【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

72 / 84
靴舐めてでも嫌なことは人生で結構ある

「ブッ! ベッ! ボッ!」

 

 は行後半を響き渡らせながら、俺は地面と友情を誓いあう。

 なんか死にそうになってから展開いきなり過ぎてよくわからないんだけどどういうこと?

 

 というか地面さん久しぶり、元気してた?

 俺はお前と二度と接触事故なんて起こしたくないんだけど。

 意外と地面って寝心地良さそうに思えて悪いのよ。

 そう、悪いの。

 

 ……え? なんで現実逃避してるかって?

 

 そりゃもう、俺の近くで霊圧がぶつかり合っているからだよ?

 

「ほっほっほ、ここまで飛ばせるとは、やるようになったよのぉ」

「山じいだって不意打ちしたのにここまで誘導されるみたいに移動してきた癖に……」

「ははは、そう言ってやるな京楽。

 気遣いなんだ」

「それにしてもお主ら、こんなところに来ても良いのか?」

「ん?」

「どういうことです?」

 

 ほら、俺死ぬほど気配を消してるからさ、こんな人たちの視界に入ってないわけよ。

 

 というか死んでるとか思われているのでは?

 

 正直地面さんとはすごく仲いいから怪我は一つもないんだけど。

 

「先程の愚行。

 本来なら処罰は避けれぬが、罪は副隊長に責を負わせれば良い」

「……生憎、自分のやったことの始末は自分でつけようと思うんだけど」

「そんなことをするような人に見えましたかね?」

 

 ほら、臨戦態勢やん。

 地面に伏せていても分かるよ。

 霊圧が高まってきてるやん。

 

 もう俺は出番ないよね。

 

 下がろうかな……。

 

「まぁ良い。

 その件に関しては全てが終わった後に処理すれば良い」

「「?」」

「今は」

 

 ?!?!?!?!

 

 頭、死ぬ

 

 顔を上げる。

 

 背筋を最大限活用して鯱のモノマネを披露すると、目の前にあったのは拳。

 

「ほう、狸寝入りの罰は拳骨、とおもったのじゃが」

「狸寝入りなんてそんな……。

 お邪魔になるかと思って……」

「ふむ」

 

 あのさ、さっきからそうなんだけど、この人の行動理解できないのよ。

 殺気とか敵意とかはあるし、本能で気合避けしてるけど、どれだけ行動を見てもなんでその行動になるのか理解できないんですけど。

 

 今だって注意してたよ?

 

 だけどいつの間にか拳骨が俺の鼻先にあるんだよ?

 

 意味が分からない。

 

「どうやら、丈とは違ってなかなか、小狡いやつのようじゃの」

「はは」

 

 思わず漏れる笑い。

 もうどうにもならない状況に対して、思わず漏れた笑い。

 

 口の端が釣り上がり、目が少し閉じる。

 

 他人から見れば、笑顔に見えているのかと思う。

 

 けど俺の今の感情は、

 

「どぅわっち!」

 

 悲しみである。

 

 即座に両手両足で横に避ける。

 低空に浮かんだ隙間に、手足をねじ込み、立ち上がる。

 

 ……え? 拳骨あった場所の地面何もしてないのにドンってなったんだけど。

 

 地面くぼんだんだけど。

 ドラゴンボールじゃん。

 

 そんなことを思いながらも、両肩に感じる死の気配を避ける。

 しゃがみ。

 拳一つ分下に。

 

 その瞬間、ふわりと香るのは田舎の匂い。

 目の前が目の前の景色が黒くなる。

 

 そして顔面の横を通った2つの肌色。

 

 見上げると、

 

「これでも避けるか」

「はは」

「仕方がないのぉ」

 

 こっわ。

 その温厚そうなフェイスでこちらを見る……ってあれ?

 

 この人、めっちゃ体すごい……

 

「万象一切、灰燼と為せ」

 

 ちょちょちょちょちょちょちょ

 

 やばいそれやばい。

 死ぬっ!

 

 シィィィィィィィィ

 

 雷の呼吸

 

 伍の型

 

 遠雷

 

 すでに逃げ技として使うことの多い遠雷。

 というか普通に遠雷は逃げる時大抵使えるからめっちゃ重宝するのよ。

 

 重宝するのよ。

 

 いやさ、分かる。

 刀を使って闘うってのは理解してたし、それこそ白哉の始解が桜の花びらだったから、こういうわかりやすいのあるかなって思った。

 

 けどさ、

 

「無理ゲー」

 

 炎って無理なのよ。

 

 俺人間なのよ。

 

 本来は火を扱った最初の生物なのよ?

 なんで俺がその炎に殺されそうにならないといけないの?

 

 ってかあっちぃ。

 

 マジであっちぃ。

 

「『流刃若火』」

 

 しかも霊圧重い。

 死ぬって。

 

 暑いって。

 

 ほんと。

 

 目の前のこの炎の爺どうすれば時間稼げる?

 俺死なないようにするだけでもすごくない?

 

 どうする? 命乞いする?

 

「ほれ、来ねば」

 

 あ、やばい。

 

「行くぞ」

 

 聞いてくれないなこれ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「この人が尸魂界に居てくれてよかった、そう本心から思うよ」

「全く同じことを考えてた」

 

 浮竹十四郎と京楽春水は、眺めていた。

 

「隊長! 何をしていて……ってあれは」

「おぉ七緒ちゃん。

 ちょうどよかった。

 見てかない?」

「見てかない、って大丈夫なんですか? あれ?」

 

 そこにたどり着いた八番隊副隊長……伊勢七緒は、目を丸くする。

 

 炎。

 

 先程も双極での炎を目撃したが、それよりも洗練された、炎自体に生が宿っているような、そんな炎。

 

 そんな炎が、蠢いている。

 それこそ、なにかの目的を持っているように。

 それは、七緒にもすぐにわかった。

 

 誰かが、対峙している。

 あの恐ろしく美しい炎に。

 呑まれればこの世から命を失う炎に。

 

「それがなんか大丈夫らしいんだよねぇ」

「はぁ」

「いやいや七緒さん。

 本当の事なんだよ」

「浮竹隊長まで……」

 

 七緒は正直、あんな炎を目の前にして生きている、とか隊長の冗談だろうと思っていた。

 しかしここでまさかの浮竹からの同意の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。

 

 それこそ、悪い冗談だ。

 

 今だって勝負が終了し、総隊長が現れるのだ。

 そう、思っていた。

 

「え? いや、なんで……」

「気付いたみたいだね」

「もう七緒ちゃん、疑ってたの?」

「疑っていたもなにも……」

 

 感じたのだ。

 強大で、壮絶な炎の霊圧のなかに感じる、一筋の霊圧を。

集中していないとわからない。

 それこそ、戦っている人がいる、と思って見ていなければ理解できなかったほどの霊圧。

 

 遠くで見てもわからない、一瞬の霊圧を。

 

「それにしても、彼、丈さんの血縁らしいね」

「えぇ?! 本当に!?」

「丈……って我妻丈、ですか?」

 

 浮竹が目の前の戦いに集中しながらこぼした言葉に、七緒だけならず、京楽も驚いている。

 

「え、あの人って結婚するような人だったの?

 生涯一人で斬り合い楽しんでいる人だと思っていたよ?」

「えっ……と、お二人は我妻丈本人と出会ったことがあるんですか?」

「あぁ、七緒ちゃんはその頃は知らないよね、そりゃ」

「資料的な意味合いでは知っていますが……」

「確かに、七緒さんはあの事件のあとに死神に副隊長になったからね」

「いやぁ、ほんと、結構お世話になったよねぇ」

「お世話になった…………?」

 

 京楽と浮竹の懐かしむような会話に七緒は違和感を抱いているようだった。

 

「あの、お二人に質問したいんですけど、我妻丈、という人は罪人という認識で大丈夫ですか?」

「……あー、そっか、あの人を知らないとそんな感じになるのかぁ」

「まぁまぁ、上の判断だし、僕らは真実を知らないのだから仕方がないよ」

「我妻丈。

 滅却士の一人で、その技と力量で尸魂界に一人で殴り込みをかけて、当時の半数の戦力を壊滅させた人物……」

「あぁ……」

「七緒さん、それは言わないでやってくれ」

「え?」

「恐らく「いいからいいから、話さなくていいから」……そうか。

 なら本人の口から聞いてくれ」

「えぇ、ここまで引っ張ってですか……?」

 

 七緒は浮竹の笑みの意味を理解できず、京楽のほうを見る。

 京楽は七緒のほうを向かずに、目の前の戦いに集中している。

 

「それにしても彼、頑張るねぇ。

 斬魄刀もない状態で戦ってるんでしょ?」

「……まぁそうですね。

 死神ではないのにどうやって」

「それは虚空、という技術だろうな」

「虚空?」

 

 これ幸いと、京楽は話をそらそうと目の前の戦いにコメントする。

 それがわかっていながらも、こういうときは話してくれないのを理解しているため、話に乗っかる。

 それに対して手伝う形で話を繋げる浮竹。

 

「虚空、というのは滅却士特有の霊子の収束を利用して、体内に霊子を抱え、それを動力として爆発的な身体能力を産み出す闘法だよ」

「……それ、可能なんですか?」

「お、ちゃんと勉強してるね七緒ちゃん。

 確かに、滅却師……種別の違う人たちは、外部に武器として顕現することでその能力を発揮していた。

 それこそ、これは理解できるよね?」

「まぁ、死神における鬼道と似たようなものだとは……」

 

 まるで勉強会のような雰囲気だが、目の前では炎が吹き荒れ、今にも巻き込まれてしまいそうになっている。

 しかし、よく見ると浮竹達に近づく前になにかにぶつかって炎は消滅している。

 

「本来、霊子はそもそも外部から摂取するものじゃないし、それができるなら霊子は固有性を失うってことだからね」

「そうですよね」

「だけど、なんでか知らないけどあの人たちはそれを可能にしている」

「正直、すべてが理解できている訳ではないんだよ」

「そうなんで…………」

 

 七緒が浮竹の話にうなずいていると、炎の中からなにかが飛び出した。

 それは人影のようなもので、浮竹たちのもとに飛来していき、なにか衝突した。

 人影のようなもの……というか人影は、見えない壁に顔をすり付け、

 

「た”す”け”て”!!!!!!!!!!!!!!」

 

 死にかけていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。