【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「ついつい話し込んでしまったわい」
「ついついってレベル?」
夜一さんが浮竹さんと話してしばらく。
恐らく見知った顔で、しばらく会っていなかったのだろう、結構話していた。
最後は浮竹さんが誰かに呼ばれて終わってしまったが、あのまま放っておけばどこまでも話し込んでしまいそうな勢いだった。
その後、夜一さんは忍者服に着替え、俺と一緒に瀞霊廷の中を駆け回っている。
「で、最後になんか渡してたけど、あれは何だったんですか?」
「あれは朽木ルキアを救うための秘密の手段じゃ」
「秘密の手段」
「もし儂らが間に合わなくても間に合うような細工じゃよ」
「ふーん」
少し気になっている感じを俺は出しているが、実はそんなことはない。
最後の紙の内容はどうでもいい。
それよりも、
「なぜ儂らが朽木ルキアを救うのか」
「……」
「お主が気になっているのはそこじゃろう?」
俺は無言で次の言葉を促す。
ぶっちゃけ、その通り。
話を聞いていて思ったが、浮竹さんは朽木さんの隊の隊長らしい。
話しぶりとか聞いていて思っただけだけど。
そして、今十三番隊には副隊長が在籍しておらず、その人に朽木さんが結構なついていたらしい。
まぁ、そんな感じで朽木さんを救う理由は浮竹さんにはあるのだが、
「お主からすれば、儂らと朽木ルキアの間に何があるのか、気になるじゃろうな」
「そりゃ、気になります」
「……お主にそれを教えるのはもったいない」
「は?」
ここは教えてくれる流れでしょ。
夜一さんに視線を向けながら、脚は緩めない。
結構夜一さん速いのよ。
「お主には教えないで自ら真実に迫ってもらったほうが面白そうじゃ」
「えぇ……」
「まぁ、教えなければならないときが来たら教えてやるが、それ以外では特段教えん」
「いじめ?」
「別にそんなわけではない。
儂としては、お主が知らない状態で何を選ぶのか気になる、それだけじゃよ」
「えぇ……」
俺知りたいよ? 色々。
だって結構今回の突入だって半分以上私欲で来たし。
借りは返せたから、次は一護の助けになりたいんだけど……。
というか、朽木さんともろくに話してないから。
「それにしても、先程の大きな霊圧、あれは一護のものじゃの」
「あー、確かに」
浮竹さんと話している時に感じた大きな霊圧は、確かに一護のものだ。
あの霊圧の感じで行くと、修行の時に未完成だった技でも使ったのか?
正直、威力で言えばかなり強く、俺みたいなひ弱な人間が当たれば一発で死んでしまう。
だがまぁ、一護の刀は非常に遅いので別にあたってやる必要もないので、食らったことはないのだが。
練習でも死にそうになった時に使えたので、そこそこ苦戦している、ということか。
「一護拾ってきます」
「あぁ良い、お主は一護とともにいると良い」
「は?」
「儂は儂の方で動いている」
せっかくここまで連れてこられたのに?
そう思っていると、夜一さんは少し溜めを作った直後、
「それでは、頑張るんじゃよ」
「えぇ……」
消えた。
おそらくは本気の瞬歩をしたのだろう。
直線での総移動距離で言うと、あちらのほうが長いので、俺が追いつくことは難しい。
そのため、俺は消えた虚空を見つめ、
「行くか」
軽く走り出した。
☆☆☆☆☆
「一護さん!」
「おい一護!」
懺罪宮の見える広場。
そこに、三人の人影が居た。
一人はガタイの良い和服の男。
もう一人は死覇装を着た、線の細い男子。
そしてもう一人は、
「んだよ、ピンピンしてるよ」
「いやいや! 血出てますって!」
「死にゃしないから大丈夫だよ」
「そういうことじゃねぇだろ! 治療してくれるんだから治してもらえ!!」
「いや、時間惜しいって」
「そういうことじゃねぇだろ?!」
オレンジ髪の死神。
身の丈ほどの刀を背負った彼は、声を掛ける二人を邪険に扱う。
確かに、オレンジ髪の死神……一護は怪我をしている。
それこそ、刀による裂傷、打撲の跡。
「お前はこれからも戦ってもらわないと行けないんだよ! そのためには回復しろ!」
「んだよおかんかよ、このくらい唾つけとけば治るんだよ」
「それは俺みたいなキャラが言うんであって、現時点で怪我してるお前は言っちゃいけないんだよ!」
そのどれもが見ていて痛々しくはあるが、一護はこうして元気にしている。
ガタイのいい和服の男……岩鷲は、そんな一護のことを見て説得しながらも、少しの恐怖を抱いていた。
一護のあまりにもたくましいタフネスと、その強さに。
最初は副隊長、三席でも危ういと思っていた岩鷲だったが、その誰もを攻略している。
三席は無傷。
副隊長は多少の怪我で倒してみせた。
最後の攻撃に至っては、岩鷲でもわかるくらいの高威力。
あれを食らってもなお死なないところで、岩鷲は敵に感服したくらいだ。
「で、でも一護さん、これから同じ様な敵と出会ったら」
「これくらいだったらまだまだ戦える」
「今は地下水道に移動して時を過ごしましょう!」
「ん? そっからのほうが近いのか?」
「遠回りですけど、誰にも会うことがないのでいいですよ」
「なら普通に行けばいいだろ」
線の細い死神……山田花太郎は、畏怖していた。
最初は怖い人、そして強い人、そして、強いヒト。
同じ人間、死神とは思えないその佇まい、存在に山田花太郎は、恐怖と少しの期待を抱いていた。
檻の中のあの人を、解き放ってくれるだろうと思っていた。
だけど、この人なら……檻自体をぶち壊してくれると、希望を抱いた。
だから、この人の力になりたい。
そのために、この人を止めなきゃならない。
「いや、行けるって」
「何を根拠に!」
「げん……友達だよ」
「どんな友達なんだよそいつは?!」
二人が一護にツッコミをすると、一護は困った表情をして、
「この程度の傷でも全力出せるやつ?」
「いやいやいやいや、それ見間違いでは?」
花太郎は手を振る。
花太郎は護廷十三隊の四番隊……治療隊に所属している。
その中でも花太郎は斬魄刀の兼ね合いもあり、治療の腕はそこらの死神よりも長けている。
その腕と目を以てして理解できる。
一護のこの怪我で十全に実力を発揮できるわけがない。
それこそ、怪我は体の危険信号。
痛みを発するからこそ人間は無理ができないわけで、痛みを発する以上、それは体が悲鳴を上げているということ。
それを無視できる、というのは人としての仕組みが欠落しているとも取れる。
一護は平然としているが、花太郎から見ても霊圧はゆらぎ、無理をしていることがわかる。
「その人はおかしいんですよ。
治療しますんで、お願いします」
「源氏はおかしいのは確かだけど「誰がおかしいんだよ、誰が」そりゃ、源氏って……」
「「「えぇ?!?!」」」
その場にいる三人は、突如として現れた人物に驚く。
大きなマントを身にまとったその人は、現在この場にいる三人の誰にも感知されることなく、一護の背後に現れた。
音も、気配も、霊圧も、その全てが感知されることなく現れたその人物は、一護に対して親しそうな口ぶりであり、
「源氏?!」
「んだよなんだよ」
「無事だったのか!」
「まぁな」
「どっかで生きてると思ったけど、やっぱ生きてるんだなぁ」
「なんか信頼はわかったんだけどかなり不服」
「そう言うなって」
岩鷲、花太郎の両名は、ここに来てようやく事態を理解し始めた。
「お、おい一護、そいつ」
「一護さん、その人って」
「あぁ、こいつは俺らの仲間で、昨日からここに入ってた、我妻源氏だ」
「あ、我妻源氏です」
「こんなよわっちそうなのが?」
「まぁ、ハイ。
よわっちいのでやらせてもらってます」
少しおどけた様子の源氏に、岩鷲は面食らいながらも、まじまじと観察する。
一護からある程度の話は聞いていたので、岩鷲はどれほどの豪傑が来るのかと期待していたが、目の前にいるのは自分でも倒せそうな、花太郎より弱そうな男。
「えっと、源氏……? さんはどうしてここに?」
「あぁ、一応こっちから一護の霊圧して、心配がてら来た」
「えっと、誰かと遭遇とかは……」
「まぁ気配消してるし、見つからないようにはしてた」
花太郎は、源氏の気持ち悪さを感じていた。
それこそ、その気配の薄さ。
まるで風前の灯のような霊圧に、音のない足運び。
目の前にいるのにふと目を離せば消えてしまいそうなその出で立ちに、奇妙さを感じていた。
「で、なんか俺の悪口言ってたみたいだけど、どしたん?」
「いや、このままルキアのこと連れ帰ろうと思ってたんだけど、こいつらが休めって……」
「あ、あぁ。
それくらい怪我してんのに、一護の野郎、お前さんがいつもこんくらいだから大丈夫って言いやがんだよ」
「そ、そうです! ただでさえ副隊長を退けたとはいえ、それほど怪我をしていれば問題があります!
止めてください!」
岩鷲と花太郎は、目の前の一護の仲間に助けを求める。
どちらにせよ、一護の今の状態は回復に専念すべき。
「…………」
源氏はその言葉に一護の体をまじまじと見る。
「うん、休んだほうが良いかもしれねぇ」
「お前もそういうのかよ」
「確かに、一護的には俺がいつもこれ以上に怪我をしているから、って言い分はわからなくはない。
けど、怪我の仕方がまずい」
「怪我の仕方?」
一護と岩鷲が疑問符を浮かべる中、花太郎は驚嘆していた。
この人はしっかりと体のことを理解している人だ。
「正確には知らないけど、その怪我の様子だと走りと握りが鈍りそうな感じがする。
現に斬魄刀今背負ってるし。
痛いんだろ? 今」
「……」
源氏の言葉に一護は言葉を返さない。
言外にその通りである、と言っているようなものだ。
「まぁ、行くことを咎めはしない。
けど、それでお前はやりきれんのか?」
「でも今しか……」
「時間に関してはそんなに無いのか?」
「な……くはない」
「治療にかかる時間は?」
「あ、えっと、それくらいだったら4時間で完治できます!」
源氏は行こうとする姿勢を取る一護にたいして、頭を掻きながら、
「行くなら俺が力づくで止める。
つか、さっきの一護のバカ霊圧で人が死ぬほど来てる。
行くか治すか、さっさと選んでくれ」
「……分かったよ」
一護は気だるそうな源氏の言葉に了承の意を示す。
花太郎、岩鷲の両名はホッと一息つき、
「え、今そんなに人が来てるんですか?!」
「あぁ。
別に特段多いってわけじゃないけど、それこそ放っておけば結構来るな。
どこ逃げようか」
「そいつら倒してからでもいいんじゃねぇか?」
「お前はここにいる人間全員倒すつもりかよ。
さっさと逃げるぞ」
「あ、それなら自分、いい場所を」
「採用」
「聞いてないのに?!」
「顔採用」
「顔?!」
源氏の独特なノリに花太郎はツッコミをしながらも、少しの安心感を抱く。
目の前の消え入りそうな気配に気を取られていたが、ちゃんとした人ではある。
「さ、行くぞ……太郎さん?」
「花太郎です……わざとですか?」
「あ、はなたろ……覚えづらくね? 名前」
「花太郎っていうのかお前……」
「花太郎っていうのかお前……」
「わざわざ二人共同じことをずらして言わないでください!
ってかさっき話したでしょ?!」
花太郎は三人を誘導して地下水道に逃げ込む。
そして、護廷十三隊にまたも、衝撃的なニュースが響き渡る。
”六番隊副隊長が旅禍に重症を負わされた”