【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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事前に頑張れるタイプはすごい

「強すぎ無理だわやっぱ」

 

 尸魂界西側の倉庫。

 

 そこで一休みしていた。

 一応持ってきた応急処置系の荷物をフル活用して死なない様に治療を施す。

 

「やっぱあるよな、始解」

 

 一応、始解という存在に関しては十分な注意を受けていた。

 それこそ、一護がでかい出刃包丁を手にした辺りから強くなったので、パワーアップ的なものだと捉えていたのだが、

 

「隊長のは揃いも揃って強すぎんか?」

 

 市丸ギンの始解は、伸びる刀。

 突きで使われるのが一番怖いが、反応できないほどではない。

 振るった刀の間合いが自在なのが個人的には強いと思っていた。

 

 そして、その対策のためにと、市丸ギンには攻撃の後の伸び切った刀の隙を突いて一撃を入れることができた。

 市丸ギンの始解に関してはそうやって対処できたのだが、

 

「花弁の刀、ねぇ」

 

 あの白哉の始解はどう攻略していいか分からない。

 

 さっき躱すことができたのは、半分がまぐれだと言っても過言ではない。

 

 多分、白哉からすれば俺があの花弁をかなり叩き落としていたように見えるかもしれない。

 

 でも本当は、『遠雷』を使用したから、躱すことができた。

 

 あの瞬間、稲魂が始解に防がれたあの瞬間、俺はとっさに稲魂から遠雷へと技を繋いだ。

 

 遠雷は、踏み出し、斬りつけ、引き下がる技だ。

 

 この最後の部分から強制的に型を行い、花弁の全衝突を避けた。

 

 俺の息抜き修行で一番成長したのは、『遠雷』だ。

 遠雷はその性質上、出てから下がるまでを極端に最適化することが求められる。

 しかし、今の息抜きを即座に行える状態であれば、踏み出し、斬りつけ、引き下がりに息抜きを混ぜることで、より相手を惑わすことができる。

 

 それを利用して、俺の位置を誤認させ、後ろに下がって致命傷に成るのはすべて稲魂で撃ち落とす。

 まぁ、数が多すぎるってのとかなり間近だったってことでここまで死にかけてるんだが。

 

「まぁ、死なないから大丈夫だろ……」

 

 今は呼吸を最低限にし、全身の筋肉を硬直させて血の排出をふせぐことで命をとりとめている。

 呼吸を行うのが治療には一番早いのだが、それでは霊圧で死神に見つかってしまう。

 

 そのため、あくまで呼吸は気づかないくらいの範囲で行い、今の治療と体への知識で乗り越える。

 

「きっつ……」

 

 結果として朽木さんは助けることはできなかったが、相手に緊張感を与えることはできた。

 オレ一人でこれくらいの緊張感だ。

 更に複数敵が入ってきたとなれば、あちらとしても混乱は必須。

 

 俺は朽木さんの場所を知り、相手の強さを知り、地理を把握したことで逃げれる可能性は上がっている。

 

「ふぅ」

 

 そして、俺が回復せずともやらなければいけない最後の行動は、

 

「行くか」

 

 目的の混乱。

 

 こっから休み無しで尸魂界を、荒らしていく。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 尸魂界は闇に包まれた。

 深夜と呼ぶにふさわしいこの時間。

 人は眠りにつくはずだが、ココでは死神がせわしなく動いている。

 

 夜なのにホタルのように行灯はちらつき、ろうそくの匂いを漂わせている。

 

「おい! 聞いたか!? 旅禍の話」

「聞いた聞いた。

 旅禍が朽木隊長と戦ったんだってな」

「更木隊長が死ぬほど羨ましがってたってさ」

「でもまぁ、旅禍のやつも大変だよな。

 隊長と戦うなんて、運がない」

「朽木隊長に始解を使わせたらしいってな」

「え、ほんとか? あの朽木隊長が、始解を?」

「隊長格の尸魂界内での始解は制限されているのに、そこまでしなければならなかったってことか?」

 

 人々の会話に出てくるのは、先程の懺罪宮での出来事。

 

 曰く、六番隊長と旅禍が戦闘を行ったらしい。

 曰く、そこで旅禍は隊長に対して始解を使用させたらしい。

 曰く、それを受けて死にかけたらしい。

 

 現在の状況では旅禍を捕まえるまで朽木隊長の始解の無断開放は保留するとして、現在旅禍は怪我を負い、動き回れるような状況ではないらしい。

 

 そのため、こうして下っ端隊員に捜索の命が降りているのである。

 

「それにしても見つからねぇか?」

「確かに。

 これくらいあれば報告の一つや二つあってもおかしくなさそうだけどな」

「それだけすばしっこいってことじゃないのか?」

「そうそうそれだけ……ってお前誰だ?!」

 

 そんな中で捜索を中断して無駄話をしていた隊員は会話に入ってきた人物の方を見る。

 

 そこに居たのは、体を大きなマントですっぽりと覆い、頭までフードを深く被った男。

 暗い中、行灯の光だけでは判断もつかない。

 

 隊員が行灯を上に上げて顔を確認しようとすると、

 

「さ、俺は食べ物でも奪おうかな」

「なっ?! お前、食料を!」

「備蓄は大事な財産だ!」

 

 マントの男からなにか、呼吸の様な音が聞こえた。

 次の瞬間、男たちの近くにあった備蓄庫の南京錠は壊される。

 

「なっ?!」

「何をする!」

「だから、食料泥棒です」

 

 後ろを振り向き、現状を確認した段階でもう遅い。

 

 隊員二人の意識は刈り取られ、その視界を闇に染めていった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 二番隊、隠密機動、隊舎。

 そこでは情報が錯綜していた。

 

「こちら、西ほ-八、出現情報。

 聞き取りによると、金目の物を泥棒しようとしている、とのことです」

「こちら西に-二、出現情報。

 聞き取りによると、食料狙い、とのことです」

 

 次々と現れる旅禍の出現情報。

 それはまるで、一人ではないかのような量。

 

 黒づくめの人物たちが何人も情報を持ってくる。

 

 そしてその情報のすべてが、ちぐはぐだ。

 

「おいおいなんでこんなに違う情報しか来ないんだよ?」

 

 そんな中で書類の山に埋もれているのは、太った男……大前田希千代。

 彼はすべての隠密の情報の書かれた紙に次々と目を通し、その量にめまいをしている。

 

 先程から鳴り止まない出現情報と、そして全く見えてこない目的。

 

「これを信じるとあれが信じられなくなって……あぁくそっ!」

 

 書類をぶん投げる大前田。

 見て分かる通り、こんな深夜に集めさせるとは思えないほどの情報量。

 大前田の言葉は、ここの人間たちにとっては幾度も繰り返された気持ちなのだ。

 

「ふむ」

「あ、隊長!」

 

 現れたのは、黒髪の少女。

 背に二の文字をあしらった白い羽織を身に纏った少女。

 堂々とした佇まいはこの場にいる者たちの中でも位が高いことを示唆している。

 

 少女は床に落ちた紙をいくつか手に取り、目を通していく。

 

「いくつもの目撃証言。

 纏まってはいるがちぐはぐな目撃証言。

 そしてその全てが死神からのもの」

「ったく、なんでわざわざ隠密機動隊が駆り出されなきゃならないんですかねぇ?」

 

 媚び、というものを体現するかの様に、大前田は少女……二番隊隊長、砕蜂に話しかける。

 

「それは三番隊隊長がおめおめと傷をつけられ、あまつさえ死神共がこの旅禍を捕まえられていないからだろう」

「そうですよね! 死神共に任せていれば捕まらないので俺らが出張っているんですよね!」

 

 大前田はわざとらしく同調する。

 砕蜂はそんな大前田を無視しながら、次々と床に散らばっている紙を手に取り、目を通していく。

 

「……この旅禍の身体的特徴は」

「背丈は五尺七寸。

 大きなマントを身に着けた男のようです」

「……そうか」

「なにか気になることでも?」

「いや、なんでもない」

 

 大前田は砕蜂の一瞬の思案を見逃さず、言葉を掛ける。

 砕蜂は、次々と目を通していき、頷いた後、

 

「時間を半刻ごとにまとめ、地図で確認してみろ。

 恐らく、一筆書きで移動していると思われる」

「え、ど、どういうことですか?!」

「言ったとおりだ。

 旅禍の報告は一人。

 もし一人でこの様な目立つ動きをするなら、目的は二つ。

 一人だと思われたくない、ということ。

 そして、何かを隠そうとしていること」

 

 砕蜂の言葉に、周りの隠密機動はすぐさま資料を集め始める。

 

「もしあるとすれば、コヤツが移動した後、もしくはやけに長くとどまっていた場所に何かを隠している可能性は高い。

 また、これから何かをしでかす可能性も考えられる」

「えっ、あっ」

「そして、私の言ったことが事実であった場合は、移動場所を予測できる。

 迎え撃て。

 隠密機動は死神より優れているということを証明しろ」

 

 砕蜂は、その言葉を残し、ゆったりとした足取りで隊舎を出ていく。

 

 大前田はそんな砕蜂の後ろ姿を見届ける。

 後ろでは、せわしなく動いている隊員の姿を映しながら。

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