【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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戦っているときに成長するとか無理だから、マジ

「え」

「どうじゃ、驚いたじゃろう」

「まぁ、驚いたというよりも……」

 

 ここ、『勉強部屋』じゃねぇか。

 

 忌まわしきジジイとの戦いが蘇る。

 頭によぎっては消える記憶との格闘をしていると、夜一さんは何かを見つけたかのようにこちらに声を掛ける。

 

「こっちじゃこっち」

 

 夜一さんが元気に手を振っている。

 正直、まだ人間姿の夜一さんに見慣れないのだが、心のなかで必死に頭に言い聞かせている。

 

 夜一さんのところにたどり着くと、そこにあったのは、

 

「温泉?」

「そうじゃ、温泉じゃ」

 

 めちゃめちゃ久しぶりに温泉を見た。

 

 一人暮らしでは面倒で湯船も入らないし、ここ最近は戦い続きで温泉なんて入ってない。

 というか、水辺って結構足の動き取られるから本能的に避けちゃうんだよな、嫌だけど。

 

「え、この傷だらけの状態で入れと?」

「説明するのも面倒じゃから、入れ」

「え、なん……」

「いいから!」

 

 夜一さんに尻を蹴られる。

 めちゃめちゃ気を抜いていたため、普通に蹴られる。

 落ちる。

 

「ごぼがぼ(ふくきて)!」

「そんな深くないじゃろて」

「…………あ」

 

 溺れると足掻いてしまったが、すぐに地面に脚をつけることができる。

 少し恥ずかしさを覚えながらも、服を着ていたことを思い出し、

 

「あ、服……」

「ここに替えの服を置いていくからの」

「え?」

「昔の喜助のお古じゃ。

 お主に似合うかどうかはわからんが、サイズはピッタリと喜助が話しておったぞ」

「あぁありがと……ってなんで浦原さんが俺の体のサイズ知っとるねん」

「さぁ?」

「さぁで済まされる話題なのだろうか」

 

 温泉から少し話したところに服を置いてもらい、夜一さんはどこかに足早にでかけていった。

 

「あれ? 俺何すれば良いんだろう」

 

 そして残された俺は、一人暇を持て余した。

 

「あ、もしかして一護たちに連絡してくれてるとかかな」

 

 独り言を話しながら、濡れた服を脱ぎ捨てていくと、あることに気づく。

 

「んぉ?」

 

 目に見えて傷が治っていく。

 小さな傷からだけど、少しずつ傷が治っていっている。

 

 まるで 回復魔法を使っているかのような治り様に少し興奮するが、

 

「え、怖くね?」

 

 急に怖くなってきた。

 なんでこれ回復するの? え、副作用的なのある感じ?

 

 上がる。

 

 全裸。

 

 でも誰も居ない。

 

「……なんともない」

 

 てっきり傷がぶり返したりすごく眠くなるとかありそうだと思っていたけど、そんなことはない。

 体を見渡すが、細やかな傷が減っている。

 

 大きな傷も治るまでは来ていないが、これは……

 

「呼吸?」

 

 をしている状態に近い。

 

 それも、治癒に集中した時の呼吸。

 

「ってかこれ……」

 

 温泉をよく視てみる。

 

 よーく視ると……

 

「霊圧? 霊力?」

 

 少しの霊力が流れているのがわかった。

 霊力を視ることはできないが、温泉の流れに沿って何らかの力が流れていることを理解した。

 

 それも、少し強め。

 神聖な場所の数十倍くらいの濃度の霊力。

 

「強制的に治癒状態にする?」

 

 呼吸には副作用がない。

 

 唯一言えることとしては、自分の限界以上に霊力は入らない、というところだ。

 それを超えると、人間としての枠組みを超えるため、壊れてしまう。

 というか、それ以上入れようとしても普通はできない。

 

 食いすぎて死にそう、的な状態になるから……

 

「治癒ってもしかしてこの世界だと霊力で結構早めに回復する感じ?」

 

 右手を入れる。

 先の戦いで骨に罅が入っているかもしれない。

 

 霊力が中に入ってくるのが理解できる。

 

 呼吸の時の、力を巡らせるイメージをする。

 

 手に入ってきた力が体に流れた。

 

「うおぁ」

 

 驚いて手を温泉から抜く。

 

 体をめぐる力は、しばらく巡った後、呼吸として排出される。

 

 こうやって霊力を循環させることで滅却士は戦うのだが……

 

「とりあえず、入るか」

 

 副作用はないと判断して、入る。

 寒いし。

 

 温泉に入ると、俺の体の中にどんどん力が入ってくる。

 普通はこんなに来んのか? と思いながら、少し考え事をする。

 

 これは霊力に満ちた温泉。

 たぶん夜一さん的にも怪我を早く治すため、ということで俺にこれを勧めたのだろう。

 でも、俺は現状かなりのスピードで回復している。

 

 普通こんなに回復するもん?

 

「お、やば」

 

 しばらく入っていると、体の限界を感じる。

 俺の呼吸の最大値は結構大きい。

 しかし、その最大値まで集中するためには時間を要してしまうため、最大まで力を込めることは早々ない。

 

 ……?

 

 そういえば、ここで息抜きすればどうなるんだろか。

 

「ふぅ」

 

 適当にやってみる。

 

 抜ける。

 

 体に満ちた力が抜けていく。

 そして同時に、新たに霊力が入ってくる。

 

「おお」

 

 呼吸をしてないのに、呼吸をしているみたいだ。

 

 肺の空気がなくなるので呼吸をしないで呼吸をする……ちょっと面倒くさい表現だが、酸素を吸って……

 

「?」

 

 呼吸じゃなくても外から霊力って取り込める……

 

「あ」

 

 石田くんも同じくやっていた……

 

「あぁ」

 

 というか俺、

 

「あああああああああああああああ!」

 

 ジジイが呼吸して強化してるとこ見たこと無い?!

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「そういえば、丈さんはどうするんすか?」

「どうする、とは?」

「いや、あちらに行ったお孫さんが心配かと」

「んなわけあるかい」

 

 浦原商店。

 

 そこで、浦原喜助と我妻丈は話していた。

 

「そうなんですか。

 てっきり結構可愛がっているものだと」

「別に可愛がってなどおらん」

「そうですか……」

 

 お茶を飲む丈。

 浦原の内心は、あまり穏やかではない。

 

 丈はそれこそ、滅却師の粛清のタイミングで『粛清デキズ』として処理された人間。

 護廷十三隊の総隊長、山本元柳斎重國を持ってしても、殺し切るには払うものがでかすぎる、と言わしめた傑物。

 

 当時を知らなかった浦原でも、その名前は聞き及んでいる。

 

「そういえば、丈さんは源氏さんみたいな技、使えるんスか?」

「技? あぁ、雷の呼吸、じゃったか」

 

 浦原はどんな状況でも会話をつながらなければ、と話を振るが、丈の反応は悪い。

 何がそんな反応を悪くしてしまったのだろうか、と思っていると、

 

「源氏のあの型は、儂が教えたものではない」

「はい?」

「儂は滅却士に伝わる闘法を教えはしたが、あの様に型にまで修練させたのは、源氏の力だ」

「……独学で、ということですか?」

「基礎として、滅却士の『虚空』を使っておるが、その先はおそらくは独学。

 最初それを見たときは天才かとも思わされた」

 

 丈の口ぶりは、少し機嫌が悪そうと同時に、少し楽しそうだった。

 まるで、見てない間に成長する息子を見る親のように。

 

「しかしまぁ、結果としてはあの様な変態的な戦い方になったが、それはそれでいい」

 

 いくら嬲っても這い上がるのは非常に良いことじゃからな! と話す丈に少し引いた浦原だが、少し疑問が生じる。

 

 丈が教えていない。

 独学で開発した虚空の亜種。

 

「どうやって、作ったんでしょうね」

「……それに関しては聞かないで置いている。

 なにか、源氏の方にも秘密があるとも思われるしの」

「秘密、ッスか」

「まぁろくなもんでもなかろう! 漫画でも読んで作ったとか、そんな辺りじゃろうがな」

 

 カッカッカ、と笑う丈に、浦原は思考を巡らせる。

 

 滅却士の仕組みについては、丈が協力してくれたおかげで理解できている。

 それと同じ仕組みを使っている、もしくは丈がまだ教えてくれていない技法を使っていると思っていた源氏。

 呼吸という新しい闘法。

 もしかしたら……

 

「丈さん」

「なんだ?」

「源氏さんって、どこまで強くなると踏んでるッスか?」

「どこまで……」

 

 浦原の唐突な質問に、丈は少し考える。

 

 お茶を飲み、虚空を見上げ、

 

「実力のある敵との戦い、という点での意味で言うなら、あやつはどこまでも強くなっていく。

 それこそ、儂さえも超える実力を持つ可能性もある」

「……ホントっすか?」

「まぁ、儂を超える頃には儂はくたばっていると思うがの」

 

 先ほどと違い、にこやかに笑う丈の姿に、浦原は苦笑いをするしかなかった。

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