【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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後悔先に立ちがち

「いいなぁ、それ」

「これすごいよなぁ」

 

 突撃を決め込んでからしばらく経ち、俺らは処刑場が見え、なおかつ遠い場所に位置取っていた。

 少し高めの建物の屋根に上って、夜一さんは観察をしている

 望遠鏡ないと見えないくらいの距離である。

 

 ちなみに俺は一護が夜一さんから貸してもらった道具をつけるかどうかを見守っている。

 

 でね、それがかっこいいのよ。

 

 なんか原理的には俺のマントよりいいものらしくて、腕になんか巻き付いてるの。

 ドラゴン的な、竜的なやつが。

 デザインがいい。

 もう中二心をくすぐるのよ、デザインがね。

 

 でこのドラゴン腕巻き、何がすごいって、

 

「うん、安定して出せるようになった」

「いいなぁ」

「さすがになくされると困るから貸さねぇよ?」

「救出終わったら使わせてほしい」

「それは夜一さんに聞いてくれ」

 

 翼生えるのよ。

 飛べるのよ。

 

 言わばタケコプター(違う)。

 

 それのかっこいい版よ?

 

「いいなぁ」

「お主ら、いい加減にせんか」

「いで」

「いた」

 

 そこで夜一さんからの拳骨がやってきた。

 頭を押さえながら、俺は夜一さんに、

 

「俺もあれほしい」

「お主にはいらぬじゃろうて」

「飛びたいです」

「いや、お主が飛んだところで。

 足のよさを殺すことになるのじゃぞ?」

「そういうもんだいではないです」

「急に童(わっぱ)っぽい話し方をするでない……」

 

 いや、飛びたいやん、普通。

 人類の夢を目の前にして俺は諦めろと?

 

「それならば、お主がここで頑張ったなら、貸してやろう」

「マジですか」

「マジもマジ、おおマジじゃ」

「俄然やる気出てきたぁ」

 

 腕を回す。

 正直貸してもらえないとさえ思っていたので、貸してもらえるかもしれないってので嬉しい。

 …………ん?

 

「それって俺使える?」

「使えると思うぞぉ」

「え、待って俺の目を見て言ってほしいな。

 マジでこっち見ないじゃん。

 え、待ってなんで。

 どうしてよ、使えるでしょ?」

 

 俺のことを一切見ないで望遠鏡を覗く夜一さんに話しかけるが、無視される。

 

「使えるって大丈夫だよ」

「お前それで俺鬼道使えなかったんだぞばか野郎???」

「そんな希望持たせただけでディスられるのかよ……」

「いらねぇ希望はいらねぇんだよ!!!」

「情緒……」

 

 こんな素晴らしいおもちゃ目の前にしてどうして冷静でいろと?

 

「っ! 動きがあったぞ」

「「ッ?!」」

 

 そんなふざけ合いをしていると、夜一さんから真面目な声がかかる。

 二人で処刑場の方を見ていると、霊圧の高まりを感じた。

 これは……人に向けていいものではないだろ?

 

 一目で分かる。

 

 俺にはどうにもできない。

 一種の無力さを感じる。

 でも、

 

「一護!」

「応!」

 

 できないことは、できるやつに任せる。

 

 一護はドラゴン腕巻きを使用する。

 次の瞬間、腕の龍は動き、翼を生やす。

 

 それが羽ばたいたと思ったら、

 

「行って来い!」

「あぁ!」

 

 一護の姿はなくなっていた。

 遠ざかる影。

 

「それでは、儂らも行くか」

「最初はどれをやったほうが良いとかあります?」

「……できるなら、あそこにいる爺さんを止めてほしいのぉ。

 おそらく後から来る連中が押さえてくれるとは思うが、それはそれとしても押さえておけるなら、という感じじゃ……」

「了解です」

 

 夜一さんが言うなら、大丈夫だろう。

 累(かさね)一発当てれば、なんとかなるだろう。

 

 シィィィィィ

 

 雷の呼吸

 

 壱の型

 

「が、あやつは強いから気をつけ……」

 

 霹靂一閃 累(かさね)

 

 視界が一瞬にして吹き飛ぶ。

 累は、その速さと威力から、俺の目で捉えることができない。

 だから、技の途中でキャンセルとかマジでできない。

 それも霹靂一閃だとなおさら、最高速の最高速で、

 

「h…………………」

「あ」

 

 俺の脚は止まらなかった。

 

 だが、日頃の鍛錬は意思とは関係なく技を遂行し終わるわけで、

 

 ギン!!!

 

 金音がした。

 それは、高速で刀と刀がぶつかった時に出る音。

 

 それは、わかった。

 音よりも早く、音より早くを心情としている霹靂一閃において、音が後から認知できるのは理解できる。

 

 しかしそれを納得できるかは別問題だ。

 

 今回の襲撃で俺が一番気にしているのは、殺さないこと。

 正直、殺すことに躊躇がないのだとしたら、何人もの死神を殺すことができただろう。

 しかし、そうしなかったのは俺らが犯罪をするということではないこと。

 

 そして、俺がしたくなかったからだ。

 

 結果として、今の今までそれを続けてきている。

 今だって峰でしっかりと技を決めた。

 

 はずだった。

 

 この技から音が発生するのは、打撃音。

 

 ただ、鋭い衝撃音が聞こえるはず。

 

 なのに、金音がするということは、

 

「ほぅ……久しぶりの客人じゃのぉ

 まさか、ここで再会するとは……」

 

 後ろを振り向く。

 そこに居たのは、火の鳥に照らされた、白い髭をこさえた老人。

 それは威厳に溢れ、それこそ静かだが、うちには荒々しい霊圧を秘めている。

 

 瀞霊廷内で、会いたくない人のうち、最後の一人。

 

「……だれじゃ、お主は」

「……はじめまして」

 

 いやこわい。

 普通に怖い。

 圧力がすごい。

 

 なんだろう、あの化け物さんはプレス機みたいな感じなんだけど、この人は万力的な。

 ジリジリ来る霊圧。

 しかもこれで全力ではない。

 それがひしひしと伝わって来る。

 

 だからこそ、

 

「お手合わせ、お願いできますか?」

 

 挑発してみる。

 まぁ、挑発と言うには少し稚拙だが、死神の人って結構武人なイメージだから乗ってくれそうな気がする。

 

 今ほしいのは、ひたすらに時間。

 隊長殺しのことで今この場には隊長、副隊長の人数が少ないのは事前に確認済みである。

 だからこそ、今が最良のタイミング。

 

 朽木さんをつれて逃げ出す、絶好のチャンス。

 

 俺の横で写っているのは、あのクソデカ火の鳥を受け止めている一護の姿。

 あいつが朽木さんに関してはやってくれる。

 

 あいつが、俺にできないことをやってくれる。

 

 だから、

 

「ほう、お主、儂が誰だかわかっているのか?」

「知りません」

「ふむ。

 お主が更木をやってくれた張本人かの?」

「あ、それはあいつです」

 

 会話でもなんでもいいから、時間を稼げ。

 集中を乱さない。

 目の前の化け物に気を張らせ。

 

 しなければ死ぬのは自分。

 

 背後で巻き起こる熱風に乾燥していく眼球。

 瞬きさえ惜しい今。

 

 気づく。

 

 浮竹さんの霊圧。

 あと二人のお着きの人の霊圧も。

 

「何をするつもりじゃ……」

「よっ」

 

 爺さんが動きを見せようとする。

 その瞬間を狙い、動く。

 

 それこそ、この一撃は殺すための一撃なんかではない。

 呼吸さえ使わない、ただの斬りつけ。

 力なんて籠ってない、命に触れることさえできない一撃。

 

 恐らく直撃したところで、相手の霊圧に押し負けて傷一つつけることはできない。

 

 だけど、

 

 キィン

 

 防いだ。

 

「小僧、お主に構っている暇はない」

「ん? そうですか?」

 

 本来なら俺の攻撃なんて防がなくても大丈夫。

 

 なのに、俺の攻撃を防いだ。

 なんでか。

 

「我妻」

 

 爺さんの霊圧の雰囲気が変わった。

 それは、吹き荒れる嵐のような激烈な霊圧で、気を抜いていれば吹き飛ばされる。

 だけど、ビンゴだ。

 

「お主、丈のなんじゃ?」

「弟子」

 

 非常に甚だ不愉快だけど、一応俺はそれに当たる。

 血縁とか、そういうのの前に、弟子。

 ジジイは俺の師匠。

 

 そしてすでに理解している。

 ここにいる連中は、明らかにジジイのことを知っている。

 それもほとんどの人が知っているという状況。

 

 しかもあの眼帯化け物も知っていて、勝てなかったと言っていたらしい。

 ということは、

 

「そうか、お主が…………」

「お手合わせ、お願いできますか?」

 

 怖いでしょ。

 俺の挙動が。

 

 それこそ、一番始めに現れた時、この人は俺を誰かと間違っていた。

 最初、それは気のせいかと思っていたけど、今の一言で確信した。

 

 この人は、ジジイのことを知っていて、俺をその人と勘違いした。

 それこそ、夜一さんもそれは俺に指摘していた。

 気にしてはいないけど、利用できるなら利用する。

 

「ふむ、ならば、叩き潰してくれる」

 

 あ、ちょっと今後悔してきた。

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