【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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走りながら新聞紙を腹にひっつけない??

 現場は混乱を極めていた。

 双亟。

 死神における極刑。

 

 滅多に行われることのないそれは、多くの死神がはじめて姿を目撃することになる。

 火の鳥。

 

 もはや芸術の域にまで思えるその鳥は、見るものを魅了する。

 それこそ、これからその鳥に包まれる朽木ルキアでさえ、そう思った。

 

 目を瞑り、一瞬。

 それで、己の生は終演を迎える。

 すべてに別れを告げ、ルキアのなかに後悔はないはずだった。

 

 そう、思っていた。

 

 朽木ルキアは、疑問を抱く。

 自分の意識が途切れない。

 連綿と続く思考に疑問を抱き、目を開ける。

 

 本来なら死んだはずの自分が目を開けるなんてできないとは思うが、開けてみる。

 

 そしてそこにあったのは、光。

 

 眩しいほどの光が、最初にルキアの目を焼いた。

 真っ白になる視界に眉を潜める。

 

 次第に光に目が慣れていく。

 色を取り戻した視界は、黒を教えてくれる。

 

 影?

 

 そう思った。

 

 しかしそれは、一人の死神で、

 

「よう」

 

 オレンジ頭のよく知った顔だった。

 大きなマントに身を包み、黒い死覇装に身を包んだ男。

 身の丈ほどの大刀を持ち、背には双極を控える。

 

「あ……」

 

 思考に訪れる空白。

 それは当然だ。

 よもやこんな未来が訪れようなど誰が思うのだろうか。

 

 それを自分の中で飲み込んで、最初に出た一言は、

 

「莫迦者!! なぜここに来たのだ!」

「あぁ?!」

「貴様ももうわかっているだろう!

 貴様では兄様には勝てぬ!

 今度こそ殺されるぞ!」

 

 罵倒。

 同時に、心配。

 それこそ、処刑の寸前に願い出た旅禍の安全の確保。

 

 それだけが、処刑を目の前にしたルキアの心残りであった。

 

「私はもう覚悟を決めたのだ!

 助けなど要らぬ!

 帰れ!!」

 

 その叫びはどこか、軽い言葉であった。

 

 いや、重い言葉であると同時に、

 

 何か別の感情も含まれているようであった。

 

 表情を変えない一護に、環境は変化する。

 

 双極が、一護から距離を取った。

 

「うおっ?!」

 

 与えられていた圧力がなくなり、体制を崩す一護。

 振り返り、

 

「二撃目のために距離を取ったってことか」

「よせ一護! もうやめろ!

 二度も双極を止めることなどできぬ!

 次は貴様の体まで粉々になるぞ!」

 

 一護は構える。

 身の丈を有に超える双極に対して、一人の力でどうにかなるものには思えない。

 それこそ、無茶無謀。

 

 そんな衝突を目の前にして、戦況は大きく動く。

 

 まず最初に、数人が処刑場に現れる。

 

 腰まで伸ばした白髪をこさえた、隊長羽織の男。

 そしてそれに付き従う様な二人の姿。

 

 白髪の男は、自身を隠せるほどの盾の様なものを持っている。

 木製のそれは何かを守るようには見えず、盾とは言えない。

 

「くそっ! 間に合わなかった!」

「隊長!」

 

 次に、もう一人が出現する。

 それは羽織の下を包帯に巻いた砕蜂の姿。

 いかにも満身創痍なその姿に、副隊長である大前田は驚愕する。

 

 先の戦闘で旅禍にダメージを負わされた砕蜂は、目覚めはしたが今回の処刑には来ない予定に成っていた。

 

 そのため、大前田が来ていたわけなのだが、その本人も隊長の来訪は聞いていない。

 

「あやつら! 双極を破壊する気だ!」

「えっ?!」

「止めろ!」

「俺っすか?!」

 

 砕蜂のいきなりの登場と、そのセリフに大前田は理解が追いついていない。

 

 それこそ、この場にいる人間のうち、浮竹の持っている物品の正体に気づいたのは砕蜂のみ。

 四楓院家の家紋が記されたそれは、用途を考えれば双極の破壊一択。

 

 止めねばならぬ。

 止めなければならないが、人数が足りない。

 

 浮竹、副隊長二人を目の前にして砕蜂が止めるには数秒かかる。

 そしてその秒数があれば、浮竹は双極を破壊してみせるだろう。

 

 止めれる可能性があるとすれば総隊長だが、その総隊長は、見覚えのある旅禍が相手をしている。

 

 このタイミングでは、止められない。

 

 そう砕蜂は確信した。

 

「よっ、遅いじゃない色男」

「済まん、開放に手間取った」

 

 そして、京楽が動く。

 

 まるで、この現状がわかっていた様な口ぶりに、連携。

 

 浮竹が盾のようなものから何かを飛ばす。

 それは黒い縄で繋がれた何かで、距離を取った双極に絡みついた。

 

「いくぞ!」

 

 浮竹の言葉で、二人の隊長は己の斬魄刀を盾に突き刺す。

 それに連動するように、黒い縄は光りだし、徐々に全てが光っていき、

 

 バンっ!

 

 火の鳥は、その姿を消滅させた。

 大きな矛となった双極は、力を失い地面に墜落する。

 

 

 まだ、変化は終わらない。

 

 

 一護は双極の破壊を確認次第、後ろに飛び退いた。

 そこはルキアの処刑台。

 

 この磔架は双極の対。

 斬魄刀100万本の破壊能力に値する矛に耐えうる処刑台。

 

 これを使わねば、先程の矛が処刑人もろとも全てを破壊してしまうために作られた処刑台。

 

「な、何をする気だ一護!」

「決まってんだろ、壊すんだよこの、処刑台を」

「な……

 よせ! それは無茶だ!」

 

 ルキアは止める。

 

 しかし、一護は止まらない。

 斬月を高く、上段に構える。

 

 それは、信ずる一撃。

 

「良いか! 聞くのだ一護! この双極の磔架は……」

「いいから」

 

 高まる霊圧。

 強く握る刀。

 

「黙ってみてろ」

 

 斬月は、天より振り下ろされる。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「え?」

 

 源氏は思わず目を疑った。

 唐突な戦況の移り変わりに対して、理解が追いついていなかったのだ。

 

 浮竹の出現と、京楽の裏切り。

 破壊される双極。

 一護の磔架の破壊。

 

 一部聞いていたところはあれど、ここまで意味不明な現状になるとは予想できていなかった。

 それを同意するかのように、元柳斎も動きを止めていた。

 

 確かに朽木ルキアの処刑に関して、元柳斎の胸中に不信感が有ったかもしれない。

 しかしそれは、総隊長としての責務を果たすことの遮りにはならない。

 

 この瞬間、元柳斎が何を思ったのかは本人でさえ知ることはできていなかったが、

 

「……どうやら、早急に事を済まさねばならぬようじゃの」

 

 己が責務が元柳斎を動かす。

 まずは目の前にいる小僧から。

 

 霊圧の質は丈に似ているが、特筆するのはそれだけ。

 

 元柳斎は副隊長、雀部に目配せをし、一護の相手に向かわせる。

 

 と、同時に行動を開始した。

 

 体重の移動を一切しない移動。

 見るものが見れば瞬間移動にも見えるその移動は、源氏が感知できるはずのないもの。

 

 そして移動をした瞬間、元柳斎は気づく。

 

 自身の行動が読まれていることに。

 それこそ、移動する前。

 行動するという意思を固めた瞬間に、丈の弟子は回避を開始していた。

 

 顔面を持って地面に叩きつけようとしていたが、その場には源氏の姿はない。

 

 すぐさま元柳斎は次の行動へ。

 接近、後の白打。

 

 今度は先程より早く。

 

 躱される。

 

 白打。

 

 先程より速く。

 

 躱される。

 

 白打。

 

 先程より速く、早く。

 

 当たる。

 

 速く重い攻撃は、それだけで十分な威力になる。

 白打が直撃した源氏は、勢いよく吹き飛ばされる。

 

 本来、並の死神であればその一撃で戦闘不能になるはずの白打。

 勝負はついたように見えたが、

 

(……)

 

 元柳斎は己の拳を見る。

 そこには何も変わらない拳がそこにあった。

 

 そして次の瞬間、

 

 ギィィィィン

 

 甲高い音が響き渡る。

 それは、刀の衝突音。

 周囲には誰もいなかった。

 

 それなのにこんな音が聞こえるのは、

 

「クッソ反応できるのか」

 

 目の前にいる、倒したはずの男のせいである。

 

 元柳斎が拳を見たのは、あまりにも衝撃が軽かったから。

 まるで雲を殴ったかのようなその感触と、目の前に映る白打の衝撃の光景の違和感が、元柳斎に違和感を抱かせた。

 

 元柳斎からすればこの程度の速さは脅威にすらならない。

 

 だが、時間がかかる。

 

 そのため、

 

「少し、撫でてやるかの」

 

 始解を開放することにした。

 

 ソレは源氏にも理解できた。

 あたりに広まる死の気配。

 

 何によるものなのかは明確ではないが、何かが迫りくるのは明白。

 いち早く退散することを心がけ、後ろに体重を掛ける。

 

 そこを元柳斎は見逃さない。

 間を詰める。

 すると、源氏は逃げることができない。

 

 元柳斎を中心とする死に迫られている。

 

 元柳斎の気まぐれで迫る絶望の気配。

 

 死が源氏の頬を撫でた瞬間、

 

「ほうら!」

「加勢する!」

 

 元柳斎の背後から、誰かが襲いかかる。

 

 元柳斎は背後への警戒を強いられる。

 

 逃れる死の気配。

 同時に避けられない人の波。

 

 襲撃者……浮竹と京楽は元柳斎を押し込もうと押し出す。

 それに応じるように元柳斎は押される。

 

 それにどうしようもなくなって押し込まれる源氏。

 

(アバババババババ)

 

 その速度に源氏は高速道路で車に張り付いた新聞紙みたいになっていた。

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