【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「ん?」
なんか聞いたことあるような、無いような名前。
すごい喉元にくる、その名前。
マジで一切の原作知識を忘れて、一護の顔と井上さんの顔だけ覚えていた俺からすれば、何か重要な人物である気がしてならない。
「どうかしたかの?」
「いや、会ったこと無いな、ってだけで……」
「そうじゃろうな。
てかお主は隊長に会いすぎなんじゃよ」
「そうですかね?」
「そうじゃ」
夜一さんにはごまかせたと思う。
というか実際何も知らないので、ごまかすもクソもないんだけど。
顔見れば思い出すかと思うんだけど……。
「まぁ、其奴が殺され、護廷十三隊内では儂ら……旅禍がこの殺人を起こしたのかと疑われているらしい」
「まぁ、そうでしょうな」
俺も一護も殺しをしたいと思う人間ではないため、おそらくは殺してはいないと思う。
半殺し程度にはしていると思うけど、それだって命を奪わない程度に止めているだろう。
殺されかけ慣れているからこの手の手加減は身を以て知っているのだ。
だけど、
「やってないですよね? 確認ですけど」
「……それはもしや儂に言っておるのか?」
「いや、まぁ夜一さんの行動知らないですし」
この人の隠密能力的に一人位殺していても何ら疑問ではない。
というか実際やってないの?
どうなの?
そんな気がして質問するが、対して夜一さんは、
「もちろんやったという可能性はあるが、護廷十三隊の誰にも気づかれずに殺人を行うなんて、今では無理に等しい。
それも一般隊士ならともかく、隊長を殺すとなればそれ相応の反撃をもらうじゃろうて」
「確かに」
あの隊長連中なら普通に殺されるなんて意味がわからない。
「詳細を知りはしないが、隊長を殺せる人間となると必然容疑者は絞られてくる。
いずれ捕まるじゃろうて」
「まぁ、逃げ出したらその人が犯人って言っているようなもんですしね」
「それこそ、儂らに罪をなすりつけてくるじゃろうが、それを言い張る人物こそが怪しいと言ってもよかろう」
「まぁ、隊長が殺された件に関しては、夜一さんがなんとかしてくれるんでしょ?」
「任しておれ」
夜一さんの言葉を信じるとして、この件は俺の胸のうちに秘めておくとしよう。
気にはなるけど、死んだのであれば問題はない。
……でもなんで死んだはずの人の名前がこんなに気になるんだろう。
「一応確認しておきますが、その人って本当に死んだんですか?」
「まぁ浮竹のやつからの情報じゃからの。
あやつが儂らを騙すとは思えん」
「……なら、良いです」
夜一さんは俺の言葉に少し不思議そうにするが、話を続ける。
「現在隊長を一人失った護廷十三隊は、捕まえた旅禍たちへの対応を考えているようじゃ。
幸い、浮竹ともう一人のやつのおかげで処刑には至っておらぬ」
「もう1人のやつ」
恐らくは俺の知らない協力者であろう。
というかそんなに協力してくれるなら俺ら、いらないのでは?
まぁそんなことを口に出していいとは思えないので黙っておく。
「で、隊長が殺されたから、俺らは黙ってた方がいいとかそんな感じ?」
「だが、ただ潜伏しているのは割に合わん」
「なんか下準備をするとか?」
「下準備、なんてものではない」
準備以外に何かあるのか? とは思わなくはないが、聞いてみる。
「黒崎一護の強化じゃ」
「強化?」
あぁ、このタイミングで修行か……。
確かに一護の成長スピードだと、これから3日でも訓練すれば強くはなるけど、それで何か変わるような感じか?
「死神には斬魄刀、というものが存在する。
中には持たぬものもおるが、基本的に死神は全員持っていると考えてもいい」
「はぁ」
「そして、普通の死神の斬魄刀には、本当の名前が存在する。
これを斬魄刀から聞き出し、本来の形にすることが、始解と呼ばれる行為」
「あぁ、確かに」
大体みんな名前呼んでたような……。
あれ? 呼んでたっけ?
曖昧な記憶を辿りながら、夜一さんの話を聞いていく。
「これは本来、斬魄刀というものの固有の力しか引き出していない」
「まだ強化があるんですか?」
「そう。
それが…………卍解」
一瞬で卍解の漢字が思い浮かんだわ。
卍でしょ、卍。
これは流石に知ってる。
「護廷十三隊の隊長は、ほぼ全ての死神がこれを使える」
「…………ん?」
「まぁ、それこそ卍解は死神にとって最高の力。
そう易々と使うものでは無い」
「手を抜いていたって訳では……」
「いや、特定の状況下でしか使えない卍解などもある。
人による、というやつじゃ」
俺の会った隊長全員そうでありますように。
というかそうであれ。
卍解とか使わないでくれ。
「それで、それをどうするんですか?」
「それを、一護に習得してもらう」
「そんな明日までに課題やってこいみたいな感じでできるんですか?」
「そのための道具を貴様らが寝ている時に先程回収してきたところじゃ」
卍解に至るための道具、ね。
それこそ浦原さんが作ったものなんだろうな、ってのはまぁ、理解できる。
「……ちなみに習得できるまでの平均的な日数とか聞いても大丈夫ですか?」
「通常は習得ができない」
「は?」
「本来は、始解……斬魄刀の名前を聞くことだけでも10年はかかると言われている」
「え、でも一護……」
「更に、始解ができたとしても、そんなにホイホイ卍解できる人間は生まれない。
それこそ、卍解できる人間=隊長、というのが通常の認識であるからの」
「そんなのに?」
「儂の持ってきた道具を使えば、一週間で習得できる可能性がある。
事実喜助はこの方法で卍解を習得した」
「じゃあ浦原さんも……」
「儂も卍解の内容は詳しく知らぬ」
そういうことではないけど……。
浦原さんってつまりはもともとこの護廷十三隊の隊長に匹敵する人間だったってことでしょ?
かなりすごい人だな、浦原さん、とか考えながらも、
「それで、一護にはこれで朽木さんの刑の執行までに覚えてもらってどうするつもりなんですか?」
「それこそ、卍解の能力にもよる。
大立ち回りできるなら、小回りがきくなら、搦め手ならば、小狡く。
そこから作戦を考える」
「出たとこ勝負すぎやしませんかね?」
「それくらい状況は切羽詰まっている、ということじゃ」
「夜一さんが手伝ってくれればいいのに」
「儂は前に出る人間ではない」
これはどんだけ頑張ってもやってもらえないな。
それにしても、
「一護に卍解を覚えられる可能性はある感じですかね?」
「……卍解を覚えようとすることで、結果として習得できなかったとしても、その経験は力と成る。
元に卍解を習得せずとも、その習得までの方法は死神の修行にも受け継がれているものだぞ」
「へぇ」
「じゃあ夜一さん。
早速やるか」
「「?!」」
夜一さんと俺は、声のする方に驚く。
俺らの探知能力はかなりあると言っても良い。
それこそ、夜一さんの探知能力は高い。
それなのに声の主の接近に気づけなかった。
その声の主は、
「一護」
「お主、起きても大丈夫なのかの?」
「流石にいてぇけど、居ても立っても居られるかっての」
「バカ、いてぇなら寝てろ、バカ」
「バカで挟むな、全部バカみたいに成る」
「全部バカだからバカって言ってんだよ」
「なんでだよ?!」
「いやいや、その傷」
一護のことは先程夜一さんから聞いた程度なので、状態は知らなかったが、今のこの状況を見て言える。
流石にヤベェ。
だって全身包帯ぐるぐる巻で、今でさえ一護の霊圧は小さい。
それこそ、死にかけって感じが一番しっくり来る感じだ。
今だって力の流れがおかしな感じになっていて、寝ていろってのは本気で思ったくらいだ。
「とりあえずここに座れ、一護」
「お、おぉ。
夜一さんもそんなに言わなくたって自分がやばい状況なのは理解できてるよ」
「それがわかっているのに変なことをするではない」
ありがと。
そう言いながら一護は俺らのそばに座り込む。
座った瞬間に痛そうにしてんなお前。
しかも少し包帯から血が滲んでるぞ。
それ袈裟斬りにスパっといかれたな。
しかも結構深め。
「呼吸は大丈夫か?」
「あぁ」
「筋肉は? 力入れると痛いのは?」
「基本的に全身痛い。
筋肉痛的な」
「裂傷の痛みじゃない?」
「まぁそっちもぼちぼち痛いけど、そんなではない」
俺の質問に、一護は淡々と答えていく。
「あ、多分だけど、こいつのおかげだと思うんだ」
「あ?」
そう言って一護が懐から取り出したのは、仮面。
それもなんか気色悪い仮面で、
「なんか虚みたいだな」
「そうなんだよ」
「そういえばこれ、死神になったときとかにもしてたよな?」
「あー、してたっけ?」
「あぁ、変な仮面、って思った」
確かに、変な仮面だな。
一護が懐の仮面をそう評したところで、夜一さんが口を開く。
「一護」
「ん?」
「それをよこせ」
「え、なん「よこせと言っておる!」……はい」
夜一さんは強い口調で一護から仮面をもらう。
何かあの仮面にあるのか?
俺からしてみても虚っぽい仮面だったけど……。
あれ、もしかして呪いのアイテム的な?
……そんなゲームみたいなものではないか。
「で、夜一さん。
その卍解ってやつだけど、現実的に考えて何時からやるのがいいんだ?」
「ふむ……。
処刑までは後8日ある。
ちなみに、この道具の仕様の限界は一週間だ。
それ以上は習得できるできない関係なくやめてもらう」
「わかった。
ってことは、明日からか?」
「いや、動けるなら温泉に入って回復してもらい、数時間後にやってもらう。
一護の卍解の能力で今回の動きを決めるのでな」
「そっか、わかった。
……温泉?」
一護は周囲を見渡し、温泉を探す。
ここからだとちょうど見えない位置なので、
「あそこの岩の裏にあるんだ。
傷に効くなんてものじゃねぇよ。
ゾンビになれる」
「それ死んでるじゃねぇか。
へぇ、そんな温泉が」
「気づいておるかは知らぬが、ここは浦原が商店の地下に作った『勉強部屋』の元になった部屋なんじゃよ」
「……あぁ!」
「気づかなかったんかい」
こんな殺風景で作った人のセンスを疑う場所、そうそう忘れられないと思うよ。
「……そう思ったら悪寒がしてきた。
来ないよね? 丈さん」
「来ない来ない」
「…………」
「なんで夜一さん無言なの?!」
一護のツッコミに、俺は少し恐れる。
え? 来る可能性が少しでもあるの?
「来ないとは思うが、あの人のことじゃから行動を先読みすることなんてできないんじゃよ……」
「そこは源氏が……」
「俺は来れないもんだと思ってた。
こんなところ来たくてしょうがないだろうから」
結構強い人いるし。
俺の危険センサーのおそらく一番強い人だと言っている、最後の一人とか勝負できそうだし。
ちょいちょい思ってた。
なんでジジイは来ないのか。
「ジジイってここ来れないとかじゃないの?」
「別に来れないわけではない……と思うのじゃよ?」
「なんだその曖昧で嫌な感じの返事!」
やっべ途端に怖くなってきた。
味方になってくれるならすごく心強いのは確かなんだけど、万が一にでも立ちはだかられたと考えたら……。
「やめやめ、考えるだけ心に良くない。
今は目の前にあることだけを考えよう」
「そ、そうじゃの」
「た、たしかにな!」
この場の三人の意見が一致したところで、俺は一番思っていたことを質問する。
「で、夜一さん。
俺って何すればいいの?」
「……うむ」
少し考え込む夜一さん。
何を考えているのかは知らないが、まぁ夜一さんはしっかりと考えてくれるだろう。
そんなことを思って回答を待っていると、
「待機じゃ」
「へ?」
「待機。
黙って待ってろ、ということじゃ」
「???????????????」
どういうこと?????????????????