゃ」
「もう一度、あの扉を破壊することは?」
「兕丹坊があの門の門番になってから300年、破られたことはない、とは言ったが、あの扉と壁に関しては作られてから一度たりとも傷が付いたのを見たことはない。
先程の一護を見ておったじゃろ?」
「それじゃあ、どうやって行くっていうんですか」
幸い、流魂街のみんなが俺らのことを迎え入れてくれたことで、なんとか宿は確保することができた。
石田も珍しく焦っている。
それはそうか。
源氏のやつが一人で瀞霊廷の中に行っちまったから。
「方法として入る方法はあるのじゃが、最短でも明後日が最速じゃ」
「それじゃあ……」
「既に儂らのことは知られている。
探されて、見つかれば終わりじゃ」
夜一さんが絶望的な声色で話す。
「大丈夫だって」
そんな中、みんなの悲観的な考えを笑うように、俺は話す。
「大丈夫だって?!」
「一護、どういうことなんだ?」
「いくらあやつが鬼人の孫であろうと、死神たちにかかれば……」
「いやいや、そんな常識で図らないほうが良いって」
は?
ここにいる三人?(二人と一匹)が全員不思議な表情をする。
正直、俺だってこんなことを話したいわけではない。
源氏は友達で、俺のワガママに付き合ってくれているイイやつだ。
だけど、俺は確信している。
「源氏は多分、あそこの中で生きている」
「それは、霊圧を感じるということか?」
「馬鹿な。
瀞霊廷の外と中は霊的に完全に遮断されている。
それで霊圧を感じることなんて……」
「そういう話じゃない」
「じゃあ、なんだって言うんだい? 黒崎」
「源氏はどれだけ死神に囲まれたところで、死ぬわけがない」
「確かにアヤツの生存能力は化け物のようだが……」
夜一さんには何か心当たりがあるようだが、チャドと石田はなんのことやら、って感じだ。
「俺が源氏の爺さん……丈さんにしごいてもらった、って話は聞いただろ?」
「あぁ」
「まぁ、話は」
「俺はその中で戦闘についてとかそんな高尚なものじゃない、戦いということを教えてもらった。
斬る覚悟、斬られる覚悟。
そして、生きることの難しさ」
「だからあんな巨体を前にしても冷静でいたのか」
「あぁ。
あんなのに比べたら丈さんを目の前にしただけで死ぬからな」
笑ってはいるが、どうやら石田とチャドにはこの話は通じない。
夜一さんは苦笑いしているあたり、理解してるっぽいけど。
「そんな訓練の中、俺と並行して訓練をしていた源氏はひたすらに殺されかけてた」
「さっきから話している殺されかけるとか殺されるってのは?」
「比喩として、ということで聞いてはいるけれど……」
「違う違う
本当に首元に刀を向けられる」
二人が震えたような気もしたが、気の所為だろう。
俺の殺気なんて二人にはまだまだ届かないのだから。
「俺は殺さずに殺されていたぞ、って言われ続けたんだけど、源氏の場合はどれだけ死にそうでも丈さんは刀を絶対に途中で止めない」
「それって一歩間違えれば……」
「俺もそれはずっと思ってた。
けど、訓練を見れば見るほど、源氏は生きていった」
昨日振った刃は既に見切られていて、
半日前に振った刃も見切られていて、
一時間前に振るった剣筋も当然のように避けられて、
終いには振る前から躱されている。
「源氏は強くはないけど、死ぬことからは一番遠いやつだ。
多分どんだけやっても死なない」
「それが。我妻丈って人の教え方なのかい?」
「違う」
石田の言葉にノーを向けたのは、俺ではなく夜一さん。
夜一さんはポツリポツリと話し始める。
「我妻丈という人は恐れを知らない殺戮者と呼ばれ、かつてあの十一番隊隊長を屈服させ続けた男、と言われている」
「十一番隊?」
「死神の中でも武闘派連中が集まる隊のことを指し、恐らくその隊長は隊長の中でも最強クラス。
その男が一度も地に膝をつかせることができなかった男が、我妻丈じゃ」
「……まぁ、たしかに俺も寸止めさせられてなかったら今頃何回も死んでた」
「何回もって……」
訪れる再びの静寂。
俺は手を叩き、
「それじゃ、俺織姫のとこ行って差し入れしてくるわ」
「あぁ、それならボクもなにか手伝えることが在るか……」
「それなら他のところに行っててくれ。
俺は俺でやってるからよ」
源氏と別れた最初。
門を何度も切りつけた。
だけど、びくともしなかった。
だからこそ、あんたの言葉を信じる。
丈さん。
我妻源氏は、死なない男、だよな。