【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「くっそ」
思わず出てしまう本音。
俺は現在、敵に囲まれている。
それも、死神の連中ではなく、黒装束の連中。
明らかに足音の無さや気配の希薄さを鑑みると、忍者的なやつら。
ついに忍者出てくるとかどうなっとんじゃこれ。
「貴様が旅禍か」
現在の場所は、尸魂界東の端。
人気のない場所に連れ込まれてしまい、非常に困っている。
「よもや一人とは、まさかとは思ったが」
「一人じゃ悪いですかね?」
「男か」
「さぁ?」
会話には応じる。
なんか雰囲気を見るに死神としては旅禍……俺を問答無用で殺すというスタンスではないっぽい。
捕らえるのが優先らしい。
だからこそ、あちらは投降できるかどうかを見定めるため、基本的には会話を試みる。
「一人で複数人の旅禍がいると見せかけるため、随分と面倒なことをしたようだな」
「……一人? 気の所為では?」
死神たちも刀を抜くが、即座に斬りかかろうとはしていない。
ガラの悪い連中……おそらくはどこかの隊の人たちは、戦闘好きが多いのだが、それ以外の死神たちは最初から殺しには来ない。
「……まぁいい。
お前がしていたエリアごとに目撃証言をほぼ同時に、複数の目撃情報を与えるために無理をしたな」
流石隊長さん、わかってら。
俺のやったことは簡単。
めっちゃ高速で動いてみんなに見つかるようにした。
死神は俺の呼吸による霊圧に反応してくれるから、各所で遠雷の技術を用いて、死神たちに襲撃もどきを仕掛けた。
もちろん、証言を多くするためになるべく殺さず、気絶も短く済むように仕向ける。
死神に限定しているのは、霊圧に過敏反応してくれるから、息抜き状態での奇襲が成功するため。
「何を言っているのやら。
自分にかまっていても良いんですか?」
そして、これは俺の口から一人だと言ってしまえば、あっちとしても一人で確定になり、俺のやっていることが水の泡になる。
少しでも複数人の可能性を与え、警備を散らすことが大事だ。
そうすれば、一護たちが来てくれたときに逃げやすいし、救いやすい。
「そうか、ならば」
目の映る隊長……少女にしか見えないけど、隊長さんは壁の上に立ち、月を背にしている。
輪郭しか見えないので、顔はわからない。
でも、こんな連中を束ねているということは、
「死ね」
「だろうよ!」
後ろから心臓を一突き。
……隊長さんって後ろから攻めるのが定番なの?!
体を捻り、刺突を避ける。
「これを躱すか」
「じゃ!」
今回は戦闘は選ばない。
今の体の状態は、結構ひどい。
戦えないことはないが、パフォーマンスは落ちているし、判断能力も鈍い。
だからこそ避けの冴えは鋭いのだが、思わぬところでミスって死ぬ可能性もある。
結果、逃げ一択。
「逃げれると思っているのか」
俺が飛び出した方向に現れるのは、黒装束の連中。
この人達、さっき現れたと思ったら俺の行きたい方向知ってるみたいな感じで道塞いできたんだよね。
読まれているのか、感知能力が高いのか。
どちらにせよ、
「甘い!」
シィィィィィィ
雷の呼吸
参ノ型
聚蚊成雷
この型は本来、霹靂一閃にステップを加え、相手の周囲から攻撃する技だが、これを利用すれば、
「なっ?!」
「いつの間に!」
「じゃな!」
黒装束の人たちは、囲ったと思った相手がいきなり包囲網を抜けたことに驚いているだろう。
取り囲まれた城壁を超え、その先の城壁の上に降り立つ。
霹靂一閃とは違い、スピードは格段に落ちるが、この手の隙間を縫うことにも利用できる。
後ろを振り向かず、前に進む。
「何をしている」
そして次の瞬間、
「ノロマだろうが」
目の前に隊長少女が居た。
蹴り。
受け止め、いや、まずい。
これは、重い。
ダァン!!
直撃を避けた結果、城壁に振り下ろされた隊長少女の蹴り。
それは城壁を軽々と破壊した。
もし受け止めていたらと思うとゾッとする。
「良い判断だな」
「どうも」
「しかし、判断は遅い」
え、ここでそんなセリフ来るのか。
「とっさに判断をして、私の蹴りを避けようとしたのは良かった。
間に合わないと判断して拳をぶつけることで回避したのも良かった」
「ありがとうございます」
「しかし、その右手、しばらく使い物にならないであろう」
御名答。
俺の右手は絶賛蹴りを殴ったせいでしびれている。
10分もあれば直ると思うが、現在の状況での10分は痛すぎる。
無理して動かしているが、刀を握るのは難しい。
「逃げは遅い、反撃の手はない。
投降を勧めよう」
「……仲間のところにいかなきゃならないもので」
「ふっ、強がりを」
あとから来るんだって(強がり)
にしても、流石にやばい。
怪我だらけ、手が使い物にならない、速度負け。
これは厳しい。
「さぁ、両膝を突いて投降しろ」
「ふぅ」
息を吐く。
シィィィィィィィ
雷の呼吸
「ふっ、今更何をしても……」
壱ノ型
霹靂一閃
累(かさね)
「なっ……やつは……
どこに行った……?」
☆☆☆☆☆
「砕蜂様! やつはどこに……」
「報告にある通り、姿を隠したのでは?!」
「馬鹿な! それならば我らの用意した第二陣にかかっているはず……」
源氏の姿が砕蜂たちの目の前から消えて、数分後。
現場は混乱を極めていた。
隠密機動としての動きは、簡単に分けて3種類。
まず、源氏の動きを誘導し、指定の逃げ場のない位置までおびき寄せること。
これに関しては、砕蜂の指示によりスムーズにことが進む。
源氏の行動パターンとして、死神が複数いる場には寄り付かない、目立つルートを使わないなど、まるで知っているかのような采配で砕蜂は追い詰めた。
次に、隠密機動による人的包囲の実現。
これに関しては、先の誘導を利用して実現をした。
源氏は姿を消す能力を有しているという情報はあったため、姿を隠している敵を察知するため、特殊なゴーグルを技術開発局から拝借し、空気の流れから姿を消したことを察知することで対策を取る。
そして最後に、砕蜂による実力行使。
事前に六番隊隊長、三番隊隊長からの情報によると、源氏は怪我をしているという情報があり、そこから推測するに砕蜂であればどの様な速度を前にしても対処が可能だという結論に至った。
「……やめろ」
「た、隊長!」
「即座に対処を! 必ずや見つけてみせます!」
隠密機動の隊員は、砕蜂の表情に違和感を抱きながらも、自分らの失敗を取り戻そうと躍起になる。
「そういうことではない」
「……そういうことではない?」
復唱する隊員。
それに呼応するように、周囲の隊員も動揺に疑問を浮かべる。
その疑問に答えるように、砕蜂は話し始める。
「旅禍は、すでにこの周辺には姿形もない」
「それは、旅禍の能力で……」
「そうではない」
「申し訳ありません。
それは、どういうことでしょうか」
「旅禍が最後にしたのは、恐らく奴の持つ最速の移動術。
その結果生まれたのは、単純な大幅移動。
私の予測によれば、旅禍はすでにこの尸魂界のどこにでも存在している可能性がある」
「それは……。
それでは、私達はどのようにすれば」
砕蜂は目を閉じ、
「してやられた。
先程の大幅移動により、尸魂界の全域に潜伏している可能性が出てしまった」
「それでは、全域に隊員を……あっ」
「そうだ、複数人いると見せかける。
旅禍は明らかに戦力の分散を狙っている。
乗らまいと考えていたが、これでは結果は同じになってしまった」
砕蜂の眉間にシワが寄る。
「まぁ良い。
策に乗った上でそれを謀殺してやろう。
即座に尸魂界全域に派遣しろ」
「ハッ!」
砕蜂の言葉で、その場にいる黒装束の人間たちは散開する。
そして一人になる砕蜂。
「ここまで私の考える『私と同程度の能力を持っていたら、どの様に動くのか』を忠実に再現してくれる」
誰に話すでもない、思考の整理。
「しかし、ところどころズレが存在する。
何が違うのか。
それは目的、であろう」
空を見上げ、沈む月を見据えて、
「遊びは終わりだ。
必ず私のもとに平伏させてやろう」