【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「で、どこに向かってるんですか?」
「着けばわかる」
「そりゃ着けば分かりますけど……」
「ほらキビキビ歩かんか」
「歩いてますって」
先程の死神との邂逅から10分ほど経過して、俺らは一度も他の隊士と出会うことなく、死神たちの隊舎のある地区に来ていた。
ここが何番隊の隊舎なのか全く知らないので、いつまた俺の知っている隊長が出てくるのか内心ヒヤヒヤしている。
現在、死神たちの殆どは出払っている。
それこそさっきから遠くから聞こえる『オレンジ色の髪の死神』と『巨人』という二人のために人数が集まっているのだろう。
……チャド、お前もなのか。
「一護以外に期待して、と言っていたがチャドもなかなかじゃの」
「……チャドは全員倒すとか考えてないだろうけど、多分普通に目立ってるだけだと思います」
「せっかく情報を撹乱させたのに、惜しいのぉ」
「まぁ、正直俺が動けるようでもありますので、いいですよ」
でも本来なら後続が静かに入ってくれればなんとかなったんだけどなぁ。
今更そういうことを考えても仕方がない。
俺は俺のできることをやろう。
「さぁ、ここからこの中に入るぞ」
「……え、隊舎に?」
「あぁ、とある人物に話があっての」
「とある人物」
目の前にあるのは、『十三』という文字をあしらった入り口。
それは護廷十三隊における十三番隊の隊舎であることを示していて、
死神たちの姿は見えないから良いが、これでは……
「殴り込みでも掛ける?」
「そんな野蛮なことはしないわ。
少し、話があってきたんじゃよ」
死神に知り合いがいる、と。
何がなんだかわからない状態だが、俺はとりあえず極力気配を沈めていればいい。
夜一さんが闘うことになれば、俺邪魔だろうし。
というか、結構隊舎って広いのな。
道場くらいのものと考えてたけど、かなりの広さだ。
物々しい門を通り抜ける。
数人の隊士がこちらに気づく。
そりゃこんな非常事態の最中、死神でも無い普通の人が入ってきたら気になるよな。
夜一さんはどうするのかと見ていると、
「十三番隊隊長はどこじゃ」
もはや演技などすることなく、ストレートに聞いていた。
あら、アポ的なものを取っていらっしゃる? とか思っていたけど、
「誰だ貴様は。
ココに入るには許可証が必要だし……今は尸魂界の非常事態なのだ。
出歩くではない」
あ、そうですよね。
てっきりここが六番隊の隊舎かと思っていたけど、違うらしい。
十三番隊……何をするところなんだろう。
尸魂界を回っている中で、大まかに隊ごとに役割があることを理解してたが、それこそ十三番隊は見回りでもなかなか話を聞かなかったな。
「どちらだ?」
「それよりそちらの話を先にだ……」
隊士が倒れた。
え、今なにかしたよね?
なんか夜一さんの手元がシュッて動いたんだけど。
え、それで気絶させたの?
なにゆえ?
「ふむ、知らないようじゃ。
まぁ、どこも隊舎なんて昔から変わってないだろうから、適当に行くとするかの」
「あの、なんで気絶させたの?」
「……相変わらず気配が小さすぎて忘れてしまうんじゃが……。
まぁ、見られて変に警戒されるよりだったら、ここで気絶させたほうが後腐れないじゃろう」
「後腐れあるでしょそれ。
気絶させてるんだもん」
「道端で寝ていたと思うじゃろうよ」
え、そうなの? って俺が思うくらいに夜一さんは平然としている。
……いや、ちゃうやろ。
思わず騙されそうになる意識にツッコミをする。
「それじゃ、着いてくるのじゃ」
「え、はい」
夜一さんの歩みに合わせて後を追いつつ、倒された隊士をちらりと確認する。
……針?
暗器か。
そういう戦い方もあるのか。
☆☆☆☆☆
「さっき聞きそびれたから聞くんだが」
「あ?」
「一護、てめぇの師は誰だ」
夜一達が十三番隊隊舎に入った頃と同時刻。
黒崎一護は、斑目一角との戦いを終えていた。
「この俺を相手に無傷で切り抜けたその体捌き。
自分の強さを理解しての防御を貫通するほどの一撃。
筋は良いがところどころ荒い。
けど自分の足りないところを補って余りある強者との戦いへの勘の鋭さ」
「お、おぉ」
褒められ慣れていない一護は、一角の言葉に少し動揺するが、一角の真面目な様子にしっかりと表情を整える。
「誰がてめぇを育てたのか気になってな」
「育てられた……まぁ、俺は別に育てられたとは思ってないけど、それに当たる人なら」
「誰だよ」
「浦原喜助、我妻丈」
「ッ?!」
一角の表情が凍る。
一護からすれば、何をそんなに驚いているという話だが、
「その男二人に師事を受けたのか。
そりゃつえぇわけだ」
「そんな有名なんだな」
「そりゃ有名なんてもんじゃねぇ。
その名前は最近の奴らは知らねぇが、昔から死神してる奴らからすれば背筋の凍る名前だぜ」
「まぁ、滅法強かったな」
「だろうよ」
一角は乾いた笑いをして一護を見上げる。
負けたのに見る空は、とても心に大きなキズを着けたが、その分こいつのことを隊長に伝えたい、とも思った。
こいつは、隊長の乾きを少しでも紛らわせてくれるかもしれない。
そう思って……
「なぁ」
「あ?」
一護からの問いかけ。
何だと一角が一護の顔を見上げると、
「お前らでさ、我妻源氏、ってやつを知ってるか?」
「我妻丈じゃなく、源氏? 聞くに血縁関係だと思うが……知らねぇな」
「あー、じゃいいや」
「まて」
「ん?」
「そいつも、強いのか」
一角の問いに、一護は少し悩む。
そんな難しい質問だったかと困るが、一護は重苦しく口を開く。
「勝てない」
「は?」
「強いとか弱いとかの話は源氏にいたってはいらないんだよな。
アイツにとっては生きてるか、死ぬかくらいの気持ちで戦っているだろうし」
「……なんだそれは」
「うーん。
通じるかどうか知らないけど、あいつ、丈さんと三日三晩戦い続けて生きてられるんだけど、それで通じる?」
「ははは、冗談はきついって」
「まじまじ。
この目で見た」
意外と視力良いんだぜ? と話す一護。
「それじゃ、行くわ」
「あ、あぁ」
一護はそのまま去っていく。
一角は過ぎ去っていく一護の背中を見て、考える。
あの我妻丈と三日三晩戦い続ける事ができる。
あの隊長でも、一晩戦い続けて伝説になっているのに?
もしや、市丸隊長をやったのがそいつ……
一角は、一護とともに来た、まだ見ぬ旅禍に恐怖を抱く。
もしかして、もしかすると。
俺は隊長が倒れる瞬間を見るのかもしれない。
そう、予感がした。