【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
四番隊総合救護詰所。
地下救護牢〇七五番。
あるのは白い壁と、寝場所。
そこで、一人のオトコは目を覚ます。
「ここは……」
白い和服に身を包んだ細身の男…石田雨竜は起き上がる。
妙に重い体に、鮮明ではない記憶。
徐々に思い出される、激戦。
十二番隊隊長と戦い、勝利を目前にして逃走された。
そして自分は力を……。
「おい、大丈夫か?」
「うわぁ?!」
雨竜が周囲を見渡した瞬間に、包帯男が目の前に現れる。
顔を包帯まみれにしているため、誰かは分からないが、上から現れたことと言い、雨竜の理解を超えている存在になっていた。
「何だよテメェ!」
「強盗か?! 何をするって言うんだい」
「こんな牢屋で強盗なんてするかよ!」
「じゃあ……」
「俺だよ俺!」
そこで包帯ミイラは自身の包帯を取り、顔を見せる。
そこにあったのは、
「が、岩鷲君!
君、生きていたのか!
強くないからてっきり死んでしまったのかと……」
「その言葉、そっくりそのままテメェに返すよ……」
ガンジュは青筋を立てながらも、雨竜の言葉を飲み込む。
「いや、待ってくれ……。
なんで僕らは捕まって、生きているんだ?
本来なら、僕らは尸魂界にとっての敵のはずだ。
殺されていてもおかしくないはず……」
「状況が変わったんだ」
「ッ?! 茶渡くん?!」
雨竜のいう疑問はもっとも。
現在、雨竜達旅禍は尸魂界における敵。
それこそ、源氏の行いも含めると現在の旅禍への対応は重度のものになっている。
本来であれば、即刻処刑が妥当ではあるが、
「看守たちの会話を聞いていたんだが、どうやら尸魂界内で隊長が殺されてしまったらしい。
犯人は不明。
俺らはその、重要参考人、というわけらしい」
「取り調べのために生かされた、ということか」
「そういうこった」
茶渡の言葉に、雨竜は自身の現状を理解する。
再度の説明を聞いた岩鷲は、自身の両腕につけられている手錠を見て、
「この殺気石からできている手錠なんてなきゃ、俺の石破で一発なのによぉ」
「そうか、これで霊圧を封じて……」
雨竜は自身の両腕につけられてた手錠を見る。
これのせいで……そう思おうとした瞬間、雨竜の頭に思い浮かぶのは、最後の戦闘。
あの時、雨竜は己の全てを賭けて戦った。
そして、逃げられた。
何も残すことなく、生きた石田雨竜だけが、そこに残った。
戦えもしない、石田雨竜が。
「とにかく、だ。
俺らが生かされてるってことは、他の連中は捕まってないってこった」
「そうだ。
ここにいない、ということは治療中、もしくは捕まっていない」
「だからこそ、俺らは助けを待つ!
みんなは生きている!」
「戦闘に向かない井上さんは捕まっている可能性は高い。
あと残っているのは、源氏、一護、夜一さん」
「夜一さんは捕まるとは思えないな」
雨竜は、夜一のことを評価している。
具体的には、自分には理解できないからこそ、評価している。
おそらくあの猫は何かを隠している。
いいや、猫ではない可能性もある。
おそらく強いことは理解できるが、分からない。
あくまで雨竜の考えだが、遠からずだろう、と読んでいる。
「一護はまだ捕まってないし、生きてる」
チャドは、一護を信じている。
それこそ、ここにいるメンツは一護がどんなやつかということを知っている。
「あいつなら、絶対に助けに来てくれる」
だからこそ、信じれる。
「源氏は……生きてるかどうか」
「ん? 最後に見たのかい? 我妻くんを」
そこで話の主導は岩鷲に向く。
岩鷲は不安そうな表情をしている。
その表情に、この場にいるみんなの気も引き締まる。
「あいつは、俺と一緒に居た花太郎……協力してくれたやつを一緒に助け出してくれた。
それこそ、身を挺して……」
「身を挺して……。
あいつがそんなことを」
「相手は隊長だった。
多分、殺され……」
「それは、ない」
岩鷲は見ていた。
護廷十三隊隊長を目の前にして、自分たちを助けるために正々堂々と立ち向かったことを。
背後で膨れ上がる霊圧を。
そして感じることのなくなった、霊圧を。
だが、その話に待ったを掛けるのは、チャドだった。
「あいつは、それこそ真面目に見えないし、普通なやつだ。
だからこそ、生きている」
「……普通?」
「あぁ。
あいつは俺らの中でどこまでも普通だ。
だからこそ、『逃げる』が選択肢に入る」
「……逃げれる、か」
雨竜の頭の中には、戦ったあの相手の姿が思い浮かぶ。
それこそ、雨竜は全てを投げうって、何も得られなかった。
それこそ、あの場では逃げることを優先させればよかったのだろうか。
だが、それでは滅却師としての誇りが……
「それに、あいつは『生きる天才』なんだろ?」
「僕はわからないけど……」
「あぁ……」
岩鷲もチャドの言葉にうなずくが、頭の中にあるのは、あの隊長との戦闘。
あいつは強かった。
それこそ、源氏が食い止めなければあそこで全員が死んでしまったというくらいに。
生きる天才なんて言われてるけど……
「だからこそ、来てくれ……」
ドゴォン!
チャドの言葉とともに、轟音。
その音が示すのは、破壊の音。
音のする方向は、扉。
まるで話を聞いていたのではないのかと言うくらいにちょうどいい轟音。
淡い期待が空間が支配するなか、現れたのは、
そこに居たのは、
「居たな」
「ヒィィィィィィ!!」
反応は三者三様。
岩鷲は驚き、
雨竜は呆然、
チャドは臨戦、
それこそそうだろう。
扉の先に居たのは、大柄な男。
白い羽織を羽織ったその人物は、三人を見下ろし、
「おい、お前らが一護の仲間か」
「更木剣八ィィィィィィ?!」
「お前らに用があって」
「なんでここにィィィィィ?!」
「うるせぇな」
「ハイっ!」
驚愕する岩鷲に剣八は一睨みする。
その視線に姿勢を正す岩鷲。
一方、雨竜も臨戦態勢となり、迎え撃つための準備をする。
「そんなにビクビクしないでいいよ!
剣ちゃんは別にみんなと戦う訳じゃないし!」
「あぁそうだ。
別に俺は敵対する訳じゃねぇ。
ただ、一護ともう一度戦いてぇって話だ」
「黒崎と?」
剣八の言葉に、雨竜は疑問符を浮かべる。
知っている知識に当てはめれば、目の前にいるのは護廷十三隊の隊長に当たる人物。
それこそ、自分の戦った隊長があぁだったために、警戒心は高まる。
それと同時に、本当に敵意を感じないところからも、違和感を感じる。
それに目の前の隊長……更木剣八の口から一護の名前が出ることにも、違和感を感じた。
「お前の目的は、なんだ」
「あぁ? そりゃ一護のやつと再戦することだよ」
「それなら、俺らは必要ないはずだ」
「んもう、それは……」
「私が、お願いしたの」
「「井上(さん)」」
チャドの問いかけに面倒くさそうにする剣八とやちる。
そんな空気に現れるのは、織姫。
しかも、剣八の背中から顔を出した。
奇想天外な状況にこの場の誰もが受け入れられていないが、
「実は、私、捕まっちゃって……」
「それはあいつに……っ?!」
「ううん、捕まったのは別の人で、それで気づいたらこの人の前に連れてこられて……」
雨竜は自身のせいで織姫が捕まったのだと一瞬考えてしまうが、そうではなかった。
織姫も、話しながらも戸惑っている様子ではあり、それに気づいたチャドは、拳を下ろした。
「俺は一護のやつともう一度殺し合いがしてぇ。
そのためには、一護のやつにまた現れてもらわなきゃならねぇ。
それでお前らを使えば一護のやつは現れるって踏んだわけだ」
「そ、そんなむちゃくちゃな」
「別に俺に決まりなんざ関係ねぇ、
切り合いができればそれでいい」
意味がわからない。
それがこの場にいる剣八とやちる以外が思った感想であった。
ただ、それでも感じたのは、本気。
剣八が本当に一護との斬り合いを望んでいるという、本気さ。
冗談で話しているとは到底思えない、本気さ。
「それで、だ。
お前らは一護の場所を知ってるんだろ? 教えろ」
「え?」
「ん?」
「は?」
訪れる静寂。
数秒経過し、剣八は何やら自分の望んでいる展開ではないことに気づく。
「お前ら、知らないのか?」
「……知ってたとしても教」
「僕らも知らないんだ! だから提案がある!」
岩鷲はさらりと剣八の言葉に悪態をつこうとしたが、この状況下でそんな挑発じみたことをされては困る、ということで雨竜が名乗り出た。
剣八は何も気にしていないよと言うような様子で、雨竜の方を見る。
「僕らは黒崎と合流したい。
目的は朽木さんの救出だ。
そして正直、そのあとにあなたと斬り合いになっても構わないと思っている」
「ほう」
「だから、ここは一緒に黒崎を探す、ということでいいだろうか」
雨竜の言葉に岩鷲は驚く。
それこそ、一護がこの化け物と戦って生きている、というのは察したが、もう一回やっても勝てるとは限らない。
それともう一度戦うのは構わない?
何をいっているんだ、そう抗議しようとした途端、
(待て)
チャドが岩鷲のことを引き留める。
(んだよ!)
(あれは考えがあってのことだ)
(考えって……)
「どうだろうか、僕らは必ずあなたの目の前に黒崎をつれてくる。
それは信じてほしい。
だから、まずはこの手錠をはずしてくれないか?」
ここで岩鷲も雨竜の真意に気づく。
とりあえずここは穏便に進め、自由を手にいれる。
(約束はあとでどうにでもなる)
(え、それって……)
(それはあとで話す)
岩鷲はチャドの言葉の真意は図り損ねているが、とりあえず黙ることにした。
雨竜は、両腕に施されている殺気石の手錠を差し出す。
ここで解除してくれるなんて都合のいいことなんて、ないとは思うけれど、
そう思った瞬間、
バキン!
「へ?」
雨竜は呆然とする。
目に写るのは、破壊された手錠と、自由になった両腕。
「これでいいか?」
そして、平然としている剣八の姿だった。
「どうせお前らがかかってこようが俺には勝てねぇ。
そんくらい、どうってことねぇよ」
豪胆。
まさにそんな男である。