【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
一番隊隊首室。
そこに、銀髪の男……市丸ギンは現れた。
理由は簡単。
呼び出されたから。
緊急招集。
めったにかからない号令によって集められた市丸ギンは、既に予想づきながらも、扉を開く。
そこにいたのは、
「来たか」
十二名の死神。
それぞれが死覇装の上に、ギンと同様の白い羽織を纏っている。
その背には大きく漢数字が書かれていて、みな、違う数字を背負っている。
「さぁ! 今回の行動について弁明を求めようか!」
そして次に特徴として挙げられるのは、並び。
十一名の死神は左右に列を為し、真ん中を開けている。
そして一人。
真ん中の列の先には一人の死神がいる。
「三番隊隊長ーー市丸ギン!!」
老齢で既に足腰は弱り果てているように見える姿をしているが、その姿の気迫はさることながら、纏う雰囲気は強者そのもの。
彼を前にして怯むことがないギンは、この場にいる死神たちを見渡し、
「なんですの?
イキナリ呼び出されたかと思ったらこんな大袈裟な」
一歩ずつ歩いて前に進むギン。
しかしまぁ、本人としても今この場に呼び出された理由に関してはわからないわけはない。
それを知りながら、言葉を紡ぐ。
「尸魂界を取り仕切る隊長さんが、ボクなんかのために揃いも揃ってまぁ……」
そこで、ギンはあえて溜めを作る。
言葉の主導権は自分だと言わんばかりに。
「……でもないか。
十三番隊隊長さんがいらっしゃいませんなぁ。
どないしはったんですか?」
「彼は病欠だよ」
「またですか、それはお大事に」
「おい」
ギンの言葉に返すのは、髪を編み込みにして、サングラスをかけた男。
一瞥もくれずに言葉を返すサングラスの男に、ギンは白々しく返事をすると、大きな体躯の男に声をかけられる。
その男は太陽のような髪型で、眼帯をつけた男。
おおよそ戦うものには見えないその男は、ギンに対して不服そうな視線を向ける。
「どんなやつだった」
「はい?」
「お前に手傷を負わせた野郎だよ。
お前が手を出したのにはムカついてるが、お前に傷を負わせたってことはかなりのやつだってことだろ?」
「確かに腕は立つかもしれませんけど、あれは強いというより強か(したたか)って感じですよ」
「どっちでも良い。
良い切り合いができればな」
その巨躯の男は不気味な笑みを浮かべながら、ウズウズしている。
「それにしても、キミの実力も落ちたのではないか?」
そしてもうひとり。
話しかける人物。
それは人として良いのかわからない肌の色。
耳は見られず、髪も見られない。
おおよそパッと見が人間の様に見えるだけで、見れば見るほど人間との差異が目立つ。
「それもそうかも知れませんねぇ」
「でも、確認された旅禍は5名。
それを一人の侵入を許し、残りは殺しきれなかったとはどういうことかね?」
「あら、残りは死んでなかったんですね?」
「何?」
「いやぁ、殺したと思っとったんやけど……」
「バカを言うな。
貴様が手を抜いて殺しそこねただけだろうがっ」
「うるせぇな。
斬られたいなら外に出ろ」
三者三様。
同じ言語のはずなのに、全員が食い違った言葉を話すこの空間は、少し異質だが、周囲の者からすればいつもの光景に見えるらしい。
そんな言い合いも長く続くわけはなく、
「ペイッ!」
妙な一喝によって終了する。
それを口に出したのは、背に一の数字を背負う老齢の男。
「辞めんかいみっともない。
更木も涅も下がりなさい」
男の言葉に、ギンに絡んでいた二人は引く。
それほどまでに老齢の男の発言力が強いのが見て取れるこの状況。
「それにしても、最もみっともないのはお前じゃ、市丸。
護廷十三隊の隊長ともあろう人間が、旅禍を取り逃しただけに飽き足らず、傷をつけられて帰ってきたとはどういう事じゃ?」
その見えない瞳をチラつかせ、老齢の男はギンに問いかける。
その言葉は、重い。
老齢の男の凄み、という点も十分。
だがそれ以上に、尸魂界というものが抱えている歴史が、重く市丸ギンに降りしきる。
☆☆☆☆☆
夜。
俺を探している死神も、さすがに数が減ってきた深夜。
「あともう少し」
後2時間あれば外周をぐるっと回れる。
そしたら侵入でもしようかと考えていた矢先、
ガンガンガンガンガンガンガンガン!!!!
なんか響き渡った。
え、これなに?
なんもしてないはずだけどめっちゃ怖い。
ってかなに?
は?
若干キレ気味になりながらも、俺は周囲への警戒レベルを引き上げる。
すると、感じた。
「マジかよ」
でかい力。
あ、この世界では霊圧、だっけか?
そのでかい霊圧は、この遠くからでも結構伝わる。
そこらの死神とは比べ物にならない感じ。
俺が見つかったならこっちに真っ直ぐ来るはずだけど……
「ん?」
なんか様子がおかしい。
具体的には遠ざかっている。
どうした?
俺のそんな疑問を他所に、でかい霊圧はどんどん遠ざかっていく。
これは……気にしない方がいいな。
「あ、一護たちかなぁ?」
ここでは遠距離による通信手段が存在しない。
携帯も使えないらしく、結構不便である。
というか、それしてもこの状況的に一護たち以外にあり得ないし……。
行くか?
見つからないのは何となく分かってはいるけど、それでも怖いもんは怖い。
「ん?」
そこで、とあることを思いつく。
今、一護たちが来たのなら、死神って結構出払って居るのでは?
ということは……。
安全に入れるじゃん中央。
しかもこの手の場合って囚人警護の人数は最低限になるだろうし。
バカでかい霊圧の人もいないし。
こっそり行く分には大丈夫やろ。
「終わったら一護の方に合流すればいいし」
一護の事だ。
黙っていられることなんて出来ないだろう。
意外にみんな脳筋じみてるから……。
「そうと決まれば」
まずは情報集め。
あわよくば、朽木さん捜索。
あわよくば、攫って帰る。
あと出来れば、銀髪野郎1回殴れば半殺しになるんじゃない?(私怨モリモリ)