【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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事実は小説より割と奇

「今はお前の話を聞いている暇はない。

 旅禍に対して然るべき措置をとるだけだ」

「その旅禍は、何をしたのですか」

「長らく破られることのなかった尸魂界に侵入した」

「侵入しただけで罪なのですか?!」

「それ自体は罪だ。

 罰は受けねばならない」

 

 朽木さんは、願うような様子で俺と退治している男……兄様? の方を向き、説得をしている。

 

「ならば、此処で本気の剣を使わずとも!」

「更に、三番隊隊長市丸ギンに対して手傷を負わせた。

 これは尸魂界に対する敵対行為だ」

 

 朽木さんが俺の方をにらみつける。

 俺は申し訳無さそうに軽く礼をすると、朽木さんは苦い表情をしながら、

 

「それにしても! それは市丸隊長にも非が……」

「口説い!」

 

 兄様……いや俺が兄様って呼ぶのもおかしいか。

 男の一喝。

 

 その言葉に、朽木さんは萎縮する。

 

「規定を犯すものに、慈悲はない」

 

 その言葉は、まるで俺に向かって言われた様に見えたけど、

 

「え、今朽木さんに話した?」

 

 朽木さんに向かって話しているようにも見えた。

 まるで、言い聞かせるような口調。

 空気がひりついてくる。

 おそらくは男のほうが本気を出そうとしているのだろう。

 

 死神は体内から霊圧を放出する。

 それも自身で度合いを調整し、手加減をすることができる。

 

 その手加減を、取り払ったのだ。

 

「名は何という」

「ん?」

「此処まで来たなら、名を聞こう」

 

 いきなり名前聞くとか俺がJKだったら通報されてるよ。

 風が吹いて橋が揺れる。

 

 少しだけ、考えた。

 

「俺は、源氏」

「そうか。

 私は朽木白哉」

「あ、本当に兄妹なのね」

 

 その言葉を最後に、俺は話す暇さえなくなる。

 

 右。

 左。

 逆袈裟。

 右。

 左と見せかけての上段。

 拳。

 ん? ビーム?!

 死神ビーム撃てるの?!

 突き。

 

 恐らく俺の体験における二番目の速さでの剣閃。

 

 その剣閃は躱すのに精一杯で、反撃の余地はない。

 苛烈になる攻撃。

 

 触れないように躱していく。

 

 右、左、コブ……

 

「フッ!」

 

 拳と見せかけての首薙だった。

 

 俺の首の目の前を通り過ぎる。

 

 間合いを詰めなくてよかった。

 生きた心地がしない。

 

 相手から目を離せない。

 キレイで努力の跡が見える剣閃。

 俺なんかとは大違いだ。

 

 俺は生きるため。

 

 こいつは信じるもののために戦っている感じ。

 

「ハァッ!」

 

 男……白哉からの一撃。

 このまま躱していても、埒が明かない。

 それなら、ここでなにか手を打っておくのが必要だ。

 

 することと言っても、反撃をしようにも俺の生ぬるい攻撃では返り討ちにあう。

 やるとすれば、型。

 

 しかも本気も本気で挑まなければ詰んでしまうだろう。

 

 そのために必要なのは、隙。

 

 一瞬でもいい、針の穴のような隙。

 

 俺が取った行動は、

 

「未熟」

 

 刀を受け止める。

 

 白哉の上段。

 鍔迫ろうと刀を横にして迎え撃つ。

 

 恐らく、未熟という言葉は俺の行動に対して言われたものだ。

 今の俺では、白夜の剣を防ぐことはできない。

 

 知っている。

 この速さ、重さは俺の剣では到底受け止めることはできない。

 だからこそ、

 

「ッ?!」

 

 俺は刀身を消失させた。

 

 この刀は特別製。

 現実でも持てる様にと、俺の意思で刀身を出現できる。

 これはまた逆も然り。

 

 好きなときに刀身を消すことができる。

 

 もちろん、相手の刀身が消えるなんて早々ないこと。

 そして、刀身が消えれば迎えるのは、俺への直撃。

 

 白哉の剣は鈍ることはない。

 

 そう、それで良い。

 

 シィィィィィィィィ

 

 

 迷わなくてよかった。

 俺がいる場所を斬ってくれてよかった。

 

 

 雷の呼吸

 

 

 俺はすべてを知っていて、半歩後ろに下がる準備をしていた。

 

 

 弐の型

 

 

 マントは俺の体を覆うように着ている。

 だからこそ、体すれすれでマントは縦に斬られ、

 

 

 稲魂

 

 

 一瞬の隙を生み出した。

 

「散れ、『千本桜』」

 

 瞬間、地面から湧き上がる桜の花弁(はなびら)。

 

 反応している暇なんてない。

 少しでも先に。

 一瞬でも先に決める。

 

 キィィィィン!!!

 

 振るって気づいた、花びらの正体。

 この花弁(はなびら)、刀……。

 

 そして俺は、花弁(はなびら)に包まれた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 男、朽木白哉にとって、それは一瞬の驚異(脅威)だった。

 

 まるで吹けば散る綿毛のように、弱々しい相手。

 旅禍の一人である、源氏という男の評価はそんなものだった。

 

 しかし蓋を開けてみれば、綿毛のように刀を躱し、掴み取ることすらできない存在のように感じる。

 

 目の前にいるのに、居ない。

 ある意味で何と戦っているのだろうかと思わされる相手だった。

 

 そして、あの一瞬。

 

 刀が消失し、当たると思われた上段が空を斬ったあの時、

 

 危険を、感じた。

 

 それは源氏が息抜きを通じて得た、自身の潜在的な霊力保有量を上げたことによる、強化だったかもしれない。

 あるいは、白哉が油断をしていたからかもしれない。

 

 だが、その一瞬で朽木白哉は気づけば、源氏を殺していた。

 

「ッ……」

 

 苦い表情。

 それは、護廷十三隊隊長に命じられた許可なき始解の開放によるものであり、

 

 同時に源氏に対して最大限の敬意を払うことなく倒してしまったことに対する、後悔。

 

 桜の花弁は、源氏に襲いかかり、その身の一切を切り刻んだ。

 残ったのは、おそらくは残虐な骨肉。

 

「ってぇ……」

 

 聞こえないはずの声がした。

 

 それは旅禍であるはずなのに呑気な声をして、白夜に話しかけた相手であり、

 

「死ぬって、まじで」

 

 先ほどとは違い、副隊長程度の霊圧を発する、源氏の姿だった。

 

 源氏の体は血に塗れている。

 しかしそれはすべて肉を抉っているわけではない。

 皮一枚で済んでいた。

 

 多数の切れた血管から血は出ているものの、その全てが致命傷を避けている。

 

 手加減でもしたのだろうか。

 白哉の頭の中に、自分への疑念が生まれる。

 自分はとっさに始解の開放で手を抜いた?

 いや、あの時の防衛本能は確実に相手を殺すように千本桜を振るった。

 

 ならば、なぜ。

 

「はぁ」

 

 目の前の相手は唯一つ、ため息を吐いて、

 

「逃げるか」

 

 消え去った。

 

「ま……」

 

 混乱していた思考では、霊圧の上昇とともに一瞬で消えた源氏の姿を探すことはできず、白夜は俯く。

 

「してやられたねぇ」

 

 そのタイミングで、背後からの声が聞こえる。

 とっさに後ろを振り向き、刀を構えると、

 

「いやいや、そんな怖い顔しないでって」

 

 そこに居たのは、銀髪で白い羽織を身に着けた、市丸ギンの姿だった。

 両手を上げて焦った表情をするギンに、白夜は刀を納める。

 

「僕もさっき来たとこなんやけど、すごいねぇ、彼」

「……見ていたのか?」

 

 意識の死角であったため、完全に無意識に攻撃を行ったため、白哉からすればなぜ源氏が生きているのかは不思議でたまらなかった。

 それに答えるように、ギンは先程まで源氏の居たところを指差し、

 

「朽木隊長が使った千本桜は、たしかにあの近距離であの男の子を襲った。

 それこそ、彼の打ち込んだ連撃なんて追いつかないくらいの千本桜。

 それに対して彼は」

 

 そのまま指を自身の顔の前まで持ってきて、

 

「むちゃくちゃ刀を振るってた」

「……」

 

 バツを描いた。

 

「そんな怖い顔しないでください。

 でも僕はあの千本桜に飲まれた瞬間を見たんですから」

「……何を言いたい」

「僕が思うに、千本桜を叩き落としたんだと」

「千本桜を、叩き落とす?」

 

 白哉からすれば、荒唐無稽な話。

 千本桜はそれこそ名前だけのものではない。

 人の処理できる以上の数の花弁を出現させ、それらすべてが刃となっている。

 

 すべてを落とすとなれば……

 

「それは……」

「まぁ、信じがたいことですけど。

 彼、的確にダメージになるもんだけを落としたみたいですね」

 

 そう、正確には落とせていない。

 それこそ皮一枚を切り刻んだ。

 

 逆に言えば、皮一枚の花弁は無視して、それ以外の重症になる花弁のみを落とした、ということだ。

 

 白哉の頭の中で出る結果にも、理解できていない。

 それこそ、そんな芸当ができるなんて、夢物語の世界だ。

 どれほどの判断をあの中で行い、刀を振るったのか。

 

「もしかしたら、の話ですけど」

 

 その言葉に、白哉は返す言葉を見失った。

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