【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「ここか」
そうして俺は、一護から逃げた。
これだけ聞くと人聞き悪すぎるけど、これにはしっかりと理由がある。
今の俺の状況が分からなさすぎるのだ。
具体的には、俺は鬼滅寄りの人間なのか、BLEACH寄りの人間なのか。
というか俺って何問題。
実際、俺は虚を殺せた。
死神じゃないと出来ないと思っていたけど、俺は虚を殺せる存在なのだ。
それはつまり、俺自体がBLEACH寄りの人間である可能性がある。
死神かもしれない!!!!(嬉しい)
なんかBLEACHで人死ぬのとか聞いたことないから、それだけでも生き残る可能性めっちゃある。
逃げれば大丈夫まである。
なんだったらオサレ度高めれば無敗行けるかもしれない!!
オサレとかイマイチ理解してないけど!!
「合ってるよな?」
本当に目的地が合っているのか分からないので、再度確認を行う。
俺がBLEACH寄りの人間であれば良い。
それはそれで俺が力をつけて生き残れる可能性が上がる。
なんだったら呼吸持ってるから無双とか出来るかもしれない(下心)
しかし。
もうひとつの可能性がある。
これが鬼滅寄りな世界だったら、だ。
今のとこ可能性は低いが、なくはない。
BLEACH世界に鬼滅の刃混ざってる可能性も十分にある。
その時が一番怖い。
一護とかも死ぬ可能性があるんだよな……あれ……。
だから俺は知っておきたい。
この世界何?
俺って何?
死神なりたい。
「猫?」
目の前には今、ボロい商店がある。
大きな看板には『浦原商店』と書かれている。
誰か外にいる気配はなく、本当に店をやっているのかが分からない。
そんな商店の前に、猫が現れた。
やけに毛並みの整っている黒猫。
近寄って来る黒猫に、人に慣れてるのかと触ろうとすると、
ダッ!!!
「???」
俺は後ろに飛んでいた。
反射。
生きるために身につけた、生きるための本能。
クソジジイから受ける訓練でたまにある死に際を見極めるために身につけた、反射。
それが反応した。
黒猫に?
辺りの気配に変なものは無い。
いるのは黒猫だけ。
自分でも理解できない状況にたじろいでいると、黒猫は俺に興味を無くしたのか、ぷいと顔を背けて去っていった。
「あれ? ここにいるはず……って、どうしたんすか?」
「あ、えっと、ここに用事があって……」
その黒猫と入れ違いで店の中から出てきたのは、特徴的な男性。
下駄にマント、深いハットを被った痩せ型の男。
手には牛乳瓶を持っている。
猫にあげるのだろうか。
そんな男が、飛び退いている俺に声をかけてきた。
「あ、それならアタシが店主っすけど……」
「え、そうなんですか?」
思わず聞き返してしまう。
こんな変な人が店主……あっ。
「……すいません。
失礼しました」
「あ、いいえ、別にいいんっすけど……」
「俺、我妻源氏って言います。
祖父からの紹介で……」
「あぁ! 丈さんのとこの!
お待ちしておりました!」
俺は態度を改める。
いきなり態度を改めたのは、気づいたからだ。
この人か。
俺が飛び退いた理由は。
恐らくは死神的なニュアンスの人だろう。
俺のことを見張っている時に殺気が漏れた、的なやつだろう。
……分かんないけど。
「じゃあ、まずは店内でお話でもしましょう!」
「ありがとうございます」
それにしてもこの人……誰なんだろう……。
BLEACHの人なのかな……。
☆☆☆☆☆
「あやつ、儂の出す殺気に気づいておったの。
なかなか面白いやつじゃ」
猫が自身の前足で頭を撫でる。
可愛らしいその姿に見合わぬ、人の声。
辺りには誰もいない。
「それにしてもあやつの気配は……。
一度喜助に聞いてみるかの」
いるのは黒い猫。
不幸を告げる、黒い猫。
☆☆☆☆☆
「えっと、改めてアタシがここ、浦原商店の店主、浦原喜助っす」
「我妻源氏です。
我妻丈の孫です」
「お茶です」
「あ、どうも」
「コチラの方は握菱鉄裁さん。
うちの従業員っす」
「はぁ」
店の中に入れてもらい、なされるがままに茶を出され、お話が始まる。
握菱鉄裁さん、というのは筋骨隆々で不思議な髪型をしたおじさんだ。
明らかに浦原さんより歳はいっているはずだが、浦原さんが店長なのか。
「えっと、それで今回は……」
「ジジイ……祖父からは、ここに来い、とだけ連絡を貰っています。
それ以外は何も」
茶を啜りながら答える。
美味い。
「うーん……。
ってことはあたしに一任する、ってことっすかねぇ?」
「あの、祖父からはなんて……」
「出来の悪い孫が行く、頼んだ。
渡して欲しいものも渡してくれ、と」
思わず額を抑えた。
意味がわからない。
いや、あのジジイに意味の説明を求める時点で間違いなのは理解しているのだが、それでもこう言わざるを得ない。
「えっと、俺から聞きたいことは……」
「幽霊を襲う化け物」
「……はい」
「まぁ、そうっすよねぇ。
黒崎さんと一緒に襲われたっすからねぇ。
倒したのは素直に凄いですが」
「相当やられましたけど」
「ははは。
一般人がそれだけで済んでいるのが奇跡なんすよ」
一般人。
俺は一般人なのか?
化け物に襲われながら右腕ボロボロになって倒したのは一般人か?
久々に向けられた言葉に自分で困惑しながらも、
「あと自分」
「自分、っていうと?」
「祖父からは何も説明を受けず、修行させてもらったので、あんまり分からないんですよね。
強くなる理由が」
「……ほぅ」
俺の言葉に、浦原さんの目が細くなった気がした。
……ハットのせいでよく見えなかったが。
浦原さんは、そのまま少し俺を見たと思ったら、
ピタッ
俺の額に、杖の先が当たっていた。
何を言っているのか分からないだろう?
俺も何言ってんのかは分からない。
けど、事実だ。
俺と浦原さんは向かい合って座っている。
距離は少し離れていて、手が届く距離ではない。
浦原さんの手には何も握られていなかった。
だけど、一瞬にして俺の額には、J型の杖の先が当たっていた。
反応できなかったことに驚いた。
「なんで避けないっすか?」
でも、それだけ
「アタシが今敵だったら、あんたは殺されている」
「え? やる気なんですか?」
思わず聞き返してしまった。
こちとら伊達に命懸けて3年訓練してた訳じゃない。
先程の反射もそうだったが、命を取る行動は、それが当たり前でない限り自然と気配が出る。
それを自然と読み取れるようになっている(ならないと死んでる)ため、今の攻撃に一切の意思がないのは分かる。
「…………プッ
面白いっすねぇ、源氏さん」
「あ、こっちこそごめんなさ……」
瞬間、顔を傾ける。
反射だ。
瞬間で常中へ。
先程まで頬があった部分に、光が走った。
なんなのかは分からなかった。
けど、分かるのは、
「殺す気ですか!?」
「これはちゃんと躱すんすねぇ?」
「感心しないで!」
ふざけとかなしに、俺を殺しに来た。
いや死んではなかっただろうが、俺に怪我をさせる気はあった。
「いやー。
ほんとに分かるのかって……つい」
「ついで殺される身になってください?!」
「アハハ。
それは、ほら、アタシのイケメンフェイスで一つ」
「フェイスほとんど隠してる人が何言ってるんですか?!」
この人危ない。
俺の中で危険度高めの人に設定された。
浦原さんは、俺の背後に出来たであろう壁の穴を見て、直さなきゃとか言っている。
呑気すぎる。
え?これが普通の世界なの?
おかしくない?
そんな俺の思考を後目に、浦原さんは立ち上がり、俺を見下ろす。
「それじゃあ、お話しますから、付いてきてください」
「どこに」
「それじゃ、こっちっすよー」
「なんで?!」
「鉄裁さんよろしくっす〜」
「HA☆NA☆SE!!!」
もうヤダなにこれなんなの?!?!